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Apple Storeにて「まちでん!」をリリースしました!

先日、システムエンジニアの方々と共同開発させていただいた無料アプリ「まちでん!」をApple Storeにてリリースさせていただきました!✨

https://apps.apple.com/jp/app/%E3%81%BE%E3%81%A1%E3%81%A7%E3%82%93/id1576542992

まちでん!

アプリ開発に伴う技術や知識が全くない私一人では絶対に叶うことができなかった夢。素敵なご縁に心から感謝です。この「まちでん!」を一言で表すと「撮影した風景や被写体がランダムで加工されるアプリ」になります。

まちでん!撮影画像①

まちでん!撮影画像②

↑「まちでん!」を使うことで、ランダムに不思議なエフェクトがかかった写真を撮影することができます。

通常のカメラは被写体をより鮮明に写すことが求められるかと思いますが、なぜ敢えてその逆のアプリを創ろうと思ったのか。そのきっかけや思い、今後の展望について、今回のブログにまとめようと思います。

きっかけは、コミュニティー・スぺ―スでのまち歩き~手ブレした写真を使って膨らんだ子どもたちの表現~

まず、「まちでん!」を創ろうと思ったきっかけについて。私は昨年度まで3年間学童保育とコミュニティー・スペースで働いており、そこへ来てくださった地域の方と学童保育の子どもたちとのコラボプロジェクトを行なってきました(詳しくは、以前まとめたnoteをご覧いただけたら嬉しいです)。その中で、長年ツアーガイドをされていた地域の方と一緒に、小学生たちが市内に伝わる民話に触れながら想像の世界を膨らませるまち歩きを企画し開催したことがあります。

坂戸の昔話

↑こちらは、私が図書館で地域の民話を調べてまとめた資料です。これを子どもたちに渡しました。

地図

↑また、一緒に企画をした地域の方も、このような素敵な素敵中手作り地図を作ってくださいました。

当初、私は
①地域の方が民話を紹介し、
②子どもたちがカメラを持って街に繰り出し、
③例えば「あの山はダイダラボッチだ!」「この葉っぱは天狗のうちわかも知れない!」「この川には河童がいるんじゃないかな?」など、街にあるものを”伝説の生き物”(あるいは、それが所有している痕跡)に見立て、
④その写真をコミュニティー・スペースに飾る

という一連の流れを想定していました。しかし、いざまち歩きを行ってみると、想定外のハプニングが発生!なんと、子どもたちが撮った写真が全て手ブレしていたのです…!

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「あ~…マズイ!子どもたちが落ち込むだろうし、手ブレした写真を飾るわけにはいかない…」―。当初の計画が崩れ、私はうなだれました。しかしその時、一緒に働いていた学童保育の職員さんが「逆に手ブレしているから面白いですね!」という素敵な意見をくださったのです。

この言葉がきっかけで、新たに「手ブレした写真を図にして、子どもたちが”伝説の生き物”を表現する」という活動を閃いたのでした。

後日、この手ブレした写真を使ってオリジナルの〝伝説の生き物〟を表現するワークショップを開催。子どもたちは手ブレした写真を前にして目を輝かせながら想像を膨らませ、生き生きと表現していきました。

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私が作った地域に伝わる民話のカード(敢えて文字情報だけにしました)を見て「山伏ってどんな格好?」と興味を膨らませてiPadで調べた当時小学1年生の女の子。まるで木から木へ飛び移っているかのような、躍動感のある天狗を表現することができました✨

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他にも「きつねの嫁入り」を表現した子や、

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手ブレした写真に写っていた木から着想を得てオリジナルの”伝説の生き物”を表した子、

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写真を図ではなく素材にし、コラージュ的に「光る石」という民話を表した子など、それぞれのアイディアがキラリと光りました。中には自分たちで民話のストーリーを創り、文字に書いたりマンガで表したりする子どもたちも。「失敗」「価値がないもの」と思っていた手ブレ写真に新たな生命を吹き込んだ子どもたちの力に感動しました。

この体験を通して、私は大きく2つの気付きを得ることができました。

【気付き①】偶発的に起こった『手ブレ』という事象をきっかけに、思いもよらない表現が生まれることがある
【気付き②】地域の民話(既存の知識や情報)をベースにしつつ、それをきっかけとして子どもたちが新たな民話や”伝説の生き物”を創ることができた=既存の知識や情報と、新しいものの想像・創造プロセスは矛盾するものではない

ちなみに”伝説の生き物”という表現を用いたことには理由があります。例えば、単に「生き物を表現しよう」としてしまうと、現実に存在する生物のイメージに引っ張られ「写実的であるかどうか」という評価軸が暗黙のうちに生まれてしまうことでしょう。また「妖怪を表現しよう」としてしまうと、これまた暗黙のうちに「おどろおどろしさを表現しなければいけない」という評価軸が生まれてしまうと感じました。

そうではなく”伝説の生き物”とすることで、表現する人・見る人双方が評価軸や先入観なく想像・創造することができるのではないかと思っています。また、未知であるがゆえに「正解」がない=どの表現も「正解」という状況を生み出すことにより、それぞれの違いを認め合うことができると考えました。より的確な表現があれば良いのですが、こうした理由から、とりあえずは”伝説の生き物”と呼ぶことにしています。

長くなってしまいましたが、このワークショップでの体験が「まちでん!」を創るきっかけとなっています。

「まちでん!」を創った思い~「まちでん!」で、何がしたいのか?~

「まちでん!」は無料のアプリであるためできることの幅は限られていますが、その中にはたくさんの思いを込めました。

◎思い①…「未熟な存在」から、「研究者・探究者・創造者」としての子ども観の転換を生み出したい!

これまで主に小学生や幼児期の子どもたちと関わってきましたが、その中で日々子どもたちに対するリスペクトの念を抱いています。挙げるとキリがないのですが、その中の1つが「異質なもの同士を組み合わせて新しいものを生み出すことに躊躇いがない」という点。先ほどのワークショップの例で言えば、子どもたちは精度を重視するような価値観においては「失敗」であり「価値のないもの」と見做される「手ブレ写真」を使い、まるで錬金術師のように「地域の民話(実際に体験したものではないという意味で想像の世界)」や「その場にある素材(現実にあるもの)」、「自分の中にある知識や経験」を混ぜ合わせて”伝説の生き物”を生み出しました。様々な異質なものを混ぜ合わせて、躊躇なく新たなものを創造することができる―こんな子どもたちの力ってもっと認められるべきだし、決して「未熟な存在」ではないと声を大にして言いたいです。「まちでん!」で偶発的に現れる不思議な風景写真によって、そんな子どもたちの研究者・探究者・創造者としてのマインドが発揮されるきっかけを創れたらと思います。

まちでん!撮影画像③

↑切り株を撮影したら、こんな写真に…!いったい、どんな”伝説の生き物”の仕業だと思いますか??

◎思い②…地域の中に「隙間」「余地」「境界」を生み出すきっかけを作りたい!

”伝説の生き物”を大切にしていることから、最近「幻獣」や「妖怪」についての文献を読んでいます。その中で、荒俣宏さんのインタビュー記事の中に素敵な言葉がありました。

いまの子どもたちは、妖怪が実際にいようがいまいが、一緒に遊ぶことができている。かなり高等な精神ですよ。それは「粋」と言ってもいい。江戸時代なんて最たるもので、町内ごとに妖怪を勝手につくって楽しんでいました。おしゃれなんです。何か分からない物体を「これは竜の骨だ」と思える世の中のほうが、「クジラの骨ですね」と鑑定されるより、よっぽど面白い。通人というのは「クジラの骨と分かってらい!でも竜の骨と思ったほうがいいじゃないか」と考える。こういう幸せが21世紀には必要だと思いますね。ほぼ同じ時代に西洋では各分野の学者がワイワイ集まって、「にぎやかな科学」を楽しみましたが、江戸は「かっこいい科学」ですね。(『武蔵野樹林 vol.5 2020秋』2020年、角川文化振興財団、「『荒俣宏の妖怪伏魔殿2020』開催記念インタビュー『一緒に妖怪をつかまえよう!』」より引用)

私自身、まさに荒俣さんが述べている「粋」「通人」の感覚の大切さに深く共感しています。そして、アプリ作成を進めている段階でこの雑誌と出会い「江戸時代の人々が町内ごとに妖怪を勝手につくって楽しんでいた」ということを知ったことで、改めて「都市伝説」よりもローカルレベルな「まち伝説」が生まれるきっかけを創りたいという思いが強まりました(だから「まちでん!」という名前なのです)。

日々の関わりやワークショップ等の経験から、確かに子どもたちは「妖怪」ないし”伝説の生き物”と”遊ぶ”ことができる力を持っていると私も感じています。けれど一方で、子どもたちの育ちの場に「プログラム」「メソッド」「エビデンス・ベースド」「PDCAサイクル」などの概念が流入してきたことにより、そのような”遊び”が生まれ許容される「隙間」「余地」「境界」が減ってきてしまっているように思います。勝手な憶測で申し訳ないのですが、子どもたち(ないし、人々)を取り巻く環境から時間的・精神的な「隙間」「余地」「境界」が失われたことと、街中に妖怪が現れるための物理的・心理的な「隙間」「余地」「境界」が失われたこととの間には、何等かの深い関係があるのではないでしょうか。

だからこそ、日常生活の中に「隙間」「余地」「境界」を生み出したいと思い「まちでん!」を創りました。何気なく通り過ぎている街並みの中に、「あれ!?」「なんか違う!」という驚きや、「きっと、これは〇〇の仕業に違いない!」という想像・創造が入り込む「隙間」「余地」「境界」を創ることができたら、きっと社会・世界はもっと楽しく幸せになる―そんな思いを抱いています。

まちでん!撮影風景④

↑夕焼けの時に撮影した街の風景。綺麗な夕焼けがものの見事に台無しに!これはきっと、伝説の生き物「夕焼け泥棒」の仕業に違いない!…町内ごとに勝手に妖怪を創って楽しんでいた江戸時代のように、こんな「まちでん!」が当たり前のように溢れる街って、きっと幸せなはず。

◎思い③…日常的に共創造の〝動き〟が生まれるようなコミュニティー、社会、世界を創りたい!

「まちでん!」を創った3つ目の思い(ここが1番重要です)は、「隙間」「余地」「境界」を創ることにより、「研究者・探究者・創造者」としての子どもと、同じく「研究者・探究者・創造者」である大人・地域の人々とが出会い、日常的に共創造の〝動き〟が生まれるようなコミュニティー、社会、世界を創りたいというものです。

手ブレした街の風景写真を前に「ここにどんな”伝説の生き物”が潜んでいると思いますか?」という問いが与えられることで、「子どもー大人」、「教える-教わる」、「知っている-知らない」、「成熟した人-未熟な人」などの分断は、きっと全て解消されることでしょう。なぜなら、いわゆる「正解」などなく、誰一人としてそれを持っていないからです。だからこそ、それぞれが持つ”違い”は、新たなものの想像・創造の原動力となるのではないかと考えます。

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↑未知のものを真ん中に据えることで、それぞれの違いは原動力になる

「まちでん!」は、アプリ内で完結する遊びではありません。面白い写真が撮れて終わり…ではなく、むしろ、そこからスタートなのです。

例えば多様な人々が集う場で「まちでん!」を使って撮れた不思議な写真を提示することにより、長年その街に住んでいる方から「この辺りには、昔イノシシが棲んでいたから、もしかして…」「こんな言い伝えを聴いたことがある」などの情報が語られたり、絵が得意な方が様々な人の想像を聴いて”伝説の生き物”の想像図を描いたり、文章を書くのが得意な方がオリジナルの”伝説の生き物”の説明文を創ったり…といった”動き”が生まれるかも知れません。もちろん、子どもたちの集団の中でも、こうした”動き”が生まれていく可能性は十分にあります。先ほど「想像・創造が入り込む『隙間』『余地』『境界』を創ることができたら、きっと社会・世界はもっと楽しく幸せになる」という仮説を書きました。私が想定している「楽しさ」や「幸せ」とは、こうした共創造的な”わいがや”が日常的に生まれていくことです。

かなり壮大なスケールのビジョンにはなりますが、まとめると、普段とは違う風景を映し出す「まちでん!」を通して日常生活の中に「隙間」「余地」「境界」を生み出し、”伝説の生き物”=未知のものを想像・創造するプロセスの中で様々な”違い”が自然と引き出され、それらを原動力とする豊かな共創造的文化を生み出したいということになります。

今後の展望~「まちでん!」の、これから~

「まちでん!」のリリースは、このような思いを実現させるための第一歩。これから先、どのような実践をしていくかが重要になってくるかと思います。まだ漠然としていますが、今後の展望について書いていきたいと思います。

☆展望①…各地でのワークショップの展開

今回作成した「まちでん!」や、今後ブラッシュアップしていきたい「ひらめキマイラ」(化石カードをランダムに引き、それらを組み合わせて想像上の生き物を表現するカード。「ご当地化石カード」を創り、「ご当地キマイラ」を表現できるようにしたい)を使い、実際に街に繰り出して不思議な風景写真を撮影したり、その街ならではのもの(「ご当地化石」)を見つけたりして、それらを使ってその街ならではの”伝説の生き物”を表現するワークショップを各地で行なえたらと思っています。「まちのモンスター」だから「まちモン」といったところでしょうか。今の状況だと対面イベントは難しいかも知れませんが、いずれは日本全国でワークショップを開催し、各地に様々な「まちモン」が誕生していったら面白いなぁ…!

ひらめキマイラ

↑こちらが「ひらめキマイラ」です。まだ試作段階ですが、「頭の化石」、「歯・口の化石」、「胴体の化石」、「手足の化石」、「その他の化石」の5つの山札からそれぞれランダムに1枚ずつ引き、それらを組み合わせて”伝説の生き物”を表現します。

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↑例えば、映画製作会社がある街ならフィルム缶のような「ご当地化石カード」を加えることで、遊び手が自然とその街の特色を知り、かつそれらを生かしながら新たなものを想像・創造できる可能性があると考えています。「ご当地化石カード」は事前にこちらがカード化するか、それとも遊び手がまち歩きの中で拾うor撮影してカード化するかは未定です。

☆展望②…地図アプリや図鑑アプリと連動した「全国図鑑」を創りたい!

江戸時代には町内ごとに妖怪を想像・創造して楽しんでいたということを知り「そんな社会や世界になったら面白いだろうなぁ」と思いつつ、現代だからこそ、もっとダイナミックな”動き”を生み出すことができそうだと感じています。

江戸と現代の大きな違いは、様々なテクノロジーが発展しているということです。江戸時代では、おそらく遠く離れた地域で生まれたローカル妖怪の情報は、お互いに知ることはできなかったでしょう。けれど現代では、例えば地図アプリと連動することで「この場所で、この人たちが、こんな”伝説の生き物”を想像・創造した」ということを世界中の誰もがアクセスすることができます。また、図鑑のようなデータベースがあれば、同じプラットフォームを共有して、それぞれの地域で生まれたものを閲覧することができるでしょう。

このようなことが実現できたら、地域間の共通性や違いについて知ることができ、かつ新たな表現が生まれるきっかけにもなると思います。このあたりは無料アプリの範囲では難しいため要検討であり、私自身にこのような開発技術がないため、協力してくださる方を募集中です。

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図鑑表紙

↑以前、自然溢れる公園を舞台に行なったワークショップで子どもたちと創った図鑑。「昔、この公園には”伝説の生き物”が棲んでいた。この公園にある石や木、葉っぱなどは全て、その生き物たちの化石。好きな化石を複数個拾ってそれらを組み合わせ、”伝説の生き物”を復元しよう!」という内容でしたが、子どもたちは素敵な表現をたくさん生み出していました。この時は出来上がった作品をスマホ専用プリンターでその場で印刷して貼り付け、スケッチブックで創った図鑑にまとめたのですが、各地で生まれた”伝説の生き物”が集まるデータベースが創れたなぁと思っています。

おわりに

長くなってしまいましたが、「まちでん!」を創ったきっかけ、そこに込めた思い、そして今後の展望についてまとめました。アイディアだけはバンバン閃くけれど、それを具体的に実現していく技術(特にシステム関係)が伴わない私ですので、今回の記事をご覧いただいて一緒に活動を考えてみたいと思う方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にご連絡いただけたら嬉しいです。無償のサークル活動的な感じになってしまいますが…。

都内近隣にお住まいで、妖怪や幻獣に興味がある方、未知のものを想像・創造するきっかけを生み出すツール創りに興味がある方、アプリやプログラミングなどの知識や技術をお持ちの方、大歓迎です!ちなみに、近いうちに具体的な形として実現するため、プロジェクトとして応募してみたいと思っています。

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↑ご連絡は、こちらのLINEまでお願いします(*^^*)


最後までご覧いただきありがとうございました😊✨

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