見出し画像

「どう断ったらスムーズだろうなんて、すでに考え始めていた」



朗読2話目。


「生まれて初めてのことを、する」


私は、クローゼットを開け、丸めたままになっている新品同様のヨガマットを眺めていた。

ある日、友人のドミニクから声をかけられた。フランス出身で、アメリカにも留学していたという彼女は、明るくて友人も多い。

「エイミー、私はヨガのクラスを始めたのよ。友達だけ誘った小さいものなの。来てみない?」

戸惑う私に、「ティーチャートレーニングから戻ってきたばかりで、経験を積むために始めたの、来て欲しいのよ」とウインクする。

私は、ヨガに興味はあった。だけど、クラスに入るのには抵抗があった。からだは硬いし運動も苦手意識があった。

DVD付きのヨガの本を買ったこともあったけれど、お手本のようなポーズは作れず、すぐ飽きてしまい1日で終わりにした。そのまま引き出しの奥にしまったままだ。

誘いはありがたいけれど、どうせヨガクラス なんてついていけないだろうと思った。

だけどうなづいたのは、外国に住み始めて以来「声をかけてもらった時は、なるべく断らない」と決めていたからだ。

英語が苦手な私に、わざわざ声をかけてくれるのは、親切だ。

「1、2回参加して感謝の意を表せばいいだろう、そのあとは、なんとか言って断ればいい」と思っていた。

私にとって、ヨガというより人間関係の話だった。

私は、片手でヨガマットを掴み引っ張り出すと、ぬらした布でそれを拭いた。埃が布にうつるのを見ながら、「どう断ったらスムーズだろう」なんて、すでに考え始めていた。


<続く>



1話目はこちら


ーーーー



「ジミー」出版プロジェクトは、現在、支援者が102人。6割突破・リターンも増えてます↓

スクリーンショット 2021-12-15 15.10.06


いつもありがとうございます。いま、クンダリーニヨガのトライアルを無料でお受けしているのでよかったらご検討ください。