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静かな夏

2024.07.25
ぺぎんの日記#111
「静かな夏」


「静かな夏」と言われて何を思い浮かべるだろう。

雪に閉ざされた冬。それに比べ、生き物の出す音、水や風の出す音、人が活動する音。夏はそういった音たちで溢れている気がする。

その夏が「静か」とは、一体どういうことなのか。

いつ書いたメモだか分からない紙切れが、本棚の整理中に出てきた。

「静かな夏。セミの鳴く声の中、誰も話さず、ただ汗をかき、その汗がヒヤッとして血が引いていく夏。」

そう私の字で書かれた紙はノートの切れ端らしかった。水色の罫線が入っており、斜めにちぎられていた。

書いた覚えはない。
字的には確実に私の書いたものなのだが、どうも最近のものでは無さそう。字の癖が今と違うし、何より書いた覚えも、本棚の片隅につっこんだ覚えもない。

何のメモなのだろう。夢の内容だろか。

いくつかの可能性を考えてみたが、やはりどれもしっくり来ず、メモの正体は謎のまま。

これを書いたときの私は「静かな夏」を「セミの鳴く声の中、誰も話さず、ただ汗をかき、その汗がヒヤッとして血が引いていく夏」として納得した。

セミの声を聴く。人の声を煩く思う。体の声には耳を傾ける。その行為を「静か」だと思った過去の私。

何となく、その感覚は今の私にも分かる気がする。
でもこの感覚が、書いた当時の感覚と同じであるかは定かではない。

「静かな夏」
書いた頃の私は何を想像していたのだろう。

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