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国や文化を越えた組織のあり方と多様性への挑戦

※このインタビューは2024年3月18日に収録されました

テクノロジーによる自動化がより発展していく過程で、倫理的な議論がより重要になりつつあります。

今回はイタリアのローマに本部がある国際開発法機構 (IDLO) で専門家として活動されているマキシムさんに、法や哲学の観点から見るべき倫理的な視点についてお伺いしました。

Kohei: 皆さんこんばんは。本日もインタビューにお越し頂きありがとうございます。本日はイタリアよりマキシムさんにご参加いただいております。彼がこれまでに経験されたことについてお話を聞いていきたいと思います。マキシムさん。本日はお越しいただきありがとうございます。

Maksim: ご招待いただきありがとうございます。

Kohei: ありがとうございます。では、早速マキシムさんの自己紹介を始めたいと思います。

マキシムさんは10年以上に亘り、法と政策、哲学の関係性について取り組んでこられました。現在はイタリアのローマに本部を構える国際開発法機構 (IDLO) で法によるルールづくりと平和で持続可能な社会の開発に取り組まれています。

現在の役職に就く前には主任コンサルタントとして国際連合教育科学文化機関 (UNESCO)で働き、 パリ政治学院を始めとした世界中の学術機関で講義も行っていました。2021年にはサンタンデールが推薦する35歳以下のCIDOBリストにも選ばれています

マキシムさん。本日はご参加いただきありがとうございます。

Maksim: ありがとうございます。

Kohei: では早速インタビューに移っていきたいと思います。マキシムさんはこれまでに多様な分野でご活躍されてきたと思います。なぜ公共分野で活動を始めようと思ったのかをお伺いしてもよろしいですか?

研究者から国際機関へ転身した理由

Maksim: わかりました。元々、私は異なる研究所で学術分野の専門家として働いていました。大学機関やロースクールで教えたり、研究プロジェクトに関わったりもしていました。

このような活動に関わるのと同時に、学問分野だけでなく実社会にインパクトのあることがやりたいと思い、私の知見を実戦の場で生かせる場所を探していました。

こういった背景から国際機関で働くことを模索し始めたのです。最終的には国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)で働くことが決まりました。ユネスコでの活動は後でもう少し触れたいと思います。

現在はローマを拠点とする国際開発法機構というところで働いています。私が学術機関で働いていた経験は今の活動にもつながっていますね。

授業で講義することも好きです。何かを研究して成果物として発表し、新しい知識として取りまとめていくことが関心のあるポイントです。それと同時に、これまでに取りまとめた知見が社会で実現できるものになることも私が目指していることです。知見を形にしていくことを世界規模で実装していくことが今の関心ごとですね。国際機関で仕事をすることは、私の関心ごとと非常に近いと考えているからです。

社会の変化について理解を深めて、社会の変化を後押ししていくことが本質だと考えています。

Kohei: 素晴らしい考え方ですね。アカデミアで活動していた時にはどのような分野を専攻されていたのでしょうか?

Maksim: そうですね。私は法律を専攻していました。主に国際法と欧州法ですね。法律を主に専攻していましたが、哲学にも非常に関心がありました。そういった背景もあり、人工知能のような新しい技術分野に興味を持ったのです。新しい技術を社会でどのように利用していくのかというテーマですね。

哲学の考え方から見ると、検討すべきテーマがより多岐に亘ります。特定の技術に対して、広い観点から物事を考えることが必要なのです。私がこれまでに培ってきた法的なバックグラウンドと関心のある哲学を組み合わせたテーマですね。

哲学と技術に関するテーマは徐々に重要性が高まってきていて、今では至る所で新しい取り組みが生まれてきています。

Kohei: 貴重なお話を紹介いただきありがとうございます。マキシムさんは国連やユネスコを始めとした国際機関でお仕事をされた経験があると思いますが、これまでのご経験についても教えて頂いてよろしいでしょうか?

国際機関での活動を通して実現する倫理を形にする動き

Maksim: わかりました。国際機関では大変な仕事が多いですが、とても魅力的な仕事でもあります。これまでの経験で多くのことを学ばせていただきました。特に、素晴らしい人たちと一緒に仕事ができた経験は、何事にも変え難いですね。

ユネスコは国連の一組織で、様々なプロジェクトを推進している大きな組織です。正式名称は国際連合教育科学文化機関といいます。

プロジェクトは少数のトピックに限定して運用されていますが、実際にはより広範囲での取り組みを推進しています。数多くのプロジェクトの中でも特別注力しているのが、倫理的な取り組みに関するもので、国連内のシステムにおいて運用しています。

科学と技術の組み合わせをユネスコでは推進していて、人工知能に対する倫理性の導入についての開発は世界初の取り組みだと思います。当時はまだ議論があまりされていない新しい分野だったので、非常に多くのタスクに取り組む必要がありましたが、現在は2年が経過してより取り組みの重要性が増してきています。

(動画:Gabriela Ramos on how to build the rule of law in the digital world (long version))

これまでに数多くの組織で開発されたプロジェクトと比較すると、ユネスコのプロジェクトには193カ国が最終的に参加することになりました。

193カ国が参加する内容を取りまとめることは非常に骨が折れる作業だったので、冒頭で大変な仕事として紹介させて頂きました。私は主任コンサルタントという立場で、2020年の始めにAIと倫理プロジェクトに参加し、パンデミックが広がる前にパリに拠点を移しました。

193カ国が参加することに加えて、コロナ禍で通常よりプロジェクトの進みが遅れたこともあり、より大変な環境下での取りまとめが必要になりました。

この状況下ではプロジェクト推進が難しいと考える人たちもいましたが、最終的に私は6ヶ月間コンサルタントとして活動に関わることになりました。結果的にはスタッフとしてメンバーの一員になり、2021年11月21日まではパリに滞在してプロジェクト遂行に関わるようになります。

国や文化を越えた組織のあり方と多様性への挑戦

ユネスコに参加した193カ国のメンバーは、AI倫理に関する推薦書に署名することになりました。このタイミングで世界で最も多くの国が参加した取りまとめが実現したのです。私にとってはこの経験が非常に貴重なもので、初期から実行までスタッフとして関わることができたのは非常に光栄です。

特に世界各国の専門家の方々と一緒に一つのものを作り上げる経験は貴重なものです。各専門家は異なるバックグラウンドや文化、経験の持ち主ばかりです。

加えて、各国間の交渉に参加することができたのも非常に良い経験でした。参加地域には欧州域内の国々に加えて、中国からも参加しているため、それぞれの国の思惑を理解した上で和解できるように物事を進めていかないといけません。

今回の経験を通して、数多くのことを学ぶことができました。これまでに国際法を学んできていたので、この経験を通して得たスキルを別のものに活かしていく必要性についても学びました。

国際間の関係性作りや、国を越えて何かを実現するための組織内の考え方についても学ぶことが非常に多くありました。組織と各国との関係性作りが大きく異なるということも学びになりましたし、ロースクールで学ぶことも国によって違いがあることがわかりました。

何かを実現するために異なる考え方が存在することを学べたことは、私が公の分野で活動を続けていく原点に立ち返ることにも繋がっていくと感じています。

これまでアカデミック分野で学んだことが、国際機関での仕事に関わるにつれて具体的な学びに繋がっています。机上の学びだけで止めることなく、具体的な実践に繋げていくことが必要なのです。

机上の学びと実践を行き来することが、現場で生かすことができる効果的な方法を検討するためには非常に重要です。私が経験させて頂いたことは非常に素晴らしいもので、現在も素晴らしいチームがプロジェクト運営に関わっています。

今では、より実装に向けた議論が進んできていて、これまでに議論された内容も踏まえて新たな方法論についても検討が進んでいると思います。

Kohei: なるほど。ユネスコで新たなプロジェクトが推進された初期から関わっていたことは非常に素晴らしいですね。現在はユネスコから籍を移して、国際開発法機構でお仕事をされていると思います。

国際開発法機構では法律の開発に関連したプロジェクトが多いと理解していますが、現在国際開発法機構で担っている役割についても教えていただけますか?

〈最後までご覧いただき、ありがとうございました。続きの中編は、次回お届けします。〉

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Interviewer, Translation and Edit 栗原宏平
Headline Image template author  山下夏姫

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