Cinema Diver〜ややこしい辺境映画で味わう人生と哲学

安田寿之(音楽家)、小沼一志(コピーライター)、石井裕(商社勤務)による、映画研究会。

Cinema Diver〜ややこしい辺境映画で味わう人生と哲学

安田寿之(音楽家)、小沼一志(コピーライター)、石井裕(商社勤務)による、映画研究会。

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Stay Home Watch Cinema!

ぼっけえきょうてぇ映画、だからお家で見よう!ベスト51. 赤い影(ニコラス・ローグ監督 1973年 イギリス ) ほの暗いヴェネチアの路地に見え隠れする赤い影は亡き娘の亡霊なのか。完全に謎解きがされぬまま、含みをもたせた終わり方なのがまた怖い!ずっと得体の知れない恐怖にゾワゾワ...。東京の街中でふと目にする赤い影にもドキっとする羽目に。 2. テシス・次は私が殺される(アレハンドロ・アメナバル監督 1995 スペイン) 「オープン・ユア

    • COLD WAR/あの歌、2つの心

      (パヴェウ・パヴリコフスキ監督 2018年 ポーランド、イギリス、フランス) ここに居る続きとして「向こう側から見る」パヴェウ・パヴリコフスキ監督の前作「イーダ」は、目的の映画が満席で観られず「仕方なく」観た作品だった。こういう作品は、当たりが多いものである。身寄りのない少女が、小さいが人生を決定づけるようなアイデンティティを獲得するロードムービー。抑圧のコントラストとしてのジャズ。客が去った後、誰にきかせるでもなく演奏されるコルトレーンのNaimaが素敵だった。 前作同

      • 休校用映画

        映画に育てられた。 休校中、自分の勝手ではなかなか動けない小学生を対象に映画をピックアップしました。 感想文を書くのもいいですね。 ご参考までに。 親子で楽しめる名作アニメ 犬ヶ島(ウェス・アンダーソン監督 2018年 アメリカ/ドイツ) ディリリとパリの時間旅行(ミッシェル・オスロ監督 2018年 フランス/ベルギー/ドイツ) ブレッドウィナー 生きのびるために(ノラ・トゥーミー監督 2017年 カナダ/アイルランド/ルクセンブルク) BUDDHA2 手塚治虫

        • テリー・ギリアムのドン・キホーテ/The Man Who Killed Don Quixote

          (テリー・ギリアム監督 2018年 イギリス、スペイン、フランス、ポルトガル、ベルギー) スクリーンを通し、監督と混沌を共有体験するための作品災害、病気、資金難などにより(どういう事情で映画制作が暗礁に乗り上げるか?の見本集のよう)19年間の間に9回の失敗を経て完成した「呪われた」執念のギリアム作を、心して鑑賞した。時の人アダム・ドライバーの力及ばず、満席とは言えないチネチッタにて。 ミゲル・デ・セルバンテス原作のメタフィクション要素、騎士道物語の読み過ぎで現実と物語の区

          2019年に観た映画ベスト10

          1. 万引き家族(是枝裕和監督) 2. さよなら、僕のマンハッタン(マーク・ウェブ監督) 3. ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(クエンティン・タランティーノ監督) 4. お嬢さん(パク・チャヌク監督) 5. 聖なる鹿殺し(ヨルゴス・ランティモス監督) 6. ジョーカー(トッド・フィリップス監督) 7. 犬ヶ島(ウェス・アンダーソン監督) 8. フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法(ショーン・ベイカー監督) 9. アイ・オリジンズ(マイク・ケイヒル

          フレンチアルプスで起きたこと/Turist

          (リューベン・オストルンド監督 2014年 スウェーデン/デンマーク/フランス/ノルウェー) 雪崩が審らかにした家族への不信は、自分自身へのそれだと気付く女 ほつれが広がり、大きな傷口になり、回復に向かう家族の物語。ではない。 最初から妻には不信感があったのだ。それを審らかにしたのが雪崩である。結婚しているのに奔放な女客と口論になるのは、その人物がユングの言うところの典型的な「影」だからだ。心の奥底で、そうなりたくて仕方ない。夫へだけではなく、家族という形への不信感が予め

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          ア・ゴースト・ストーリー/A GHOST STORY

          (デヴィッド・ロウリー監督 2017年 アメリカ) 自宅にて、ミシェル・クーヴルー オーバーエイジド・モルトウィスキー 言葉にすると消えてしまうこともある。 生きている人は亡くなった人を「成仏させてあげないと」と思うが、幽霊とて自分で努力しないといけないようだ。誰も教えてくれない、自分だけの方法を探して。 時空が歪み現実か空想かわからなくなる(既に非現実だが)瀬戸際で、夫Cは妻Mのあることをようやく確かめられる。 言葉にすると消えてしまうこともあるのだ。 (安田寿之

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          ボーダー 二つの世界/Gräns

          (アリ・アッバシ監督 2018年 スウェーデン/デンマーク) みなとみらいのイタリアンバルにて、前菜とビール。 日ノ出町の台湾料理にて、メインと瓶ビール。 野毛のバーにて、シングルモルト。 「ボーダー」のなさを超え、異形であるほど純粋 「ぼくのエリ 200歳の少女」が素晴らしかったヨン・アイビデ・リンドクビスト原作。みなとみらいにあるkino cinemaにて。ミニシアター系に特化した、席も広く居心地のいい劇場だった。 北欧の気質は、少数派に対する「ボーダー」のなさを超