Googleが取り組むコンプライアンス体制と利用者情報を保護する環境づくり
※このインタビューは2022年7月13日に収録されました
大手テクノロジー企業はプライバシー対策を行うために、社内ガバナンスに限らず様々な取り組みを各国で行なっています。
今回はGoogleで南欧地域の公共政策に取り組むアンドレアさんに、Googleのプライバシーに関する取り組みをお伺いしました。
Kohei:皆さん。本日のPrivacy Talkにお越し頂きありがとうございます。今回はイタリアからアンドレアさんにご参加頂いております。アンドレアさん、本日はPrivacy Talkにお越し頂きありがとうございます。
Andrea:ご招待頂きありがとうございます。
Kohei:どういたしまして。本日はお話しできることを楽しみにしております。
始めにアンドレアさんのプロフィールを紹介したいと思います。
アンドレアさんは現在Googleで南欧州地域の公共政策と大学機関との連携を行うチームを統率しています。
アンドレアさんはイタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、マルタ・キプロスで公共政策課題と独自のキャンペーンの展開を推進し、欧州の大学との連携のマネジメントも担っています。ローマ欧州大学では准教授として比較法や新領域のテクノロジーに関する法の講義を行い、InnoLawlabのディレクターも務めています。
シンガポール国立大学では客員教授として生物工学に関する講義を行っています。これまでに多くの科学的な出版に携わり、Springerから2021年に出版された “Smart Contracts and Comparative Law”やEdward Elgarから2015年に “Biotechnological Inventions and Patentability of Life”を出版しています。
これまでに、イタリア政府の通信関連部、及び防衛部門のトップへのアドバイザーやシンガポールマネジメント大学での客員教授も務め、アルゼンチンのブエノスアイレスにあるFLACSO大学では研究員として活動していました。
ドイツのマックス・プランク協会ではミュンヘンの競争法について取り組み、オランダのアムステルダム大学イタリアローマにあるグイド・カルリ社会科学国際自由大学では競争法やイノベーション関連法のコーディネーターも務めています。
ボローニャ大学の非常勤講師を務める等の多岐の分野に関わり、ハーバード大学で交渉とリーダーシップに関するエグゼクティブプログラム、シンギュラリティ大学で急成長分野のテクノロジーに関するプログラムへ参加しています。
テクノロジーの発展によってもたらされる社会の変化
アンドレアさんと直接お話しできとても光栄です。早速一つ目のアジェンダに移りたいと思います。これまでにアンドレアさんとは色々なテーマでお話をしてきたのですが、アンドレアさんがテクノロジーと法律を専攻されたきっかけについて興味を持っています。
アンドレアさんのこれまでの活動と、なぜテクノロジーと法律に関心を持ったのか教えて頂けませんか?
Andrea:もちろんです。インタビューにご招待頂きありがとうございます。大学を卒業して以来、法律と政治をテーマに勉強してきました。特に、これまでにない新しいテクノロジーとイノベーションについてアイデアを考えるのが好きで、先端技術が法律や政治、そして私たちの基本的な権利とどのようにバランスを取りながら広がっていくのかに関心を持って取り組んでいました。
この分野に早くから関心を持って、新しい手法をどうにか新領域のテクノロジーへ応用できないかと考えていました。法律とテクノロジー、そして経済的な一面がそれぞれに組み合わさることで起こりうる課題を学び、どのように法や政治につなげていけば良いのかを考えることに取り組んでいました。
Kohei:ありがとうございます。アンドレアさんは法とテクノロジーに関するテーマに限らず、ブロックチェーン等の新しい技術トレンドにも取り組まれています。なぜ、新しいテクノロジーについても関心を持って取り組まれているのでしょうか?
Andrea:そうですね。新しい領域のテクノロジーは非常に関心を持っています。最近は生物工学とブロックチェーンに関係する法と政治の研究も同様に行っています。
新しいテクノロジーへ関心を持っている理由は、今までにない新しい技術によって、これまでの私たちの生活が大きく変わっていくと考えているからです。
残念ながらパンデミックによって、生物工学は私たちの生活に掛け替えのない分野であることがわかり、研究を突き詰めていくことで私たちの日々の暮らしや健康に大きな変化をもたらすことがわかりました。
生物工学を駆使したアプリケーションは既に世の中へ出回り始めています。私が最近この分野に注力しているのは、新しいサービスを通して社会を良くしていく一方で、基本的な権利を抑えつつ生物倫理について法律や経済、技術を始めとした多様な側面からも考えていきたいと思ったことがきっかけです。
ブロックチェーンに関する研究も同様です。スマートコントラクトを始めとした新しい技術やNFTに代表されるアプリケーションを含めて、ブロックチェーンと一言で言っても様々な角度から注目が集まっている分野だと思います。
私はブロックチェーン技術が普及していくことによって、社会的、及び経済的な側面に限らず、今後数十年で私たちの生活を大きく変化させることになると考えているので、こう言った技術が抱えている問題についてより深く理解し、研究を続けていくことによって具体化してくる複雑な問題を分析して取り組んでいきたいと考えています。
Kohei:素晴らしい取り組みですね。これまでに発表された出版物を拝見させて頂いたのですが、まだこの分野に取り組んだことはないけれど、新しく参加したい人にとっても参考になる内容だと思います。アンドレアさんは新領域のテクノロジーに詳しいだけでなく、現在はGoogleでも活動されていると思います。
最先端のテクノロジー企業が取り組む多様なステークホルダーとの連携
Googleでの現在の活動と、なぜGoogleで働き始めたのかを教えて頂く事はできませんか?
Andrea:もちろんです。私のGoogleで担当しているお仕事は、Googleのイタリアやスペイン、ポルトガル、ギリシャ、マルタとキプロスの公共政策チームと連携して、各国の政策問題について検討したり、南欧の国々と連携したキャンペーン活動を実施しています。
図:南欧のGoogleチームの取り組み
さらに、企業が抱える政策問題についても取り組んでいます。大学との連携も私が担っている役割で、各大学や研究センター、シンクタンクとの連携を始め、情報や知識の共有などを積極的に行っています。
Kohei:ありがとうございます。アンドレアさんはこれまでにGoogleで様々な役割を担って来られていると思いますが、Googleで働き始めてから社内で変化は起きていますか?
数年前からプライバシー保護の動きが各国で高まりつつある中で、Googleの事業へ非常に大きな影響が起きているかと思います。特にテクノロジー大手企業への要求は厳しいものだと思いますが、コンプライアンス戦略やステークホルダーとの連携等で大きな変化は生まれているのでしょうか?
Andrea:ありがとうございます。そうですね。欧州を始めとして、世界中でインターネット規制の動きがより高まってきています。プライバシーに代表される規制の動きがあり、欧州ではGDPRが制定されましたが、今では世界各国へ影響が広がってきています。
Googleでは各国の規制へ対応するための動きを進めています。規制対応はGoogleのサービスがGDPR等の法規制へ準拠するだけに限らず、利用者からの信頼を獲得するために、Googleを利用してビジネスを行う方々もGoogleのサービスを利用することで簡易にコンプライアンス対応を行うことができるように努めています。私たちにとっては利用者の方と一緒に築いていく信頼関係が非常に重要であると考えています。
Googleが取り組むコンプライアンス体制と利用者情報を保護する環境づくり
コンプライアンス対応を行うために第三者からの監査を定期的に実施し、契約を行う際には業界標準の認証に沿った形で手続きを行うようにしています。私たちは規制へ対応するためのツールや情報を積極的に提供し、他企業の開発者を含めコンプライアンス対応を行うことができる環境整備を進めています。
利用者の情報を安全に、安心して利用できる環境を提供することが私たちの優先事項です。これまでに、データ保護を司る各国の政府組織とも連携し、ガイダンスを参考にしながらより強固なデータ保護に取り組んできました。
私たちは開発するプロダクトがデータ保護法に準拠すべき重要性を理解し、個人データを利用する際には適切な対応を行うように取り組んできています。
(動画:Information Google collects Google Privacy Policy)
個人データを処理する場合は、データ管理者と処理者の関係性を前提に、個人データを利用できる範囲を定めています。さらに、プロダクト開発の際には、Googleと顧客がそれぞれ独立したデータ管理者として同意内容や条項をステータスに応じて変更しています。
パブリッシャーと広告主がGoogleで広告出稿する際には、全世界で欧州の同意ポリシーに準拠するようにしています。欧州経済域内の利用者からはアプリ等でクッキーやローカルでデータを取得し、ターゲティング広告を出稿する場合には利用者から同意を得ることを求めています。
パブリッシャーや広告主がGoogleを利用して広告を出稿する場合には、ポリシー内容に沿った上で利用者の趣向に合わせた対応を行うことを求めています。
GDPRでは民間企業に対して欧州域内から他国へデータを移転する場合に、欧州域内で定められた条件に対応することを求めています。現在は新たな欧米間でのデータ移転フレームワークの合意を待っているところです。
そのためフレームワークが合意されるまで、Googleでは標準契約条項(SCC)を利用して、デジタル広告のデータとプロダクト関連のデータ移転を行っています。
2021年6月に欧州委委員会は欧州域内の個人データを保護するために新たな標準契約条項(SCC)に関する内容を発表しました。Googleでは新しい標準契約条項(SCC)へ適応し、欧州のデータ保護法の下で個人データを保護するように取り組んでいます。それ以外に政府関係者と連携し、今日だけでなく未来に向けたデータ保護についての議論を行っています。
Kohei:ありがとうございます。Googleは世界中でプライバシー対策を強化している代表的な企業の一つであると思います。個人の権利をもとに、Googleだけでなく、他の企業に対しても個人のデータを保護することが重要であると考え、対策を推奨している点は非常に重要だと思います。
アンドレアさんは南欧で非常に重要なプロジェクトを率いていると思います。過去のインタビューで欧州の消費者団体EuroconsumerのMarcoさんとインタビューでお話ししたConsumer Empowerment Projectについてお伺いしたいと思います。
アンドレアさんはGoogle側の立場でこのプロジェクトに関わっていると思います。プロジェクトを通して、生活者の方に向けた安全な環境づくりを推進されているかと思います。
私からの質問は、なぜGoogleは新しいプロジェクトへ参画し、複数のステークホルダーとの対話の場を重要視しているのでしょうか?背景を教えて頂けると嬉しいです。
〈最後までご覧いただき、ありがとうございました。続きの後編は、次回お届けします。〉
Interviewer, Translation and Edit 栗原宏平
Headline Image template author 山下夏姫
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