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お、御社は本当に英語で会議してるんですかっ!?


#おすすめ英語学習法


旭日自動車(仮名):かつてコテコテの日本の会社だったが経営危機のためフランスのロサンジュから資本参加を受け外資系となる。

ロサンジュS.A.(仮名):国が株式を持つコテコテのフランス会社。旭日自動車とアライアンスを組む。

 

要約

 英語公用語化に成功したと言われる旭日自動車。マスコミが報道するように確かに英語を使って仕事をしている洗練された部分もあるが、すべての部署、すべての個人が100%英語公用語化に適応できているわけではない。理系にありがちな英語アレルギーのエンジニア、たまたま英語に接することなく月日が経ってしまったベテランなど、苦しんでいる人は少なくないのだ。

私は、部下の誰もが日々英語を使って仕事をする部署にいたのだが、あるとき部下の二割しか英語がしゃべれない部署に異動になる。その部署では、英語アレルギーや諦めが蔓延し、部下を英語学習に向けることが難しく、英語の勉強会などを企画しても乗ってこないという状況だった。

旭日自動車の英語はお勉強ではなく、実戦だ。間違えないことよりも、どうにか相手に意思を伝えることの方が何倍も重要だ。そのために、発音や文法は完璧である必要はない。ましてやネイティブのように話す必要はまったくない。じっさい、旭日自動車の現場で使われているのはそのような英語だし、草の根レベルで英語公用語化に成功したことの裏にはこうした現場英語の貢献が大きい。そして、この現場英語は企業文化として自然発生し、ある時期から自然に育っていった。

部下たちにそれがわかってもらえれば多少とも英語に関してハードルが低くなり、英語学習にモチベーションを持ってくれるのではないだろうか。そう思って毎週、部下たちに向けてコラムを書き始めた。飽きさせないよう、以下のように様々なテーマから構成されている。これはそのコラムを集めたものだ。

 

・続く勉強法、効果的な勉強法

・旭日自動車で、英語でコミュニケーションする意義

・モチベーションの保ち方

・英会話獲得の脳のメカニズム

・旭日自動車英語公用語化成功の秘訣

・旭日自動車英語は普通の英語と違う(いい意味で)

・短期間省エネTOEIC攻略法

・英会話習得した人のエピソード

 

コラム全体を通じて、現場レベルでなぜ旭日自動車が英語公用語化に成功したのか、その実情が浮かび上がる。

 

 まえがき

タイトルは、他社との交流会で出た言葉だ。我々旭日自動車の面々は顔を見合わせ「え?、ええ・・・」と戸惑いながら答えた記憶がある。

旭日自動車では、お互いの切磋琢磨や情報交換のため、関心があるテーマを掲げて他社と交流会を行う。もちろん秘匿に関することは言えないのだが、共通の話題を論議する中で新しい視点や考え方など気付きを得て自らの成長につなげるのだ。自動車会社は秘密主義が強い反面、外部との交流により世界で戦うための知識や情報を取り込むことが大切なのだ。

昼の部が終わったあとに夜の部がある。夜の部とは、お察しの通り懇親会、つまり飲み会のことだ。夜の部の方に本当の論議、本音の話ができるので、当然ながらこちらのほうが面白い。職場の愚痴や上司の悪口、仕事の困りごと、傷をなめ合ったりと赤ちょうちんの乗りで盛り上がるのだ。

ロサンジュとのアライアンスを20年以上経験し、グローバルに成長した旭日自動車は、英会話ができないと仕事にならならない。海外との会議は部署単位、グループ単位、プロジェクト単位、そして個人間と、目的や規模に応じて様々だ。

朝、出社すると北米のアメリカやメキシコ、南米のブラジルやアルゼンチンとの会議で始まる。これら拠点の現地時間は夜だ。それが終わると中国との会議を行う。そのうちにタイやインドが朝になり稼働し始める。夕方になるとヨーロッパが朝を迎える。ロサンジュやイギリスをはじめ、ヨーロッパの拠点と会議が始まる。そして夜になるとまた、南北アメリカ大陸が朝を迎える。

こうして会議を通して一日で世界一周する毎日だ。こんな生活を何年も送っていたから英語で会議をすることは空気のようなもので、意識することもなくなっていたのだ。役員への報告資料は英語だ。日本人しかいないとわかっていても資料は英語で作る。ひょっこりと外国人の役員が参加することもあるためだ。日本人だけのときはさすがに日本語で報告するが、途中から外国人の役員が参加すると会議は英語になる。英語の資料は海外に展開するときにそのまま送ることができる。日本語の資料では英訳するときにタイムラグがでるし、だいいち英訳すると役員が承認した文書と異なる情報を伝えることになる。気を付けて英訳したとしても原文との差はどうしても生じる。これは、グローバルに同じ情報、同じ認識を持ち、足並みをそろえて仕事をしなければならない場合、重大な問題になる。英訳がまずいと優先度や重要度のニュアンスが変わってくるからだ。

まあ、こんな感じだから英語で仕事をすることなど歯磨きのような日常だったし、他のグローバル企業も似たり寄ったりだと思い込んでいたのだ。それに、以前から旭日自動車の英語公用語化や英語での会議は盛んにマスコミで取り上げられ、今では話題にもならない。もうそんなことは世間も認知していてニュース性はないのだ。

だから、懇親会で相手側の会社の人から「お、御社は・・・、本当に英語で会議してるんですか?」と恐る恐る聞かれたときは意図が読めなかったのだ。それで、私と同僚は顔を見合わせて「え?ええ・・・。そうですけど、それがどうかしましたか?」と答えたのだ。相手の反応は「えーっ、本当に英語で会議してるんですかぁっ!?私なんか絶対、旭日自動車でやって行けない!」と、頭を抱え込んだ。そのリアクションにはこちらの方が驚いてしまった(大げさなリアクションはお酒のせいかも知れないが)。

聞くと、その会社では英語で会議することなど考えられず、もし英語で会議したとしても会議が成立しないとのことだった。では海外とのコミュニケーションはどうしているかと問うと、会議をするときは通訳を入れるとのことだった。その会社は旭日自動車と同じくグローバルに展開している大企業だったため、そんなことでどうやって仕事が回るのか、我々からすると不思議でたまらなかった。それほどの大企業がグローバルにマネージするためにはそれぞれの部署が日々海外拠点とコミュニケーションしなければならないはずだ。部署もたくさんあるはずだから、それぞれが会議でいちいち通訳を入れていたら日本中の通訳を全員集めてもまだ足りないのではないだろうかと思ったのだ。

とはいうものの、私のいた部署でこそ英語での会議が普通だったが、これは旭日自動車の平均的な姿を映しているわけではない。すべての部署、すべての従業員がこんな調子で英語を使って仕事ができているわけではないのだ。

マスコミは外資系となった旭日自動車の英語公用語化を好奇の目で見たり、大企業の挑戦としてセンセーショナルな話題作りをしてきた。そのため、世間では必要以上に誇張されたイメージが定着し、真実の姿がゆがめられて伝えられてきたように思う。確かに、役員が出席する会議は実際に英語で行われ、参加できる人は英語で自由に意見を交換できる人に限られる。これは、マスコミが報じるイメージと同じだ。

一方、今なお英語に苦しむ従業員、英語化が不十分な部署が存在するのも事実だ(それでもどうにかやり通すのだが)。これらの部署や人たちは、理数系は得意だが語学が苦手な技術者、今まで英語にあまり接することなく済んでしまった比較的年齢が高い層、現場で作業を中心にやってきた人たちなどがいる。

しかし、そんな部署や人たちにも英語化の波は容赦なく降りかかってくる。たとえば、海外から研修生が現場を学びに来たときは、現場の担当者が手取り足取り四苦八苦しながら英語でノウハウを伝えなければならない。海外の現場でトラブルが起きたときはそこに出張して現地人とコミュニケーションを取りながら問題解決にあたる。また、車両評価ドライバーは繊細な車両の評価を行う専門家だ。彼らは高校卒業採用のなかでも優秀な人たちが選ばれるのだが、いかんせん受験勉強並みに英語を勉強しているわけではない。しかし、海外エンジニアに評論家張りのコメントを伝えなければならない役柄なのだ。

このように旭日自動車の英語公用語化は、世間一般のイメージと同じハイソでスマートな部分と、現場に即した泥臭く地道な部分がある。毛細血管を流れる血液のごとく世界の隅々まで情報と意思疎通と言う栄養を行きわたらせ、グローバル企業の基礎体力となる重要な部分を担っているのが後者だ。これが英語公用語化に成功した巨大企業の実像なのではないだろうか。

しかし、この毛細血管のような「英語公用語化」は一朝一夕に成しえたわけではない。大変な努力、大変な苦しみを伴い、環境整備、意識改革などが一体となって長い時間をかけて成しえることができたのだ。

さて毎日会議で世界一周し、また実際に出張で世界中を飛び回っていた私なのだが、次に異動した部署では英語で海外とコミュニケーションできる担当はわずか1割程度だった。そのため、英語の仕事が多く入ってくるとすぐにその担当たちがオーバーフローしてしまい、業務に支障が出てしまう有り様だった。どうにも立ち行かなくなってくると部署として仕事を選ぶことになり、社内の信頼と自部署の成長の機会を失うことになる。

とは言え、部下たちに英語をやれと言ったところですぐにできるわけではない。特に四十歳を越えると馴合いや諦めが出て、変化にも挑戦にも躊躇するようになる。中には入社時にTOEICを受けて以来一回も受けていないという人もいる。だがこうした人たちの英語力を少しでも底上げし、英語の仕事に参戦させないことには組織も個人の将来も先細ってしまう。なんとか手を打たなければならない。

そうした部下に私が講師になって英語の勉強会を提案したのだが、なかなか乗ってこない。強制的にやらされるという警戒感なのか、はたまた学校教育で今まで苦しめられ続けてきた英語に対するアレルギーなのか、これは一筋縄ではいかない。

いったん英語の会議に踏み出した部下は、速度こそ人それぞれだが自分で成長し始める。こうなればしめたものだ。問題はいかに地道な学習を継続させ英語会議デビューのための基礎的な力をつけさせるか、そして英語会議デビューの最初の一歩を踏み出させる勇気を持たせるかだ。北風と太陽ではないが、強制的にやらせても、強制力がなくなった瞬間に学習を止めてしまう。習得に長い時間がかかる英語は強制ではなく、自らモチベーションを持たなければモノならない。こうした人たちを勇気づけ、希望を与え、なだめすかして、とにかく英語学習のモチベーションやきっかけを掴んでもらうためにはどうしたらいいのか。それを強く考えるようになった。

実は私は、今でこそ英会話に不自由なく仕事をしているが、理系の御多分に漏れず入社以来ずっと英語アレルギーだったのだ。英語がまともにしゃべれるようになったのは四十歳を過ぎたあとだし、TOEIC800点と英検準一級を達成しているもののそれは四十五歳を過ぎてからだ。私の英語力向上は遅咲きだったのだ。

学生時代の私は、英語は全くダメ、入社時に受けたTOEICは300点台、怠け者で勉強嫌いという理系の典型で、およそ英会話をマスターできるようなタマではなかった。それがどうやって英語力、英会話力をつけることができたのか。年齢が上がっても、忙しい仕事の中でも、工夫と継続と機会で英語力は伸ばせる。それは、旭日自動車が英語公用語化に成功した要因とも符合する。私は旭日自動車が英語公用語化に成功する過程で、自分自身も英語公用語化に成功していったのだ。これらは、あたかも車の両輪のように相乗効果をもたらした。

この過程を、旭日自動車での会議の様子、エピソードや自身の経験などを交えて伝えれば、苦しんでいる部下の英会話習得のヒントになるのではないか。また、英語学習のコツや、英会話力習得のメカニズムなどもわかれば自ずと学習法もわかってくるのではないか。さらに、心理的ハードルを下げれば英語へのアレルギーも弱まるのではないか。それらを毎週一回部下に伝えて勇気づけ、励まそう。そう思ったのがこのコラムの始まりだ。その効果があったのか、最初は懐疑的に見ていた部下の多くが小さな一歩を踏み出し始めたのだ。

このコラム集を読んだ人は、世間で言われるより旭日自動車の現場での英語公用化は泥臭く、洗練されたものでもなく、そして人間味あふれたものだということがよくわかると思う。そしてそれこそが成功の秘訣だということも感じられるのではないだろうか。読者が少しでも英語力向上にモチベーションと希望を持ち、英語公用化に苦しむ企業のヒントになってくれたらこの上もない喜びだ。

 

1.つれづれなるまゝに、英語について書き付くれば

今年度、1年間50回にわたり、英語のコラムを書いてみなさんに配信したいと思います。みなさんに英語で楽しく仕事ができるようになって欲しい、昇格のためにTOEICで目標点を達成して欲しいとの思いです。

以前、英語力向上のために私主催の勉強会や塾を提案しましたが、強制的に勉強させられることに抵抗感があるのか、乗りが悪かったですね。

我々は今まで学校教育で英語を強制されたり、英語で評価されたりし続けたので英語に対して良い感情を持っていません。強制では長続きしないし、効果も限定的です。

なので、まずはコラムでも読んでもらって少しでも興味を持ってもらったり、へえーと思ってもらっえればいいかなぁと思ったのがきっかけです。みなさんの、自身の中から湧きあがるモチベーションがいちばん大切だからです。

テーマは以下のように色とりどり考えています。

・続く勉強法、効果的な勉強法

・旭日自動車で、英語でコミュニケーションする意義

・モチベーションの保ち方

・英会話獲得の脳のメカニズム

・旭日自動車英語公用語化成功の秘訣

・旭日自動車英語は普通の英語と違う(いい意味で)

・短期間省エネTOEIC攻略法

・英会話習得した人のエピソード

 

あまり構えないで、ぶらっと立ち寄る本屋の立ち読みのように、仕事の合間や気分転換に軽く読んでもらえればいいと思っています。

1年間50号発行するつもりなので、1つでもみなさんに刺さるテーマがあればうれしいです。

そして、それが新たな仕事のチャンスや、新たな喜びの発見につながって欲しいと願っています。

それでは、次週から始めますので期待しないで待っていてください。私も肩の力を抜いて、徒然なるままに書いてゆきたいと思っています。


2.スタートラインに戻って始めるときの勉強順は?

 私は以下のステップが自然だと思っています。

 会話: (ごく基礎の単語→)文法→単語→リスニング→スピーキング

読み書き: (ごく基礎の単語→)文法→単語→リーディング→ライティング

 ここでは会話についてお話しします。みなさんの関心事は、最終的に英語で仕事ができるようになるためにはどうしたら良いかということだと思うからです。

基礎の単語(be動詞とか、名詞、動詞)が無いと文法が勉強できない、単語を知らないとリスニングできない、リスニングできないとスピーキングが難しい、というロジックです。もちろん、必ずこうでなければいけないということはありませんが、英語はある土台の上に積み上げて上達していくので、積み上げ方はこれが効率的なのではということです。

スピーキングしていてリスニングが弱いと思えばリスニングを強化してもいいし、リスニングをしていて知らない単語が出てきたら単語の勉強をしてもいいし、スピーキングをしていて文法の必要性を感じたら文法をやってもいいし、リスニングしながら単語を憶えてもいいのです。要はPDCAを回すことが大事なのです。

また、文法を完全に憶えるまで単語をやらない、というのもナンセンスです。同時にやっても全然かまいません。その方が効率的ならどんどん取り入れればいいのです。これが正解というものはありません。

文法→単語→リスニング→スピーキングのサイクルをこまめに回していくのがバランス良く、早く英会話取得に到達する方法だと思います。

スタートラインに戻るので中学英語から始めるのがいいですね。そんなのわかってるよ、と思うかもしれませんが、やってみると意外に忘れていたり、憶えていなかったりすることもあります。急がば回れです。

さあ、中学英語から始めてみませんか?

 

3.怠け者がTOEIC 800点を取った話

  

昨年、会社の講演会でこの話をしましたが、聞いてない人もいるのでそのときのおさらいです。

怠け者とは私のことです。

中学生のときから英語は大の苦手。勉強嫌い、コツコツやるのも嫌い、どうにかサボる手はないかといつも考えているような私でも45歳過ぎて200点伸ばして 800点取りました。

そもそもTOEICの点数を伸ばすことにモチベーションを持っていませんでした。当時プロモーションに必要な点数は超えていたし、何不自由なく英語で仕事をしていたからです。

それでは、どうやってモチベーションを持ったかというと、何かの拍子についカミさんに宣言してしまったのと(カミさんに対しては負けず嫌いです)、800点はかっこいいと思うことにしたのです。

で、何から始めたかというとTOEIC攻略本を読むことから始めました。3冊ほど読んだけど、どれも同じことが書いてありました。ポイントは下記2点です。

①TOEIC公式問題集をやってPDCAを回すこと

②リスニングは英文先読み、ナレーションを聞きながら設問回答するテクニックを習得すること

で、公式問題集5冊を買って自分なりの勉強法を開発しました。

当時、月60~100時間も残業していましたから、平日はほとんどまとまった時間が取れませんでした。

なので①問題の分析と②リスニングトレーニングは週末に集中してやって、平日の通勤時間帯に“ながら勉強”できるメニューを考えました。単語CDを聞いて単語を憶える、公式問題集のナレーションを聞いてリスニングのトレーニングするなど、通勤時間の有効活用をしました。

また、寝る前はどんなに疲れていても1語でもいいので英単語の本を見ることにしました。

要は、(意識して)がんばらなくても英語が学習できるように習慣化を行ったのです(習慣化については以前書きました)。

これを続けて行くと、ぐんぐんと点数が伸びて1年弱で800点に到達しました。

5回ほど受験しましたが5回とも800点を超えたものの、それ以上は大きく伸びませんでした。

考えてみたら、800点を最低限の努力で最速で達成するように勉強プログラムを組んだために、800点以上の勉強をすべて切り捨ててきました。

あまりにも無駄のない勉強法だったのでそれ以上伸びなかったのですね。

みなさんはプロモーションのためにTOEICの点数は必要ですし、TOEICで得た英語力は実際の仕事にもつかえます。

怠け者でも工夫すれば短時間で伸びます。なので、目標まではがんばりましょう!

 

Appendix

800点以上は目指さなかったのかというと、点数を伸ばすだけの勉強に意義が見いだせませんでした。それよりも、時間をもっとほかのことに使おうと思ってきっぱりと止めました。

役に立たなかったかというと、みなさんに体験談として伝えることができるのでそこはよかったと思います。

 

4.理想の英語学習法はあるか?

私はいつも仕事をやるとき、次のようなプロセスで考えます。

目的→目標→現状把握→方策→実行→検証→改善

これは、私のオリジナルのつもりなのですが、よく考えるとPDCA(Plan計画、Do実行、Check検証、Action改善)と同じことを言っています。私のプロセスは、Pのところが、目的、目標、現状把握、方策の4段階に細分化されていると言っていいでしょう。

さて、学習の作戦を立てるとき、どうするのがいいと思いますか?

他人のことを客観的に見るのはそれほど難しくありません。あそこが弱い、ここがダメだ、そんなやり方じゃうまく行かない、などと他人のアラはよく見え、ああしたらいい、こうしたらいいなどとアドバイスもすらすら出てきます。

ところが、自分のことを客観的に見るのは非常に難しいです。実は、脳は自分のことを贔屓目に見るようにバイアス(偏り)がかかってるんですね。

そこで登場するのが「メタ認知」という手法です。簡単に言うと、他人を見るように自分を客観的に見るということです。幽体離脱して、自分を2メートル後ろの上側から眺めている状態を想像してみるといいかもしれません。そうすると、今まで自分では気づかなかった弱点がわかります。

他人の学習メニューを考えるように、作戦を考えましょう。自分がやるとなるとどうしても邪念が入るので、一旦自分がやることは忘れて、あくまで他人のメニューとして考えましょう。

これが、あなた用にカスタマイズされた学習メニュー案となります。案というのは、本当に合っているかどうかは、実行してみないとわからないからです。良ければ強化する、悪ければ改善するというサイクルを回していくことにより、あなたにより合った学習法となっていきます。

(優秀な人は、このメタ認知ができる人だ、という話もあります。メタ認知についての詳細はこちら↓)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%BF%E8%AA%8D%E7%9F%A5

一人ひとり弱点や性質が違います。一般的によいと言われる学習法はありますが、それが自分に合っているとは限りません。

一般の参考書は、たいてい方策のことだけしか書いていません。でも、学習法を選択するときは、方策の前に現状把握(自己分析)が必要なのです。

つまり、理想の学習法というのは、これが一番というものはなく、自分で作った自分用にカスタマイズされた学習法なのです。

 

ところで、やっぱり自分のどこが弱いのか、どのような学習法が向いているのか、まったく見当もつかないという人は多いと思います。そんな人のために、英語のコンサルがあるとのことで、最近流行っているようです。

私が好きな第二言語習得論(科学的英語習得法)を基本に置いていて、期待が持てそうです(私は回し者ではありませんが・・・)。このなかでやっているのが、分析(「メタ認知」)とPDCAの機能をプロのコンサルタントにお任せすることなんですね。これなら伸びるはずだと私などは思うのですが、いいお値段しそうです。

↓たとえばこんな記事

https://goodbyejapan.net/consulting

 

まあ、高いお金を払わなくても、学習法の数はそれほど多くないので、そのどれを選ぶかということにしかなりません。

(結局、どのコンサルもシャドーイングを学習法のメインに据えているようです。シャドーイングについては別途)

安く済ませたい人は、やっぱり「メタ認知」の習得とPDCAを自分で回すことをお勧めしたいです。


5.英会話するのに、文法と単語はどこまでやればよいか?

私たちの生活や行動をすべて英語でやろうとするとちゃんとした文法と、非常にたくさんの単語を憶えなければいけないでしょうが、仕事に限ってギリギリに切り詰めると、いったいどこまでやればいいのでしょうか?

まずは、私たちの英会話の目的、目標を下のように置きます。

目的:英語で仕事ができようになりたい。

目標:社内の英語の会議で説明、論議、合意が最低限できるようになる。

実は、仕事の英語はいちばん簡単だと思っています。詩的な表現も、文学的な言い回しも、気の利いたジョークも不要です。事実や考えを淡々と話していけばよく、要は機械的に英語化できればいいのです。

たとえば、下のような言い方で最低限の説明は可能です。

・○○は□□です。

・△△は××します。

もう少し付け加えて、

・△△は☆☆を××します。

・私は、○○を□□であると考えます。

これも中学英語の範囲内です。

逆に難しい言い回しや単語は、社内の会議ではマイナスです。難しい言い回しや単語では、様々な英語レベルの人が参加する旭日自動車の会議では、共通の認識を持つことが難しいからです。じっさいに、社内の英語会議に参加してみると、非常に簡単な英語で成り立っていることがわかります(え、こんなレベルでいいんだ、って感じです)。

また、会話の頻出フレーズは60パターンぐらいで事足りるそうで、それを見たら私が会議で使うフレーズはほぼ入ってました。たった60パターンで英会話ができるんだったら、これはすべて暗記ですよね!

 

そうすると、必要な文法はまず手始めに中学英語ぐらいでいいと思います。また、基礎的な単語も中学英語ぐらいから始めましょう。800語と言われています。

高校英語は必要かというと、受験用の抽象的な単語は必要ないでしょう(ただし、「比較する」とか「相対的な」のような仕事で使える単語もあるので、そういうものだけピックアップすればいいと思います)。

では、仕事の英単語はいくつ必要でしょうか?知らない単語を英語で説明するよりは、知っている単語一言で伝えた方がはるかに楽です。そうです。英会話では単語を憶えたほうが断然楽だしスピーディーなのです。上記で、目標を「社内の英語の会議で説明、論議、合意ができるようになる」と置きました。

 

我々の会議を思い出して、シーンごとに分けてみましょう。

・出席者の確認、始めの挨拶

・会議の趣旨説明(目的、議題、目標など)

・内容の説明

 ・技術的説明(幸い旭日自動車では、技術用語はほとんどが英語です。「溶接」や「溶け込み」、「公差」「引き溝」など、日本語で日常使っている用語を英語化して持っておけばOK)

 ・プロセスやマネージメント

 ・今後のアクションと日程

・質疑(想定質問と回答)

・決定事項の確認

・会議の締め

 

これらに対し、具体的な英文を用意し、単語を書き出してすべて憶えれば英会話は成立するはずです。

唯一予測できないのが質疑ですが、想定質問が読めればそれなりに準備は可能です。

いくつの仕事単語が必要でしょうか?おそらく多くても1000語は行かないと思います。とりあえず500語と置いてみましょう(私たちの仕事単語集ができると役に立つと思います。みんなで作ってみませんか?)。

そうすると、中学単語800語+仕事英語500語=1300語が最低限身につけるべき単語数ということになります。既に中学英語を500語憶えているとすると、残りは800語です。これは、1日に2語+α憶えると、1年で憶えられるボリュームです。

これだったらできる気がしませんか?ゴールは意外と近いかも。

さあみなさん、中学英語の本を買いに行きましょう。

 

6.TOEICも、やっぱり中学英語からはじめよう

TOEICの点数が低い人へ、公文の先生からのアドバイスです。

公文の先生と言っても私のカミさんです。私のカミさんは公文教室で英語の先生を10年以上やっておりました。

3~4人の先生で回すような大きな教室で、カミさんはそこで英語専任でした。

先生になったきっかけは、息子の入会で教室を訪問したときに大人(自分)も勉強できるか?と聞いたところ、

そのように学習意欲が高い人は先生にぴったりだとスカウトされたことでした。

それはさておき、その10年以上の間、カミさんは英検対策指導も専任でしていました。

なんとその合格率は99.3%(推定)で、驚異的な合格率でした(不合格の生徒の話はAppendixで触れます)。

特に、中学生では英検準2級を取ると高校受験の内申点に加算されるとのことで、

親御さんからも感謝されていました(1年前に教室のオーナーが亡くなったのを機に辞めたのですが、英検指導の合格実績を知った公文の本部からはしつこく誘われました)。

私が、「どうやって指導したの」と聞くと、「秘訣があるのよー」と教えてくれました。

・自分からやりたいと言ってきた生徒だけ受けさせる(やりたいと言い出すまでがまん。自分からやりたいと言わせるように仕向ける)。

・その生徒(一旦やりたいと言い出した生徒)には英検対策の特別指導を行う(詳細は下記)。

・そうすると、くじける生徒が出てくるのでほめておだてて乗せて、励ましつづける(すごーい、がんばったね!絶対できるよ!etc)

 

じゃあ、具体的にどのような勉強をさせたかというと、以下のようなやり方です。

・まず、中学3年間の総合復習問題集をやらせる(なるべく薄い問題集がよい)。

↓たとえばこんなもの(私もこの連休中にやってみましけど、チャート式の方は薄くてやる気になります。公文は文法の説明が多いのでみっちりやりたい人向けかな)。

・そうすると、できるところ、できないところがわかるので、できないところ(単元)を公文のプリントで重点的にやらせる。単語は英検用の単語集をやらせる。

・過去問で確認&実戦練習で、本当にできているか確認。出来ていなければそれに合った課題を出す。

(面接練習ももうひとつの重要なポイントなのですが、ここでは割愛します)

 

特段変わったところは無いように見えますが、PDCAをしっかり回しているというのが秘訣です。

カミさんの役割は、P)弱点を分析して作戦(学習計画)を立てる、C)それが結果につながっているか確認する(効果が無ければ修正する)、です。

また、D)学習、A)軌道修正をしているか、も管理します。

要はコンサルタントなのですね。子供だと自己分析や自己管理が弱いのでそこをサポートしてあげるのです。

我々大人はこの部分を自分でやるしかありませんね。

 

カミさんにTOEIC 点数が低い人へのアドバイスを聞いたところ、次のように帰ってきました。

・モチベーションを持つこと(自分で目標を持ったり、周囲の人に励ましてもらうなど)

・絶対目標点を取れると信じること。

・TOEIC問題集から始めてはダメ(いきなりやると敗北感しか残らない)、中学英語からはじめること、なるべく簡単な問題集から。

 

さあ、中学英語から始めましょう!

 

Appendix

ちなみに、英検を落ちた数少ない生徒は、はどんな生徒だったのでしょう。その子は教室でも優秀な子で、数学などは小学生で高校レベルまでやっているような子でした。その子が、果敢にも小学生で英検準2級を受験して2回落ちたそうです。その後、3回目で受かったそうです。優秀とは転んでも立ち上がる、あきらめないことかも知れませんね。

 

7.エピソード記憶が英会話習得のキモ!

一部の人から私の文章が長いとのコメントもらいました。なるべくA4で1枚に収まるように書いていますが、熱が入るとついつい長くなってしまいます。追加説明はAppendixに入れることにしたので、時間の無い方は飛ばしてもかまいません。

我々が英語を習得するとき、3種類の記憶が関係しています。

インプット

1)意味記憶

2)エピソード記憶

アウトプット

3)手続き記憶

 

今日はこのうち、エピソード記憶についてのお話です。

意味記憶は、文字通り言葉の意味を憶えるような記憶で、繰り返し学習することにより定着するような記憶です。単語や文法を憶えるのは意味記憶です。学校で習う英語はほとんどが意味記憶だと言えます。仕事でいうと、基準書の内容を憶えるようなものは意味記憶です。

エピソード記憶は、感情や場面と結びつき、ストーリーとして憶える記憶です。これは、1回で憶えることができる記憶です。仕事でいうと、失敗したり怒られたりして、二度と忘れられない記憶はエピソード記憶です。また、エピソード記憶は意味記憶を関連付ける働きをしているとも言われています。

こうしてみると、意味記憶だけでなくエピソード記憶を織り交ぜることでより効率的、実戦的な英語力が習得できそうです。

留学や実戦で英語学習が促進されるのも、そこに緊張や興奮、失敗や成功など強烈な印象とともにエピソード記憶として刷り込まれるからでしょう。

また、実際の場面や感情と結びついているため、同じような状況に遭遇したときにすぐ記憶を呼び戻せます。思わず英語が口をついて出た、というのはこういう状況です。意味記憶は実際の状況と結びついていないため、いざというときにすぐ出てきません(日本人が、英会話が不得意な原因のひとつです)。

このようにエピソード記憶は1回で憶えられ、実戦的で強力な記憶(学習法)ですが、デメリットもあります。記憶するのに、じっさいに「エピソード」が必要なのです。じゃあ、エピソードはどうやって作るかというと、実際に英語をしゃべって強烈な感情や場面を経験するしかないのです。日本人は失敗を恐れてあまりしゃべらないですが、これでは経験は得られません。

さあ、英語をたくさんしゃべってたくさん失敗しましょう。それが、エピソード記憶となって英会話習得の近道になります。

Appendix

ところで、なぜ我々人間にはエピソード記憶という強力な記憶法が備わっているのでしょうか?動物は、経験から得られる失敗や成功を記憶し、次によい結果がもたらされるように行動を変えるように進化しました。1回で記憶できる個体と、記憶できない個体ではどちらが生き延びやすいかというと、前者ですよね。我々はこのようにエピソード記憶(脳)を進化させて生き延びてきた動物なのです。そんなに素晴らしい記憶法なら使わなければ損です。ありがたく使わせてもらいましょう。

 

エピソード記憶を使うには実戦がいちばんですが、それ以外にも使える方法はあります。

映画を英語で見るのは、ストーリー(場面)と会話が結びつくのでエピソード記憶ですね。

私は、英語のドラマを聞きながら通勤していましたが、場面を思い浮かべながら聞いていたので、今思えばエピソード記憶です。

単語を憶えるときに文脈で憶えろ、という話があります。これは、文脈をストーリーとして捉えられるならエピソード記憶です。そうでなければ意味記憶と同じです。

それから、英単語連想記憶術(いわゆるダジャレ)というのもあります。これは比較的憶えやすく私も好きなのですが、エピソード記憶の一種と言えるでしょう。例:エビ、ダンスする証拠写真→エビデンス=証拠

スピードラーニングというのは私はやったことがないのですが、ストーリーを日本語で解説しながら英語を聞くというものらしいです。うまく場面に没入できればエピソード記憶になると思います。ですが、効果は人によってまちまちのようです。


8.「手続き記憶」が英会話習得の正体!?

 前回は英語習得に関係する記憶のうち、1)と2)をお話ししました。今日はアウトプットのための記憶である、3)手続き記憶です。

 インプット

1)                     意味記憶

2)                     エピソード記憶

アウトプット

3)                     手続き記憶

「手続き記憶」は名前からどんな記憶なのかイメージしにくいですね。英語ではProcedural memoryといいます。Proceduralは手続きや手順という意味ですが、スキル、コツ、技能と捉えた方がわかりやすいですね。自転車や水泳などのスポーツ、楽器の演奏、タイピングや箸使いなどは手続き記憶です。手続き記憶は運動に関する記憶であることが分かりますね(もしかしたら、リスニングのコツも手続き記憶かも知れませんが、そのように明言している書物は見つけられませんでした)。しゃべりも口やのどの筋肉を複雑に使うので、ある意味、運動の仲間です。手続き記憶は言葉で説明できないことが多く(長嶋茂雄が打撃を「スーッと来た球をガーンと打つ」と指導した話は有名です。自転車の乗り方を言葉で表現できないのも同じです)、意識しなくても使うことができます。いわゆる、「体が憶えている」状態です。

手続き記憶は時間をかけて学習する必要がありますが、いちど習得すると考えなくても素早く応答することができます。「英語脳」と言われているものはまさにこれですね。

なぜ日本人は英語がしゃべれないのか?とよく言われますが、脳科学的に言えば、日本の英語教育は「手続き記憶(=繰り返し口に出して練習)」をほとんどやっていないから当然ですね。

それでは英会話を「手続き記憶」するにはどうしたらいいでしょうか?スポーツや楽器の練習をイメージするとわかりますが、実際に口を動かして繰り返し練習することです。とは言え、効果的な練習法は研究されています。ひとりで出来るトレーニング法で、もっとも効果があると言われているのがシャドーイングです。下に、代表的なトレーニング法を列挙します。興味がある人は試してみてもいいでしょう。

さあ、自転車や楽器の練習をするように、まずは口を動かし始めましょう。

 

Appendix(飛ばして構いません)

口を動かす代表的なトレーニング

シャドーイング

英語のナレーションとほぼ同時だがやや遅れて(0.2秒ほど)ナレーションを声に出して再現するトレーニング法。リスニングとスピーキングが同時にトレーニングできる。現在、いちばん効果があると言われている。参考図書:決定版英語シャドーイング、門田修平、玉井健著

 

リピーティング

ある長さの英語を聞いたあとに、それをそのまま自分の口でもう一回声に出するトレーニング方法。これも、リスニングとスピーキングが同時にトレーニングできます。

 

音読

文字で書かれた文章を声に出して読むトレーニング法。リスニングがトレーニングできないので効率悪いかな。

 

絵を見てぱっと英語で言うトレーニング

正式なトレーニング名はわかりませんが、文字通り絵を見て瞬間的に英語でしゃべる方法です。日本語が介在しないのでお勧めです。

 

瞬間英作文

簡単な日本語の文章を瞬間的に英訳して口に出します。日本語が介在するのであまりお勧めはできないかと。直訳でなく意訳でトレーニングすれば効果ありかと。


9.外国人力士はなぜみんな日本語がペラペラなのか?

 外国人力士のインタビューを聞いたりすると、みんな日本語が大変うまいのに驚かされます。なぜ、こんなに上手になるのか?英会話習得に苦労する我々日本人にしてみると、不思議ですよね。何か、英会話習得のヒントがあるのではないでしょうか?

 さて、こう思ったのは私だけではなく、早稲田大学の宮崎里司教授が何人もの外国人力士の調査をしています(外国人力士はなぜ日本語がうまいのか、宮崎里司著)。

まず、外国人力士のなかで(日本人が英語を勉強するように)体系的に日本語を勉強した人はいません。彼らはまったく日本語がわからない状況で、外国からいきなり身一つで相撲部屋に放り込まれます。英語教育はすべて各相撲部屋独自にやっていて決まった教育法があるわけではありません(これといった日本語の教科書を使っているわけではありませんし、日本語会話スクールに通っているわけでもありません)。

 苦労する人、努力する人、比較的簡単に身につける人まちまちです。

それでもみんなペラペラになるということは、日本の語学教育には無い何か大切な要因が潜んでいるということではないでしょうか。それは何でしょう?外国人力士に共通した環境を見ることによってそれが浮かび上がってきます。ちなみに、早い人で数か月、遅い人でも1、2年で日本語がしゃべれるようになるようです。

 ・通訳に頼らない(というか、通訳なんてつけられない)

・周囲の人のサポート(おかみさん、兄弟子が親身になって文法や単語を教える)

・さまざまな日本人との交流(つねに周囲に日本人がいる)

・24時間日本語漬け

・強い動機(人生をかけて来日している、日本語がしゃべれないと相撲界で生き残れない)

・間違えても気にしない、どんどんしゃべる

 脳科学的に言うと、意味記憶、エピソード記憶、手続き記憶(詳細はバックナンバー参照)がすべて含まれています(それに対して日本の英語教育は意味記憶のみ)。相撲部屋のように24時間英語漬けは難しいですが、この3つの記憶をバランスさせることは我々にもできるはずです。特に、エピソード記憶と手続き記憶は実践と失敗で強化されます。

 

外国人力士に、なぜ日本人は英語がしゃべれないか?と聞いたところ、「日本人は(英語を)しゃべらない、すぐ固まる」との答えだったそうです。恥ずかしがったり、間違いを恐れたりしてしゃべろうとしないことが、そもそもしゃべれない理由だということです。

さあ、間違っても構いません、外国人力士を見習ってまずしゃべりだしましょう!

 

10. 英語ができるエンジニアは貴重な存在!

何年か前の話になりますが、サプライヤのA社は旭日自動車のビジネス拡大にともなって急激にビジネスが増え、エンジニアの不足が深刻でした。我々もその影響を受け、開発の遅れや品質改善に苦労するなど様々な課題に直面していました。

 そこで、A社の部長に、もっと積極的にエンジニアの採用活動をするようにお願いをしました。するとその部長から次のように言われてしまいました。

「豊富な知識と経験、高度なエンジニアリングスキル、海外と渡り合える英語力、旭日自動車さんが求めるレベルのエンジニアが日本に何人いますか?募集はしていますが、まず、TOEICの点数を応募資格に入れた瞬間にほとんど応募が来ないんですよ」(特に、A社は外資系のため英語力が必須です)

 そうです、旭日自動車では下手なりにも英語をしゃべって仕事をしていますが、これは世間一般からすれば相当特殊な状況なのです。

逆に言えば、みなさんが仕事で英語が取りあえずでも使えるようになれば、それは世間一般からすると非常に希少で貴重なエンジニアということになります。

例えば、10人中1番のエンジニアが、10人中1番の英語力を身につけたとすると、それは100人に1人の希少性です。価値が10倍になったということです(価値は供給量に反比例します)。

 英語が出来ないのでエンジニアになったという人も多いでしょうから、そこが逆に狙い目です。

英語を身につければ、あなたの価値は格段に上がります。

数か月とか1、2年で自分の価値が何倍にも上がるなら、これはもうヤリですよね。少ない投資で大きな価値向上です。

さあ、英語力アップで自分の価値を高めましょう。


11.英語をしゃべれるようになるには何時間かかる?

 英語圏の人が日本語を話すのにかかる時間は2200時間だと言われています。これは、アメリカの外交官養成学校での研究結果です(外交官レベルの語学力の話なので、我々が話すレベルならもっと短いはずです)。反対に、日本人が英語を話すのになるのも同じ時間がかかります(難しい話ですが、これを専門用語で言語間距離といいます)。

 では、実際に我々は学校でどれくらい英語を勉強しているのでしょうか?

中学校で266.7時間

高等学校で361.7時間

大学で90時間、

合計718.4時間

(文部科学省2006~7)

ということで、意外と少ないですね。

家庭学習とか試験勉強の合計を仮に300時間と置いて(1週間に1時間、中学から高校まで6年間)、今まで1000時間+αぐらい時間をかけてきたとします。

 それでも、我々は英会話取得のための学習時間が絶対的に不足しているのです。乱暴ですが、ざくっと言うと1000時間ぐらい不足しています。

これでは英語がしゃべれなくても当然だと思いませんか?(そもそも学校教育の英語ではいくらやってもしゃべれないという話がありますが、ここでは置いときます)

 じゃあ、どうすか?

1日1時間学習したとしましょう。3年で1000時間になります。

3年で英会話ができるとしたら、意外と早くありませんか?

1日3時間なら1年です。

もっと早いですよね。

でも、1日3時間も勉強できないよー、と思うかも知れません。

そう思う人は回りを見てください。ラッキーなことに、我々の回りには英語に関する仕事がたくさんあります。

英語の資料、英語のe-mail、英語の会議、etc。今までなんとなく避けていた人は積極的に関わってみてはいかがでしょうか?

仕事をしながら(お金をもらいながら)英語の勉強ができます。こんなにおいしい仕事はありません。実戦ですからエピソード記憶が得られ、より効率的な学習にもなります。

さあ、積極的に英語の仕事に関わってみましょう!

  Appendix

ちなみに私が海外赴任して取りあえず英語がしゃべれるようになるまで、3ヶ月でした。

1日8時間で3ヶ月、稼働日数が月20日で計算すると、約500時間です。

まあ、500時間でもうまくやればしゃべれるようになるということかも知れませんね。

 

12.もう三日坊主とはおさらば、英語学習習慣化の最終兵器!・・・その1

 一念発起して参考書を開き、2時間勉強する。次の日、参考書を開いたけど30分で嫌になる。三日目、参考書を開きもしない。罪悪感、挫折感にさいなまれる。再び勉強を始めようと思っても、嫌な記憶がよみがえり、もう参考書に手が伸びない。なんで自分はこんなに意志が弱いのか・・・、おれってダメなやつ・・・。

英語学習者の多くがこんな状態なのではないでしょうか?私もそのひとりです。

 英語学習に大切なのは習慣化です。そして習慣化は、英語力習得への最大の壁でもあります。

どうすれば習慣化できるのでしょうか?根性でしょうか?モチベーションでしょうか?

 スタンフォード大学のBJ・フォッグ博士は誰でも成功する習慣化の方法を提案しています。

そのなかで、習慣化に意志の力は必要ないと説いています。また、モチベーションに頼ってはいけないと言っています。我々の常識とは逆ですね。意志の力やモチベーションが無くても続けられるなら、これこそ最高の方法です。

博士が書いた本は分厚い(550ページ!)ですが、要約して英語学習に当てはめてみました。以下のステップです。

 1)仕掛けをする(環境を整える)

2)考え得るもっとも小さな行動(学習)を選ぶ

3)行動(学習)を行うトリガーを決める

4)できたら自分をほめる(できなくても自分を責めない)

 

1)仕掛けをする(環境を整える)

単語カードやリストを作る、参考書を買う、英語のCDを買うなど、やろうと思ったらすぐできるように環境や道具を整える。

 

2)考え得るもっとも小さな行動(学習)を選ぶ

考え得る最小単位の学習を選ぶ。小さければ小さいほど良い。たとえば、壁に張った単語リストを1語だけ唱える、参考書を1行だけ読むなど。絶対続けられることが大切。簡単すぎてあほらしいことでもよい。ただし、量が増えれば効果があることを選ぶ。決して10単語とか、10ページとかがんばってはいけない。あくまで最小単位にとどめる。

 

3)行動(学習)を行うトリガーを決める。

上記最小単位の学習を、既に習慣化されている行動のなかで、どのあとにするかを決める。たとえばトイレに入ったときとか、車に乗り込んだ瞬間とか、歯を磨いたあととか、お風呂から上がったあととか。そのために単語リストや参考書のコピーなどをすぐ見られる場所に置く。たとえば、トイレだったら壁に貼る、歯磨きだったら洗面所に貼るなど。

 

4)できたら自分をほめる(できなくても自分を責めない)

やったー!とか、すごい!とか、ガッツポーズするとか、自分で自分をほめる。できなかったとしても決して自分を責めたり卑下したりしない(また明日やればよい)。

 

これだけです。大切なのは1)~4)をデザインすることです。意志の力を必要とするのは1)の環境やツールを整えるところだけですね。それ以外は、さほど努力しなくてもできますよね?たとえば、トイレに入ったときに壁に貼った英単語を1語だけ唱える。これだったらできます。で、唱えたら、ガッツポーズをして「すごい!」と自分をほめる。それで、もし2語を唱えたら、もっと自分をほめる。2語やりたくなかったら1語だけやる。やらなかったとしても自分を責めない。これならつづけられそうですね。

で、これをつづけていると知らないうちに単語数が増えたり、別の時間でも学習を始めたりします。(これは脳科学的なメカニズムがあり、非常に有効なのですが、長くなるのでまた別で触れます)

さあ、考え得るもっとも簡単な英語学習を始めましょう。それが習慣化の第一歩です!

  

Appendix

↓NIKEのホームページにも乗っています

https://www.nike.com/jp/a/best-way-to--new-habits


 

13.もう三日坊主とはおさらば、英語学習習慣化の最終兵器!・・・その2

 我々は学校の英語学習で劣等感や挫折感を植え付けられています。テストや宿題でいやーな思いをたくさんしているのではないでしょうか。また、英語は難しいもの、手強いものという意識を持っているのではないでしょうか。このような思いは、潜在意識となってネガティブな反応を引き起こします。英語の勉強をする気にならないのはこのためかもしれません。

 前回紹介したBJ・フォッグ博士の習慣化の方法は、そこに手を打っています。

いきなり難しいところから始めたら、当然できないし、嫌な気分にもなります。

そこで、誰でもアホらしいと思うくらい簡単なところから始めます。誰でも絶対にできるので嫌な気分にはなりません。

 さらに、すごい!と自分をほめることにより、いい気分になります。これって結構恥ずかしくて、抵抗感あるかも知れませんが、騙されたと思ってやってみて下さい。

人間は楽しくなくても、無理やり笑うと楽しくなります。それって、脳が楽しいと騙されているんですね。脳はとても騙されやすいんです。この性質を利用して、無理やりほめると、脳も本当にほめられたと思って気持ちが良くなります。

このとき、脳内ではドーパミンが分泌され、快感回路が働きます。そうすると脳はこの快感を「報酬」と理解し、その刺激をもっと欲しくなります。つまり、学習が促進されるのです。

 この方法のよいところは、苦痛を感じたらいつでもレベルを落としてよいことです。たとえば、1日の単語学習数が5まで伸びたとして、でもやっぱり今日は気が乗らないというときがあります。そのときは躊躇なく1とか2に落としていいのです。ネガティブな感情を避け、ドーパミンの分泌を妨げないようにすることが大切なのです。

もうひとつ、博士の方法で良い点は、何かの行動をトリガーに次の行動(学習)を置くことです。トリガーとなる行動は既に習慣化されていることですから、毎日必ず行います。だから忘れにくいのです。

たとえば、張り紙をしたり付箋を貼ったりするのは有効な手立てのように思えますが、だんだん周囲の風景になじんで忘れてしまいます。習慣化した行動は最高のリマインドなのです。

 さあ、脳科学的に合理的なこの方法、今すぐアクションしましょう!

 

Appendix

実は、ゲームの設計も同じ脳の特性を利用しています。ゲームの最初はとてもやさしくできています。何度かやっているうちにすぐに上達します。ちょっとできると脳内にドーパミンが放出され、快感を得ます。それが「報酬」となり、次の行動を促します。そうやってどんどんハマります。ゲーム依存症というのはこうして作られます。みなさんも、英語依存症にならないように気をつけましょう。

 

14. TOEICの「受験は要領」

 「受験は要領」という本があります。受験のバイブルと言われています。受験アドバイザーで受験の神様と呼ばれる和田秀樹氏(灘高→東大医学部)が書いた受験の指南書です。

まったく勉強など苦手な息子が小学校のとき、突然、中学受験したいと言い出しました。そんなことをまったく考えていなかった私はびっくりしました。私自身、受験テクニックを教わったことはないので息子にどうアドバイスしたらいいかわかりません。それで、ネットで探していたらこの本に当たったのです。

で、この本に何が書いてあるかというと、目標に最少の努力で最短で到達するためのテクニックとメンタリティーが書いてあるのです。

たとえば、勉強するのは出るところだけをやれ、出ないところをくそまじめにやるな、とか、受験勉強はくだらない、低レベルの勉強だ。とは言っても資格試験として避けては通れない。だったらそんなものは要領よくさっさと終わらせてしまえ、なんてことが書いてあります。

気に入ったので息子にアドバイスしようとしたところ、1週間で中学受験をあきらめ、遊び回っていました(やはり、私の息子です)。

ところが、この本は意外なところで役に立ちました。

以前、私が1年でTOEICを200点上げ、800点を達成した話をしました(詳細はバックナンバー参照)が、実は勉強法の作戦はこの本を参考にしました。

みなさん、TOEICの受験は要領です(それなりに努力は必要ですが)。さっさと点数を上げてしまいましょう。そしたら、実戦で使える英語に移りましょう。

 

Appendix(飛ばして構いません)

受験の世界には数多くの迷信がはびこっている。「受験勉強とは基礎からコツコツ積み上げていくものだ」「受験なんて最後は頭のいい奴が勝つのであって、凡人ではとても相手にならない」「数学は他の教科と違って丸暗記が通用しない科目だ」など……。

 

 こんな迷信にとらわれていては合格が遠ざかるだけだ! 実際には、大学入試は“運転免許の筆記試験”なみの暗記力テストにすぎない。受験の成否は出題される部分だけを憶え、いかに“暗記の貯金”を増やすかにつきるのである。

 

 本書は「絶望的な劣等生だった自分を東大理Ⅲ現役合格に導いた」と著者自ら語る驚異の勉強法を公開! 「数学は自力で解かず解答を暗記せよ」「英単語より英短文の暗記が受験向き」「カンペ作りで記憶の強化」など、即点数アップに結びつく“受験の要領”を伝授する、すべての受験生必読の「虎の巻」。

  さあ、いますぐ和田式受験勉強法を実践して、「合格」を最短距離でつかみとれ!

 

15.孫子の兵法でTOEIC攻略!

孫子の兵法を知っていますか?紀元前500年ぐらいの春秋時代に書かれた戦いに関する指南書です。世界最古のビジネス書とも言われています。

孫子の兵法

それまでは祈祷や占いで戦いをしていたのを、初めて戦いを科学的にアプローチしたものです。その意味では画期的な書物です。

「戦わずして勝つ」「己を知り、敵を知れば百戦危うからず」と言う言葉は孫子の兵法を知らなくても聞いたことがありますよね。

さて、孫子の兵法でいちばん重点が置かれているのは情報の収集、分析の大切さです。相手の兵力や手の内がわかれば効率的な作戦が立てられ、事前に準備ができます。なんだかわからないけど気合で戦う、というのは非効率ですし損失も大きいです。

 「そんなことはわかってるよと」言われるかも知れませんが、ことTOEICに限っては「わからないけど頑張る」、みたいな戦い方が多いように見受けられます。それというのも試験後の問題を回収されてしまうため、振り返りが出来ないことがひとつの原因だと思っています。振り返りができないと「己も敵も知る」ことができません(これを仕事では、PDCAが回らない、と呼びます)。

 そこで、TOEIC公式問題集の出番です。本番と同じグレード、同じナレーション、本番をシミュレーションできます。

自分で問題集をやってみると、何が弱いかわかります。つまり、「己を知る」ことができます。

そして、公式問題集の解説を読むと、TOEICの「手の内」が書いてあります。野球でいえば、「次は内角ストレート投げますよ」と言って球を投げるようなものです。早い球・遅い球、内角・外角、ストレート・変化球など、ピッチングの組み立てがすべて書いてあります。これで「敵を知る」ことができます。

どんな球が来るかわかれば心の準備ができて打率は格段に上がるし、どんな練習をしたらよいかわかりますよね。今までやみくもに素振り千回やっていたのを、「外角の変化球」などと狙いを絞って練習できます。

さあ、公式問題集でTOEICの「己を知り」、「敵を知り」ましょう。「百戦危うからず」です。


16.タクシー運転手が中学英語でぺらぺら!?

外国人の観光客は年々増えています。コロナ禍で一時外国人観光客が激減しましたが、コロナが収まって外国人観光客が戻ってきました。東京のタクシー業界にも英語に対する需要が高まっているそうです。東京オリンピックがタクシー運転手の英会話取得を推進する原動力になったとのことです。

タクシー乗務員の登録や指導、研修などを行っている東京タクシーセンターは、タクシー運転者向けの英語研修を行っています。延べ1万3千人が講習を受けています。

羽田空港国際線ターミナルのタクシー乗り場には研修の修了者だけが付けられる「Hospitality Taxi」の表示を提出し、専用のレーンに入溝できるそうです。

さらに、上級レベルを修了し、検定試験に合格すると「English Certified Driver」のステッカーを車体に貼りつけられるそうです。

車内での会話、観光案内、緊急時や突発事象への対応なども問われます。とは言え、タクシーで必要な会話は限られているため、中学英語にプラスして必要なフレーズに絞って学習すればいいのです。

現在、合格者は253人だそうです。

 タクシー運転手の中山哲成さんは、「英語おもてなしコンテスト」で最優秀賞を受賞しました。タクシー乗務員への転職をきっかけに独学で学習を始めたそうで、それまでは英会話も経験なく、まったく話せなかったと言いますが、オリンピック開催決定をきっかけに勉強をはじめたそうです。

最初は、簡単な文法書を読み込みました。次に読んだのが英語で書かれた文法書です。これによって英語の文法がストンと理解できたそうです。

つぎに発音です。「英語耳」という本についているCDを聞いて、その通りに発音する練習をしました。これがスピーキング力につながったといいます。

そのあと、テレビの外国人インタビューのフレーズを丸暗記して、タクシーの接客で使ってみる。そして、スピーキングを意識してリーディングやリスニングをする、英語の書籍や映画で使えそうなフレーズを書きとめて何度も音読する。

これを続けたところ、日常会話に対応できるようになったとのことです。この時点で英語を学び始めて2年だそうです。スタートはやはり中学英語レベルの文法ですね。

(中山さんのいいところは、英語を実際の接客で使っていることですね。これは、エピソード記憶と、手続き記憶です)

 タクシー運転手の世界も英会話がキーですね。そして、これらタクシー運転手の英会話は中学英語が基本です。コロナが収束したらまた外国人が増えるでしょうから活躍を祈りたいところです。

さあ、タクシードライバーを見習って、英語を使い始めましょう!


17.聞き流すだけで英語がしゃべれるようになるか?

日本の伝統話芸に落語があります。落語を聞き流していると落語が話せるようになるでしょうか?答えはノーですよね。落語が話せるようになるには高度な技術を習得しなければならず、大変な修行が必要なことは周知のことです。つまり、日本語でさえ聞き流すだけで技術を習得するのは難しいのです。

それなのになぜ、英語を聞き流しただけで英会話やリスニングができるという迷信を信じる人がいるのでしょうか?スピード・ラーニングのせいでしょうか?努力しないで痩せる魔法のダイエットや絶対もうかる投資話みたいなものです。

 でも、赤ちゃんは聞き流すだけでしゃべれるようになるではないか?との反対意見があります。本当でしょうか?

聾唖者の夫婦が、自分たちが言葉を教えることができないため、テレビを見させて赤ちゃんに言葉を憶えさせようとしたそうです。ところが、その赤ちゃんは言葉をしゃべれるようにはならなかったそうです(残酷な話ですが・・・)。

赤ちゃんが言葉をしゃべるようになるには、お母さんとのコミュニケーションやバーバー、ブーブーといった喃語(なんご)による練習が不可欠です。赤ちゃんもちゃんとしゃべりのトレーニングをしているんですね。しかも、1日8時間お母さんとコミュニケーションするとして、計算すると1年で3000時間にもなります。大変な時間をかけているんです。

 聞き流すだけでしゃべれると謳っているスピード・ラーニングですが、実は説明書の中にしっかりと「英語を口に出す」と書かれています。開発者自身も聞き流すだけでは不十分と思っているようです。聞き流すだけと言っているのは宣伝文句なのですね(1日5分の運動で痩せる、寝ながらダイエット、飲むだけで痩せるなどなど、世の中にはこの手の宣伝文句が多いですね。また、それにつられる人も多いです)。

スピードラーニング

スピード・ラーニングについて第二言語習得研究をしている研究者の見解を読んだことがあります。それによると、聞いているときに無意識のうちに口を動かしている人がいたら、その人は知らないうちにしゃべりの練習をしている可能性があるとのことです。ただし、そのような人は少数だろうし、意識的に口を動かした方が、効果が高いそうです。

やっぱり、英語をしゃべれるようになるためにはしゃべりましょう。

 

 Appendix

スピードラーニングをやっていたあるプロゴルファーの方(I氏)が海外での大会で、「回りの声がわからなかったので集中できた」と言ったとか。。

 

P.S.

その後、スピードラーニング事業を行っていたエスプリラインは公式サイトで2021年9月1日に「事業終了のお知らせ」を発表しています。終了の理由は「諸般の事情」だそうです。諸行無常の響きがありますね。。

 

18.恐るべし、習慣化の威力

 何かスキルを習得するのにはそれなりに時間が必要です。英語も例外ではありません。

ところが、英語学習って、始めるのも続けるのも苦痛がともなうと思いませんか?(というか、英語学習の勝負はいかに習慣化するかというところにあります。頭の良さとかいう問題ではないのです)

じっさい、始めるのも続けるのも、強い意志が必要だと世間一般では思われています。

WILL POWER意志力の科学(ロイ・バウマイスター著:フロリダ州立大学・社会心理学部の教授)という本には最小限の苦痛でどのように高度なスキルを身につけるか、という話が載っています。

WILL POWER意志力の科学

意志の力(気力や根性)というのは、使えば使うほど減ってしまいます(これは実感わきますよね。仕事で難しい問題が次々と発生すると疲れます)。

これは、高度なスキルを習得した人も同じで、意志力は使うほど擦り減ってしまいます。

では、このような人はどうやって高度なスキルを習得できたのでしょうか? 人並み外れて意志力が強いのでしょうか?

実はそうした人は、練習や学習を習慣化するところだけに意志力を用い、あとは習慣に任せているのです。

一旦習慣化してしまえば、意志の力は不要ですし苦痛も感じません。

みなさんは毎日顔を洗って歯を磨いていると思いますが、毎朝決死の覚悟を持ってやっている人はいないと思います。

むしろ、無意識にやっていると思います。それが習慣化の威力です。

ちなみに、公文式学習はこの習性を利用しているんですね(幼いころ勉強の習慣が無かった私はだいぶ苦しみました。。)。

英語学習を習慣化させると、歯磨きのように毎日無意識のうちにやれるようになります。

実は、プロの演奏家やスポーツ選手など、一流のスキルを身につけている人はこの術を使っています(そうですよね、1日10時間の練習や、1000回の素振りを意志の力だけでやろうとするとめげてしまいますよね)。

夏休み、いちばん簡単なところから始めましょう、そして英語を習慣化することに意志力を使いましょう。


19.仕事に必要な英単語はやっぱり500語?

  バックナンバー「英会話するのに、文法と単語はどこまでやればよいか?」で、仕事の英会話で必要な英単語数を500語と予測しました。根拠があるわけではなく、まったくのあてずっぽうでした。でも、あまり多くは無いと感じたので何となくそんなもんかな、と思っていました。大体、中学校の英単語800語ぐらいよりは、ちょっと少ないくらいかなと。

取りあえず思いつくままに仕事で使う英単語を書き出してみました。それから仕事のとき、英語の会議、資料、メールなどでリストにない単語を耳にするたび目にするたび、メモ用紙に単語を書きとめて置きました。1ヶ月ほどすると、もうほとんど新たな単語は加わりませんでした。

そうです。これが旭日自動車のエンジニアが仕事の英会話で必要な英単語リストなのです。出る順・頻出単語みたいなものです。少なくとも私レベルの英会話であれば、このリストで事足りるということです。

エクセルに入力して数を数えたら・・・、いくつだったでしょうか?

なんと、約500語でした。意外と少ないです。たったの500語という感じです。中学レベルの英単語800よりも少ないです。

と言うことは、中学英語(文法+単語)+仕事英単語500語で仕事英会話に必要なベースは整うということです。英語で仕事をする日はそんなに遠くはありません。夢ではありません、実現可能な目標です。

さあ、みなさん、希望を持って英語学習に取り組みましょう。

 

20.刺さる!英単語

 英単語は機械的に憶えると無味乾燥ですね。なかなか憶えられません。

鉄緑会という、東大受験専門の塾が出している単語集がおもしろいので紹介します。

 emergeを「現れる」と暗記しようとしても、実際にどのように「現れる」かイメージしにくいですよね?

そっと現れるのか、さっそうと現れるのか、浮かび上がるように現れるのか、現れ方にもいろいろあります。

 

それをイメージで表したのが下の絵です。emergeは怪物が「ぬっと現れる」イメージだそうです。絵で表現すると刺さりやすいですね。それに何より、どんな場面で使ったらよいかわかります。

こっそり上司の悪口を言っているときに後ろに立っている上司はemergeです。絵で憶える英単語はエピソード記憶でもあります。

emergeのイメージ

ほかにも、こんなものもあります。私などはParallelの綴りはなかなか憶えられなかったのですが、これで、一発で憶えることができました。

それぞれの単語のイメージ

東大受験だからと言って、うんうん呻りながら単語を憶えるわけではないのですね。むしろ、楽しく効率的な学習法と言えます。脳科学に則った学習法です。

興味ある方は↓の本を見てはいかがでしょうか?

東大英単語熟語

みなさん、単語は工夫して憶えましょう!

 

 Appendix

英語コラムですが、年度前半はモチベーション、効果的な学習法、脳のメカニズムなどをメインにやってきましたが、

年度後半にかけて実践編を織り交ぜて行きますのでこれからもよろしくお願いします。


 

21.発音はどこまでネイティブに近づける必要があるか?

  英語の発音はどこまでネイティブに近づける必要があるのでしょうか?

英語がしゃべれない人や上達しない人には発音の問題がひとつあるかも知れません。発音が悪いことが気になって一歩踏み出せないという人もいるかも知れません。

私は、少なくとも旭日自動車においては、相手に通じる最低レベルの発音があれば十分だと思っています。

NOVAおじさん(古いか)レベルのコテコテのカタカナ英語でも相手に通じればOKです。

 NOVAおじさんはこちら→https://www.youtube.com/watch?v=QYPqR2_GcAM

 旭日自動車の英語の会議に出ればわかると思いますが、ネイティブ並みの流暢さでしゃべっている人はいません。

コテコテのカタカナ英語でしゃべっている人が多いです。それで不都合有るかといえばまったくありません。

ちゃんと意思疎通はできますし、誰も笑ったりしません。

また、旭日自動車の会議には様々な国の人が同時に参加します。中国人、インド人、フランス人、メキシコ人etc、みんなそれぞれの訛りで発音など気にすることなくしゃべってます。相手に通じれば、それ以上の発音の良さはあまり必要ないということでしょう。

つまり、カタカナ英語で十分ということです。

じゃあ、英語ネイティブの人はどう思っているのでしょうか?彼らは、日本人との付き合いが長いし、日本人が聞き取りが苦手で、しゃべりが下手であることもわかっています。

なので、ゆっくり、はっきりしゃべってくれますし、下手な英語でも聞き取れる能力を身につけてくれています。それは、日本人の特性をちゃんと理解して、コミュニケーションの手段と思ってくれているからです。

そもそも日本人にとって英語は母国語ではないのだから対等にしゃべれないのは当然ですし、そこを歩み寄ってコミュニケーションを成立させてくれるのは旭日自動車圏の英語スピーカーだからこそです。お互いの理解と信頼関係があってできることだと思います。

そういう意味では、旭日自動車という環境は英会話初心者にとって門戸が広く、敷居が低い環境だと思います。

みなさん、安心して積極的に英語の会議に参加しましょう。

 

22.なぜ、英語学習は3か月なのか?

 英語をマスターするとき、3か月という数字がよくでてきます。

アメリカへ留学した人が、最初は何を言っているかまったくわからなかったけど、3カ月したところでストンと聞き取れるようになったと聞きました。

私も、海外赴任して初めて日常的に英語を使うようになったのですが、最初は言いたいことも言えずにもどかしい思いをしました。

ですが、3カ月ほどたったところで、急に言いたいことがほとんど不自由なく表現できるようになりました。

それから、TOEICのリスニングで“設問先読み”法をマスターしたのも、思えば練習を始めて3カ月ほどたったころでした。

どうも、3カ月というのは魔法の数字のようです。

なぜ、3カ月なのか?記憶のメカニズムから考えました。

 

人の記憶には、短期記憶と長期記憶があります。

日々、私たちが活動するうえで、入ってきた情報をその瞬間忘れてしまったら非常に都合が悪いことが起こります。そこで、短時間かつ小容量でいいから忘れないでいると、このような問題を回避できます。それが短期記憶と呼ばれています。PCでいうワーキングメモリのようなものです。

短期記憶は日々の活動をする上では大変便利ですが、容量が少なく、すぐ忘れます。

 そこで、大量の情報を長期間保存する必要が生じます。それが長期記憶というものです。長期記憶は大容量、長期保存できますが、定着するのに繰り返し憶えなければならないのと、時間がかかることが難点です。繰り返し入力すると、脳はそれを大事なものと判断して、長期記憶に保存するのです。

 通常、長期記憶を定着させるには、5~7回程度入力を繰り返さなければいけないようです。繰り返さないと憶えた次の日には7割ほどは忘れてしまいます。

これは、有名な、“エビングハウス”の忘却曲線と言われるものです。

エビングハウス”の忘却曲線

それでは、完全に定着するのにどのくらいかかるのか、次のグラフを見てください。

 

記憶の定着までに何日かかるか

これを見ると、忘れなくなるのに5回の繰り返しと90日(3カ月)の時間が必要と読み取れますね。

つまり、3か月の間、繰り返すことによって長期記憶に定着し、使いたいときにすぐに使える情報になるのです。

これが、「なぜ、3ヶ月か?」の答えなのではないでしょうか。

さあ、英語学習に手を付けたら、何があっても3ヶ月続けてみましょう。新しい世界が訪れます!

 

 Appendix(読まなくていいです)

ネットに出ている英会話学習のキャッチコピーで、何カ月で習得すると謳っているか調べました。

やはり3ヶ月が多いですね。以下キャッチコピー抜粋です(私が言っているわけではないのでご注意を)。

 ・特に、英語を早く話せるようになりたいなら、○○サプリEnglish 新日常英会話コースは一番おすすめです。というのも、利用者の効果実感までの平均月数が約2.8ヶ月とデータが出ているからです。

 ・純ジャパの僕が3ヶ月で話せるようになった英語勉強法を全て公開!

 ・3か月を過ぎて文法的に間違えながらも言いたいことはいえるようになった。というか何かを伝えようと頑張るようになった。何かを言おうとするとき日本語が介在しているという感覚はなくなった。

 ・僕は本気で頑張れば半年あれば英語はある程度話せるようになる

 ・3ヶ月で英語をスラスラ話せるようになるには?

・たった1冊の本で3ヶ月で英語が話せるようになった方法!

・ 2週間~3ヵ月の留学で得られる英語効果はどれくらいなのか?たいていの人が「2週間~3ヵ月ではあまり効果が期待できないのでは?」と疑心暗鬼になることが多いと思いますが、想像以上にこの期間での留学効果は大きいものがあります。

 世界を例にとってみると、多くの言語学習者達は英語だけではなく、別の外国語の言語を三ヶ月以内に話せるようになっている事例もあります。

 

 

23.知っている英語なのに聞き取れないのはなぜ?

 知っている英語なのに聞き取れない、というのはよく聞く話です。

まずはリスニングのメカニズムについて考えてみましょう。

我々が英会話や英文を読み書きするとき、単語の知識が必要です。そもそも単語を知らないと英会話や読み書きが成立しません。

そこで単語に着目すると、3つの要素があることがわかります。

 

要素                     例

・綴り                 receipt

・意味(訳)      領収書

・音声(発音)   rɪsíːt(ここでは発音記号を使いましたが、英会話では実際の音声と思ってください)

 英語の辞書にはこの3つがセットで記載されていますね。そのおかげで、綴りと意味と音声(発音)を相互にむすびつけることができます。

 receipt⇔領収書⇔rɪsíːt

 もし辞書に上記3要素のうち1要素がなかったら(たとえば「意味」がなかったら)役に立ちません。

実は、私たちの脳内にも同じような辞書があります。難しい言葉でメンタル・レキシコンと言いますが、ここでは脳内辞書と呼ぶことにします(下図)。

脳内辞書

外部からの視覚情報や音声信号は、脳内辞書と照合されることによって理解されます。

 ここで、もし我々の脳内辞書に「音声」がなかったらどうでしょう。いくら聞いても照合できないですよね。また、脳内辞書の「音声」が間違っていてもやっぱり照合できません。特に我々は学校教育で間違った音声(カタカナ英語)をたくさん記憶してしまっています。

これで、なぜ聞き取れないか、わかったと思います。シンプルですね。

 リスニングができるためには頭の中にこの脳内辞書(特に正しい音声)を作ることが必要になります。

じゃあ、どうすればこの脳内辞書が頭の中にできるのでしょう?

たとえば、知っている英文や単語を見て、(ネイティブの)音声を聞くというトレーニングを繰り返します(メカニズムがわかると学習の勘所がわかります。みなさんも工夫してみてはいかがでしょうか?)。詳細は別の回で取り上げたいと思います。

 さあ、知っている英語でリスニングのトレーニングを始めましょう!

 

24.英語を学習するとボケない?

 英語を学習するとボケ防止になるという話を小耳にはさみました。ネット上にはびこるデマやフェイクニュースのように思えます。英会話教室が高齢者相手に市場拡大を狙って誇大広告しているのでしょうか?真偽のほどはどうなんでしょう?

 実際に根拠となった論文を調べました。↓

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4320748/

 結論は、Yesです。

 スコットランドで始まった研究で、1947年に11歳の子供に知能テストをして、その後2008~2010年まで生存している71~74歳、853名を追跡調査しています。そのなかで、外国語学習をした者としない者に分け、認知能力(ボケているかどうか)を調べています。

ポイントは以下です。

・早くから学習しても、遅くから学習しても老化を防げる。

・習う外国語の数は多いほど効果がある。

・学習した後、使っていなくても効果はある

 うそかほんとかわかりませんが、以前テレビで放送されて話題になり、ちまたには英語が得意な高齢者が急増しているそうです(将来、老人ホームの会話が英語になるかも知れません。今のうちに準備しておきましょう)。

 英語学習は仕事に役立つし、ボケ予防にも役立つし、良いことばかりです。老後のボケが気になる方、今すぐに英語学習をはじめましょう!

 

 

25.リスニング下手は身についてしまった悪い癖のせい?

 中国に1人で出張に行ったとき、食事をするのに日本語がそのまま通じる料理があって助かりました。

麻婆豆腐(マーポートーフー)、青椒肉絲(チンジャオロース―)などです。これはほぼそのまま通じました。

出張前に、中国人の部下からこの二つはそのまま通じると聞いていたので、レストランで試してみたら本当にあっさり通じました。

一方、八宝菜(ハッポウサイ)などは通じません。日本語の発音だからです。中国語での発音はパーパオツァイです。

英語に関しても同じことが言えます。我々世代(今はもっと改善されているかも知れませんが)が中学や高校で学んだ英語とリスニングと発音は、八宝菜みたいなものだと思っています。

つまり、本来の発音とは違うのです。中国人にハッポウサイと言っても通じないし、我々が中国人にパーパオツァイと言われても何のことかわかりません。これと同じことです。正しい発音を知らないと、聞くこともしゃべることもできないのです。

スポーツでもそうですが、一度悪い癖を付けると直すのに苦労します。

私は、日本の英語教育が生徒に悪い癖をつけてしまったことも、我々が英語を習得するのに苦労する原因のひとつだと思っています。

以前紹介した脳内辞書で説明すると、カタカナ発音で脳内辞書を作ってしまうとネイティブ発音と照合できなくなってしまうのです(下図)。

カタカナ発音の脳内辞書

じゃあどうするかというと、原点に戻って一から正しいリスニングを練習するのです。

これまで勉強してこなかった人はラッキーです。悪い癖がついていないからです(癖がつくほど勉強していない)。

Check it out! を「チェック イット アウト」と、お行儀よく覚えると聞き取れません。

Check it outは「チェケラッ!」です。

さあ、知っている英語をネイティブの音声でリスニングしてみましょう!


26.聞き取れないのではない、そもそも言ってない!?

 前回に続いて今週もリスニングの話をします。

会社に入って生まれて初めてのTOEICでショックを受け、リスニングの学習を始めました。当時は学習の要領もわからず手探りでした。

それで、リスニングの学習を始めたのですが、英文を見ると書いてあるのにナレーションでは何度聞いてもまったく聞き取れず、「オレってつくづく耳がだめなんだなぁ、一生リスニングなんてできないなぁ」と落ち込んだものでした。

その後わかったことは、聞き取れないのではなく、そもそも言ってない、ということでした。

以前、脳内辞書に正しい発音を記録しておかないと照合できない、と書きました。「そもそも言っていない」ということが脳内辞書になかったために聞き取れなかったのです。

その他、以下のようなものも脳内辞書にないことがわかりました。これじゃあ聞き取れないのも当然ですね。

 ・そもそも言っていない→him:イム、ム  

・くっついてる→Check it out!:チェケラッ!(実際の発音はカタカナの「チェケラ」とは違いますが、雰囲気を伝えるためにカタカナで表現しました。ご注意ください)

・弱くなってる→from:フム

・変わってる→international:イナナショナル、butter:バラ

 学校の英語の授業でこんな発音や聞き取りは教えません(少なくとも私が学生だった頃は教えてませんでした)。

それで、ネイティブの発音を聞かないと練習できないと思い、どの教材がいいのだろうかと本屋さんに行ったところ(その当時、Amazonはありませんでした)、たまたま手に取ったのが「英語リスニングのお医者さん」という本でした。

英語リスニングのお医者さん

この本の中にリスニングの診断テストがあって、何が弱いかを鮮やかに分析してくれます。この分析で自分の何が弱かったのかを自覚できたおかげで効率的な学習計画を立てることができました(ちなみにこの本の中にもトレーニング方法が紹介されています)。

みなさん、自分のリスニングを診断してみてはいかがでしょうか、チェケラ!

 

27.シンプルな英語をしゃべろう

 社内の英語会議のとき、我々はどのくらい難しい文法や単語を使わなければならないのでしょうか?

私は、意味が通じれば、最もシンプルで簡単な英語を使うのがいいと思っています。

我々はネイティブではありませんし、参加する人も必ずしもネイティブではありません。むしろ、いろいろな国の人、いろいろな英語レベルの人が混ざっている会議の方が旭日自動車では一般的です。

それは、英語のうまさをひけらかす場ではありません。情報を共有化して、参加者全員が共通認識を持ち、結論を導き出すのが目的です。

そんな場で、必要な英語力は、難しい文法や単語を使うことなしに、自分の意思を伝える英語力です。

日本語では難しい言い回しや表現を自由に使えますが、それをそのまま英語で話そうとすると非常に難しい英語になりますし、参加者のなかには理解できない人がいる可能性もあります。

確認や聞き直しで時間もかかります。そうすると、同じ意味の内容をなるべくシンプルな英語で話すのが誰もが望む英語です。

実は、これはやってみると結構難しいです。日本語だと複雑に考えられることを、「要はこういうことだ」ということにシンプル化しなければなりません。

たとえば、

 二重否定は直接表現へ

・いつも発生するわけではない。

→ときどき発生する。

 

結論を先に言う

・私は、○○は××で△△・・・・なので同意しない。

→私は同意しない。なぜなら、○○だから。

 

長い文を短く区切る。

・AはCであるところのBです。

→AはBです。BはCです。

 

つまりこういうことだ(回りくどい説明を避ける)

・AとBがそれぞれお互いを認識できず、かつ同時に交差点に入った場合接触する恐れがある。

→AとBが最悪ぶつかる。

 

簡単な単語に直す

・価格競争力がない

→高い

 

日本語は明言を避ける言語のため、言い切るのは勇気がいりますが、このようにシンプル化すると英語にしやすいし、聞いている人にもわかりやすいです。 

じつは、気が利いていたり、日本人と付き合いが長いネイティブスピーカーは、非常にシンプルな英語で話してくれます。

彼らの場合は、英語力があるからこそシンプルでも伝わる言葉を選べるんですね。

我々の場合は、なるべく早く英語会議へデビューするためのシンプル英語です。

さあ、みなさん、シンプルな英語で意思を伝える練習をしよう!


 

28.日本語と英語の語順の違いがしゃべりを混乱させる?

 海外赴任中、私の妻が家庭教師に英語のレッスンを受けていたのですが、その先生は日本に住んでいたこともあり、日本語もペラペラです(女性で、名前はビビアナと言います)。

ある日、そのビビアナさんから、日本語の語順や思考パターンは、英語の受動態に似ているため、日本人は受動態で話すと良いとアドバイスをもらいました。

これを変則的な英語だと臆する必要はなく、日本人の英語として堂々と使えばよい、日本人の思考には日本人の英語があってしかるべきだ、というのがビビアナさんの哲学でした。

これはある意味目からうろこでした。「そうか、受動態を主体に話をしていいのか」と思いました。

日本語は主語を明確にしません。会話中、「私が」とか「あなたが」などと直接的に言うことは少なく、全体の文脈からそれとなく主語がわかるような言い方をします。

簡単な例で日本語表現と英語表現の違いを見てみましょう。会社でよくある会話です。

 日本語表現

上司 「あの問題はどうなってるのかね?」

部下 「問題は解決しました」

 英語表現

上司 「あなたは、あの問題を解決したのかね?」

部下 「私は、その問題を解決しました」

 

ここで、日本語表現の部下の受け答えに着目しましょう。

「問題は解決しました」という答え方は日本人なら普通です。我々の頭にはこのような日本語表現と語順が染みついています。

困ったことに、英会話でも反射的に日本語と同じ語順が出てきてしまいます。

 The problem・・・

 私自身もそうですし、他の人を見ていても最初の単語を口に出してそのあとが続かない例はよくあります。

 The problem・・・, I closed.

 などと、変な語順になってしまったりします(The problem は主語ではなく目的語ですから文頭には来ません)。ですが、反射的に出てくる日本語の語順をぐっとこらえて英語の語順に直すのもワンテンポ遅れます。

で、私はこの問題を解決するために受動態を主体に使うようにしました。ビビアナさんのアドバイスです。

 The problem is closed.

 そうすると、あーら不思議、英語の語順を気にすることなく、日本語の流れで英語が出てくるようになりました。英会話中の脳の負荷も減りました。これはお勧めです!

さあ、みなさん、受動態で話してみましょう。新しい世界が広がっているかも知れません。


29.英語をしゃべる前に頭の中で日本語変換?

 以前、「シンプルな英語をしゃべろう」でも話しましたが、難しい日本語を英語に変換してしゃべろうとすると難しい英語になってしまいます。

 × 難しい日本語→難しい英語

 これは、文法的にも語彙的にも難しいし、脳の限られた資源を「難しい英語」をしゃべるためだけに使ってしまいます。

ですが、仕事では我々の脳を理解、思考、交渉など、さまざまなことに使わなければなりません。どちらかというとこちらがメインです。

しかも「難しい英語」は、相手も理解しにくいし、様々な英語力の人が集まる旭日自動車の会議ではうまく機能しません。

仮にうまく行ったとしても相手も「難しい英語」で応戦してくるかも知れません。「難しい英語」は百害あって一利なしです。

そこで、英語をしゃべるときは頭の中で一度簡単な日本語に変換することをお勧めします。

 ○ 難しい日本語→簡単な日本語→英語

 実は、私は英語でしゃべるときこの変換を実際に行っています。それによってかなり英会話がスムーズになりました。日本語同士の変換は脳の負担はとても少ないです。

最初の頃は意識的に変換を行っていましたが、慣れてくると次のように頭の中の英語化のプロセスがシンプルになってきました。

 ・難しい日本語で考える→難しい日本語→簡単な日本語→英語でしゃべる

・簡単な日本語で考える→簡単な日本語→英語でしゃべる

・英語で考える→英語でしゃべる

 最後の、「英語で考えて英語でしゃべる」というのは本当なのか?と思いますが、私などは英会話中「あれ、これの意味なんだっけ?」などと日本語で考えたりすると途端に英語が出てこなくなります。

頭の中が英語モードから日本語モードになってしまうからです。

振り返ると、「ああ、自分は英語で考えていたんだな」と思ったりします。

いきなり英語で考えるのは無理だと思うので、まずは英語をしゃべるとき、頭の中で難しい日本語を簡単な日本語に変換することを意識しましょう。次第に慣れてきます。

簡単な日本語で考えることは、やろうと思えばできますよね?これができれば英会話習得の近道になります。みなさん、希望を持って取り組みましょう。

 

30.茅波式TOEIC 3ヶ月攻略法!

 以前、英語(の特定の技能)をマスターするのに3ヶ月かかる話をしました。この法則からすると、今から勉強を始めて成果が出るのは3か月後です。そうすると今年度中にスコアアップをしたい人は今(1月1日)始めないと間に合いません。

以前、TOEICスコアを上げるためには自分で分析、作戦、実行計画、進捗管理のPDCAを回せば良いと言いました。やらなければと思いつつ、ついついサボってしまったあなた、今からでも遅くはありません。今回は私が考える3ヶ月完成メニューを紹介します。

自分で分析や作戦を考える必要がない代わりに、あなたにとって最善の方法かどうかはわからないということがデメリットです(もし最善の方法でやりたいなら、PDCAを回す方法をお勧めします。バックナンバー、「受験は要領」、「孫子の兵法」を参照)。

今回は重要な号なので分量がいつもの4倍です。長文ご容赦下さい。

 攻略の基本方針はTOEIC公式問題集の徹底活用です。本番と同じグレード、同じナレーションです。本番で勉強するのがいちばん効率的、実戦的かつ最速です。

TOEIC公式問題集 かならず新しいほうからやってい

 

リーディング編

・まず、公式問題集を本番形式でやってみる。(時間をちゃんと測って)

・答え合わせをして解説を読み、問題ごとに以下の分類を行う。

A:完全にわかるもの(正解した、もしくは凡ミスがなければ正解)

B:ちょっと勉強すればできそうなもの、解説を読んで解き方がわかったもの

C:まったくわからないもの、時間がかかりそうなもの(たまたま正解したものはこちらに分類)

・Aの点数、A+Bの点数を計算する。それぞれの勉強メニューの考え方は以下。

イ:Aの点数だけで目標点に到達した場合→確実に目標点を取るための勉強

ロ:A+Bの点数で目標点に到達した場合→BをAにするための勉強

ハ:A+Bの点数で目標点に到達しなかった場合→CをB、Aにするための勉強

 

イの勉強法

・公式問題集を何度も本番形式でやる。凡ミスしたところを重点的に見直し。

ロの勉強法

・Bの問題の解説を読み、間違ったところの文法や単語を集中的に勉強。

 

文法

参考書を使って弱い部分を集中的に学習、例題で定着させます。

 

TOEIC TEST英文法でるとこだけ

文法に関して私が使った参考書がこちら。単元ごとに分かれているので間違ったところを集中してやりやすいです。必要以上の情報がないので無駄な勉強をしなくていいです。何より、薄い!

 

単語

公式問題集で、問題を解くためにキーとなっている単語を選んで書き出す。

たとえばappliance(家電)という単語はよく出てくる単語です。問題のイメージは以下。

誰かが町の電気屋さんに電子レンジか何かの修理の相談をしている。

設問は、「何が故障したのですか?」答えは「appliance」

これは、applianceという単語を知らないと解けない。

 

こうやって自分だけの単語集を作ります。市販の単語集で憶えるより得点に直結しやすいです。ただし、わからない単語をすべて抜き出すのはお勧めしません。めったに出ない単語も含まれているからです。ヒット率を上げるためには公式問題集で2冊くらいやって2度以上出てきた単語に絞る方がいいと思います。そうすると憶える単語数を大幅に減らせます。

 

ハの勉強

・C「まったくわからない問題」が解けない理由は、(当然ですが)そもそも足掛かりとなる知識のベースがないことです(AとBは既に自分にベースがあるため、それを足掛かりに点数を伸ばすのが効率的)。

 なので基礎からやり直すことになります。とは言え、なるべく時間を削減したいのが人情です。Cについては公式問題集の解説を読んで下の①~③のどれかを分析します。

 

①簡単(基礎的なこと)なのに理解していなかった、憶えていなかった(中学英語レベル)

②少し難しい文法・単語(高校英語レベル)

③かなり難しい(文脈問題、語彙問題etc)

 

当然、学習計画を立てるにしても優先は①>②>③の順です。①の積み上げで目標点まで行けばそこを重点的に行い、②には手を付けません(もちろん時間があればやった方がいいに決まっていますが)。点数の積み上げが足りなければ②をやらざるを得ません。③は捨てます。

で、②はどこまでやればいいかというと、定期的に公式問題集をやって目標に到達するまでです。それまでは点数の積み上げを行います。

 

スピード対応

リーディングの問題は非常に分量が多いため、時間内に終わらないという人も多いでしょう。そのためのスピードの訓練が必要です。

 

スピード対応・・・文法

TOEICの文法(小問)は慣れてくると、選択肢を見ただけで何を問う問題かわかるようになります。時制の一致、品詞、前置詞などです。選択肢を見て「あ、これは品詞を問う問題だな」などと思いながら問題文を読むと時間を無駄にしませんし正解にも近道です。逆に、反射的に答えが出てこなければ潔くその問題は捨てます。

時間をかけて答えが出てくるのは文脈問題ですが、それは上級者向けの問題なので迷ったときは捨てた方が得策です。私が自分で公式問題集をやって分析したところ、迷ったり考え込んだりした問題はほとんど間違っていました。時間をかける割に正答率が低く(サイコロを振るのと同じ確率)ペイしないため、私の場合、迷った場合は躊躇なく3番目の選択肢を選ぶことにしていました。

迷った問題に時間をかけるより、文法問題の時間を最小限にして長文問題の時間を稼いだ方が得点率が断然高いのです。

選択肢を見て、問題文を見て、反射的に答えがわかる、という手順は慣れてくると簡単な問題では10~15秒、難しい問題でも30秒で出来るようになります。30秒以上かかるようなら捨てた方が得策です。

このようになるためにはどうすればいいかというと、公式問題集を使って以下のサイクルを回します。きっちりと時間は測って下さい。そうしないとスピードのトレーニングになりません。

①公式問題集を解く→②答え合わせと解説を読む→③間違ったところを学習(解説or参考書)→①に戻る

これを繰り返すと次第に問題を解くスピードが速く、正確になって行きます。ただし、反射的に問題が解けるようになるめには3ヶ月かかると思ってください(だから、今始める必要があるのです)。

 

スピード対応・・・長文問題

これの対処法は大きく3つです。

1.パターンの把握

2.英単語の記憶

3.速読の練習

 

1.パターンの把握

長文問題はだいたいパターンが決まっています。たとえば、パーティーへの招待、広告、ビジネスe-mail(納期、お礼、謝罪)とかです。題材やシーンがわかるだけでも大変理解に役立ちます。少しくらいわからない単語があってもだいたい予測がつくからです。公式問題集を2冊ぐらいやるとほとんどのパターンが出てきます。

2.英単語の記憶

パターンが決まっているということは英単語も決まってくるということです。前にも書きましたがそれぞれのシーンに出てくる英単語を書き出します。難しい単語や憶えなくてもよい単語(商品名やわからなくても回答に影響しない単語など)は捨てます。その題材を表現するうえで欠かせない単語をピックアップします。単語リストを作ってひたすら憶えます。そうすると、市販の単語集に比べてかなり憶えなければいけない単語数を絞れます。

公式問題集で出た単語は本番に出ないのでは?との疑問を持っているあなた、それはあり得ません。公式問題集の単語なしには本番の問題が作れないからです。

3.速読の練習

これも公式問題集を何度も解くことで速くなります。時間を測ってきっちり時間内に終わるようにスピード感を養います。公式問題集以外の問題集はあまりお勧めできませんが(本番とは単語や文章が微妙に異なるため)、速読の練習であれば使ってもよいと思います。

長文を読むときに頭の中で日本語変換する癖がある人は、それが直らない限りスピードは上がりません。日本語変換しなくても英文を理解できるようになるまでひたすらトレーニングです。次第に英文のままで理解できるようになります。どのスピードまで上げればいいかというと、時間内にきっちり終わらせられるスピードまでです。目途としてはやはり3ヶ月でしょうね。

 

リスニング

これは大きく分けて2つの対処法があります。

1.TOEICのナレーションに慣れる

2.問題先読み、ナレーションを聞きながら回答

 

リスニング・・・1.TOEICのナレーションに慣れる

なぜ聞き取れないかというと、音声⇔単語の紐づけが出来ていないからです。前にも書きましたが、TOEICの発音は我々が習った発音(カタカナ英語)とは異なります。ですから聞き取れないのは当然です。

で、どうするかというと、TOEICの発音と単語(文章)の紐づけを行います。手順は以下です。

①公式問題集をやる

②スクリプト(ナレーションの原稿)を読む

③スクリプトを読みながらナレーションを聞く

④スクリプトを見ないでナレーションを聞く(スクリプトを書き出す、シャドーイングする、スマホに入れていつも聞く、etc.)

⑤わからないときは③に戻る

特に、④は毎日行ってください。毎日行うことによってだんだん紐づきます。2,3週間行ったら違う問題で同じことを行います。

注意としては絶対、公式問題集でやってください。他の市販の問題集は発音や声質が異なるため、効果が薄いです。特に、リスニング力が弱い我々には大問題です。

 

2.問題先読み、ナレーションを聞きながら回答

これはTOEICの最大の難関ですがこれをマスターすると一気に点数が伸びます。100点ぐらいは簡単に伸びます。

TOEICのリスニング問題は

 

①ナレーションを聞き、

②設問を読んでから、

③回答する

 

という形式です。

問題は設問を読んでいる間にナレーションの内容を忘れてしまうことです。リスニングのテストというよりは記憶テストになってしまっています。私などはTOEICへのチャレンジを始めたのは45歳過ぎてからですので、記憶力の問題は致命的でした。TOEIC出題者の論理は「英語力があれば忘れないはずだ」ということですが、我々の立場は「英語はできないけど今すぐ点数を取りたい」ということです。英語力が付くまで何年も待てません。

そこで、上記の順番を以下のようにします。

 

②設問を読んで、

①ナレーションを聞きながら、

③回答する

 

①と②の順番が入れ替わっています。

ナレーションを聞きながら回答すれば記憶力の問題は回避できます。ただ、これは回答した後に次の問題のナレーションが始まる前に設問を読まなければならないため、スピードが重要です。回答に手間取っていては次の問題の先読みができません。間に合わなかった場合はその問題は捨て、次の問題の設問を読んで準備します。ペースを崩さないことが大切です。ペースが崩れたらその問題は潔くあきらめ、次の問題でペースを取り戻しましょう。

また、ナレーションを聞きながら回答するというのも口で言うほど簡単ではありません。どちらか一方に注意を向けるともう一方に注意が向かなくなるからです。両方に注意を向けるためには「脳の自動化」しかありません。脳科学で言うと、以前お話しした「手続き記憶」のことです(バックナンバー参照)。これは自転車に乗るようなもので、乗れるようになるまで転んでも膝をすりむいても何度も何度も練習しなければなりません。できるようになるまで3ヶ月です(1~2ヶ月やるとだいぶ慣れてきます)。

トレーニングは公式問題集をやりながら設問先読みの練習をひたすらやります。こればっかりは時間をケチる方法はありません。平日は時間が取れないでしょうから週末にはかならず行うようにしましょう。必ず3ヶ月後には成果が出ます。

 

ということで私の3ヶ月メニューを紹介しました。これを3ヶ月計画に落とし込んで、さらに月間計画、週間計画に落とし込みましょう。あれ?、いつもやっている業務計画ですね。みなさん、日ごろの成果を発揮する場面です。

さあみなさん、だまされたと思って3ヶ月間だけがんばってみましょう。必ず成果は出ます。じゃあいつやるか?今でしょ!


 

31.シャドーイングは最速のトレーニング?

 以前、シャドーイングがリスニングのトレーニングに効果的だという話をして、別の機会に紹介すると言った気がします。ここではシャドーイングの紹介をします。

シャドーイングはナレーションに対して、ほぼ同時か少し遅れて(0.2秒くらい?)ナレーションを口に出してついていくトレーニングです。影のようについていくのでシャドーイングです。

英文を見ながらの場合(初期段階)と、見ない場合があり、レベルや進度に従って使い分けます。リスニングだけでなく、スピーキングにも効果があるそうです。

 で、このシャドーイングですが、なぜ効果があるのでしょうか?いろいろな先生が科学的な解説をしているのですが、その根拠となっているのが「第二言語習得研究」という理論です。英語学習研究の世界ではこれが最も有力な理論になっています。

ここでは分厚い本を3行に要約して解説したいと思います。

 ・意味の理解だけでなく音声も正確に再現しなければならないのでリスニングに注意が集中する。

・音声認識、発声、(文字認識:初期だけ)をセットでトレーニングするため、これらがセットで脳内辞書に格納される。

・繰り返しトレーニングによってこれらが自動化(無意識化)され、脳の負荷が減る。そのため、余力をスピーキング等に使えるようになり、スピーキング力も向上する。

 シャドーイングはもともと同時通訳トレーニングの前段階で、聞いた音声を訳すことなくそのまま理解(知覚)するための訓練だったそうです。そうやって考えると、英語を聞いて頭の中で日本語訳してしまう人(日本語訳に時間を取られてスピードについていけない人)には、英語をそのまま理解するトレーニングになるかも知れませんね。

 実は私も本を買ってシャドーイングを試したことがあるのですが、結構難しかったです。それで、無理をするのは止めて、車のなかで英語のラジオドラマを聞きながら気に入ったセリフだけシャドーイングしたりと、気軽にやってました。

そのおかげか、会話の拍子にその(気の利いた?)セリフが出てきたりして助かっています。

みなさん、興味ある人は試してみましょう!

 

Appendix

いくつかシャドーイングと英語習得の参考図書を列挙しておきます。

いろいろな学習法があってどれもそれなりに効果がありますが、自分に合った学習法を自分で探してきてPDCAを回すのがいちばんの学習法、というのが私の結論です。

 

この人の本がシャドーイングのスタンダードらしい。シャドーイングの理論とゼロから始めるシャドーイングの方法、例題とCD付きです。これ一冊で取りあえず始められます。
こちらは同じ人が書いたシャドーイングのメカニズム解説です。概要だけ知りたいなら1冊目の本で十分。
第二言語習得研究に基づく学習法を紹介。やさしく書いているので読みやすい。
第二言語習得論の妥当性を英語学習時の脳内の血流などで分析している。マニアック。
いろいろな学習法で何が効果あるのか、第二言語習得論の観点で研究している

 

32.旭日自動車スキーマが英会話習得の鍵?

 「英語独習法言」(今井むつみ慶応大学教授、言語心理学)という本を読みました。11万部のベストセラーだそうです。

テーマは、“スキーマ”の習得が英会話習得のキモ(というか本質)という話です。スキーマとは聞きなれない言葉です。

誤解を恐れず、スキーマを我々の職場環境に翻訳すると要はこんなことのようです。

会議中の空気(これが読めないとKYになる)、昔からやってきた職場の習慣やルール、暗黙の了解、職場や業界でしか通じない用語、誰も何も言っていないのに感じる同調圧力(仕事が終わったのに帰れない雰囲気)などなど。

上記は俗っぽい例ですが、日本語、英語にもそれぞれにこのスキーマがあるそうです。

例えば、「太郎は花子をみた」。このときの“みる”は、見る、観る、診る、看る、どれでしょうか?英語にしたときはlook、see、watch、view、stare、glance、glimpse、observe、sight、gaze、contemplate(これぐらいにして置きましょう)どれを使えばいいでしょうか?

どんなときにどの「みる」を当てはめるかは、そのときの雰囲気、おかしくないか、意味が合ってるか、相手が誰か、経験などで決めますよね。ひとつの単語がカバーする範囲は日本語と英語で違っています。これが日本語、英語におけるスキーマの違いです。

この日本語と英語のスキーマの違いが英語をマスターできない大きな要因だというのがこの本の趣旨です。

ところで、スキーマはいろいろなレベル、言語そのものが持つ世界観から職場の雰囲気までいろいろあります。

前置きが長くなりましたが、私が言いたいのは「旭日自動車スキーマ」というものがあるのではないか、ということです。

例えば、

・下手な英語でもバカにしないで理解に努める。だから下手でも気にしない。

・ゆっくり、はっきりしゃべる。(米人に聞いたら、日本人に分からせるしゃべり方というのがあるそうで、ドイツ語のように大げさにはっきりしゃべると通じるそうです)

・簡単な単語でしゃべる。相手がわかっていないときはもっと簡単な単語に言い換える。だから安心できる。

・わからないときは遠慮なく聞く。だからわからなくても大丈夫。

・発音が悪くても(RとLは区別しなくても)文脈で理解してもらえる。だから発音は気にしない。

・相手を、さん付けで呼ぶ。だからなんとなく親しみやすくなる、自分のホームのような気がする。(これは別で触れたいです)

・claimというのは本来“請求”という意味だが、苦情という意味でも通じないことはない(日本語英語のクレームがそのまま使われている。苦情は、正しくは、complainだが、日本人がみんなclaimを苦情という意味で使うので英米人もおかしいなと思いつつ歩調を合わせてくれている)この手の旭日自動車単語はいくつかある。

・ロサンジュが使う(変な)フランス語英語(ロサンジュ英語)はロサンジュを尊重。たとえばperimeterという単語は英語の意味は“周囲”だが、フランス語にも同じような単語があってそれをそのまま英語に使っている模様。いろいろ聞いていくと、仕事の領域(部署ではなく機能としてひと塊と見なせる)という意味でした。これはどの辞書にも載っていませんが、彼らの感覚ではそれを言い表す単語はほかに見当たらず、perimeterと呼ぶことにしました。これは、ロサンジュのスキームを旭日自動車が受け入れた形です。

 

これらは、我々が海外と会議をするとき普通にやっていることですが、誰もルールとして明文化したことはありません。暗黙の了解、空気、つまりスキーマです。

このスキーマがあるからこそ、初心者でも旭日自動車の英語会議へは踏み出しやすいのです。そして、旭日自動車の英語公用語化は成功したのだと思います。

これは我々の大きな財産です。さあみなさん、安心して英語会議へデビューしましょう!


 

33.TOEICで英会話は上達するか?

 Yesです(ただし、TOEICだけではだめです)。

以前、TOEICと英会話スキルとの相関を分析した調査結果を見たことがあります。その結果を一言でいうと、「弱い相関」でした。それは、TOEICが高得点でも英会話が苦手な人がいる反面、TOEICの点数が低くても、そこそこ英会話ができる人もいるということでした。ただ、全体としてみればだいたいTOEICが出来ればそれにしたがって英会話力が上がっていくという傾向はありそうです。

TOEICはインプット(リーディングとリスニング)で構成されていて、アウトプット(ライティングとスピーキング)はありません。英会話の重要な要素はアウトプットであるスピーキングであって、この能力を測らずしてどうして英語のコミュニケーション力が評価できるのでしょうか?

答えは、処理スピードだと思っています。

TOEICはリーディングもリスニングもすさまじい問題量ですよね。この問題量をこなすのに、いちいち日本語に訳していたら間に合いません。したがって、「英語でインプットして英語で考える」ようにしないと点が伸びないのです。この、「英語でインプットして、英語で考える」というのは、英会話の重要なステップです。英会話に関する脳の自動化が、進んでいるということです。これができれば、「英語でインプットして、英語で考え、英語でアウトプットする」という次のステップが待っているからです。

また、英会話の基礎となる文法と語彙が身につきます。

ちなみに、「英語でインプットして、英語でアウトプットする」というトレーニング方法があります。シャドーイングと言われていて、英会話上達に効果があると言われています。これは以前紹介しました(バックナンバー、シャドーイングは最速のトレーニング?参照)。

TOEICか英会話か、どちらを優先しようか迷っている方、TOEIC公式問題集のナレーションを使って、シャドーイングしてはいかがでしょうか?TOEICにも英会話力にも効果あります。

TOEICで英会話をするための準備をしておいて、次のステップでしゃべるトレーニングに移行するという作戦は効率的だと思いませんか?一石二鳥、一粒で二度おいしいです。

さあ、みなさん、TOEICをやりながら英会話の準備をしましょう!



34.英語の心

 今から25年ほど前、私はまったく英会話などできませんでした。

そのころ、アメリカのサプライヤが売り込みに来ていました。

数名のアメリカ人と、日本事務所の日本人営業マン1人がチームとなっての売り込みです。

当時その営業マンは50歳くらいに見えましたが、とても英語がうまく、「ああ、こんなに英語が上手なのだからアメリカ駐在でもしていたのかなぁ」と思っていました。

その人はときどき私のところを訪問するのでそのうちに親しくなりました。

そこである日、「どのようにして英会話をマスターしたのですか?とっても上手ですね」と聞いてみました。

すると次のように話し始めました。

「実はね、私が英語をやり始めたのは40過ぎてからなんですよ。転職して外資系の会社に入ったのはよかったが、回りがみんな英語で仕事しているし、これはすごく困ったなーと思ったんです。それで、(英語の)映画をハンディカムに撮って、それを電車の通勤でずっと見ていたんです」

「じゃあ、それでリスニングが出来るようになってしゃべれるようになったんですか?」

「うーん、リスニングというよりも『英語の心』というがわかったんです。その『英語の心』がわかってから、しゃべれるようになりました」

このあと、『英語の心』とは何のかいろいろと話を聞きました。つまりこんなことのようです。

 

普段我々は会話をするときに、意識はされないが共通のバックグラウンドや前提や文化みたいなものを考慮に入れながら会話している。

たとえば、日本人同士で話をするときも、初対面のときは相手がどんな人かを探ることから始まる。それがわかると次第に会話がスムーズになってくる。

英語で話をするとき、どんな場面でどんな言い方をするのかとか、外国人も日本人と同じような感じ方をするもんだとか、そんなことがわかってくると、

「こんな時はこう言えばいい」、「あんなときは、外国人はこう思っているんだ」というのがわかり、会話がスムーズになる。

逆に言うと、「この言い方はこの場面で合ってるのかなぁ」とか「こんな言い方でどう思われるのかなぁ」などと気にしていると、どのようにしゃべったらいいかわからなくなってしまう。それが、どう言えばよいかストンとわかった。

 

これを読んでピンと来た人、いると思います。そうです、スキーマそのものですね(バックナンバー参照)。

ただし、その人の場合、もともとある程度英語の土台はあったろうし、他にも勉強していたと思います。

おそらく、壁を乗り越えるきっかけが『英語の心』=スキーマの獲得だったのでしょうね。

さあ、実際の英会話の場面をたくさん経験して『英語の心』を獲得しましょう。

 

Appendix

この例を見ると『英語の心』とはスキーマであると同時に「エピソード記憶」でもありますね(エピソード記憶についてはバックナンバー参照)。「意味記憶」で蓄えた知識が、スキーマに組み込まれ、エピソード記憶によってつながった状態です。

その人は、始めてから3か月ほどでしゃべれるようになったそうです(ここでも魔法の数字、3ヶ月が出てきました。3ヶ月理論についてはバックナンバー参照)。


35.語源で憶える英単語

 英単語をどのように憶えてますか?

私は高校時代、とにかく英語が嫌いで(英語だけでなく勉強はすべて嫌い)英単語を憶えるのが大の苦手でした。

英語教育自体が受験のための意味のない、勉強のための勉強という思いもありましたので身が入らなかったというのもあります。

そんなんでほとんど英語の受験勉強をすることなく浪人したのですが、これはまずいということになりました。

1年で必要な英単語を憶えなければなりません。でも、時間をかけたくありません。当時は共通一次試験で5教科7科目やらなければなりません。物理的にそんなに時間をかけられなかったのです。

親からは私立に行かせるお金は無いので国公立にしろと言われてました。大学へいけなかったら地元で家業を継げと言われてました。

これは最大の恐怖でした。あの狭い田舎で一生暮らすのはまっぴらごめんという感じでした。何が何でもこんな田舎から脱出せねば、というのがモチベーションでした。

それはさておき、いろいろと本屋で参考書を見ているうちに、受験参考書のコーナーに受験参考書ではない英単語の語源の本が置いてあり、それを偶然手にしました。

そのとき、これだ!と思いました。その本には、英単語が漢字の偏とつくりのように、意味のある2つ(もしくはそれ以上)の単語の組み合わせでできていることが書いてありました(それ以外にも英単語のいろいろな由来が書いてありました)。

たとえば、InternationalはInterとnationalの組み合わせで、interは“~の間、相互に”、nationalは“国”で出来ています。そうすると、internationalは“国が相互に”、“国際的な”とすぐにわかります。InterchangeはInter相互にchange交換する、interfaceはfaceのinter間、境界面となります。Teleは“遠い”です。Telescopeは遠眼鏡(望遠鏡)、Televisionは遠くが見える(テレビ)、Telephoneは遠くが聞こえる(電話)、

単語の成り立ちがわかると、今まで無味乾燥だった英単語にいろいろな意味が見えてきました。漢字で言うと、さんずい(三水)は水に関係すること、木偏は木に関することみたいにです。すると、英単語を憶えるスピードが飛躍的に伸びました。また、単語の意味が分からなくても、当らずといえども遠からず、単語の一部からどんな意味合いか推測できるようになりました。これによって、長文読解で何を言っているかわかりやすくなりました。

45歳のときに英検準一級をとりましたが、最初に問題を見たときは4つある選択肢のどの英単語もわからないという状態でした。でも8か月で約3千(推定)の単語を憶えました。これはひとえに語源で英単語を憶えたからです。

みなさんも、ぜひいちど語源英単語記憶法をお試しください。

 

36.英語の心・技・体

 よく相撲は心・技・体の3拍子揃っていないと強くならないと言われます。仕事の問題分析を行うときでも心・技・体の3つに分類することができます(私はよくこの分類を使います)。

さて、私は英語力の向上にも心・技・体があると思っています。たとえば、以下のような項目です。

 心:英語をしゃべる勇気、学習を続ける忍耐力、英会話できるようになりたいとの動機、仕掛けをするモチベーション

技:文法知識、語彙、学習計画力、リスニング力、スピーキング力

体:英語をしゃべる機会や環境、英語学習のツール(参考書やCD)、学習時間の確保

 

こうやってみると、どれが欠けてもうまく行きませんね。英語力は心・技・体の3拍子が必要です。

たとえば、技(文法知識と語彙)があって、体(英語をしゃべる機会や環境)があっても、心:英語をしゃべる勇気がなければ話せません。

じゃあ、どうするか?この3つを少しずつ、バランスよく伸ばすのです。

たとえば、以下のようなプラスのスパイラルを意識してみてはいかがでしょうか?

 心:動機を持つ

体:参考書を買う

技:文法を身につける

心:自信を持つ

体:実戦で試してみる

心・技・体が相乗効果を持って回っています。

こんなにうまく行くとは限らないかも知れませんが、少なくとも学習を計画するときやPDCAを回すときに心・技・体をバランスよく織り交ぜるのは効果があるはずです。

さあ、心・技・体を意識して英語学習に取り組んでみましょう。

 

37.旭日自動車の英語公用語化はなぜ、うまく行ったのか?

 ユニクロや楽天が英語を社内公用語にするニュースが話題になりましたが、その後うまくいっているのでしょうか?ネットには賛否両論入り乱れていて実情はわかりませんが、なかなか馴染めない人がいるのは確かのようです。

それでも海外の優秀な人材を雇ったりして、会社としてはそれなりに効果が上がったりしている例もありそうです。

旭日自動車に関しては他社に先駆けて英語公用化に取り組みました。

当時はセンセーショナルに報道されたものでしたが、今では旭日自動車の英語公用化はほとんど話題になりません。それほど定着したということでしょう。

私は、旭日自動車は英語公用語化に成功した部類だと思っています。個々に見れば凸凹はありますが、会社としてはそこそこ成功と言っていいのではないでしょうか?

私の感覚では2015年以降、エンジニアリング部門では急速に英語によるコミュニケーションが進んだ気がします。それはなぜか考えてみました。心技体に分類しました。

 

・他の人が下手な英語で会議しているのを見てハードルが下った(みんなやっている)。

・海外からの出張者とF2Fで打ち合わせしたり、飲み会をしたりして親しみを持った。

・さん付けで呼ぶとアウェー感が薄らぎホーム感になる。

 

・会社主催の英語教育やTOEIC学習を通じて全体の底上げが出来た。

・海外赴任経験者が増えて全体的にレベルが上がった。

・英語会議の経験を通じて実戦での技術習得ができるようになった。

 

・ロサンジュとの協業や海外との連携プロジェクトで会議数が格段に増えた。

・Skype、Teamsなどの普及により、個々が気軽にネット会議できるようになった。

・英語を使わざるを得ない環境が増えた(外国人が上司になった、英語を使う仕事にアサインされた等)。

 

これら心技体が正のスパイラルを起こしたのが2015年以降だったと思っています。

 英語公用化と言っても日本人同士の会議はもちろん日本語です。外国人が入ったときだけは英語という形です。これも、それぞれの参加者や場面に合わせて使い分けすることにより、効率的にコミュニケーションが取れるように機能していて、うまく行っている理由だと思います。

 こうやって見ると、英語の学習というのはほんの一部分ですね。それ以外は実戦や経験です。そこに英会話習得のヒントがあるように思います。

さあ、英会話の実戦、英語会議に飛び込みましょう!

 

 


 

38.旭日自動車は赤信号みんなで渡って英語公用化に成功した?

  突然ですが、エスニックジョークって知ってますか?いろいろな国の国民性を、エピソードを交えてジョークで紹介するものです。

有名なのが沈没船ジョークです。別名、タイタニックジョークとも言います。

 沈没しかけた船に乗り合わせる様々な国の人たちに、海に飛び込むよう船長が説得を行う。

アメリカ人に 「飛び込めばあなたはヒーローになれます」

イギリス人に 「飛び込めばあなたは紳士になれます」

ドイツ人に 「飛び込むのはルールです」

イタリア人に 「飛び込めばあなたは女性にもてます」

フランス人に 「飛び込まないでください」

ロシア人に 「海にウォッカのビンが流れています」

日本人に 「皆さん飛び込んでます」

 で、なぜこのジョークを紹介したかというと、これこそが旭日自動車が英語公用化に成功した大きな要因だと思うからです(個人別に見ると英語の得意不得意はありますが、全体的にみると旭日自動車は英語の公用化に成功した方だと思います)。

ロサンジュとのアライアンスが始まった2000年ころ、これからは英語だ!ということで、会社主導で英会話レッスンなどが始まりました。数年ほどそんな時期がありましたが、私の感覚ではそれほど英語化が根付いた感じはありませんでした。

ところが今ではほとんどの人が普通に英語で会議をしています。振り返ると社内の英語教育ブームが終わってしばらく経った、2010年以降急速に進んだ気がします。

なぜ会社が英語教育に力を入れなくなった後に英語化が進んだのでしょうか?

それは、「みんなやってるから」ということだと思っています。下手でもなんでも、みんなが物怖じせず英語でやっていれば抵抗感なく会議や打ち合わせに参加できます。

ロサンジュとの協業が強まった2015年以降は会議の頻度が増えたり、Skypeなどの普及で個人間のコミュニケ―ションが加速した気がします。

下手な人の英語を見て「あ、こんなんでいいんだ」と思った人は多かったはずです。私も部下に

「しゃべれるまでしゃべらない人は一生しゃべれない!」

「下手でも何でもいいからとにかくしゃべれ!」

などと叱咤激励して英語の会議に放り出したりしました。

突き放されて会議に参加した部下はみんなしゃべれるようになりました。逆に、英語の会議から逃げている人はしゃべれるようになりませんでした。

勉強よりも実践の方がよっぽど効果がありますね。習得までの時間も早いです。

 「赤信号みんなで渡れば怖くない」英会話はこれと同じです。

みんな英会話の赤信号を渡っています。怖くはありません。みんなで渡りましょう!

 

Appendix

ちなみに、タイタニックジョークに以下のレパートリーもあるそうです。

 韓国人に 「日本人が飛び込んでます」

 ことあるごとに日本をライバル視する韓国らしい落ちですね。

エスニックジョークはともすればその国のタブーに振れることがあるため、外国人に話すときは注意しましょう。

 

下はメキシコ人の部下が自虐的に言っていたエスニックジョークです。これはさすがに笑えませんでした。

 神は、不毛の大地にヒーローを集めた。それがアメリカだ。

神は、資源がない小さな島に勤勉な者を集めた。それが日本だ。

神は、美しく資源豊かな土地にクズ人間を集めた。それがメキシコだ。


 

39.“さん”付けが心のハードルを下げる?

旭日自動車圏では外国人であっても名前に“さん”を付けて呼びます。

30年前に入社したときは、Mr.で呼ぶ人と、“さん”で呼ぶ人両方いました。私もその頃はMr.を使っていた記憶があります。その後ロサンジュとの協業が始まったあたりから“さん”が広がったように思います。社長のことを(親しみをこめて?)“さん”付けで呼ぶようになったのがドライブをかけたのでしょう。

これは、旭日自動車のローカル文化だろうし、一般的な英会話でも邪道だと思いますが、でも外国人に対する我々の心のハードルを下げるのに役立っていると思います。

私自身、外国人の名前をMr.で呼んでいたときは外国人や外国語を強く意識して、どことなく構えてしまう感じがありましたが、“さん”で呼ぶようになって親しみが湧くようになり、ハードルが下った気がします。相手をこちら側に引き込んだ気もします。みなさんはどうでしょうか?

 ロサンジュのカウンターパートと初めて会話(Skype)したとき、自己紹介ついでに日本の文化や敬称などについて1時間ほども話し込みました。相手は初めて日本人と仕事をするので(日本人と話をするのも初めて)いろいろと教えて欲しいということでした。

そのなかでいちばん最初にしつこく聞かれたのが「“さん”てどういうニュアンス?」ということでした。

日本の敬称のなかには、“様”、“殿”、“さん”、“ちゃん”、“君”などがあって、相手と場合によってどれを使うか異なるという話をしました。

そんなにたくさんあるのか、とうんざりしていましたが、仕事では“さん”だけで十分だと説明しました。

「“さん”は相手をリスペクト(尊敬、尊重)していて、それでいて親しみがこもった敬称だ」と説明したところ、相手もニュアンスを理解してくれて安心して“さん”を使うようになりました。

ロサンジュも全員、日本人には“さん”を使ってくれますね。

以前、ロサンジュの副社長に報告したことがありますが、そのときも“さん”でした。

 旭日自動車が早くから拠点を構えていた、アメリカ、欧州、メキシコなどは“さん”が定着しています。海外のサプライヤさんも旭日自動車が“さん”を使うことを知っているのでみんな“さん”を使ってくれます。

 ということで、旭日自動車圏で仕事をする限りは世界中どこであっても“さん”は通じます(旭日自動車圏以外はご注意ください)。

安心して“さん”で呼びましょう!


 

40.発音はどこまでやればよいか?

 メキシコでは、タコスを包む皮のことをトルティーヤとかトルティージャと言います。メキシコ人に「どちらが正しいの?」と聞いたところ、「え?、同じですよ」と返事が返ってきました。メキシコ人は「ヤ」と「ジャ」の区別がつかないのです。私たちがRとLの区別がつかないのと同じです(ちなみにスペイン語もRとLを区別しません)。

当時の拠点のトップは山田(ヤマダ)さんという人でした。メキシコ人に「『邪魔だ』という意味になるので絶対に『ジャマだ』と発音しないように」と言っておいたのですが、次の日「ジャマださん」と言ってました。。

以前、「発音はどこまでネイティブに近づける必要があるか?」のなかで、NOVAおじさんで十分と言いましたが、発音がよければそれに越したことはありません。

最低限これだけやっとけば旭日自動車圏の英会話はOKというものをピックアップしました。

 まず、日本語発音の問題点です。

・日本語はRとLを区別しない(RとLの聞き分け、区別して発音ができない)

・日本語は、siスィの発音が無い

・日本語には、tiティ、tuトゥ、thθの発音が無い

・日本語にはvの発音がない

 

結論

Rを発音するときは、wを前に付けて発音

Lを発音するときは、n(ン)を前に付けて発音

 

Sのときは「スィ」で発音する。Seat→×シート、○スィート

Shのときは「シ」で発音する→Sheet→○シート、×スィート

 

Tのときはタ、ティトゥ、テ、トで発音する。Teams→×チームス、○ティームス

Thのときは、SよりもTの発音の方がそれっぽい→Think→×シンク、○ティンク、◎θインク

 

V(ヴィー)のときは、ウィーと言いながらビーと言うとヴィーになる。

 

 まあ、これくらい気をつけとけば十分でしょう。社内英会話のよいところはコテコテのカタカナ英語でも聞き取ってくれるところです。海外勢も理解するように努力してくれていますから安心です。

あまり神経質にならずに、まずは口に出すことの方が大切です。

さあ、カタカナ英語でしゃべりだしましょう!

 

 Appendix

Writerとかwrongのwは発音しませんよね?どうしてでしょうか。それは昔イギリス人が、Rを発音するのにW(ウ)をつけないと発音できなかったからだと言われています。舌の位置と口の形をRにするための準備です。なので、Rを発音するときはそのまえに「ウ」を付けるとRの音になります。

それと同じようにLの発音をするために、前に付けるいい語がないか探したところ、「ン」をつけて発音するとLになることが分かりました。舌の位置がLとNでは近いのです(「エ」を前に付けても同様です。Lをエルと発音するのは口の形の準備かも知れません)。ウRight、ンLight(エLight)と発音してみましょう。

 あるとき英語スピーカーに、なぜ日本人はTh(θ)の発音が、Sになるのか?と聞かれました。考えるThinkが沈むSinkになると言うのです。日本にはThの発音がないので日本人にとって最も近く聞こえるSを当てているからですね。でも、外国人にとってはThとSはまったく違うので奇妙に聞こえてしまうのです。Thinkはシンクよりもティンクと言った方が相手に分かりやすいと心得ましょう。

 

 

41. 「しっかり」は英語で何というのか?

 かなり前の話ですが、日本人とアメリカ人の嗜好を比較する調査を行いました。

たとえば、「コクがあるのにキレがある」とはどこかで聞いたキャッチコピーですが、ビールの味を表すのに、芳醇な、コクがある、洗練された、深みがある、すっきりした、さわやかな、などなど形容詞で表すことができます。それと同じような調査です。

これは、日本語と英語で同じ調査をしないと比較になりません。しかし、日本語を英語に直訳すると単語のカバー範囲が違うので同じ調査にならず、比較ができないのです。そのため、現地スタッフとやり取りを重ねて慎重に単語の意味合わせをしました。

最後までうまく行かなかったのが「しっかり」の英訳です。そのまま辞書で引くと、「硬い」という意味しか出てきません。でも日本語で言う「しっかり」というのは、硬さだけでなく、作りの良さ、実直さ、態度や振る舞い、安定、身なり、堅実、信頼など、様々なニュアンスも含んでいます。

アメリカに渡って現地スタッフとアンケートに使う用語の最終の詰めをしたのですが、日本人とアメリカ人合計5、6人が部屋に閉じこもってまる1日「しっかり」の論議をしました。部屋には10冊程度の辞書が集められました。

日本人が「しっかり」を使う場面や表現を英語で説明し、それにあう単語をアメリカ人スタッフが提案し、場面や表現で説明するという地道な作業です。

で、結局「steady」という単語が、我々の調査意図に合致する「しっかり」だということがわかりました。

「え、そんな単語聞いたことないぞ」と最初は思ったのですが、中学校の英語の先生から以下のようなフレーズを教わったことを思い出しました。私は中学時代「しっかり」英語を勉強していませんでした。

Slow and steady wins the race. ゆっくりでも着実な走者が最後はレースを制する(ウサギとカメ、急がば回れ)

英語はゆっくりでも着実に積み重ねが必要ですね。

 

Appendix

ところで、これは以前お話ししたスキーマ(背景知識)のことですね。「しっかり」という言葉が持っている背景は英語とは全然違うため、直訳すると意味がずれるんですね。なので、英語をしゃべるためにはスキーマが大切だという事例です。


 

42.知らない単語があっても平気!

 英会話をしているとき、相手が言っている単語がわからない、自分がしゃべりたい単語がわからない、そんなことがよくあります。

そんなときはどうしたらいいのでしょうか?

 まず、相手が言っている単語がわからないときは、相手に聞くというのがいちばん手っ取り早いです。違う単語を使ってくれたり、丁寧な説明をしてくれます。

以前、アメリカ人が「『クリスマス・ツリー』を使おう」などと会議で発言をしていました。仕事の話では意味が成り立たないし、クリスマスが近い時期でしたが遊びの話でもありませんでした。

そこで「『クリスマス・ツリー』って何?」と聞いたところ、「ゴメンゴメン、樹脂クリップのことだよ、形が似てるだろう?」と教えてくれました。

自動車で使う特殊な樹脂クリップは”返し”がいくつもついているので小さなクリスマス・ツリーに見えるのです。

 自分がしゃべりたい単語がわからないときも相手に聞きます。

たとえば、雨に降られてずぶ濡れになった話をしたいとき、『雨』という単語がわからなかったとします。

そんなとき「空から落ちてくる水は何て言う?」などと聞くと「それは『雨』だよ」などと教えてくれます。「そうそう、その『雨』が降って困ったんだよ」などと会話が自然に流れます。

それには知らない単語を別の言葉で表現する力が必要です(言葉当てクイズみたいですね)。

この方法を習得すると非常に有効です。辞書を引いて会話が途切れてしまうことがなくなり、会話のリズムがよくなります。また、単語の憶えもよくなります。

(通勤途上などに)目についたものを別の言葉で表現するトレーニングをしても良いかも知れません。

 それから、自分も相手も何というかわからないときもあります。こんなときは、「じゃあこれを、○○と言うことにしよう(Let’s say ○○.)」などと会話中で名前をつけたりすることもできます。

そうすると会話が非常にスムーズになります。

 私は、これら3つの方法を使って辞書を引くことなしに英会話をしていますが、まったく不自由しません。

みなさんも、単語がわからないときは遠慮なく相手に聞きましょう!

43.RとLの聞き取りは文脈で乗り切ろう

 日本人はRとLの聞き分けが難しいですね。私もその一人です。

家の近所に日本人と結婚したイギリス人が住んでいて、英会話教室をやっています。妻がそこに通っていて、私に「試しに行ってみたら」と言われましたが仕事で不自由なく英語をしゃべっていたので気が進みませんでした。そもそも英会話スクールなど行ったこともありません。

ところがある日、気が変わって「ためしに行ってみるか」となったのですが、イギリス人の先生とも普通に会話できたので、やっぱりあまり意義を感じませんでした。

そこで思いついたのが、RとLの聞き取り練習です。先生にお願いしてRを含む単語、Lを含む単語を出してもらい、どちらの単語か当てるのですが、何度やっても全くわかりません。2時間ほどやったのですが、とうとう最後までわからずじまいでした。先生も苦笑いするだけです。それ以来、英会話教室に行くのは止めました。

 音の聞き取りには臨界期があり(RとLの区別は1歳だそうです!)、それを過ぎると聞き取れないと言いますが、まさにそれを思い知らされました。

 それでどうしたかと言うと、RとLの聞き取りはあきらめて、文脈や背景からどちらか判別するという方法を取りました。RightとLight、PlayとPrayなど、文脈や背景が分かればどちらの意味か分かります。わからなくても両方の可能性を考えて理解すればとんちんかんなことにはなりません。さらにいうと、どうしてもそれを知る必要がある場合はしゃべっている本人に聞くのです。恥ずかしげもなく聞けるところが旭日自動車英会話の良いところです。

また、TOEICの聞き取りには日本人が不得意のRとLの聞き分けがよく出ます。これもだいたい出る単語は決まっているし、文脈で判断できる場合がほとんどなのでパターンを全部覚えてしまえば対処できます。

 なので、RとLの聞き取りができなくても悲観せず、別の方法で対処することを考えましょう。どうにかなります!

  

Appendix

play(スポーツする)とpray(祈る)は日本人には聞き取りにくいですね。TOEICの頻出問題でもあります。私を含め、ほとんどの日本人は聞き分けることができないでしょう。

「プレイ」と出てきても、どうせ「スポーツする」か「祈るか」のどちらかなので文脈かスキーマで判断すればほぼ当たりでしょう。下は私が作った例ですが、写真を見ればわかりますね。仮にわからなかったとしても、ビジネスの現場なら相手に聞けばいいのです。Take it easy!

 

They pray for baseball on the baseball ground.
彼らは球場で野球に祈りをささげています。

 

 

They play baseball on the baseball ground.
彼らは球場で野球をしています。

 

 

44.スピーキングの練習方法は?

 第二言語習得論では、英会話時、脳内では以下のプロセスが働いていると言われています。

 

知覚→理解→概念化→言語化→調音

 

スピーキングのときは、後半の「概念化→言語化→調音」が働いています。

概念化というのは、言いたいことをイメージするステップで、このときはまだ言葉が介在していません。

言語化は、イメージを具体的に文章に変換するステップです。

調音は、頭の中で作った文章を実際に発声するステップです。

ですので、スピーキングはこの3ステップを含む練習が適していることがわかりますね。書かれた物を読むのは「調音」しか練習できません。また、日本語の文章を英訳するのは「言語化」しか練習できませんし、だいいち日本語を英訳するなどというプロセス自体が英会話時の脳のプロセスにはないので逆効果の恐れがあります(多くの日本人は、このプロセスで英語を話そうとするためになかなか英語が出てこないのです)。

じゃあ、何がお勧めかというと、絵や写真を見ながらそれを英語でしゃべるのです。

たとえば、↓の絵を見ながらストーリーを話すのです。(ちなみにこれは英検の二次試験問題です)

英検の二次試験問題

これなら、概念化→言語化→調音の3ステップが同時にできるのです。

 

ちなみに私はどうやってスピーキングが上達したかお話しします。

海外赴任時、なかなか言いたいことが言えずに苦労していました。毎日、家に帰って寝るとき、その日、言いたいことが言えずに悔しかった場面が走馬灯のように浮かびました。ベッドの中で、ああ言えばよかった、こう言えばよかった、とその場面を思い浮かべながら英語の言い回しを考えるのが日課でした(図らずもこれは「概念化→言語化」のステップでした)。今思えば、そういった苦しく悔しい思いがスピーキング習得へのドライブになったのですね。

苦しくても、まずしゃべってみよう!

45.食い意地でペラペラになった話

 英語の話ではありません。スペイン語の話です。でも、英会話習得に共通点があると思ったので触れたいと思います。

 私はメキシコに赴任する前、生活のために赴任前研修として都内の語学学校で1週間のスペイン語研修を受けました。朝9時から夕方6時まで8時間×5日間、計40時間(休みなし!)で基本的な文法、ごく簡単な聞き取り、ごく簡単な会話を学習します。

先生曰く、だいたい中学3年間の英語と同じくらいの内容だということです。先生は、若くてかわいらしい女性の先生でした。

 メキシコに赴任し、いざ生活しようとするとスペイン語がしゃべれないと大変困ります。スーパーに行ってレジ袋が欲しいとか、マクドナルドへ行ってチーズバーガー2個欲しいとか、それだけでも一苦労です。

それよりも我々家族は食い意地が張っていました。レストランに行ったときは、メニューをガメてきてそこに書いてあるすべての料理名、調理法を暗記しました。そして、1年ほど経ったときはレストランで何不自由なくスペイン語で会話していました。

日本からの出張者が来たとき、注文した料理の在庫が無く、ウェイターとやり取りしているのを聞いて、「茅波さん、何年メキシコに住んでいるんですか?ペラペラですね!」と驚かれたほどです。

 さて、何が良かったのでしょうか?

生活のために必要ですから、恥ずかしがっていたら生活できません。とにかくしゃべらないといけません。また、おいしいものが食べたいから勉強します。そして、毎週末レストランに行って毎回しゃべります。これは、前に言ったエピソード記憶と手続き記憶ですね。単語の記憶(意味記憶)もばっちりです。スペイン語をしゃべるのは週末だけ、買い物とレストランのときだけですからそれほど長い時間ではありません。まあ、ざっくり見積もって1年で300時間ぐらいでしょう。

そうすると、赴任前研修の40時間+実践300時間で取りあえずのスペイン語会話はできたことになります。

とにかく、まずしゃべりだすというのは非常に早く外国語を習得できるということではないでしょうか?

さあ、みなさん、英語をしゃべりはじめましょう!

 

Appendix

ところで、まったくの偶然ですが、英会話学校のスペイン語の先生は2年後、単身メキシコに渡り、メキシコ旭日自動車に現地採用で就職し、私と同じオフィスで働くことになりました。お互いに顔を見合わせ「ああああーっ」と叫びました。縁は異なものです。

 

 

46. 可算名詞、不可算名詞、aとthe

 英語には可算名詞、不可算名詞というのがあります。

数えられるものと数えられないものです。

可算名詞はリンゴやオレンジ、

不可算名詞はミルクやコーヒーなどの液体が代表です。

ところで、不可算名詞にはfurniture(家具)など日本語の感覚だと数えられるものや、chicken(鶏肉)のようにa chicken(1羽のニワトリ)と可算名詞にもなるものもあります。

(I ate a chicken.は、私は1羽のニワトリを食べた、となります。ホラー映画ですね)

また、英語には冠詞というものがあり、aがついたりtheがついたり、何もつかなかったりします。可算名詞と不可算名詞でどの冠詞が付くかが異なります。それがさらに私たちの頭を混乱させます。

↓ちなみにこれらの関係は以下。

冠詞の整理(トイグルさんから借用)

英語独習法という本(今井むつみ著)によると、この可算/不可算の切り分けがそのままネイティブの世界の捉え方だそうです。私たちが英語の文法を理解しにくいのは、この英語の世界(の背景)が理解できないからだとのことです。

この英語の世界は赤ちゃんの頃から繰り返し英語を聞きしゃべりすることにより心の深層に作られるので我々にはありません。

我々がこれを習得するためには長い時間がかかります。でも我々には時間がありません。どうすればいいのでしょうか?

答えは、「最低限のところだけやってあとは気にしない」です。多少間違っていても相手は理解してくれます。

じゃあ、最低限というのはどのラインかというと、TOEICで目標点に合格するレベルです。そこまでやったら英会話の実戦をやる方がよっぽど大切です。精度は実戦のなかで上げて行けばいいのです。

 

Appendix

私自身、可算/不可算を全部憶えているわけではありませんし、aとtheを間違いなく使えているとは思っていません。

なので、自分の中でわからなくなったときに使う簡単なルールを作っています。

・日本語で一本、三個などと助数詞がつくもの(数えられるもの)は可算、つかないものは不可算。→日本語のルールをそのまま適用(ただし、furnitureなどは注意)。

・(文章や会議に参加している)みんなが「せーの」で「これ」、と指をさせるものはthe。そうでないものはa(可算)か無冠詞(不可算)。

・文中で初めて出てきたものはa、2回目以降はthe。

・thatやthis(these, those)に変えても意味が通じるものはthe。日本語で「あの」、「その」、「例の」で言い換えて意味が通じるものはthe。

これで全く問題なく英語でのコミュニケーションができています(結構間違えていると思いますが)。

 

我々は中学生や高校生のときのように間違いを恐れなくてもいいのです。間違えないことよりもしゃべりだすことのほうが100倍大切なのです。

 


47.ラテン語、ギリシャ語と英語?

 何かの本で英語圏の人は初めて見る単語であっても、ある程度単語の意味がイメージできると読んだことがあります。そのために彼らは日本人より効率的に単語を憶えることができるのだと。

それは、このような原義や語源を知っているからにほかなりません(バックナンバー、語源で憶える英単語参照)。

欧米ではラテン語を授業の科目にしている国が多くあります。ラテン語とは、古代ローマで使われていた言葉です。またラテン語のいくつかはギリシャに起源をもつものも多くあります。日本語で言うと古文のようなもので、今では使われていません。

古文は役に立たない科目の代名詞で学生に人気がありません。ではラテン語も役に立たないかと言うと、実は英語の中でもラテン語(ギリシャ語含む)がベースになっている単語がたくさんあります。

挙げるとキリがないのですが、たとえばmonoというのはギリシャ語で1という意味です。

辞書で調べるとmonoで始まる単語は62語ありました。代表的なものは下記です。

 monochrome 白黒の(1色です)

monolith 石柱、モノリス(2001年宇宙の旅で出てきますね。1本の柱です)

monopoly独占する(1人がすべて持って行きます)

monorail モノレール(レールが1本です)

monotonous単調な、モノトーン(一本調子です)

 

次にラテン語で1はuniなのですが、下記のようにこれもたくさんの単語があります。

 uniformユニフォーム(みんなが1つの衣装を着る)

unique唯一の

union労働組合(労働者が一致団結した組織)

united 結合された(1つになる)

universe 宇宙(1つになって回る。宇宙全体は1つ)

 

欧米の人たちはこのようなベースがあるから単語を憶えやすいのですね。

我々もこれにならって原義や語源で英単語を憶えてみましょう。

 

 

Appendix

ちなみに、

・トンボ鉛筆の消しゴムはmono

・三菱鉛筆の消しゴムはuni

どちらも1番なのですね、納得。


 

48.意地で英検準1級を取った話

 以前、TOEICで800点を取った話をしましたが、実は別の年に英検準1級を取りました。

「茅波さんて実は受験マニアじゃない?」と言われそうですが、そんなことはありません。カミさんが公文の英語の先生を始めるにあたって英検を受験するというので、私も負けず嫌いのために英検を取ると宣言してしまったのです。

宣言をしたものの、英検準1級というのが難しいとは聞いていたけど、どれほど難しいかは知りませんでした。

それで過去問を買ってやってみたのですが、最初に25問の小問があるのですが、4つの選択肢のうちどの単語もどれひとつわからないという状態でした。TOEICとは違い、学術的、知性的な単語がほとんどで、TOEICの単語知識はまったく役に立ちません。

また、リスニングのスピードもTOEICよりも格段に速く、音声というよりは騒音に聞こえました。

ニュースか何かで英検準1級は中学校の英語の先生の30%しか持っていないと聞いたことはありましたが、これほど難しいとは思いませんでした。

それでも気を落とさずに問題の分析を行うと、次の2点がポイントでした。

①リーディングは英単語さえ憶えればどうにかなる。

②リスニングはスピードに慣れればどうにかなる。

TOEICと違って問題量は多くないため、回答のスピードを上げる必要はありませんでした。とにかくこの2点だけ攻略すればいいので作戦は単純でした。でも、実行は大変でした。当時は月60~100時間残業していましたから、平日に時間はほとんどありません。

 

実行

①→英検準1級頻出単語集を全部(ほとんど)憶える(休日の朝は必ず英単語、平日は通勤時間に英単語のCD)

②→過去問のCDを聞きまくる(外出中はいつもスマホや車で聞いている状態)

これを集中的にやった結果、英検受験3回目、8カ月で1次試験を受かりました。2次試験のスピーキングはいつも英語をしゃべっていたので特に何もすることなく一発で受かりました。

ここで、英単語は新たに3000語ぐらい(推定)憶える必要がありましたが、語源暗記法を併用することにより短期間で憶えることができました(語源暗記法は以前紹介しました)。お勧めの暗記法です。

また、過去問を何度も解きながらどの勉強法に効果があるのか、PDCAを回しました。

この経験から何が言えるかというと、正しい分析、正しい作戦、正しい実行がキモでした。

これはTOEICも同様です。自分なりの作戦を持ってやればきっと攻略できます。

みなさん、希望を持って取り組みましょう!


49.将来、AI通訳で英会話は不要になるか?

 将来、AIが高性能化して通訳出来たら英語なんて勉強する意味ないね、と思っている方、そしてそれまでの辛抱だと思っている方、甘い!

テレビの報道ではAIがすぐにでも人間にとって代わるような言い方をしていますが、AIの専門家はそんな言い方をしていません。AIは定型化された作業や学習が可能な作業に対して、限定的な使い方ならできるが、クリエイティブなもの、感情が絡むものなどには向かないと言ってます。

事例を見てみましょう。

 「今週末、会社の同僚とゴルフに行くことになったよ・・・」

「どうぞ、ご自由に」

 この「ご自由に」はOKということなのでしょうか?

たぶん違いますね。これが彼女から出た言葉だったら最大限の警戒が必要です。ゴルフに行くならそれなりの覚悟が必要になりますね。彼女は週末にお出かけをしたかったかも知れません。

 「わぁ、おいしそうだなぁ。本当にどれを食べてもいいの?」

「どうぞ、ご自由に」

 初めてビュッフェを訪れた子供と、お母さんの会話でしょうか。こちらはOKですね。

これらを、感情や文脈を理解せずに英訳できるかというと、難しいです。AIは心のひだ(スキーマ)を読み取れないのです。

 AIは会話の裏にある膨大な情報(スキーマ)を知りません。翻訳ソフトを使っても何かトンチンカンな訳になるのはこのためです。技術文書を文系の人に訳してもらってもやはりトンチンカンな訳になります。

 我々エンジニアリングの仕事は、裏にある膨大な有形無形の知識・経験(スキーマ)の上に立っています。当然、我々の会話もこれらに基づいています。特に、無形の情報はAIに学ばせようがありません。

 もうひとつ、AIの致命的欠点に速度があります。会話にいちいち通訳を入れると、単純に会議の時間が倍かかってしまいます。効率が半分ともいえます。現代のスピード社会において効率が半分に下がるというのは致命的です。

 そのように考えると、AI通訳が我々の仕事に入ってくることは当分の間ないでしょう。とくに英語で仕事をすることがスタンダードになっている旭日自動車圏ではなおさらです(みんなしゃべっているのに1人だけAI通訳って、なんか抵抗ありそうです)。

みなさん、やっぱり英語の学習をしましょう!

 

 

Appendix

スキーマ処理(背景処理)

「そうですねぇ、信号の間隔が短いので、速度が追い付いて行かないですね」

何か道路事情で問題なのでしょうか?メカトロニクスの検討会での会話を想定しました。センサーからでる信号の間隔と、メカの速度にギャップが出ていてうまく動いていないようです。

これは、当事者同しではそれぞれの言葉が何を指しているのかわかるのですが、知識のバックグラウンドがないとまったくわかりません。交通事情の話をしているのかと思ってしてしまいます。

実は、我々が普段話している会話では、この背景が非常に重要な役割をはたしていて、それがないと言葉明瞭、意味不明瞭の状態になってしまいます。会社に入ったばかりの新入社員はこの状態ですね。

 「もったいない」、「がんばる」に相当する英語はありません。海外赴任時、英語で部下を励ますときに大変困りました。「この機会を無駄にしたらもったいない」、「もう少しがんばってほしい」日本語ではよく使うこれらのフレーズは、英語に直そうとしてもストンとくる表現がないのです。人間でも通訳は難しいですが、いわんや機械(AI)をや、です。

 

 

50.悪しき日本の英語教育を打ち破れ!

 日本の英語教育で特徴的なのは英文和訳への特化です。そのため、文を後ろから訳すというのを繰り返し練習します。これは、英文を日本語の語順に変換しているのと同じです。これでは、英文を理解するときに日本語に直さないと理解できません。

じっさい、英語は前に結論を言って、後ろは補足という流れで出来上がっています。これを日本語の語順に変換しないと理解できないようだと、会話のスピードについていけません。

また、脳の中では英語と日本語の同時処理を行わなければならないため、相当負荷があがってしまいます。

英語の分にカタカナのルビを振ったりすることがありますが、これも問題です。英語ではカタカナでは表現できない発音があるので、発音がおかしくなります。それだけだったらまだいいのですが、正しい発音を習わないとリスニングが難しくなるという問題があります。

自分がカタカナで憶えた音と、実際の発音がことなるため、聞き取りにくくなるのです。私は、旭日自動車の英語に発音はあまり大事だと思いませんが、リスニング力を伸ばすためには発音が大事だと思います(以前、旭日自動車の英語はカタカナ英語で十分だと言いましたが、それはデビューのためのハードルを下げるためで、デビューしたあとは、発音はコツコツと修正して行きましょう)。

もうひとつ、学校教育で絶対的に不足しているのは話す練習です。教科書の音読ではありません。自分の言いたいことを英語で表現することです。これはほぼゼロではないでしょうか?

また、学校教育では英語の試験をして点数で序列化します。しかも、点数が悪いと怒られたりします。このために出来ないことは恥ずかしいこと、怖いことなどとネガティブな感情を植え付けられます。トラウマになっている人も多いと思います。これではいつまでたっても人前でしゃべる勇気など生まれてきません

頭の中で日本語に変換する変な癖、カタカナに当てはめて聞き取ろうとする癖、話す練習はまったくしない、恥ずかしい怖いという感情を植え付ける、こんな状況で英語が話せるようになるはずはありません。日本の英語教育を受けているとどうしてもこうなります。これはまさしく呪縛です。

 

まあ、日本の英語教育に対する恨み節はたくさんありますが、いつまでも言い訳を言っていたのでは何も始まりません。

みなさん、呪縛から抜け出す方法があります。そう、それは旭日自動車英語です。このコラムを読んだ人はわかると思いますが、旭日自動車英語には悪しき英語教育の呪縛を打ち破り、英語社会を生き抜くためのたくさんのヒントがあります。旭日自動車英語で呪縛を打ち破りましょう。英語で楽しく仕事をしている自分の姿を思い描きましょう。未来は必ず切り拓くことができます!

 

 

あとがき

 旭日自動車とロサンジュはコンポーネントの共用化を行っている。それぞれの要求を加味し、設計仕様を統一し、おなじコンポーネントを使うことで量産効果や開発の効率化を狙っているのである。旭日自動車、ロサンジュで共用のコンポーネントを使用するため、ソーシング会議(供給業者の決定)も役員の御前で旭日自動車、ロサンジュの双方の合意を最終確認し、決定される。

私は、あるコンポーネントの開発責任を負っていたのだが、ソーシング会議でロサンジュ側から設計仕様の妥当性について疑問の声が出された。設計仕様が最適かどうか、不明だと言うのである。異論が出るとソーシングが決められない。

さらりと書いているが、これは実はとんでもない事態だ。今まで設計仕様確定のために2年の歳月を費やしてきた。もし否定されれば、その2年の努力が水の泡となる。また、ソーシングが決まらないと開発がスタートできない。開発が遅れれば新車の発表、発売が遅れ、会社に多大な損失をもたらすことになる。

私は急遽、右腕の部下を引き連れ、パリに発った。ベルサイユ宮殿にほど近いロサンジュの開発センターで膝つき合わせてとことん話し合おうと提案したのだ。開発日程の遅れをリカバリーするためには二週間以内にロサンジュ側と合意に至らなければならない。

旭日自動車、ロサンジュ双方の責任者とエースエンジニアが朝から晩まで会議室にこもって、設計仕様の妥当性を論議して行くのだが、論議は難航を極めた。設計が複雑のため、詳細を詰めないとどちらの設計仕様が良いのか判定できないのである。おまけに、旭日自動車側とロサンジュ側で優劣の差は小さく、双方とも決め手に欠いた。

論議中はバチバチと火花を散らすが、昼休みになると連れ立ってカフェテリアへ行き、バカ話をしながら昼食を取る。そのあと庭のベンチで濃いフレンチ・コーヒーをすすりながらバカ話の続きをする。昼休みが終わるとまた会議室にこもって激論を戦わすという具合だ。テーブルの上ではニコニコしながら握手をして、下ではお互いのスネを力いっぱい蹴り合うという、そんな論戦を続けた。

ここで決着できないと開発が遅れて多大な損害が発生する。毎朝エッフェル塔を見ながらホテルを出るのだが、胃が痛くなる毎日だった。そのせいで今でもテレビにエッフェル塔が映るとトラウマのためか心臓がバクバクする。

二週間後、ようやくすべての検討が終わり、双方が納得する結論に達することができた。私と部下が日本への報告を終えてロサンジュを後にするとき、ロサンジュの責任者が呼び止めた。日本に帰る前にとても大事な話がある、その話は仕事よりも大切だというのだ。

我々は会議室でロサンジュチームと対峙した。ロサンジュの責任者はおもむろにPCをプロジェクターにつなぎ、画像を映し出した。

「これから、お勧めのシャンパンを紹介する」

決着に至ったお祝いとして、シャンパンの特別講義をプレゼントしてくれたのだ。

和気あいあいとした講義のあと、我々は握手をしてお互いの健闘を称えあった。深い信頼でつながった瞬間だった。

この信頼感を生んだのは日本語なまりの英語と、フランス語なまりの英語でのやり取りだった。母国語でない者同士、ときにもどかしい思いをしながら、ときに相手の思いを汲み取りながら、結論という目標に向けて協力し、競い合った2週間。

お互いネイティブのような英語ではないが、相手をリスペクトし、誠意を尽くす。それが旭日自動車の英語ではないだろうか。

 

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