見出し画像

「空間デザイン」思考と「オブジェ」思考|展示会業界の思考とは?

「空間デザイン思考」と「オブジェ思考」

展示会ブースデザインの仕事に携わっていると、時々この2つの言葉を考えることがあります。
元々大学で建築を、そして空間デザインを学び、研究してきた自分にとって、空間デザインとは、その場の空気を作ることであり、その場にいる人の心理を作ること、と捉えてデザインを行ってきました。

2010年から展示会ブースに業務を特化するようになって、展示会の世界で活動するにつれて感じたことは、建築・インテリアの世界と展示会の世界では、同じ空間のデザインでありながら、山と谷に分けられている、つまりは「別世界」だということです。
これはどちらが良いとか悪いとかではなく、そのようなもの、ということ。
その違いは、その空間づくりに携わる職人さん(施工会社)の違い、と言った実務的な違いもありますが、空間デザインを考える際の思考法が違う、そんな印象を受けます。

建築・インテリアと展示会ブースの違い。そんなものだよ。・・と言われるとそれまでなのですが、ある時、ある展示会施工会社の担当の方にされた質問を聞いて、気が付きました。

かなり以前のことですが、当社にある模型を見て、「この模型、何の素材でできているんですか?」と聞かれたのです。
建築・インテリア出身の人なら学生時代にまず学ぶ模型。素材はもちろん一般的なスチレンボードです。

この時に気が付いたこと。それは、展示会の世界は、建築・インテリアを学んできた人がブースを考えている、というより、2次元を扱っている人、もしくはそもそも空間デザインを学んできていない人がデザインをしている、少なくともこのような方々が大勢を占める世界なんだ、ということ。もちろん、これは悪い意味で言っているのではありません。

学生時代のある授業で、安藤忠雄さんの建築が「日本的」と言われて全く理解できないことがありました。今では、もちろん理解できているわけなのですが、空間を見る時に、見えている「表層」で捉えるか、そこにある「質」で捉えるのかで見え方が違うわけです。

空間デザインは心理学。と、私は考えているのですが、空間を大学で教えているような意味での「空間デザイン」として捉えられない場合、空間を作る時には単純な「形態の工夫」や「表層的な見え方の工夫」に終始してしまうのだと感じます。

そのような観点から、展示会ブースは、いわゆる「空間デザイン」というよりも、形態の工夫や視覚的な工夫に終始した「形態づくり」になっているブースが多い、と言えます。

このことに気が付いた時、展示会ブースに特化して感じていた様々なことが理解できてきました。私は、この展示会ブースの考え方を「オブジェ思考」と呼んでいます。
この展示会業界における「オブジェ思考」。誤解のないようにお伝えすると、これが決して悪いのではなく、バランスが大事だと思うのです。展示会において、オブジェ思考的なブース構築方法は大切です。当社のブースの場合、それが欠けすぎているくらい。しかし、オブジェ思考のみのブースでは「集客」に限界が生まれる、と私は感じています。そこで、「空間デザイン思考」が重要となってくるのです。特に展示会ブースにおいては。
では、なぜ空間デザイン的な思考法が大切なのか、それはまた改めてまとめることとしますが、実際に当社がデザインしたブースは、周囲のどのブースよりも来場者を集めます。
調べたわけではありませんが、おそらく当社以上に集客ができるブースを考えられる会社・デザイナーは今の日本にはいないでしょう。
これは私が特別優れているのではなく、単に「いない」だけなのだと考えています。

当社が行っている空間デザインはいわば「ビジネス系空間デザイン」というべきものです。「ビジネス系空間デザイン」は「結果」を重視する空間デザインの手法。この考え方がもっと展示会業界に広まれば、またはこの「ビジネス系空間デザイン」が得意な建築・インテリアデザイナーが参入すれば、展示会業界はもっと「結果」を出せるようになり、変わってくると感じています。
そんなビジネス系空間デザインを含めた空間デザインに関する記事はまた次回に。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?