怖い夢のはなし

怖い夢を見た。
怖いとか通り越して気が狂いそうだった。
発狂してショック死する前に目が覚めてよかった。
初めて夢の中で「夢なら醒めてくれ」と思った。
てか、これは夢だって分かっていて、それなのに中々醒めてくれない事でどんどん焦燥して行くのが怖かった…。
本当に目が覚めてよかった。

そんなかんじで、やっぱり夢だった今では心中とても穏やかな訳ですが、興味深いのでうろ覚えの概要をメモってみます。
あたしは12歳くらいの女の子で、学校にいました。
先生とみんなは大きな部屋に集まっています。
机と椅子をでたらめに積み上げて、その上に登ったりしています。
その中に右耳に機械のようなものがついた人がいて、あたしはその人がクラスメイトだったような気がしたけれど、やっぱり知らない人でした。機械のようなものには、十何号みたいに番号がついていました。
とにかく、あたしはなんだかよくわからなくなってしまったので、誰にも気づかれないでそこを出ました。
別の部屋で時間が過ぎるのを待ってるうちに、あたしはまどろんでしまったのです。

目が覚めると、あたしは同じ場所に横たわっていました。
その部屋は廊下のようでもあり、理科準備室のようでもありました。
だけど、本当はそこは同じ場所じゃないかもしれないのです。
だってあたしの右耳を触った時、それはあたしの耳じゃなかったからです。
あたしの耳の代わりに、そこには機械のようなものがついていて、なぜかはわかりませんが、すぐにあたしは自分が十何号なのかがわかりました。
辺りにはもう誰もいなくて、あたしは人間ではなくなっていました。

あたしは意識を失って、次に目が覚めるとそこは研究所のようでした。
人がいて、あたしと同じようなものもいっぱいあって、人はせっせと何かを研究しているようでした。
ものはいっぱいありましたが、感情を持っているのはあたしだけのようでした。
それなので人のかたちをしてはいましたが、人がものに話しかける事はありませんでした。
あたしに感情があるということに気づいた人はいないようでした。

意識を失って、目を覚ましての繰り返しで、あたしはだんだん自分が何者なのか分からなくなってきました。
どんな顔の友達と、どんな風に過ごして来たのか、すべてがおぼろげでした。

あるとき、もうこの個体はだめですね。そうですね廃棄しましょう。というような会話を交わして、人がものを捨てました。
ものの頭についた棒を折ると、あっけなくものの命は終わりました。
いつかはあたしの番が来る、そう思うと、生きているのかどうかも分からないあたしではありましたが、死にたくないと、怖くなりました。

あるとき、気づくと人はいませんでした。
ここから逃げ出さなくては、意識のあるうちに。
あたしは走り出しました。
どうしてか動かないと思い込んでいたあたしの体は、いとも簡単に起き上がり、走っているので、今まで何故ただ寝転がっていたのか不思議なくらいでした。
入り組んだ広い部屋を出ようとした時、あたしの名前が呼ばれました。
番号ではなく、名前が呼ばれました。
その声の主は、あたしが感情を持っていることを知っていたといい、追いかけてきました。
それは白衣を着た男の人で、その人がまた、あたしはその人のおもちゃとしてあの薄暗い研究所でずっと生き続けると言うものだから、あたしはますます怖くなって出口を探しました。
外に出たところで友達も親の顔も思い出せないのですから、どこへ行ったらいいかわからないでしょうに、あたしはそんなこともかまわず走り続けました。
迷路のような建物の中で、鬼ごっこは続いて、それまで冷静だった本当のあたしの意識が入り混じってきました。
これは夢なんだから、今はクライマックスで、そろそろ目が覚めるところだと見下ろすあたしと、お願いだから夢なら醒めてと走り回るあたし。
ところがいくら思っても、鬼ごっこは終わらず、相変わらず気の狂ったような人が追いかけてきます。
あたしはなんだかもうどうして逃げているのかもわからないで、ただ恐怖だけがあたしを追いつめて狼狽させるのでした。
もう動けないあたしは、ずっとうわごとのように言っていましたが、夢なら醒めてと最後に強く思うと、目の前に白い人が迫ったところで意識を失いました。

どこからが境界線かわからないまま、本当のあたしの目は覚めた。
体はまるで泥のようで言う事を聞かなかったけど、しばらくすると、今日はフリーズでライブなんだから遅刻できないと、まるで平和な事を思ってた。


こういった感じで。

夢って変にシンクロするから、すごいと思う。
夢の中で誰かを好きになったり、死にそうになって怖くなったりって、起きてからしばらくは本当に自分の感情みたいに支配しますよね。

何はともあれ、あー怖かった!!
読んでくれた方いたらお疲れさまです。


(この記事は2005年に書いたものの再録+改修です。夢の内容もアレながら、だ・であるで夢との境を区切る手法、淡々とした表現で際立つ異様さは今の自分には書けそうもなく興味深かったのでアーカイブしました。)

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