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One Phrase To Story

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1行のフレーズから、2000字の物語を芽吹かせる。 そんな活動の記録です。
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#朗読配信

prayer

12月が始まった。 そんな僕らは、ドライブがてらイルミネーションを見に来ていた。ゴテゴテし…

本と付箋とメッセージ

彼はいつもひとりだ。 ぼんやりと車窓から外を眺めていることもあるが、大抵は本を読んでいる…

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おつかいつかいま

「ま、ハロウィンが近いこの時期は、あの世とこの世の境目が曖昧になるって言うから、こんなこ…

サムシングブルーの君の香り。

僕は何度も夢を見る。 青い花畑、柔らかな日差し。 そして、あなたのこと。 大学生になったあ…

愛のつめすぎ

どうせ食べるなら美味しい方がいいけれど、今、そんなことを考える余裕もなく作り置きのおかず…

溶けて消えるとき

先週、新しい浴衣を買った。  ここ何年か、夏祭りに行く予定もなかったし、浴衣を着ようなん…

桜と推しと内緒の話。

自転車を走らせながら予備校の春期講習に急ぐ。 もうすぐ高3。始まったばかりの春休みは遊んでいる場合じゃない。 川沿いの桜並木は、チラホラと花が開き始めているのに楽しくないことこの上ないのだ。 「あー、来年の今頃は遊ぶぞー!」 吠えるように空に小さく叫ぶのだった。  予備校終わり、リュックのポケットのスマホを確認して息を呑む。同じクラスの夏菜から衝撃のニュースが届いていた。 『遙華!数学の山口先生、転勤だって!』 『いや、ちょっと意味分かんない!』 『お父さんが新聞に載ってる

水槽の中の君と水槽の外の私。

 雑多なバックヤード。  運び込まれる餌という名の魚たち。打ちっぱなしの床はほぼ乾くこと…

サミシイの温度

 金曜の午後5時30分ちょうど、胸ポケットのスマートフォンが鳴り始めた。定時になったばかり…