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【PENCIL&PAPER Mag】ブランドジャーナリズムで小野祐紀氏が描く「編集の未来」とは

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【PENCIL&PAPER Mag】がスタート!Pencil & Paper Co. の価値観を体現する方々をインタビューしていきます。

第一弾は、ブランドジャーナリズムで編集者の未来をつくろうとしている小野祐紀さんです。

略歴:
2012年立教大学異文化コミュニケーション学部卒。19歳の頃に留学したフランスで見た人の生き方の多様性に感化され、経営者になることを志す。ほどなくしてモバイルメディア運営のスタートアップで「無給・フルタイムのインターンシップ」としてキャリアをスタート。

その後、戦略PR会社を経て電通に入社。広告業界向けメディア「電通報」のディレクター・編集者として活動した後、マーケティングエージェンシーMOLTSの創業期に参画。コンテンツ制作を中心に企業のオウンドメディアのグロースに従事。

現在はフリーランスとして独立し、企業のオウンドメディアの企画・運営・集客支援、Forbes JAPAN CAREERをはじめとしたビジネス系媒体の編集者・ライターなど、さまざまな立場でメディアに関わる活動を行っている。

── 今取り組んでいることは?

ブランドジャーナリズムです。
絶対的な定義ではないかもしれませんが、「編集者のスキルを拡張して、社会の視点から企業の価値を見出し、それを世の中に発信する」という概念です。広告やPRとも共通する部分もあると思いますが、「取材し、報道する」姿勢が違いだと思っています。

例えば以前NewsPicksの佐々木紀彦氏をインタビューした際に、情報を編んで届ける編集者のスキルは、ビジネスでも生かせると言っていましたが、まさに同じことを日々感じています。一人の編集者として、「社会に意味があることをより多く提供するには何をすればいいか」と考える中で、この概念に出会いました。

── なぜブランドジャーナリズムは「社会に意味があるのか?

現代は物質的に満たされ、手に入れたいモノや情報にはおよそ何でもアクセスできる時代です。一方で、そうしたモノや情報が供給過多になることは、消費者一人ひとりの立場で見れば「不要なもの」が多い時代でもあるともいえます。

その中で、企業が本当に消費者に必要な存在になる、あるいはそう認識してもらうには、当然ながら自社のことを知ってもらうことが必要です。これは企業だけでなく、消費者にとっても「自分にフィットしたプロダクトやサービスと出会える」という点で意味があると思っています。

ただ前述のとおり、自社のことを知ってもらうための情報自体が供給過多になっているので、そもそも消費者と企業のコミュニケーションは成立しづらくなっています。

ではどうしたらよいのか。“中立の立場”であるメディア編集者の肌感覚では、消費者や、その集合体である社会を起点にした「報道」として企業の姿を発信すれば、受け入れられやすい情報になるのではないかと考えています。

そのためには、企業の「伝えたい」を中心に据えるのではなく、社会の「知りたい」や「一般的なイメージ(先入観)」を出発点にしながら、企業の等身大の魅力を描くことが鍵です。これはコンテンツマーケティングの世界でもよく言われていることかもしれません。

ちなみに、ブランドジャーナリズムは海外で提唱されましたが、日本でも「広告に変わりうる存在」のような文脈でにわかに注目され始めています。

参考記事:
広告に代わる?今なぜブランドジャーナリズムが話題なのか
https://innova-jp.com/brand-journalism/

コンテンツマーケティングの普及により、再び注目を集め始めている「ブランドジャーナリズム」とは?
https://contentmarketinglab.jp/trend-in-japan/brand-journalism.html

広告は、ブランド・ジャーナリズムへ。(続・広告がなくなる日)
https://note.com/copywriterseyes/n/nc07cb8676d0a

── なぜ編集者がそれをやるのか?

その理由は、プロダクトやサービスのオーナーではなく、「第三者だからこそ発掘できる企業の価値(value)、果たすべき意義(mission)」があるからです。もう一つの理由は、文章や映像といった手法を使って、中立的な視点でそのvalueやmissionを語ることもできるからです。編集者には、この2つができます。

もちろん文章や映像にとどめるつもりはなく、今はいろいろなクリエイターと共創してイベントやインスタレーションなどの手法も模索しています。

冒頭でも話したように、ブランドジャーナリズムは広告やPRとも似た概念ですが、「中立的な視点で語る人が介在する」のがポイントだと思います。つまり、メディア人にしかできないブランドとのかかわり方があるのです。

── ブランドジャーナリズムに辿り着くまでの経緯は?

略歴にある通り、大学3年から企業で働き始め、以来会社は転々としていますが(笑)、10年間ずっとメディアの仕事をし続けています。

その中で思っていることがあります。それは、「魂を持ってメディアやコンテンツ制作に向き合う人の割合が本当に少ない」ということです。

インターネットが普及して以来、“メディア”と呼ばれているものが爆発的に増えました。企業も個人も「メディアらしきもの」を簡単につくれるようになった、ともいえます。時代を遡ればサーバーを自分で立てたりhtmlやcssを書いたり、といったことも必要でしたが、最近に至ってはコーディングすら必要ありません。そのこと自体は良いと思います。

ただ、それによって「本当はメディアをやりたいわけじゃないけど、手段としてメディアをやっている」人が増えました。もちろん自分自身もアフィリエイトやSEOコンサルを主軸とする「メディアという手段で利益を得たい組織」の一員としてキャリアを始めていろいろなことを勉強させてもらったので、門戸が広がっていて良かったと思っています。

ですが例えば、「このボタン」──問い合わせや資料請求、商品購入…──を「クリックさせる」ためだけ、あるいは「検索結果のランキングで1位を取る」ためだけ、という態度でメディアやコンテンツに向き合うことは、「果たして社会の発展に寄与したといえるのだろうか?」と思うようになりました。無意味とは言いませんが、文章や映像といったコンテンツはそのためだけにあるわけじゃないとも思います。

手軽にメディアを始められるようになった分、メディアを始めるまでのマインドセットも手軽になってしまった。結果、メディアの“錬金術”としての側面に注目が集まって、古くはブラックハットSEOに始まり、炎上商法やステルスマーケティング、キュレーションメディア問題など、メディアの「つくり手の態度」に端を発する事案もいくつか目撃しました。

── それは「売れさえ、注目を集めさえすればいいのか」という問題意識?

そうです。とはいえ自分自身もクライアントからの依頼の名のもとに「本当にこの企業が言うべきことなのか」「本当にこの企業しか言えないことなのか」という疑問を半分抱えながら制作したコンテンツがたくさんあります。マーケティング的な成果を出して評価されるのはうれしいですが、正直に言うとモヤモヤする気持ちも同時にあります。

ただ誤解されたくないのは、メディアがビジネスとして成り立つことは絶対に必要だということです。メディアやコンテンツ制作がビジネスにならなければ、自分もおそらく今の仕事を続けていません。またどんな手法であれ、そのコンテンツや商品と出会うことでより良い生活を送れるようになった人も必ずいるはずです。

何より、インターネットは誰のものでもないので、玉石混交で良いと思いますし、もっといえば何が「玉」かは人によって違います。

それでも、こうしたメディアにまつわる現状に対して、多少なりとも変化を起こしたい。コンテンツのつくり手としては「ユーザーにとって意味がない」という声を少しでも減らしたいです。そして、願わくばこの考え方に賛同してくれる人を少しでも増やせたらうれしいです。

── 最後に何かメッセージがあればどうぞ

広告を制作し、所有するのは企業ですが、消費者のためにあると思っています。だからこそ編集者として、中立の立場として企業に向き合って、本当に消費者のためになる情報を「報道」し続けたいです。

また昨今は「経営にはMVV(Mission, Vision, Value の略)が大事」とか、「社会にはソリューションではなく課題が過少している」といわれる時代です。

企業が社会に対してどんな役割を果たしうるのかを、ユーザーに近い立場から見出し、提言することで、企業が進むべき方向を一緒に考えられる存在でありたいと思っています。

メディアという、企業と社会の“中間”で生きているからこそ、なしうる役割がきっとあるはずだと信じています。

ブランドジャーナリスト・小野祐紀氏のTwitter:@icomy1989

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