Peak2Peakのデジタル写真講座:第2回 写真にとって「画質」とは何か 前半
風景写真や山岳写真を撮影し作品として完成させていく時に必要な思考やテクニックを、毎回お伝えして行きます。今回のテーマは「画質」です。
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<解像度>
デジタルの世界で「画質」という時、まず思い浮かぶのは「解像度」です。ややこしいことに「解像度」という言葉自体が、それが表す内容によって違った意味で使われているので、話が少々ややこしくなります。
「印刷の解像度」というときは、ある物理的な範囲の中に幾つのドット=点を打って描く(ことができる)か、dpi(ドット・パー・インチ)という単位のことを「解像度」と言っています。
「モニターの解像度」というときは、パソコンなどのモニター画面が何ピクセルを表現できるか、という意味です。たとえば、最新型のMacBook Proの13inchのノートブック型パソコンのモニターの解像度は、1,680 x 1,050ピクセルです。
ではデジタルカメラの解像度とはなんでしょうか。じつはデジタルカメラで「解像度」という言葉は、使われ方が少しあやふやです。あるメーカーでは、デジタルカメラで動画を撮影するときの動画データのサイズ(ピクセル数)を「解像度」と表すケースがあります。つまりその動画がハイビジョンなのか、4Kなのか、という場合に使っていますが、デジタルの静止画(写真)のスペックに関しては「解像度」という項目はありません。
しかし、デジタル写真でも「解像度が高い」と言う言い方がよくされています。ここには主に2つの文脈があります。ひとつめは、上に述べた動画のピクセル数を表す場合と同じで、「画素数が多いことを解像度が高い」と言うケースです。
写真データの場合、モニター上でみている限り、画素数を解像度と言うことはありません。その理由は、もともと解像度の定義は先に述べた「印刷の解像度」からきており、画素数=解像度としてしまうと、ひじょうに混乱してしまうのです。ですからカメラの仕様書にも静止画の場合、「画素数」と言う項目はあっても「解像度」と言う項目はありません。
二つ目の文脈は、その写真がデジタルデバイス上でキメが細かく見栄えがいい場合に、「解像度が高い写真」と言うような表現をするケースです。この場合「解像度」は、ある定義された単位ではなく、「解像感」と置き換えてもいい、見た目の綺麗さ、木目の細かさを表す言葉に近くなります。もちろん「解像度が高い写真=画素数が多い写真」と言い換えることもできるのですが、デジタルデバイスで表示されている限り、静止画の場合「解像度=画素数」ではないのです。
(上:オリジナルは2400万画素 下:山頂を拡大。ここまで拡大すると、細部のディテールは失われる)
<解像とは何か>
ではそもそも、「解像度」の「解像」とは何を指しているのでしょうか。一般的な定義は「カメラなどの機器が、像を映し出すこと」です。つまり、カメラやレンズなどデバイスが、現実である被写体を撮影して像を映し出す事であり、ここには必ず「デバイス」が存在しています。
(上:オリジナル画像はNIKON Z7で撮影した5400万画素の写真。 下:その一部分をトリミングして拡大。優れた解像感がある)
たとえば絵画の世界では、解像度も解像感もありません。ある絵を見て「解像度が高いね」などと言うことはありません。つまり、絵画では人間と言うデバイス以外の外部のデバイスが介在していないから、そこには「解像」と言う項目が存在していないのです。
写真の場合はまず、「レンズ」と言うデバイスがあり、次に「センサー」、そして「モニター」や「プリンター」と言う一連のデバイス群が存在しています。それぞれは「解像」性能を有しており、デバイス間でデータの受け渡しをするときに、「解像度」が問題になってきます。
つまり、デジタル画像の場合、デバイスが、実体である被写体を画像データに変換し、さらにそれを物理的な実態のある印刷物やモニターに出力する時に、どれくらい細かく描くことができるか、その度合いを「解像度」と呼んでいる、と言ってもいいのではないかと思います。
さてまとめましょう。デジタル写真の場合、「画素数が多いセンサーを搭載したカメラで撮影したデータは、解像度の高い画像に出力(プリント、印刷)することができる」わけです。
ここで簡単な計算をしてみましょう。インクジェットプリンターでデジタル写真を綺麗にプリントする場合、解像度は240dpi程度が推奨されています。
A4サイズにプリントする場合、A4=210mm × 297mmですから、
インチになおすと8.27x11.69インチとなり、
1インチに240ドット=240ピクセルが必要なので、
短辺8.27x240=1984.8ピクセル、長辺11.69x240=2805.6ピクセル、画面では1984x2805=556万5120ピクセルという値が出てきます。
A4サイズに写真を綺麗にプリントしたいなら、最低550万画素程度あればOKということになります。
(上:このブログに貼り付ける画像データは、note.comの仕様により、アップロード時に自動的にオリジナルのサイズから横幅を620ピクセルに変換されている)
上に貼り付けた奥大日岳の写真のオリジナルの画像はもともと2400万画素で、ここで表示されている画像はそれを、620x414ピクセル=25万6680ピクセルに変換したものです。オリジナルでは長辺が6000ピクセルありますので、約10分の一のデータサイズにリサイズされた画像となっています。単純に考えると、おおよそ10ピクセルを1ピクセルに統合しているわけです。ブログなどのプラットフォームでは、このようにアップロードする際にサーバーがデータサイズを自動変換するケースが多いです。パソコンやスマートフォンのモニター上で見るだけなら(プリントアウトしないなら)、2400万画素も必要ないわけです。仮にブログなどに貼り付けている画像データが2400万画素のままの場合は、読み込むデータは重いのですが、レイアウトされたサイズにモニターがリサイズして表示してくれいています。
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