見出し画像

「けいれん」について考えてみる

救急車で運ばれてくる小児の主訴の一つに「けいれん」があります。

発熱時にけいれんを来している場合、多くが熱性けいれんと呼ばれ、熱性けいれんガイドライン2015では、日本での有病率は 3.4% (報告によっては7 - 11%程度)とされています。20 - 30 人に 1 人はけいれんを経験するということになります。実際、発熱を機会に受診した際に、けいれんを心配する保護者の方が多いのも事実です。

一方で、それほど Common な症状である「けいれん」について、きちんとカルテ記載がされていない状況もよく見かけます。

けいれんを観察するポイントをまとめてみます。

Convulsion vs Seizure

そもそも「けいれん(Seizure)」とは、脳細胞の中で、 抑制系の失敗/興奮の惹起のいずれかまたは、両方が生じ、細胞外異常興奮することです。その結果、手足の運動が生じた場合、convulsion と呼びます。このような筋肉の動きを認めないものを non-cunvulsive seizure (NSE)と呼びますが、脳波を付け、異常波形を確認しないと「けいれん」そのものを同定することができません。

Seiszure
    - Convulsion
            - tonic
            - clonic
            - tonic - clonic  
   - Non-convulsive seizure

救急・集中治療領域では、NSE を発見して治療することは特に重要で、例えば頭部外傷後、人工呼吸管理中(鎮静をしているので気づきにくい)などは、必要に応じて持続脳波計を装着し、脳波のモニタリングを行います。

「けいれん」が意識障害の原因になることも多く、「治療できる意識障害」としてかならず鑑別をする必要があります

Tonic or Clonic

運動性のけいれんは、convulsion と呼ばれ、tonic、 clonic、tonic - clonic に大きく分類されます。力をぐーっといれて突っ張るのが tonic(強直性)、ぶるぶる震えるのがclonic (間代性)、その両方が観察されるのが tonic - clonic(強直間代性)です。

力が入って、ぶるぶる震えているのか? 一定の方向に加速度を持った運動をしているのか?がポイントです。

よく研修医の先生方のカルテで「間代性」と記載してあるものの多くが、力が入って突っ張っている際にぶるぶるしているものである印象です。それらは「強直性」に分類します。

「間代性」は一定の方向に加速度を持って繰り返す運動です。Youtube に動画を公開して下さっている親御さんがいらっしゃったので、引用させていただきます。ぴくぴくしている動きは「間代性けいれん」と記載します。
いわゆる「力が入ってぶるぶるしている動き」とは異なるのがわかって頂けるかと思います。

対称か非対称か?

運動性の発作がどこから始まって、どのように終わっていったかは大変重要です。また、けいれんが対称性に起こっているのか?非対称(左右差があるのか?)に注目します。

これらを記載しておくことによって、脳全体に異常波が出現している(全般発作)のか、一部分だけなのか(部分発作)?、あるいは一部から始まった異常波が脳全体に広がったのか(複雑部分発作)なのかを鑑別することができます。(もちろん確定には脳波が必須です)

家でできることは何か?

けいれんは通常は短時間で消失することが多く、居合わせた方しかどんな「けいれん」であったかを伝えることができません。一昔前までは、保護者の方には、「ラジオの実況中継」ができるように観察して、伝えて下さい、とお話ししていました。また、研修医の先生方にもそのようにカルテを記載するようお話ししていました。

ところが、、、

「ラジオを聞いたことがない」
「そもそもラジオで野球を見ない」

などジェネレーションギャップを感じる場面もしばしば、、、

ということで、最近は保護者の方には、スマホでの動画撮影をおすすめしています。

けいれんしているお子さんを目の前にカメラを構えることは、大変辛いと思いますが、医療従事者の子どもが家でけいれんを起こしたとしても、けいれんが止らなければ救急車を呼ぶしかなく、家でできることはほぼありません。強い気持ちを持って動画を撮影しておくことが、後の診断に役立ちますので、是非おすすめします。

救急車を呼ぶタイミング、その後の病院での処置についてはまた明日以降、お話ししますね。




小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン