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気道緊急を予測する

また台風が来ていますね。被害が大きくならないことを祈っています。

さて、ここ数日、「鎮静の心構え」についてお話ししています。
鎮静の三角形をお示ししながら、

1) 処置は本当に必要か?
2) 行うならば、どの程度の麻酔深度が必要なのか?
3) 要求される麻酔深度は、その患者で可能か?リスクはないか?

というところまでお話ししました。

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患者評価の中では、今回特に、気道の評価の重要性をお伝えしましたね。
今日はこれを踏まえて、気道に気をつけるべき人をどうやってピックアップするか?ということをお話しします。

言葉を整理しておきます。

麻酔科の先生から言わせると、正確性に欠けるといわれてしまうかもしれませんが、私の理解としては、以下の通りです。

Can not ventilate, Can not Intubate (CVCI):
いざ換気を使用、挿管を使用としたときにそれらができない状態

困難気道 Difficult Airway:
トレーニングを積んだ麻酔科医であっても、マスク換気か気管挿管あるいはその両方が困難な気道
(よく使われる「挿管困難」はこの一部)

Difficult Airway Management (DAM):
トレーニングを積んだ麻酔科医であっても、マスク換気か気管挿管あるいはその両方が困難な気道を体系的にマネジメントする方法(考え方)

ここでは、Difficult airway を予測する方法を考えます。トレーニングを積んだ麻酔科医でもそのような状況になる、ということは、我々「非麻酔科医」、小児科医であればなおさら、CVCI に陥る可能性が高い考えるべきです。

Difficult Airway を予測する

成人を含め、一般的に下図に示したような状況がある場合は、Difficult Airwayを考慮して、準備を進めるべきです。決して小児科医だけで鎮静剤を投与してはなりません!

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さて、上記は成人でも良くいわれていることですので、臨床研修制度が整ってきている昨今、麻酔科研修を経ずに鎮静を行おうとう ”輩” はいないと信じていますが、、、、とここまで書いて、初期臨床研修で麻酔科は必修じゃなくなっているんですねえ、、今気づきました。びっくり。
(https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/573725/)

もし万が一、麻酔科を回っておらず上記を知らずに鎮静剤を投与している「先生方」、いらっしゃいましたら是非、そして知っていても、明確に意識に挙げて評価をしていない先生方いらっしゃいましたら是非、お願いですから鎮静前に上記を必ずチェックをしてカルテの記載を、平にお願いいたします。

子どもで特に気をつけるべきこと

さて、やっと本題です。
とはいえ、これも有名な話ではあるのですが、明らかに挿管困難を予想し、構えるべき症候群が存在します。小児麻酔の研修をしたことがある方にはおなじみの疾患群ですが、下図の疾患名ぐらいは記憶の片隅に是非置いておいてください。

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通常、身体が大きくなるとともに、問題になりにくくなることも多いのですが、成長とともに挿管困難の程度、換気困難の程度が「悪くなる」パターンが存在する、ということは記憶に値します。特に、代謝性疾患のうち、組織内に物質が沈着するもの、いわゆる「たまり病」と言われる疾患群は要注意です。

疾患名が付いていない患児のなかでも、以下の特徴があるものは要注意です。

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OMENS と略して覚えていますが、これらの特徴があるなと感じたときに、Difficult Airway かも、とひっかかるアンテナを持って頂きたいと思います。



小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン