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著作権法はまだ質の向上が求められている

私が大学生の頃は、著作権法については情報と法学の講義で議論の的になった事象であった。人間がみんな「クリエイター」「表現者」になるだけに持っている権利という見方がある。そして、時代が進むにつれて「著作」も「創作」も多様を増していくことだろうと思う。

二次創作にかかわる問題

以前、著作権法を親告罪とすべきなのか非親告罪とすべきなのかという議論が持ち上がったことがある。これは、全てのクリエイターが避けて通れない「先生」と「生徒」のような関係にかかわる。それこそコミックマーケットなどに出展されている「二次創作」による表現もその関係があってのものである。
ただし、以前「二次創作」で問題になった漫画の実写があった。「ハガネの女」の実写ドラマで、原作者の人権意識を損なうような表現を用いた事により原作者が「原作者を降りる」という表現で抗議をしたという流れがあった。
私も実際に観た回だったのだが、原作を先に読んでいてコラムなどにあらわれていた作者の考えに歯向かっていないだろうかという感じが確かにあった。この現象を「原作凌辱」「原作レイプ」と2008年の評論でRHYMESTERの宇多丸氏が表現したことから、今もSNS上でその表現をする人がいることは理解できる。立場が立場なのだが「発達障害の生徒を隔離させる表現」が実写ドラマに含まれていたそうで、それが原作者には大きなダメージを与えたようだった。
ここで起きた問題が「パロディである場合はどうなのか(フランスなど)」、「原作・原作者」を「リスペクト」「オマージュ」しているか、「原作者の思考を汚していないか」という条件で二次創作と認めるか否かという問題に遭遇してしまう。
明らかに「原作凌辱」のような原作者に対しての作品に対する心情を侵してしまった場合は、著作権法の侵害に値するだろう、というのは私の一つの考えである。しかしこれが例えば非親告罪だと、原作を読んで「原作を極端に改悪しているので実写を訴えてやる」ということができるようになるが、必ずしも原作者の意思が「ハガネの女」の時のように損害されたのか、というとそうとは限らず原作者の意思に反して訴訟を起こすという事も出るかもしれない。

「黙認権」という新たな人権概念

作家・漫画家・イラストレーターなど表現活動に携わる人たちとつながる二次創作が「先生」と「生徒」の関係とみなせば、著作権法が非親告罪のとき原作者を「先生」とみなすと「黙認権」という新たな人権を考える必要があり、「生徒」に技倆を授けている立場である「先生」の意思に反した訴訟(黙秘権の侵害)で創作表現を萎縮させない目的として相応する。

著作権「横領」!?

中国からは、「冒認出願」という問題が世界を跨いで起こっている。日本の場合だと地名や特定の企業名が国を跨いで意思なしに商標登録されていたという事件があった。「冒認出願」は中国語であり、自分ではこの中国語を「著作権横領」と解釈した。
これは国を跨がなくても日本同士でもそれに相当するような流れがあり、パテント・トロールによるビジネスにより商標を勝手に大量に出願するという事件が起きていた。これによりライセンス料をトロールビジネスに横流しされたり、勝手に権利の売買を行ったりするという金銭の問題まで発展して起こる可能性がある。
同国同士なら自助的な努力でもそれを防ぐことはできると思うが、やはりこの手の法律は「著作権横領罪」のように明文化しておくべきだろうと思う。
他の横領行為は、原作者でないものを原作と主張する行為などがみられたり(韓国語と英語のかばん言葉の「ウリジナル」も一種である)、なんでもかんでもパクリだと決めつける行為などがみられるが、それが著作権の横領に相当する行為であると考える。

著作権管理団体・委託団体は便利だけど…

著作権管理は、個人で管理する場合のリスクを考えて、団体に委託するという方法がある。しかし一部のクリエイターからは管理団体が委託の権限を超えた著作権違反の訴訟を起こしているように見えるという声が聞こえる。これは印税や利用料、権利料、管理料などにつながる金銭問題がらみのものもある。著作権違反にこじつけただけの訴訟という無理矢理検閲するに等しいような事も起こる可能性もある。
これは、管理団体や委託団体が存在していることにより起こった問題で、管理団体や委託団体があるなら著作権の越権行為の禁止を明文化しておくべきなのに、今の著作権法に著されていない事から出た問題であると思う。仮に管理団体が著作者の権限を超えて訴訟を起こした場合、それにより多様な表現と創作を萎縮してしまう恐れがある。

こんにち著作権は電子媒体の登場や様々な形式により、表現や創造の幅も様々になってきたが、それと同時にその法の網を抜ける方法も様々になってきた。漫画村などの問題で議論が持ち上がった話題でもあるが、改めて著作権に関する法律の質の向上はまだスタート地点に立ったばかりで、がさつで「法で権利を侵す」ような胡乱な法律になっていってはいけないものだ。

2020/02/28 20:36 追記
東京地裁がJASRACの音楽教室の楽曲著作権使用料徴収を認める判決を出しましたが、音楽教室側も控訴する見込みであるという報道がありました。今後の動向に注目したいところです。

2020/03/11 8:54 追記
更に、萩生田光一文部科学大臣が開いた記者会見より、大臣が静止画ダウンロードによる有償著作物の侵害行為に対する規制・対策案を閣議決定したと伝えました。リーチサイトを規制することは私の意見では賛成であり、私のnoteでは「著作権管理団体による著作権越権行為」に言及しましたが、萎縮防止や著作権者に利益を害さなかった場合による例外規定などについてを盛り込んだ対策という事を会見で述べられており、私が考えた「越権行為」という問題点をできるだけ取り除けるような期待はあります。今後の動向に注目したいところである上に、さらなる改善点などの調整を願っています。

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