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可能性 しかない、ローカル・ガストロノミー

農家の多い地方で、どうやって野菜を販売していくか。

現在organic farm88は人口の多い都市部へ野菜を出荷しているのですが、農繁期は毎日せっせと野菜をパッキングしては発送。パッキングしては発送・・・・  たくさん出荷すれば、もちろん売上は上がるのですが、自分は何がやりたいのでろうか?とむなしい気持ちが日に日に増してきました。

その中で、自分とフィーリングの合う取引先を探してきましたが、気がつけば年数だけが過ぎてしまい、一向にむなしさは解消されずにいます。

そこで、もう、きっぱりと諦めることにしました。取引先探しを。    ないのなら、作ってしまえ、という方向に発想を転換しました。

そんな時に気になっていたのが「A級グルメ」です。    
何か高級な食材とかを使った、肩肘張った料理のような印象を受けますが、その中身はとても共感出来るものでした。

A級グルメは単に高級な食材を使った料理ではなく、その土地で昔から引き継がれてきた伝統食を指し、「永久に守りたい味」ということです。
高級食材のように特別値段の高いものではなく、昔からその地域で、人々の手で作られ続けてきたスローフードのこと。
昔ながらの製法で作られている漬け物や、地元のソバを使ったおそば屋さんなどが、登録されています。

それを提唱しているのは雑誌「自遊人」の岩佐さん。数年前にリアルメディア(旅館)の「里山十帖」の運営も始めました。

体感・発見・感動をテーマにした「リアルメディア」プロジェクト名の由来は「さとやまから始まる10の物語」。
ライフスタイル提案型の複合施設「里山十帖」(敷地面積7,955㎡、延べ床面積1,880㎡)を拠点に展開するプログラムの総称。南魚沼市の廃業寸前の旅館を引き取り、大幅にリリューアル。すぐに黒字となり、旅館業を越えて、新潟の食・宿・文化を盛り上げている。近年では、箱根本箱(グッドデザイン賞)ソニーの社員食堂、浅間温泉の老舗旅館などの運営をするなど、新潟県を越えた活動を展開している。

「ローカル・ガストロノミー」セミナーに参加する。

その里山十帖にて、ローカル・ガストロノミーセミナーがあるということで参加してきました。

食のガイドブックといえばミシュランが有名ですが、その格付けは閉鎖的です。そうではなく、もっとオープンなレストランの格付けとして始ったのが「The World’s 50 Best Restaurants」です。
その功績として、全く誰もがノーマークだったデンマークの「noma」に光をあてたことなど、毎年盛り上がりを見せています。
審査は、世界中の食の識者約1000人がおこなっていて、そのアジア地域審査員を束ねているチェアマンの中村さんが今回の講師でした。

さて、天然資源によって景気の絶頂期にあるオーストラリア。
それでも、景気が減速した時のために粛々と準備を進めているそうで、この「ガストロノミー」を次の国家戦略としています。
それは、農産物と海産物に恵まれたオーストラリアの食材がおいしいということで、食事が旅行者に好評化されているからです。一般的に旅行者は3食とも外食するわけで、それが旅の中でも一番の楽しみになっているそうです。(自分も、どこかに旅行すると、その土地のおいしい食事を求めていることに気が付きました。)
しかし、オーストラリア料理の知名度は低く、これを食べにわざわざ来る人はほとんどいません。だけれど食べたことのある旅行者の評価はすごく高い、と政府は気がつきます。そこでオーストラリア料理のブランディングのためフーディースと呼ばれる美食家たちを囲い込んでいるそうです。このフーディースは美味しいもののためならどんなに遠くにも行くそうで、しかも気にいってもらえれば発信してくれて、その影響力は小さくないということでした。

「The World’s 50 Best Restaurants」で入賞しているレストランは、ただ高級なだけではなく、地元の伝統的な素材や発酵食品を使ったところや、ホスタビリティに優れたところがランクインしてきているそうです。

「ローカル・ガストロノミー」とはA級グルメやスローフードを軸に、その地域の歴史・文化・工芸・芸術を絡めた、食の表現方法で、「地域の総合芸術」なんじゃないかなととらえています。

これは「DINNING OUT」というイベントが体現していますし、島根県の邑南町という人口1万人の山間の小さな町では、年間90万人が「A級グルメ」を目的に訪れています。僕の半分のルーツである山形県庄内地方には伝統野菜をイタリアンにしているアルケッチャーノが有名です。

僕たちが暮らしている伊那谷にもおいしい食材・料理がたくさんあります。しかし、南信州は八ヶ岳・安曇野・軽井沢など主要な観光地エリアに比べると知名度や旅行客の数は多くはありません。その分、観光地化されていないので、素朴な「長野」らしさを感じられる風景がたくさんあります。そこに魅かれて僕らも移住をしてきました。

伊那谷でもこの「ローカル・ガストロノミー」の動きが少しずつ始っています。そして、自分たちもカンパニーミッションとして、この動きを推進することでorganic farm88の野菜を地元で食べてもらおうと企んでいます。
そして、この谷の「恵み」を次世代へと繋げていきたい。

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