インフルエンザ② その検査、信じますか?
前回の更新から 10 日近くあいてしまいました。申し訳ありません。
体調と睡眠時間を優先しながらの更新にしていますので、年明けまではこんなペースになってしまうと思います。
前回まで診断学のお話しをさせていただきました。その記事を読んでいない方は、是非そちらを読まれてからこの記事をご覧頂ければと思います。
事前確率はとっても大事
前回までのお話しを、極々簡単にまとめると
1. 事前確率 がとっても大事
2. 事前確率を知るには、有病率・疫学情報・病歴・身体所見
3. これらに検査の感度・特異度を考慮する
ということになります。
今日は事前確率によって、その患者さんが「インフルエンザである確率」がどう変わるか?ということを考えてみたいと思います。
今回は「夜間救急外来を受診すする小児」30 万人の集団を例に考えてみましょう。
インフルエンザの迅速診断キットの感度を 62%、特異度 98% とします。
※感度と特異度については下図を参照。
それぞれ 「青四角/ピンク四角」
インフルエンザの流行が全くない場合
真夏に全くインフルエンザが流行していないときの有病率を 0.01% と仮定します。 つまり 1 万人 に 1 人 の確率でインフルエンザの患者が存在する ということです。
疾患の有無、検査の陽性・陰性の表を思い出して頂くと、ここまでの情報で一旦下記のようになります。
この集団全員にインフルエンザの検査を下とすると、感度 62%、特異度 98% を踏まえて、下表のような人数配置になるはずです。
このうち、インフルエンザの検査が陽性になった人の中で、本当にインフルエンザである確率(= 陽性的中率 )はどれくらいかというと、
陽性的中率 = 19 / 6,019 = 0.003 → 0.3%
ということになります。
逆に検査が陰性になった人の中で、本当にインフルエンザでない確率(= 陰性的中率)はどれくらいでしょうか?
陰性的中率 = 293,970 / 293,981 = 0.999 → ほぼ 100%
となります。
つまり、全く流行がない状況でインフルエンザの検査をして、「陽性」 だったとしても、本当にインフルエンザである確率は 0.3% 、検査が「陰性」であれば、ほぼ 100%インフルエンザではない、ということになります。
そうであれば、
流行が全くない状況でインフルエンザの検査をする意味ってどれくらいあるんでしょうか??
明日は 逆に流行期の場合を考えてみましょう。
小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン