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Virtual 症例帖 1 - ①

さまざまなまとめをしていますが、知識を一方的にお話ししていても何なので、疑似症例を使って、診療の思考プロセスを考えましょう。いや、そこは判断違うでしょう、こう考えてはダメなの?などありましたら、是非コメントを。ディスカッションしましょう。

おこさんをもつ親御さん、保育園の先生などこどもに関わる方は、医師の思考過程を知っていただくことで、受診のタイミングや受診時に確認しておくことなど考えるきっかけにして頂けるとうれしいです。

ある日のERにて、、

1 歳位の男の子が、変な咳をして呼吸が苦しそうと母親に連れられて受診。
看護師が様子を見に行くとぐったりして母親に抱かれているとのことで、
急ぎ診察の依頼があった。

クループの症例かな?と思ったあなた、本当ですか?

第一印象を評価する

まずは、診断名にとらわれず、緊急度と重症度を判断するのでしたね。

呼吸 × 循環 × 意識 の三項目をさっと評価するのでした。

呼吸:ゼーゼー音がする。よく見えないが肩で息をしているようだ
循環:顔色が悪い。チアノーゼ? 蒼白?
意識:なんとか視線は合うが、母親にしがみついている

第一印象は
 呼吸・体動なし→心停止→心停止のアルゴリズム
 呼吸あり
→ 全身状態良好 or 不良
を判断し、介入を行います。

今回は呼吸あり、ですが、第一印象で 三項目ともひっっかかりますので、
 "全身状態不良  = 心停止が切迫している" 
と判断します。

心停止が切迫している、と判断した場合は、
 ①応援および資機材の要請
 ②高濃度酸素投与
 ③パルスオキシメトリおよび呼吸心拍モニターの装着
を速やかに行うのでした。

モニターを装着し、酸素投与を開始します。

一次評価

第一印象を評価したら、ABCDE アプローチに沿って重症度とタイプを判定します。

まずは Airway(気道)の評価から

母親に抱かれながらですが、胸郭は動いているようです。しかしお腹で呼吸をしています。息を吸い込むときに低く響くような音がしています。

正常な呼吸(=無理のない呼吸)ではありませんが、何も「介入」をしなくても空気の移動ができているので、「開通維持できる(patent)」と評価します。特に介入なく次の評価に進みます。

では、Breathing (呼吸)はどうでしょうか?

「呼吸」の評価では、下記を評価します。

呼吸数は40 -50 回/分、胸骨の上が吸気時に凹み、肋骨が浮き上がります。
吸気時の低い音はどうやら「吸気性喘鳴」のようです。痰が絡んだようなゴロゴロ音は聞こえません。酸素飽和度は室内気(= 酸素を吸っていない状態)で 93% をつけていましたが、酸素投与で 98% まで上昇しています。

さて、どう判断したらいいでしょうか?

つづきは明日です。

小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン