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これも(ぞ)日本

私の春画との出会いは多分小学5年生。学校支給のiPadで見たのだが、今思うとなかなかのチャレンジャーだった。
齢11の女児には刺激が強すぎて、当時は春画に対して「グロい」「怖い」などのネガティブなイメージを抱いていた。なんなら私と同じ考えの人が大半だと思う。そんな人にこそ、『春の画』と『春画先生』を是非見ていただきたい。

春画について知ったことについて
春画は男性向けではない。なんなら実際春画を家庭に持ち込んだのは、借本屋が家庭を回るタイミングで家にいる女性。嫁入り道具として新妻が持参した例もあるらしい。今まで男性向けだとなんとなく思ってたけど、もろバイアスだった。
またかつて春画は「笑い画」とも呼ばれており、コンプラガチガチの現代では考えられないような鑑賞方法が実践されていたそうだ。
春画内の女性は表情豊かだ。女性でもセックスを楽しんでいいという、当たり前ながら社会的に受け入れられていないメッセージを受け取ったし、春画は数百年も前のものながら、現代を生きる私たちにとって新しいメッセージを発信しているアートジャンルなのだなと思った。
また春画は村上隆さんをはじめとする現代アーティストたちにも影響を与えているらしい。豊島のやつとか、今年見にいこうかなと思ってる。

春画の芸術性について
『春の画』で紹介されていた春画の一つに『袖の巻』というものがある。男女が情事に及んでいる一部分のみを切り取ったもので、余白が少ないためか、見る人にまるで窓から覗いているかのような臨場感を与える。
『春画先生』において、性器を隠して鑑賞するよう勧められるシーンがある。たしかに否が応でも目を引いてしまうが、その部分を隠すと急に絵の「ストーリー」が見えるようになり、とても驚いた。屏風に無造作にかけられた衣服や、攣りそうなほど力のこもった足先、ぼぉっとした表情まで、春画は実に丁寧に描かれている「芸術」だった。
春画は歌川や北斎をはじめとする、名だたる浮世絵師も手がけている。春画はただのポルノではなく、芸術性と大衆性が混ざり合った、歴とした「アート」なのである。

春画と歴史について
江戸時代に盛んになった春画だが、江戸後期にはグロテスクな要素が加わるようになる。幽霊が男に馬乗りになっていたり、血みどろの女性が描かれたりしている。海外の脅威に晒され、時代が急速に変化するに伴い、その不安が芸術に反映されているらしい。
たしかに世知辛くなるとゲテモノが流行ると聞く。1960年代学生運動時も、エログロが流行った、みたいのことを高校の倫理の先生が言ってた。
やがて春画は明治・大正時代に、西洋の禁欲主義を習って禁止される。定着した結果、日本は昔では考えられないほどの方向転換を遂げ、保守的社会になった。
話が飛ぶが、私は大学2年生の頃、クィア史という、江戸〜昭和初期の同姓同士の性愛を振り返る授業をとっていたことがある。歌舞伎や茶屋、江戸時代における女性の異性装、明治時代の女学生同士の心中。今まで義務教育で散々擦ってきたのに、全く教えられなかった当時の生の文化の片鱗に触れたし、私の「日本」のイメージが大きく変わるきっかけになった。春画もそうだけど、私の思ってる「日本」のイメージって、実は全く的を得てないんだろうし、私が知らないだけで、明治・大正時代に消えた「日本文化」ってもっといっぱいあるんだろうな。


ーネタバレありー

俳優さん・登場人物について
『花腐たし』に続き柄本佑さん2作目。こういう変態チックというか、飄々とした役が解釈一致。過去作品追っていきたい。ただあの真っ青なビキニタイプの下着だけはまじで受け入れられん。
北香那さん演じる春野弓子がとても魅力的。理性的に見えて実は自分の感情に正直で、今までにないヒロインだったし、裏表がなくて好感がもてた。

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私美術館とかよく行くけど、今まで生で春画を見たことない。大英博物館では過去に春画の大展覧会があったらしいが、やはり今の日本では、春画を大々的に展示するのは難しいのだろうか。あんなにおおらかだったかつての日本はどこへやら。太田記念美術館になら、、、?と期待を込めて足を運ぼうと決意する(遠い)。

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