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「けいれん」を止めよう!

日本人として初めてUNHCR=国連難民高等弁務官事務所の高等弁務官を務めた緒緒方貞子さんが亡くなられましたね。書籍などから間接的にですがその生き方に強い感銘を受けた方の一人です。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191030/k10012156201000.html

自分の軸を持つことの大切さ、「決める」ということの重み、重要性を教えて頂きました。ご冥福をお祈りします。

https://www2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009050141_00000&fbclid=IwAR2K86XgeQmb_qvI-TSUgjQjN2enMq1OS-lscu38xnq0tDvElyrIQsVUKbA

本日はけいれんのお話しをもう少し続けます。
薬物治療について、文献をご紹介しながら整理しておきます。

けいれんに出会ったときの介入プロトコール

Epilepsy Curr. 2016 Jan-Feb;16(1):48-61 からプロトコールを引用しておきます。

スクリーンショット 2019-10-30 23.23.10

昨日お話ししたように、「けいれんが 5 分続いたら介入を開始しましょう」ということになっています。

介入の第一選択はベンゾジアゼピン系の薬剤です。
海外のガイドラインでは、lorazepam、diazepam の静脈注射が第一選択として並んでいることが多いです。日本では長らく diazepam(商品名:セルシン、ホリゾン)が第一選択として用いられてきました。

第一選択薬が効果がなかった場合、第二選択薬にうつるわけですが、fosphenytoin、levetiracetam(商品名:イーケプラ) が書かれています。小児の場合、fosphenytoin が使われることが多いですかね。

それでも止まらなければとにかく止める、ということになり、麻酔薬も考慮されます。具体的にはmidazoram、thiopental による drug induced coma が導入されます。

これらの薬剤は当然呼吸循環動態に影響を及ぼすため、中枢神経管理(脳灌流量)を意識した、呼吸循環管理に長けた医師と一緒に診療に当たるべきです。

以下、いくつかの点についてコメントしておきます。

第一選択薬について

lorazepam / diazepam / midazoram  が挙げられていますが、これらの薬剤による「抗けいれん作用」については大きく差がないようです。
海外の教科書、ガイドラインでは lorazepam が第一選択薬に挙げられていましたが、日本では承認がなく、結果 diazepam が用いられてきました。

これらの流れを受けて、本年 2 月に、日本でも lorazepam が発売されました。当院でも海外に合わせ、第一選択薬を lorazepam に変更していくのかどうか、検討しているところです。(ちなみに利益相反はありません)

https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2019/2019_02_20.html

ただし、これらの薬の「使用感」には多少差異があり、注意が必要です。

作用時間
lorazepam: peak effect 15 min, 効果持続時間 3 - 6 時間
diazepam : 効果持続時間 15 -20 min
midazoram: 効果持続時間 30 - 80 min

投与経路他
lorazepam: ゆっくり静注(2mg/min)
diazepam :  経直腸が可能。脂溶性で浸透圧比は30。
       他剤に触れると析出しやすい
midazoram: 筋注、口腔粘膜、鼻腔からの投与も可能。水溶性。

副作用
呼吸抑制が主。薬剤による差異はあまりない。

Barbiturate 使用上の注意

phenobarbital  は第二選択薬としてよく使われますが、容量依存性(要するに量が増えるほど)呼吸抑制、循環抑制を来します。気道確保だけでなく、血圧低下にも配慮して使用する必要があります。

また、drug induced coma を目指して、thiopental(商品名: ラボナール)を使用することがありますが、この薬剤については多くの誤解があります。

少し長くなりそうなので、明日、に繰り越します。

【参考文献】

1. Epilepsy Curr. 2016 Jan-Feb;16(1):48-61
2.Cochrane Database of Systematic Reviews 2018, Issue 1. Art. No.: CD001905.


小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン