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テクノロジーは、ユニバーサルデザインを進化させるのか?【AR技術で聴覚サポート】

Facebook Reality Labs Researchの "Augmenting the hearing aid" を読み、テクノロジーとユニバーサルデザインの関係、とりわけその時間差が変わってきたのかもしれないと感じたので拙筆です。

Enhanced Hearing - Facebook Reality Labs Research

Augmenting the hearing aid
New work from Facebook Reality Labs Research suggests that augmented reality could improve people’s lives by supplementing the work already done by hearing aids
https://tech.fb.com/augmenting-the-hearing-aid/

Facebook Reality Labs Researchの新しい論文よると、AR(拡張現実)が補聴器ですでに行われた研究を補完することで、人々の生活を良くする可能性があるとのことです。

-- 中略 -- 
今日、米国では3,000万人が難聴を患っており、世界では4億4,600万人が難聴を持っています。聴覚がいは、人々を社会的状況から遠ざける可能性があり、認知障がいも引き起こします。難聴の人々は、記憶力を低下させ、精神的疲労を引き起こし、社会的をさらに悪化させる可能性のある複雑な音響環境に対処するために、文字通りより困難に考える必要があります。

技術的な詳細は、論文をご参考いただきたいのですが

ARは、ビームフォーミング、ディープラーニング技術、アクティブノイズキャンセル、周囲の状況認識を組み合わせることで、聴きたいものを理解し、音源を分離して強化し、バックグラウンドノイズを低減するシステムに到達するのに役立ちます。

強化されたAR処理信号を補聴器に送り返すことで、両方の長所を活用できます。必要な音だけで音量を上げることができます。

独自の聴覚能力を調整しながら、より少ない労力で会話をフォローできるようにします。重要なのは、ARプラットフォームを補聴器の代わりではなく、補聴器を補強するものと見なしていることです。

「カクテルパーティー効果」(*1)のような音の選択的聴取で、補聴器をAR(拡張現実)で補完することで、特定の音に集中し会話をフォローするような技術「聴覚科学」を、ARグラスとは独立して、 FRL Research’s audio teamで研究していくそうです。

視覚情報の拡張が目立つxRの世界ですが、人の五感と情報テクノロジーで拡張現実が広がっていく未来はもう始まっていると感じました。

*1) カクテルパーティ効果
人混みや雑踏の中でも、自分に関係があったり興味があったりするキーワードを自然に聞きとることができる現象。「音声情報を無意識に選択して聞き取る」 - 1953年、心理学者のコリン・チェリー氏

これまでのユニバーサルデザインとテクノロジーの関係の考察

デザインの世界には、聴覚障がいのある人に限らず

「老若男女、障がいのある方、全ての人々が使いやすいことを前提にデザインする」【ユニバーサルデザイン】という考え方があります。

ユニバーサルデザイン7原則

1. 【公平性】だれにでも公平に利用できること。
2. 【自由度】使う上で自由度が高いこと。
3. 【かんたん】使い方が簡単ですぐわかること。
4. 【明確さ】必要な情報がすぐに理解できること。
5. 【安全性】うっかりミスや危険につながらないデザインであること。
6. 【自属性】無理な姿勢をとることがなく、少ない力でも楽に使用できること。
7. 【空間性】アクセスしやすいスペースと大きさを確保すること。

-- ロン・メイス博士U  - Universal Design: Barrier Free Environments forEveryone. Designers West, 33(1), 147-152.)

博士はこの原則を、プロダクトだけでなく、生活環境や、コミュニケーションなど、さまざまな場面に広く取り入れるよう訴えました。

これまでのネットでの、情報テクノロジーと、ユニバーサルデザインの関係を考察すると

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例えば、iPhone発売当時、タッチパネルとエコシステムで革新的な体験をもたらしましたが、ユニバーサルデザインという意味では、一部のユーザーにしか使えないプロダクトデザインでもあったとも言えると思います。

今でこそ、各スマホOSベンターともアクセシビリティにも力を入れるようになってきていますが

技術革新は、イノベータ理論(*2)のように、まず先行・初期採用者が動き、普及プロセスと時間を経て、多くの人に利用が広まっていくという流れでした。

しかし、最近のFacebook Reality Labsの発表やテクノロジー革新をみていると、普及プロセスの壁(キャズム)を越えて、先にそれぞれのユーザーセグメント特性ごとに合わせた技術革新が起き、全体に作用するような双方向のムーブメントも感じるようなりました。むしろアーリーアダプター(初期採用者)がどこなのかの定義が難しくなりました。

もちろん実験的・高機能なデバイスが、誰でも日常的に利用できるようになるまでの安定性、コスト、流通という観点での時間差や壁はまだまだ存在します。

しかし、その普及スピードですら技術革新で加速している肌感があります。

*2) 1962年、スタンフォード大学のエベレット・M・ロジャーズ教授『イノベーション普及学』という著書で提唱

ユニバーサルデザインを、顧客ビジネスと捉える。

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他方、事業会社でインハウスデザイナーをやっていると「ユニバーサルデザインはわかるけど、実装工数がない...。」というリソース課題にぶつかることも多いと思います。

しかし、顧客に合わせたパーソナライズと体験満足度が、持続的な事業になる時代です。現在、世界中の約7人に1人が、世界やデバイスとのやり取りで影響する障がいを持っていると言われます。

持続的成長には、サステナビリティ経営が不可欠と言われるようになりましたが、ビジネス視点でも、障がいを持つ方も顧客ターゲットとして捉え、パーソナライズで体験満足度を上げ継続利用していただくことが、事業の持続性にも繋がる時代とも言えます。

いちデザイナーとしてできることを考え、以下のように書き出してみました。

1. 最初からあたりまえにユニバーサル設計する、
 デザイナー自身とプロダクトチームの仕組みづくり。

2. 既存サービスでは、7原則すべてをやるのではなく、
 できるところから始める。

3. 障がいを持つ方にもプロジェクトに参加してもらい、
 意識せずともユーザーの多様性が息づくチームづくり。

4. テクノロジーが体験に与える可能性をキャッチ、
    小さく試し、実現までの未来のシナリオを描いておく。

まずは自分にできることから小さく始めていくこと

xRをはじめとするテクノロジーや空間の進化を、サービスデザインや、チームビルディング、ワークスタイルでも、物理的な制約を超えていくイメージを持つと

【ノーマライゼーション】
障がいがある人もない人も分け隔てなくともに生活できる社会を目指すこと。

世界の実現に近づけるのではないか?という期待と

ヒトの五感と既存ソリューションに、テクノロジーの進化が合わさると

今まで届かなったところまで体験デザインができる未来の可能性を感じた日でした。

#ユニバーサルデザイン #デザイン #UX #VR #AR #MR #Facebook


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