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訪問診療日記#4〜失敗を見届ける勇気〜


最近学んだことがあったので共有させていただきます。

結論は患者さんとの関わりと子育ては似ているということです。


エピソード

患者さんは80台男性。

もともと認知症でしたが、奥さんの介護のもとなんとか生活している状況。

今年に入ってから、ある大きな病気をされたのですが、幸い大きな後遺症もなく、なんとか自宅に戻って来ました。

さあ、これから自宅で元通りの生活をというところでしたが、長い入院を経て、以前にもまして動かなくなってしまった患者さん。

我々としては、訪問看護や、リハビリテーションなど、あらゆるサービスを駆使してお二人の生活をサポートしたいところ。

それにあたっては奥さんの同意が必要(医療はなんでも「説明と同意」!!)ですから、

ぺ「〇〇という理由でXXをおすすめします」

妻「うちにはお金がありません。」


。。。


以上


僕も黙りこくったわけでなく、生活保護という手段があることや、保護申請と同時並行でリハビリを進めたいこと、そうしないとお父さんの回復が遅くなって取り返しがつかなくなるかもしれないことを説明しましたが、最終的に納得はしてもらえませんでした。


僕の仕事


患者さんへの説明が、上手くヒットしないことは、僕が未熟ということを差し引いてもよくあることです。


僕らはプロであり、多くのケースに触れてきた経験から、今後の見通しを説明することができます。当然、患者さんや家族の多くは素人ですから、最も苦難の少ない選択導くことが重要な役割だと思ってきました。


導くことは、時に説得という形になります。



「説得」は「納得」を産まない


OOしたほうがいい、じゃないと失敗する。

僕たちのお客さんは患者さんです。

患者さんはただでさえ辛いので、これ以上つらい思いはしてほしくないです。

どうしても失敗を避けさせる方向に誘導してしまうきらいがあります。

でも、これは患者さんからすると、他人が出した結論なのです。

これまで、「先生が言うなら」と頷いてくれる方が大勢いました。

だから僕も油断していました。


求められていることは必ずしも正解ではない。

正解よりも、納得して選んだ道を歩んでもらうこと、

その道を歩くことをサポートするほうが大切なのかも。


失敗を見届ける勇気


子育てのことを思い出しました。

僕にも可愛い息子がいるのですが、

(そんなことしたら転ぶ!)とか(おもちゃ壊れちゃうよ)とか毎日思います。

制止することもありますが、できるだけ自主性に任せたくて、黙っています。

だって、失敗して学ぶことってたくさんあるから。


それは患者さんも同じなのです。


僕たちは医療・介護の現場で起こる問題に、確からしい正解をあげられます。

その伝え方がどんなに上手になっても、自分で選んだこと以上の納得は引き出せません、多分。


失敗を見届ける勇気を持つことを、患者さんから教わりました。

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