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どれくらい寝ていたらいいですか?

鎮静の三角形:麻酔深度を考える

昨日ご紹介した「鎮静の三角形」を再掲します。

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三角形の構成要素のうち、まず考えるべきは何でしょうか?
つい、「どの薬を使おう??」と考えがちで、だからこそ、質問は「●●の検査は何で鎮静していますか?」とか、「どの薬が一番安全ですか?」という質問が発生します。

もう少し勉強が進むと、「呼吸機能をチェックしてから、、、」とか、「心エコーで心機能をチェックして、、、」と考えがちです。

どの麻酔の教科書にも、「患者評価→麻酔薬」(あるいはその逆)の順で解説がなされており、それらを把握し、考えることは大切なことです。

鎮静の三角形の使い方

もちろんこの三角形の各要素はそれぞれ関連し、影響し合いますので、最終的には行き来しながら満遍なく考える必要がありますが、私は以下の流れで考えることを推奨します。

その処置・検査・治療に必要な麻酔深度(≒ 鎮静度)はどれくらいか?    → それを実現することはこの患者で可能か?何が弊害になるか?
     → それを踏まえてどの麻酔薬を選択するのか? 

必要な麻酔深度(≒ 鎮静度)はどれくらいか?

アメリカ小児科学会から出されている、鎮静に関するガイドライン(Pediatrics 2006;118;2587-2602)によると、鎮静の目的は以下のように定義されています。

(1) 患者の安全と福祉を守る
(2) 身体的な不快感と痛みを最小限にする
(3) 不安をコントロールし、精神的なトラウマを最小化すること、
   健忘効果を最大化すること
(4) 安全に処置を終えるために患者の行動と動きを抑制すること
(5) 医療的な監視をしなくても良い状態に復帰させ、共通認識された基準を
   持って、帰宅させられること

そしてこれらの目的が、最小限の薬剤で最大限の効果がえられるようにするべきであると述べられています。

これから行う処置・治療は
   どれくらいの痛みがあるのか?
   どれくらいの精密度が必要なのか?

を考え、必要な麻酔深度を決定します。

つまり、全身麻酔の知見を応用し、どれくらい痛いのか?、鎮静剤のみで良いのか、不働化(=筋弛緩)が必要なのか?を見積もることになります。

小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン