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1970年の邦楽ベストテン

先日、「1970年の洋楽ベストテン」ってのをやりまして、生まれてない時代のくせに何とかこなしました。それをうけての、邦楽編です。とりあえず、いつものようにノミネート作から上げていきましょう。

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五つの赤い風船『巫OLK脱出計画』
内山田洋とクール・ファイブ『内山田洋とクール・ファイブ 第2集』★
遠藤賢司『niyago』◎
奥村チヨ『くやしいけれど幸せよ』
かまやつひろし『ムッシュー ~かまやつひろしの世界』○
クニ河内とかれのともだち『切狂言』
吐痙唾舐汰伽藍沙箱『溶け出したガラス箱』☆
中山千秋『おりじなる・ふぁーすと・あるばむ』
渚ゆう子『京都の恋』
はしだのりひことシューベルツ『天地創造』
藤圭子『女のブルース』★
藤原秀子『私のブルース ~藤原秀子ソロアルバム』
ザ・モップス『ロックン・ロール '70』
よしだたくろう / 広島フォーク村『古い船を動かせるのは古い水夫じゃないだろう』☆
和田アキ子『監獄ロック ~和田アキ子ロックを歌う~』

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…このころは、アルバムという概念が“単体作品”として、より一層邦楽シーンに根付いていった時期ですね。だからこのチャートを見ていただければわかるように『~第三集』、『~のすべて』みたいな感じのタイトルも幾ばくか残っているのですが、ちゃんとタイトルをつけてアーティストの志向も反映されていくようになっていく過渡期という感じがします。
そのきっかけというか、影響力が強かったと思われるのは、やはりTHE BEATLESの『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band ('67)』と言えましょう。彼らの1966年の来日を機に、我が国はGS (グループ・サウンズ)というムーブメントが派生し、1968年に最高潮を迎えるのですが、そういったバンド形態の自作自演というメソッドが芸能界内でも認知されだしたことも重要です。
ただ、このチャートで、GS勢がモップスとザ・ハプニングス・フォーしか入っていないのは、69年を境にスタイルとしてのGSは、ほぼほぼ絶滅し、ニュー・ロックという概念を身につけないと生き残れないという状況もありました。芸能色の色濃いGSとの差別化を図らねばならなかったわけですね。サイケ、グラム、ウエストコースト、プログレ…といった新たな“ロック”が続々と欧米で発生していたわけで、それに追いつけ追い越せともがいていた現場だったのでしょう。
そんな流れもふまえつつ10枚選出してみました(といってロック寄りにしすぎるのも何なんで、歌謡曲等幅広く選らんだつもり)。

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10位:カルメン・マキ『GOOD BYE MY MEMORIES '70』
このアルバム発売後、“ロック宣言”をしてバンド志向を目指していくのですが、この頃も良いです。A面はGSカヴァーを含むアングラ歌謡志向、B面は岡林信康やディランのカヴァーを含むフォークサイドといった趣向でしょうか。現在に至るまで一貫してカリスマ性をキープしてるのが凄い!です。


9位:ピーター『失われた神話』
私は英国のシンガー、マーク・アーモンドが好きなのですが、まさに和製マークといった曲調やムードは当時の芸能界の懐の深さを感じさせます。とはいえ、彼のが10年先行してるんですがねw 当時はまだ17歳くらい、凄すぎです。内容的には、1st、2ndの各シングルAB面の4曲がこのアルバムの中核なのですが、すべて馬飼野俊一編曲なのがポイントになってます。


浅川マキ『浅川マキの世界』
各面冒頭の「夜が明けたら」「かもめ」はジャージーに展開するのですが、3曲目の「淋しさには名前がない」のブルース解釈には唸らされます。B面後半のライブ・サイドは寺山修司色が色濃く、インタビューっぽい語りやアダモのカヴァーも挿入されるのですが、そういった小技もアングラ臭を増加して小気味よいです。


岡林信康『岡林信康アルバム第二集 ~見るまえに跳べ~』
60年代の、あまりにもストレートで朴訥なメッセージ性の迫力は凄かったですが、失踪後エレクトリック・ディランを目指すことで完成度が一気に上がった一枚ですね。とはいえ、小倉エージ、早川義夫ならびに、はっぴいえんど等々が制作に協力してるんだから悪いわけがないわけなのです!


ザ・ハプニングス・フォー『アウトサイダーの世界』
黎明期の邦楽ロックで、過小評価されている一人にクニ河内がいます。いわゆるGS世代のバンドですが、同時代性ということにおいて最もプログレッシヴでサイケデリックな存在だったのではないでしょうか。のちの幼児番組に参加するように、覚えやすい印象的なメロディメーカーとしても秀逸です。


ちあきなおみ『四つのお願い ~あなたに呼びかける~』
当時現場にいた人に言わせると“お嬢よりうまかった”…とか。凄まじい賛辞であります。それを抜きにしても当代きっての歌い手であり、その1stというわけでチェックは入れないと。シングルを集めたA面より、より“怨歌”っぽいB面後半のが凄いですね。時代とはいえ、曲間の語りは蛇足w


フラワー・トラベリン・バンド『ANYWHERE』
カヴァー先行というのは、まだまだ時代の過渡期だったのかもしれないけど、前年デビューのサバスとクリムゾンを選ぶというのは普通の感性ではないですねw マディとアニマルズは古典的定番だったのかな? この対比を楽しむのが肝で、これがあったこその『SATARI』だったのでしょう。


フード・ブレイン『晩餐』
ジミヘンやクリームを目指していた、当時の東洋人の最大の回答だろうと思われます。アートロックが“進化”するし、ブルースがハード化する頃…ほんの1~2年前の音的革命を的確に血肉にしている奇蹟的名盤です。ストロベリー・パスも、フライド・エッグも、ここから始まったといってよいかも。


藤圭子『新宿の女 ★演歌の星 / 藤圭子のすべて』
いわずと知れたヒッキーのお母さん。オリジナル志向の2ndを推したいところですが、デビュー作で天下を取ってしまったインパクト、そして多くの大人が歌ってきた“怨歌”を18にして(しかも無表情で)歌いこなしてしまった、その時代背景を含めた選出です。


はっぴいえんど『はっぴいえんど』
結局これ“ゆでめん”が1位でした…って、もうそれくらい重要だし、同時代の中でも光り輝いてるわけです。実際のところ、翌年の2nd『風街ろまん』の方がウエストコーストの現場感が出ていて好きなのですが、ブルースへの哀愁か泥臭さの残るこっちもやっぱり天下の“名盤”なのでした。

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さて、こうして10枚あげてみますと、結果的に先鋭的なロックの方々も、そして芸能界の荒波もまれた歌謡界の方々も含め、とにかくカリスマ性が選択の基準になっているみたいな感じですね。だからアルバムとしての完成度は二の次的な選び方は反省点かもしれません。
にしても、選外にしたエンケンさんも、アッコさんも、鈴木ヒロミツ氏も、前川清氏も、ムッシュも、チヨさんも凄い存在感なのは確か。
こういった得も言われぬ“時代の力”みたいなもを各人に感じつつ、こうした懐メロを漁ってみるのも結構乙なものなのかもしれませんね。


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