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名刺代わりの小説10選【ホラー編】

先日のnoteで好きなミステリ10冊を紹介しましたが、同様に人生の多くに影響を与えられたといって過言でないホラー小説についても書いておこうと思います。
ホラーと銘打っていますがいわゆる幻想怪奇小説も含まれます。

ラヴクラフト『死体安置所にて』

ラヴクラフトと聞くと『クトゥルー神話』を浮かべる人が多く、ラヴクラフトの名前を知らなくてもTRPGでクトゥルー神話に触れたことがある人は少なくないと思います。
この作品は、クトゥルー神話とは関係のない読み切り短編です。
死体安置所に閉じ込められ、そこから脱出するために男が選択した行為もその結果待ち受けていたものも恐怖小説としても因果応報物語としても秀逸です。

江戸川乱歩『鏡地獄』

江戸川乱歩は明智小五郎シリーズで探偵小説としても有名ですが、数多くの幻想怪奇小説も生み出しています。
その中でも個人的に好きなのはこの作品です。鏡に取り憑かれた男が生み出したあるもので破滅するまでの物語ですが、それまでの間に「鏡というものがいかに興味深いものか」という描写も多いです。
最後に男が生み出したものの世界を覗いてみたくなる、そんな話でもあります。
江戸川乱歩は数年前にパブリックドメインになったので、青空文庫でも多くの作品を読むことができます。
有名な作品も多いので、まずはそちらで触れてみることもおすすめします。

井上雅彦『1001秒の恐怖映画』

ホラー掌編集としてだけではなく古典ホラー映画指南書としても読み応えのある一冊です。
ハマー・フィルムやハロウィンなどの映画作品だけでなく、ホラー映画の名優たちについても語られている話もあります。
現在は廃刊になってしまいKindle版も出ていないため読むことは難しいですが、日本にある古本屋さんの情報総合サイトであり購入もできるこちらのサイトをチェックすることは、この本に限らずおすすめです。

朝松健『一休闇物語』

アニメでよく知られた一休さんが主人公ですが、こちらの一休さんこと一休宗純は三十代で三尺五寸の杖を手にし、なにより『襤褸と言っては襤褸に失礼』と表現される襤褸姿で描写されながらその笑顔には幼子のようなものがあるという魅力的な姿で描かれています。
そして対峙するのは妖かしやなによりも時代を生きる様々な人々です。
収録されている作品の中で個人的に好きな話は『うたかたに還る』
朝松健さんの一休宗純シリーズを始めとする室町伝奇はどれも読み応えがあっておすすめです。

竹本健治『閉じ箱』

ウロボロスシリーズなどが代表作の竹本健治さんの同人誌に掲載されたものを含めた初期作品の短編集です。
様々なジャンルの作品が収録されていますが、その中で色をモチーフにされた連作集『七色の犯罪のための絵本』が個人的におすすめです。
表題作の『閉じ箱』はあるミステリで有名な人物が登場していますが内容は少々難関だったり、初期の作品なので粗さもあるため好き嫌いが分かれるかもしれません。

小林泰三『肉食屋敷』

『玩具修理者』が有名な小林泰三さんの作品集の中でも記憶に刻まれている一冊です。
異形コレクションに収録されていた『ジャンク』は西部劇の空気をまといながらSFとして作り上げられ、話の展開にも「こうくるか」と思わせてくれる作品です。
個人的に印象が一番強いのは『妻への三通の告白』
これを狂気の物語と片付けるのは簡単ですが、『しあわせ』の定義とはなにかを考えさせられる最後の一行が忘れられません。

稲生平太郎『アクアリウムの夜』

ジュブナイルホラーと呼ばれるものをほとんど読んだことがないのですが、こちらは表紙デザインとあらすじを読んで手に取った一冊です。
ただ、個人的には印象深いのですが時代設定がラジオが日常的に用いられていた頃であったり登場人物に起こる異変に対する表現などもいまでは「?」となる人もいるかもしれません。
それでも物語をまとう空気感は『その当時のホラー』というものを味わえますし、高校時代の何気ない日常が『カメラ・オブスキュラ』を見に行くことをきっかけに変化していくこわさなどは楽しめると思います。

甲田学人『Missing』

こちらもジュブナイルホラーになりますが、以前発刊されていたものを改訂したものが現在出版されています。
都市伝説などをモチーフに主に学校を舞台に繰り広げられるのですが、描写の端々に「痛い痛い」と感じる部分もありますが「いま後ろを振り向いてはいけない」というような感覚を随所随所で味わえます。

amphibian『レイジングループ』

ADVで知っている方も多い『レイジングループ』のノベライズです。
ゲームで大筋を知っている人でも、ゲームでは描かれ切れなかったことや各人物の深掘りなど、読むことで新しい彼らの物語を知ることができます。
ループ描写に関してはどうするのかと思っていたのですが、読んでみて「なるほどこういう形できたか」と感じました。
主人公・陽明の内面描写も増えており、暴露モードとはまた違った「このときにそんなことを思っていたのか」というものにはかなりコミカルなものも増えていたりしていろいろな発見があります。

異形コレクションシリーズ

これを10冊の中に含めるのはどうかとも思いましたが、名刺代わりというタイトルでは外すことはできず、同時に一冊ではなくこのシリーズそのものを据えるという形にしてみました。
1998年、廣済堂文庫から出版された『ラブ・フリーク』から始まったまえがきで必ず語りかけられる『闇を愛する皆様』に向けられたアンソロジーですが、この『闇を愛する』は読者だけでなく筆者にも向けられている言葉です。
毎回異なるテーマで様々な『異形』の物語が綴られ、この作品群で知った作家なども少なくありません。
初期のアンソロジーはいまは入手困難なものもありますが、今回再開したものはKindle化されていることを見て、過去のものもいつかKindle版で帰還してもらいたいと願っています。

ホラーは自分の読書・執筆などの創作で外せない要素であり、ここに載せきれなかったものも含めて様々なものから多くの影響を受けました。
これからも様々な作品に触れていきたいと思っています。

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