見出し画像

夢のない夢小説を求めて(お茶漬け)


いつも大変お世話になります。平時は某歌劇団の某スターさんのオタクをさせて頂いております、お茶漬けと申します。よろしくお願いいたします。
公演が再開した暁にはぜひ宝塚歌劇団を、中でも花組をご覧になって頂ければ幸いです。一刻も早く、宝塚歌劇が公演再開できる世界になることを願って 、この文章を捧げます。

画像1


夢小説が好きです。

一般的に、夢小説はキャラクターと同じ世界線に生きて、恋愛や友情をはぐくむ「夢」のある小説です。わたしも作品内のキャラクターへの愛をこじらせた結果、欲望を満たそうとインターネットを奔走します。そしてお目当てのキャラクターの夢小説を見つけ、胸を躍らせてタップします。

「ふーーん、このキャラクターは夢小説の主人公(以下、夢主) のことがこんなに好きで、こう思ってて夢主のほうもこう好きで……ふーん……。へえ……。」

で、一旦サイトを閉じてベッドに大の字になって一言

「……萌えるけどなんか違うな」

こういう生活を10年ほど続けています。
「なんか違うんだよな……。でもこのキャラクターの夢小説がめちゃくちゃ読みたいな……」
そして、結果自分で考える最強の夢小説を書くことで事故った頭のセルフ手当てをしています♬
その夢小説はサイトに公開したり、進んで人に見せたりするでもなく、ただ自分の夢小説読みたい欲求が爆発したときのために書き溜めています。たまにジャンルで仲良くなった人に読んでもらったりすることもあります。
今までもらった感想としては「この夢小説って夢小説?」「悪い夢と書いて悪夢」「夢小説のyの字もなかった」など散々です。


わたしの書く夢小説には一般的な夢小説に登場する「夢」がないらしいのです。(でも、自分の夢を詰め込んでいる以上「夢小説」以外に呼称する気はないです。)一般的な夢小説というと夢対象と恋人だったり恋人未満だったりしますが、わたしの書く夢小説の夢主が対象と相互的な恋愛感情を育むことはまず無いです。

わたしの作品の共通点をいくつかあげると

1.夢主はごく一般人
2.夢対象(夢小説の相手をここでは夢対象と呼称することにします)は夢主に関心が薄いまたは関心がない、存在を知らない
3.夢対象には夢主とは別に執着する人やモノがあり、最後まで夢主と特別な関係にはならない
4.作中、夢主がかなりしっかり目に傷つく。

など、とにかく夢対象からの特別な意味を含んだ矢印が徹底的に排除されています。(流行りの悪役侯爵令嬢もの?といわれそうですが、『夢主がしっかり傷ついて一生引きずって生きていく』というところがポイントなので別物だと思ってます)
夢対象に公式で恋人(死んでたらなお「良い」)などがいたら、もうほんとに「良い」です。ディ・モールトベネです。
そもそも、わたしには自分に興味を持つ人間が苦手というこじらせた自意識があり、一般的な夢小説にハマれないのだと思います。
誰かが言った名言にも「わたしを入れるようなクラブには入会したくない」というのがありますね。対象が自分に心から興味がない、まさにそこに夢を感じるのです。

具体例として、今までに書いた夢小説を一つ紹介します 。

夢対象は優秀なエージェントで夢主はその後輩。夢主は夢対象を先輩として尊敬しています。先輩は夢主を可愛がってはいるが後輩以上の感情はない。
しかし、先輩は夢主をよく飲みに誘い、酔うといつも同じ歌を口ずさむ。夢主はそんな先輩が自分には心を開いてくれているのではないかと期待する。
けれど、先輩は時折仕事を休むことがあり、夢主には行先を決して告げない。挙句、彼は任務中に死亡する(実は生きているが夢主に知らされることはない)。
そこでやっと先輩は死んだ恋人の仇討のために任務についていたのだと先輩の過去を知る人に教えられる。(さらに仕事を休んだ日は恋人を弔っていたことも知る)
夢主は組織を抜け、上司と通ったところによく似たバーを見つけふらりと立ち寄る。そこではジャズが生演奏されており、上司のよく歌っていた曲が聞こえてくる。

“先輩の口ずさむその歌だった。生演奏に無関心な人々の中で、わたしは一人立ち尽くしていた。彼の癖のある声が頭の中で反響する。彼の亡くなった恋人はきっとこの歌をよく歌っていたのだ、と根拠もなしに思った。ボーカルの甘い声は恋人を想う歌詞をするするとなぞっていく。
わたしは夢想する。先輩は恋人の腕に抱かれ、その恋人はか細い歌声で子守唄を口ずさむ。彼はその腕の中でひどく穏やかな顔で眠っている。彼女は彼の心の傷だった。それも二度と癒えることのない……。そんなこと、分かりきっていたのに。“

―終―

めっっっっっっっっちゃ傷つきません?????自分で書いておいて最高。


そのキャラクターの信条に沿って遠ざけられたい。彼の人生において必要のないものとして切り捨てられたい 。夢対象が夢主に見向きもせずに自分の信念や愛のために生きて、その大いなる愛に正面から敗北することによって本当の愛を知ることができるのではとさえ思っています。もっと俺にお前の信念を見せつけろ。お前の感情の速さに置いていかれたい!!!!マッドサイエンティストの思考です。


というわけで、今日も夢のない夢小説を書いて生きています。今一番読みたいのは現世に任務に出た「刀剣乱舞」山鳥毛に街でひとめぼれをするもその後二度と出会うことはない、という夢小説です。(何が面白いのそれ?)
公式で死んだ恋人を引きずっている男がいたら紹介してください。よろしくお願いします。

【今回の「偏愛」を語ってくれた人】 お茶漬け (連絡先はありません)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?