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本当の事で話そう2 社会福祉士が言っちゃだめなやつ 検討

この記事は、社会福祉士になろうとする人に向けて書いている。

介護医療院で支援相談員をしている自分が、できるだけ具体的に仕事のことを記して、社会福祉士って本当は何やってるのか知ってもらおうという記事だ。

ただし、俺が知っているのは、自分が働いている施設のことだけだ。

で、書けるのは自分がやってる仕事のことだけだ。

なので読んだ人が、参考になるようにうまいこと料理して飲み込んでほしい。

1 申し込み 2 検討 3 判定 4 入所契約 5 生活・請求 6 退所

この順番で書いていく。

今回は第二回。

申し込んでくれた人を受け入れるかどうか、「検討」するとこを書く。

2 検討

申し込んでいただけたとしても、全員に入所していただけるわけではない。

お断りしなければならない人もいる。

施設で対応ができない人達だ。

介護医療院ではこんな人が対象になる、というのは法律で書いてあるが、そんなんはどうでもいい。

法律に書いてあるから受け入れられるはずだ、と主張されても、無理なものは無理だ。

もちろん、むちゃくちゃな理由で断ったら評価に関わり、自分の首を絞める事になる。

常識の範囲で、入所の可・不可に施設の独自性が保たれてるのが実情だろう。

うちの施設が三角の穴で指定をもらってるとする。

法的にも三角で介護医療院を名乗って良い、と認められてるんだから、そこへ四角いものをねじ込もうとしても無理というような具合だ。

だが、申込みが有ったときには四角だった人が、色々根回ししていくと三角に近づいてくれることもある。

うちの施設の場合はだが、入所できる・できないのハードルをリストして該当するかどうか、ただそれだけの検討ではやっていけない。

それでは、不可ばかりで入所してもらえないわけだ。

そこで、本人が今入院してるところとか、在宅にいるならかかりつけの病院とかと交渉の場面が生まれる。

さて、こういう前提で、うちの施設で検討していることをあげてみる。

1 薬 2 病気 3 お金 4 協力体制 5 本人の性格

優先順位でこういう具合だ。

まずは薬から見ていこう。

1 薬

本人が今飲んでいる薬を調べる。

入院中ならそちらの相談員に連携要請し、その他必要情報と合わせて情報提供をお願いするとかいう具合だが、難しくは書かない。

何を飲んでるかわかったら、その中にうちの施設で使えない薬がないか調べる。

額面通りにだけことが進むなら、ここで該当の薬があれば入所不可、となるが、そんなことしてたら8割入れない。

なので、先方(入院中の病院など)にこれは使えないが、使える薬に変えられないか、中止できないか、それを交渉する。

病院は、とにかく早く退院させたいというのが基本姿勢なので、できる限りこっちの希望に合わせるように動いてくれる。

普段から何度もやり取りしているところだと、この患者さんは先々あの施設を狙う、という考えがある場合、先方のDr. と相談員で、あの施設で使えない薬を避ける話し合いができてたりする。

先方がこちらの事情を把握した動きをとってくれるようになるまでには、かなり時間がかかるし、いろいろなパターンの事案を一緒に解決して初めて連携が獲得できる。

これが連携だ、と言える物が残っているわけじゃないが、本来の連携とはこういう状況を言うのではないか。

さて、それはさておき使えない薬ってなんぞや、ということになる。

実は、本来施設で使えない薬なんて殆どない。

取り寄せれば手に入るので、環境だけ見ると使えるが、他の事情で使えないというわけだ。

複雑な部分になるので簡略化するのは難しいが、誤解を恐れずに書くなら、値段の高い薬を使うと元が取れないから、使えないのだ。

これってとても変だ。

だって、薬代は利用者が払うのに何いってんの? てことだ。

ところが、介護医療院と老健、介護保険扱いの病棟(療養病床)ではこれが通らない。

施設の利用料金は、介護保険サービスを受けたときの自己負担分(1~3割) + 実費(食費とか保険対象外)の日割りで構成されている。

この内、介護・看護・医療・リハビリテーション・相談業務や医療事務など、色々全部これで賄うよ、という一番基本的な費用が、「施設サービス費」という形で設定されている。

これといろんな加算が合わさって1日の料金が計算されるわけだが、食費と部屋代を入れても、料金のウチ最大の割合を施設サービス費が占めている。

要介護度1~5で値段が違い、800円くらい/1日~1200くらい/1日と別れている。

2割負担の人は2倍もらう。

で、この施設サービス費の中で、薬代も全部賄いなさい、ということになっている。

しかも、施設の10割負担である。

1日1200円もらったとしても、1日1500円薬を飲まれたらプラスは全く無いわけだ。

先述の通り1200円は薬代だけじゃなく、職員の人件費、その他も含まれている。

で、1200円はあくまで1割、もう9割保険から降りて都合12000円1日にもらえて、差はあれど100床あれば100人分もらえるわけで、そのことを考えれば薬代まかなえるじゃん、となるかも知れないが、そうでもない。

なぜかといえば、薬代はかなり高い。

一月に5000円分薬を飲んでる人、珍しくないのはなんとなく感じてもらえるだろうか?

5000円は1割負担の数字なので、この人が何の工夫もなく入所すると、施設は一月に一人の薬代として5万円を負担しなきゃならない。

コレが珍しくないわけで、俺が今まで計算してきた中で一番高かったのは、一月で一人に15万円を超す負担を施設がしなきゃいけない、ってものだった。

ただ飲んでる薬を計算したらこの数字になったわけだ。

10年位の間に10万円を超す方が10名は居たはずだ。

3~4万円は普通だ。

コレをコントロールせずにベッドを埋めるだけ埋めてしまうと、ヤバい、ってことは感じてもらいたい。

だけど法律ではこの辺をドラスティックにコントロールすることを良しとしていない。

本来薬は医療保険で賄うべきだと個人的には考える。

もしくは施設の負担も1割とは言わないが2割位にしてくれたら、使える薬の種類は無限に増える。

そういう薬を使わない人が、老健や医療院の対象者だと言うのであれば、薬の簡素化を推奨するような環境を整備してもらいたい。

運営できなくなって困るのは介護保険の実施主体、つまり国であろうに、現実と乖離した大きな矛盾である。

と、まあウチの施設に入所できるかどうかの検討の上では、薬の調査・調整・薬についての先方との裏取引はとても重要なのである。

薬についてはもっと色々あるが切りがないので最後にする。

これらはすべて、入所してもらいたい、という基本姿勢に則っての行動だとわかってほしい。

2 病気

薬がクリアできたら次は病気だ。

病気については2つのカテゴリに気をつけねばならない。

指定に関する状態・本人、家族にとっての病気

この2点だ。

まずは、本人、家族にとっての病気、について。

「〇〇病だから入所できない」という単純なことはありえない。

どんな場合も表面的には捉えられないので、簡単に話しづらいが、できるだけ簡素に書いてみる。

・退院許可が出てなかったら対応できない。

・外傷(褥瘡も)が有って治ってなかったら対応できない。

・骨折外傷が治りきってなくて、これに伴うADL低下を諦められないなら対応できない。→リハビリテーション病棟などを進めるのが医療機関の真正面な対応。でも説明(説得)して諦めてもらって施設へが多い。

・癌、難病、慢性肺炎や膀胱炎などなど、これを治したい人は対応できない。

・絶食点滴状態から食べられるかは運次第なのが納得できない人は対応できない。

・インシュリンの管理がシビアすぎる、インシュリンの量が多すぎる方は対応できない。

・家族が本人に死んでほしくない人は対応できない。→絶対いつか死んでしまうし、事実死にそうなんだから期待に答えられない。

・気切、腸瘻、経鼻栄養で特に交換時リスクの高い人、その他こういう類の人は対応できない。

というわけで、これ以外にも色々対応できない場合はでてくるが、上記したものでも最後以外は、相談次第で状況が反転するわけだ。

結局、今ある病気と付き合う気のある人は施設でもなんとかなる。

治したいなら病院以外選択肢はない。

だから何の病気を持ってて、それにどんなことをする必要があって、それがウチで対応できるかどうか、なんてのも重要だが、どっちかといえば、今の状況を本人や家族がどう捉えているかで、入所の可否が大きく揺れる。

ではもう一方、指定に関する状態について。

介護医療院を名乗るためには、何個か条件がある。

その一つが入所者の何割かが胃ろうの人とか、これもものすごく簡単に書いたが、ノルマがある。

ノルマ達成できてなかったら、3割位収入が減る。

というわけで、このノルマを達成するための数字になる人を集めいたい。

別に胃ろうの人を集めるだけがノルマ達成の条件じゃないが、一番わかり易いのはそれだ。

実際うちの施設は胃ろうの人をカウントしてノルマ達成するように意識している。

この辺のノウハウを簡単に書くことは極めて難しい。

施設と医療機関や在宅の内情が絡んでくる。

施設申し込みしている人は聞いたことあるかも知れないが、胃ろうのベッドの枠が空いたから、先に胃ろうの人に入所してもらうとか、裏にはノルマに関わる数字が絡んでることもある。

ただ、総数に対して何人、条件を満たす人がいればよいか、何人を下回ったらアウトか、これは常に頭にある。

何割、じゃなく、何人。

自分の施設が目指す具体的な数字を出しておいて、そこを死守する。

3 お金

ここまで本人の体について、入所できるかできないか考えてきた。

クリアしたら、次はお金が払えるかどうかだ。

申し込み時点で得ている情報から、払えない可能性を探り当てる。

簡単な例としては、一人暮らし、年金1月4万以下、という奴だ。

4万というのは普通に料金の減額サービスを利用した上で最低の金額だから、これ以下の収入であれば払えなくなる可能性が高い。

また、この周辺でもリスクは大きい。

こういう時に思いつくのは、境界層などの特殊な減額方法だ。

まず減額についてだが、1日の食費が安くなるサービスだ。

普通1700円/1日でもらうとする。

で、本人の世帯が市町村民税非課税で、配偶者がいれば二人で2千万円、居なければ一人で1千万円持ってない、これが減額がかかる条件だ。

一年間に年金など含めて80万円以上の収入があれば650円/1日。

なければ390円/1日に安くなる。

あとは部屋代も関係するが、ややこしいのでここでは省く。

1700円→650円でも一月にすれば3万円違うので、この制度で払えるようになる人は多い。

ちなみに、1300円くらいまでは介護保険から給付補填してくれる。

でも、わかると思うけど減額がかかると施設は1日に400円損してる。

まあそれは置いといて、普通にこの制度を使うと650円の食費になり、それじゃあ払えない、生活保護をやらないといけないて人もいる。

そうなると390円まで落とせることがある。

この辺を入所判定前に市役所へ家人と同行するとかして、相談してしまう。

大体入所判定可が出てからになることが多いが、理想としては判定前に制度がどんな形で使えるか確定したい。

こういう相談をしていると、例えば家人が居て収入有って市町村民税が課税世帯だけど、色んな事情で(病気とか)減額かからないと無理、って場合、払えたらウチに入れるよって餌をちらつかせて、本来できない世帯分離を自治体同意のもとで行い、減額できるようにできたりする。(これは真っ当な制度。事情が適当ならOKなやつ)

上記の例の場合は家人が収入少なく、生活力も乏しい事が多いので、ついでに家人についての相談なんかも進んでいく。

さて、これだけ整備してもまだ払えないくらい収入も貯蓄もない人がいる。

そのときには生活保護も持ち出す。

保護の相談をしに行くときには、これは保護になるというのはほぼ確信している。

もちろんこの時家人や、キーマン、後見人のときもあるが一緒に乗り込む。

保護になるかどうかは市町村が良いというかどうか、それだけと思っていい。

制度を知ってるかなんて相談踏み出す場面では屁の突っ張りにもならないが、ハッタリをかまして保護OKを引っ張り出すためには必要なときがあるから勉強しよう。

だけど、ちょっと気をつけたいパターンが一つある。

入院中に生活保護を受けていて、直接施設へ入所される方の場合、施設に入所したら生活保護が対象外になってしまった、なんてことがおこる。

厳密には全然違う数字だが、入院では一月5万円の年金があっても生活保護になるとする。

施設では3~2万円くらいでないと生活保護にならない。

そうすると4万円位の人は入院中生活保護だったのに、施設入所したら外れちゃった、ってことになる。

この場合は通常の減額制度を利用することになるが、年金4万円ての、そのままだと支払いに足りない場合が十分考えられるエリアなのだ。

なので、医療機関入院中や在宅と施設入所の人では、生活保護になるラインが違う、しかも施設のほうがより少ない資産でないと生活保護にならないこと、は知っておかなかければとりっぱぐれを生む材料になる。

でも、基本的には制度の利用を相談するところまで持っていけたら、支払いできない人は居ない、と言っていい。

一応、すべてのパターンを補完するように制度はできている。

一応。

4 協力体制

で、お金を払える状態にするのも重要だが、確保した財源を管理することも念頭に置かないといけない。

というわけで、財源を管理する人がいない時には、成年後見制度を持ち出すしか無い。

成年後見制度と聴くと何かと、本人の権利をまもるとか、レベルに応じて後見、補助、補佐とか言い出すが、そういう事は知っていなくてもほとんど関係ない。

こんなことに施設の相談員が動いていく理由は、入所した後に料金のとりっぱぐれを無くすため以外にはない。

必要なのは、言い出す勇気だ。

その勇気を出す材料は、入所希望してくれるこの人に、入所してもらうには、確実に支払いが続けられる環境を整える必要がある、という大義名分だ。

家人との関係がもつれにもつれてる場合、本来お金を管理してくれる人がむちゃしてる時もあるので、こういうところもチェックして、だめな感じなら別の家人に頼ってみたりする。

様々な契約の解除がしやすかったりとメリット大きい時、家人が後見人になった場合も多い。

で、家人が居なかったり、居ても全員むちゃだったりした場合、法定後見人を考えるし、後見制度を申請できない場合は、市町村長申し立てを相談することも念頭に置く。

実際相談の場で提案をしたこともある。

その時は他が尻込みして具体的にならなかったけど、どうやら数カ月後に結局その方向で動いたらしい。

諦めて手間を背負うのが肝心なのさ。

5 本人の性格

この点について考える頃には、大体入所可能と決まっている。

性格について現場へ多くのことを情報提供する必要はない。

どうせ、付き合ってみないと人間なんてわからない。

実際には男性に恐怖心があるとか、〇〇の仕事してたからそっちに興味がありそうとか、なんかそのへんのことはそこそこに入れていく。

だが、最終的に伝えたいことはたった2つ。

可愛いか、ウザいか。

それだけだ。

まとめ

というわけで、検討するための材料をカテゴリ分けして説明した。

1 薬 2 病気 3 お金 4 協力体制 5 本人の性格

それぞれを検討する為に、そこそこの仕事量があるのはわかってもらえただろうか。

検討は、入所してもらうにはどうしたら良いか、という姿勢でやっていく。

だって、入所してくれないと料金はもらえない

次回は、判定会議というやつについてである。

はっきり言おう。

判定出すのに会議など必要ない。

会議する前に検討はもう終わってんだから。

今日説明したことを会議してればできるんなら別だが、そうではないのはわかってもらえるだろう。

でも、判定会議はある。

仕方がない。

次回はこれについて話す。


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