「どう断ったらスムーズだろうなんて、すでに考え始めていた」
朗読2話目。
「生まれて初めてのことを、する」
私は、クローゼットを開け、丸めたままになっている新品同様のヨガマットを眺めていた。
*
ある日、友人のドミニクから声をかけられた。フランス出身で、アメリカにも留学していたという彼女は、明るくて友人も多い。
「エイミー、私はヨガのクラスを始めたのよ。友達だけ誘った小さいものなの。来てみない?」
戸惑う私に、「ティーチャートレーニングから戻ってきたばかりで、経験を積むために始めたの、来て欲しいのよ」とウインクする。
私は、ヨガに興味はあった。だけど、クラスに入るのには抵抗があった。からだは硬いし運動も苦手意識があった。
DVD付きのヨガの本を買ったこともあったけれど、お手本のようなポーズは作れず、すぐ飽きてしまい1日で終わりにした。そのまま引き出しの奥にしまったままだ。
誘いはありがたいけれど、どうせヨガクラス なんてついていけないだろうと思った。
だけどうなづいたのは、外国に住み始めて以来「声をかけてもらった時は、なるべく断らない」と決めていたからだ。
英語が苦手な私に、わざわざ声をかけてくれるのは、親切だ。
「1、2回参加して感謝の意を表せばいいだろう、そのあとは、なんとか言って断ればいい」と思っていた。
私にとって、ヨガというより人間関係の話だった。
私は、片手でヨガマットを掴み引っ張り出すと、ぬらした布でそれを拭いた。埃が布にうつるのを見ながら、「どう断ったらスムーズだろう」なんて、すでに考え始めていた。
<続く>
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