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子どもの「好きなこと」×テクノロジーで広がる学び場! お茶の水女子大学「共創工学部」伊藤教授に聞く、女子大ならではの安心感と将来性 [KIKKAKE for Parents #1 イベントレポート]

プログラミング教育ってなに?どんどんIT化されていく世の中で、これからの子どもたちの学びと、その先の仕事はどうなるの?

そんな疑問や悩みを持つ保護者の皆さまに、女の子にプログラミングを始めるキッカケを提供するKIKKAKE実行委員会とピーティックスは、プログラミング教育について知り、考えるための2日間・全6セッションのオンラインイベント「KIKKAKE for Parents」を開催しました。

最初のセッションでは、お茶の水女子大学の伊藤貴之教授をゲストに、女子生徒にぜひおすすめしたい情報工学系の学びの魅力、また、女子大学にある工学部のユニークさ、強みなどについてお話を伺いました。

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お茶の水女子大学 伊藤研究室での研究活動の様子

伊藤先生の研究室では「情報の可視化」をテーマに研究活動が行われています。無色透明な気体の流れや顕微鏡でも見えないタンパク質の形、人間関係や人の動き、購買情報、音楽や生活記録など様々なものをビジュアルにわかりやすく表現していきます。企業のビジネスや研究とも親和性が高く、多くの企業との共同研究も行われています。

これらは全てプログラミングで実現する技術です。伊藤先生曰く、これからの時代に必要なのは「読み書きIT」。プログラミングとデータ分析は社会やビジネスに貢献するための万能なスキルで、子どものころからプログラミングに触れることはその出発点として重要ですとお話ししてくださいました。

また、伊藤先生のプログラミングの授業では「プログラミングで楽しいものづくりができる」ということを重視して伝えています。画像処理からグラフィック、ウェブ制作まで、プログラミングの力で自分が好きなものを思うように作れる楽しさを感じられるような「自由制作」を行っています。

また、伊藤先生の研究室では学生さんに積極的に国内外の学会への論文投稿や発表を促しています。半数以上の学生さんが海外の研究室で指導を受け研究活動をすることも特徴です。

海外学会での発表と聞くとハードルが高そうに感じますが、まずは所属研究室内の発表、次に交流のある他研究室との合同発表、国内学会...と何段階ものステップを踏みながら、無理なくステップアップできるような仕組みができあがっています。

加えて、研究室でのお茶会や、先生との隔週のオフィスアワーなども設定されていて、研究室のメンバーや先生と積極的に交流して研究を進められるような配慮もされています。

女の子が女子大学でIT関連分野を学ぶメリット

女の子が女子大学でIT関連分野を学ぶメリットはたくさんあります。

まずは就職状況。IT関連分野は人材ニーズも高く、また、女子大学ということで企業から自社をもっと知ってほしいと女子学生向けの情報提供などのアプローチが来ることもあるようです。

IT業界はリモートワーク普及率も高く、ワークライフバランスをとりながら働きやすい傾向にあり、ライフステージの変化を経ても働き続けやすいというメリットもあります。

学びの環境にも女子大学ならではの特長があります。

女子大学内の工学部なので、女子学生がマイノリティになることもなく、互いが興味を持っていることや研究テーマにも共感しやすい土壌があるようです。

プロジェクトなどでリーダーシップを取る機会も得られやすく、学問という点での学び以外にも様々な経験をつむチャンスがあります。

大学を人材輩出機関という観点から考えても、IT業界で活躍する女性を育てていくことは重要です。

世の中には女性向けの商品など、女性の視点が重要な製品もたくさんあり、ほとんどの産業がIT化していく中、様々な分野でITスキルを携えて活躍する女性が必要とされています。

また、AIやデータサイエンスなどの新しい技術分野において、ジェンダーのアンバランスさが今後の技術の発展に影響するリスクが指摘されています。例えば、データの学習・分析に携わる人に男性が多いと、結果として生まれるデータや分析結果が男性優位になるという点が認識されており、多様な人のために貢献できる技術を発展させるためにも女性の参画が求められています。

IT分野の多様な学びの選択肢と、学びと社会との接続

IT分野の学びに様々な特長があることは分かったけれど、そもそも興味を持てるのかな...?と思う人もいるかもしれません。しかし実はIT技術は多様な分野との掛け合わせが可能で、自分が興味があるテーマについてIT技術を活用した研究をすることができるのです。

たとえば文学。ある文学作家の作品をコンピューターで解析して作風の変化を分析するのにもプログラミング技術を活用できます。歴史についても、歴史上の出来事をデータベース化し、背景にどういう流れがあったのかを分析することもできます。

音楽や絵画などの文字で書かれていないものでも分析可能です。コンピューターで音楽や絵画の進化を分析するという研究活動も行われています。

これらの研究は、新しい作品づくりやまちづくりの文脈で役立てられると考えられています。

伊藤先生の研究室でも、「好きなもの」から出発して、バレーボールや競技カルタの練習プログラムを作成している人がいたり、新型コロナウイルスと人の活動の関連の研究として、ウイルスが広がりやすい空間での人の行動を分析している人もいるとのことです。

このように、自分の好きなものや社会の問題など、世の中の全てのものを「情報源」として捉え、それを分析することで研究活動をすることができます。

「子どもの好きなこと」とプログラミングの接点の見つけかた

小学校のプログラミング教育ではScratchなどを用いた授業が行われることが多いですが、これに興味を持てなかったりする子にはどのようなアプローチができるでしょうか?

子どもに無理なく楽しくプログラミングに触れてもらうには、「IT・プログラミングをどう好きになってもらうか」という発想ではなく、「好きなものにどうITを絡められるか」という方向で考えてみると良いそうです。

例えば音楽が好きなら、シンプルなメロディーを鼻歌のように歌うと伴奏をつけてくれるプログラムで遊んでみる。絵画などに使えるプログラムなどもあるとのこと。

実際の学生さんの中にも、基礎演習のプログラミングの学習はあまり楽しめなかったものの、それを用いてゲームを制作するという応用演習になったら俄然プログラミングが楽しくなったという人もいるようです。

「子どもの好きなもの」をよく観察して、それをIT技術と掛け合わせられるポイントを見つけられると、楽しみながらプログラミングに触れていくことができそうですね。

[Q&A]最先端のデザイン・アートとIT技術の融合/高校の学びが芸術工学にどう活かされるか

視聴者の皆さんから事前にいただいた質問にもお答えしてもらいました。

Q)アートやデザインとIT技術の融合に興味があります。一方で、単なるエンターテイメントで終わってしまうとビジネスにつながらないのではないかとも思います。いま、世界の最先端ではアートやデザインとIT技術の融合ではどんな動きがあるか教えてください。


A)まず、実はすでにアートや工業デザインの分野でIT技術は多用されています。たとえば車や建築などのデザインはデジタルで行われていますし、Webデザインや広告のクリエイティブなどもデジタルツールで作成されています。

最先端という点でお話しすると、最近の動きとしては「ジェネラティブアート」というものが注目されています。プログラムにアート作品を作らせるというものですね。プログラムコードの変数を少しずつチューニングしてどんな作品が生まれるか試したり、その中から良いと思われるものを選んでいくような制作のプロセスを踏むことになります。

また、AIとの融合も今後の流れです。大量の制作物もAIを活用すれば短時間で作成することが可能です。このように技術を活用して、アート作品の制作効率とセンスの面で新たな発展が期待されています。


Q)歌ったり踊ったり、音楽をミックスしたり、ペンタブで絵を描いてLive2Dで動かすことが好きな中3女子の親です。本人は芸術工学部か獣医学部に興味があり、物理か生物どちらを選択するべきか悩んでいます。

高校での勉強というとどうしても受験が気になり、また将来どのように役立つのかな?というモチベーション面でも辛く感じられる時がありませんか?

高校での学びを少しでもポジティブに捉えられる機会になるのではと思い、伊藤先生には「大学で芸術工学を学ぶ場合、高校の物理と生物の学びはどのように活かされる可能性がありますか?」という質問をさせてもらいました。


A)ゲームやアニメーション制作におけるコンピューターグラフィックスで重要になるのは物理です。火や水しぶき、人の動きは全て高校の物理の公式で記述できます。ですので、こういった制作においては物理の学びが大変活きてきます。

一方、生物を学ぶことについては、特に有機的なものをデザインするときに、生物や動物の生態から着想を得ることがあります。そのような点で生物の学びが活用されることもありますね。


まとめ:伊藤先生から保護者の皆さまへのメッセージ

理工系、なかでも特にITは、自分の好きなことや、将来活躍したい分野と柔軟に結びつけられる学問です。自分の好きなこととプログラミングは両立することであり、その掛け算によって自分の将来を切り開けるということをぜひ知ってもらいたいです。

自分の好きなことを突き詰めて、それに共感して高め合える仲間がいる環境を見つけられたらさらに良いですね。そうするなかで、最終的に理系技術職として活躍することを目標にしていただけたらと思います。女の子の場合は女子大という場はそのような環境になる可能性も高いと思いますので、選択肢のひとつとして考えていただけたらと思います。

伊藤先生、ありがとうございました!


▶︎伊藤先生の研究室やお茶の水女子大学の共創工学部についてもっと知りたい方はこちら
お茶の水女子大学 理学部情報科学科 伊藤研究室
お茶の水女子大学 共創工学部 (2024年度新設)

▶︎KIKKAKE(きっかけ)~ガールズプログラミングフェス~とは
「KIKKAKE(きっかけ)~ガールズプログラミングフェス~」は、小学生へのヒアリング調査で、女の子は男の子と比較してプログラミングを学ぶ機会が少ないという課題を受け、女の子にもプログラミングを始めるキッカケを提供したい、という想いで2021年からはじまったプロジェクトです。

趣旨に賛同した全国のプログラミングスクールが、「女の子が楽しめる体験コンテンツ」を扱うプログラミングイベントをオンライン・オフラインで開催しています。

KIKKAKE 2023 ~ガールズプログラミングフェス~


▶︎KIKKAKE for Parents(きっかけ・フォー・ペアレンツ)とは
保護者の方向けに女の子へのIT教育の重要性を伝えることを目的として開催される、保護者向けセミナーシリーズです。

KIKKAKE for Parents

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