短編・六月の雨2024/13
その夜、現実逃避から酒が飲みたくなり、煙草屋の自動販売機へ買い出しに向かう事にした。
千円札を2枚と小銭を握りしめてポケットに突っ込む。サンダルをつっかけて、足元に捨てられているビニール袋を手にする。買った酒を入れる為だ。
体のいたるところに痛みが走る。それでもモルヒネの代わりに酒で誤魔化す。
部屋を出て玄関のドアを閉める時になって初めて気が付いた。ドアノブに手提げ袋が掛けられていた。
間違いなくリリーさんの差し入れだと分かった俺は、一旦紙袋を部屋の中に入れてから煙草屋へと向かった。
サンダルを引っ掛けて、重たい身体を引きずりながら歩くその姿は何とも情けないものがあった。地面に落とされた、背の丸まったその影からも痛烈に伝わる。
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