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これは、つまらない仕事をはかどらせる、わたし独特のコツについての文章と、 一生かけて大切に読みたいと思っているスパイの登場する本の紹介です。

わたしの仕事道具であるノート型マッキントッシュはクリック機能が壊れ、マウスがないと動かなくなってしまいました。
そして毎朝、ちょうど1km離れた場所にある仕事場ペレカスブックへ徒歩で出勤する際、マッキントッシュをリュックに入れて運ぶのですが、結構な頻度でワイヤレスマウスを自宅に置き忘れてきてしまうのです。
いくら高性能のPCが目の前にあってもクリックできない以上、スイッチであるマウスがなければ何もできません。

出勤した途端にとんぼ返りで、毎日のように自宅にマウスを取りに帰るわたし。
出勤時に忘れるということは退勤時にも忘れるもので、マッキントッシュでアマゾンプライムの進撃の巨人が見たいがために深夜に仕事場にマウスを取りにくるわたし。それまで1日1往復だった自宅と仕事場間の移動は2往復に、進撃の巨人の最新話が放映される日には3往復になってしまったのでした。

そんなことを繰り返し、自分はマウスを忘れることを克服できないと身にしみてわかったわたしはついに、自宅用と仕事場用と、マウスの2個持ちに踏み切ることにしたのでした。

ふたつになったわたしのワイヤレスマウスはどちらも、マウス本体の他にUSBレシーバーという小さなチップを持っているタイプです。このチップをマッキントッシュのポートという穴に差し込んで、マウスとマッキントッシュを接続するのです。
ひとつめのマウスとふたつめのマウスのメーカーが違うため、わたしはチップをふたつとも財布に入れて持ち歩き、仕事場や自宅で健気に待っているそれぞれのマウスに合ったチップをマッキントッシュのポートに差し込み、仕事を始めたり進撃の巨人を見たりするのでした。

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↑こういうことです。

ところで、このチップの抜き差しをするたびにいつも、わたしの胸には感動のようなものが押し寄せてきます。

それは、
謎の小さなチップを秘密裏に持ち歩き、銀色に光る近未来的な薄い機械の、知る人しか知らない小さな差し込み口にカチリという音とともに装着させてマシンを目覚めさせ仕事を始めるなんて、わたしってまるで、ミッションインポッシブルに出てくるスパイ、トム・クルーズみたい!
という高揚感です。

単なるひとりスパイごっこに他なりませんが、気分の乗らないつまらない仕事もミッションのように思え、はかどらせたりもするので無駄ではありません。
みなさんも日常の中で、○○になったつもりのようなことをしているようでしたら、教えてください。

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さて、本日紹介する本はスパイつながりでトマス・ピンチョン『重力の虹』です。
第二次世界大戦下、アメリカ軍中尉タイローン・スロースロップが街のあちこちで女性と関係を持つと、後日その地点に必ずV2ロケットが落下。喋る犬・電球の長老・プラスティックの結晶。神話に昇華した妄想のような文字群は、めくるめく多重の幻覚のような読書体験をもたらしてくれます。
ピューリッツァー賞が「卑猥」「通読不能」と審査を拒否したとwikiにありましたが、だとしたらその拒否はダサい。
同じ1973年に書かれた小松左京『日本沈没』や安部公房『箱男』が、古色蒼然とした良さを醸し出しているのとは反対に、この古くならなさは一体どういうことなのでしょう。
『重力の虹』は、今なお現代文学の最先端に鋭く立つ金字塔です。
わたしはこの本を読み終えていることが残念すぎて、再読は英語版なら一生読み終わらないで済むだろうと(わたしの英語力は中学レベルなので)、このペーパバックを宝物にしています。

ペレカスブックでは、新潮社日本語版をお取り寄せにて対応いたします。



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