非破壊自炊の最強の武器
はじめに
「買ってよかった」と思える今年一番の製品が「非破壊自炊の最強の武器」ことPFU製のScansnap SV600だ。発売は付属ソフトのマイナーチェンジを考慮すると2013年のようで、発売以来すでに7年を経過しており、最新の製品という訳ではないが、スキャナー関連の技術に関して言えば、この10年で特別な進化は無かったので、今でも第一線で立派に使える製品だと言ってよい。
1.この製品の一般からの評価
ネットにたくさんあるこの製品のレビューを見ると、「とても良い」という評価と「使い物にならない」という評価がほぼ同数ある。高評価と低評価が同時に混在している珍しい製品だ。毀誉褒貶の差が激しいのは、ある意味でこの製品の特徴かも知れない。私にとって、この製品のスキャンスピードは自分のニーズにぴったりで、その魅力には抗いがたいものがあったので、悪い評価も知りながら、リスクを覚悟で購入したのは事実だ。買って実際に使ってみて、良い評価と悪い評価の存在する理由を初めて理解した。だが、悪い評価の理由は工夫すれば克服可能なことも発見した。
2.評価のバラツキの理由
正直なところ、私も使い始めた当初、「これは期待していたのとは違う。本当に使い物になるのだろうか?無駄な買い物をしたのかも知れない。やめとけばよかったかも」と思った時期があった。一方で「大枚を投じて買ったものをこのまま捨てるのはもったいない」だけでなく「このスキャンスピードは一般のフラットヘッド・スキャナーでは得られない」という理由から「どうしてもこれを使いこなしたい。スキャン後の調整を最小限に抑える方法があるはずだ」と工夫をしてみる気になった。なにしろ、これが使えなかったら代替機種がない。この製品は人間で言えば、「余人をもって代えがたい」魅力のある機能を持っている。
3.使いこなせば無敵
最初はなかなかうまく行かなかったが、スキャンのやり方を工夫すると、だんだんと調整作業が減っていった。工夫を重ねるに従い、「やれば出来るじゃない!」となり、いまではかなりの効率化が図れるに至ったと自負している。結果として、今年一番の「買ってよかった」ものと言えるレベルになった。使いこなしに時間はかかったものの、一度ノウハウを手に入れてしまえば、もはや非破壊自炊に他の選択肢はない。結論として苦労する甲斐のある製品であった。今では300ページ程度の単行本1冊のスキャンをスキャン範囲の調整込みで1時間ちょっとあればできるようになった。
この製品のスキャンスピードは早い。見開き2ページ分のスキャンを数秒で完了できる。このスピードで非破壊自炊に使用可能な同価格帯のスキャナが存在しないし、フラットヘッドスキャナではスピードで勝てる機種は存在しない。問題はスキャンした後のスキャン範囲の調整である。これを最小限に抑えないと調整作業に時間を取られて折角のスピードが台無しになる。したがってスキャン後の調整を最小限に抑えられれば無敵のスキャナーになる。
4.この製品の魅力・本の魅力
この製品の最大の魅力は、非破壊自炊、つまり本をバラバラにしないでの自炊を、まあまあ許容範囲の時間で終わらせることが出来るという点だ。本をバラシて自炊することを良しとする人にはScansnapでも別の機種の方がはるかに効率が良いだろう。
しかし、紙の本には紙の本でなくてはならない魅力がある。元の本は本の体裁を保ったまま残したい。同時にその本を電子ファイル化してタブレットに入れて持ち歩いたり、PCの画面で読んだりすることも可能にする方法は無いものか、と考える人も一定数はいるはずだ。私は後者の方なのである。
「あれはどこに書いてあったっけ?」と言う時に本棚の本の背表紙を見て、本棚から取り出し、本をパラパラとめくってどこに書いてあったか探す。その過程でたまたま目に留まった内容から他のことも思いつく。この過程は私にとっては電子書籍を検索するよりもずっと楽しい。この楽しみは、たとえその内容が電子化されても「本の魅力」として決して褪せるものではないと思っている。この「本の魅力」と本の内容の電子化とを両立させるためには『「本」をバラバラにしないでそのままの形で残し、かつ電子化したい』という欲張りな願望を持たざるを得ない。
この願望をまずまずリーズナブルな時間と費用で実現してくれるのがScansnap SV600 という製品なのだと私は思う。
5.紙の本と電子ファイルのメリット・デメリット
紙の本のメリットとしては、
・アクセスの速さ:ペラペラめくれることによる、スピーディなアクセス。
・意外な発見:ペラペラめくっているうちにたまたま見た場所に書いてあることによるひらめきが得られる。
・一発アクセス:しおりが挟んであれば、読みたい場所に即アクセスできる。
・同時アクセス:「アッチのページとコッチのページを同時に見る」ことが容易。
・開く/閉じるが一瞬で簡単にできる。
・反射光によるメディアである(目が疲れない)
一方、デメリットとしては
・かさ張る:厚い、重い、本棚がいる。
・検索に手間がかかる:索引に無い用語は記憶に頼るしかない
・字の大きさを拡大できない:小さい文字は老眼の敵
かたや、電子書籍のメリットとしては
・コンパクトさ:一個のタブレットに何十冊もの本を入れて持ち歩ける。
・ユビキタス性:いつでもどこでも読みたいときに読める。
・検索:検索が容易
・コピペ:少なくともキャラクタベースではコピペできる。
デメリットは
・電子書籍フォーマットに対応している端末が必須
・画面の大きさが端末の制約を受ける:スマホでは読みにくい
・開きっぱなしに出来ない:バッテリーの制限、専用端末ではない等。
・離れたページをアクセスしにくい
・見やすさがディスプレイの性能に依存する
それぞれのメリットはもう一方のデメリットでもある。本を持っていても電子書籍も持っていたいし、逆に電子書籍だけでも不便である。両方を持つには、紙の本も電子書籍も両方購入することだが、それには金もかかるし、端末もいろいろ用意する必要が生じる。
6.行きつくところは非破壊自炊
それでは、本を買って自炊すれば良いではないか、という事になるが、ことはそれほど簡単ではない。手っ取り早く自炊するために本をバラバラにしてスキャナーにかけてしまったら、本が本でなくなる。これでは本の持つメリットがない。やはり、「本は一塊に綴じられた「本」としての体裁を保ち、同時に電子ファイルとして持ち歩けるようにもしたい。要するに我儘なのである。
それなら、本をバラさずにスキャンすれば良い。しかし、それには手間がかかる。オフィス用のコピー機なら高速だが、自動ページめくりはできない。一方、家庭用のフラットヘッドスキャナの読み取り速度は見開き1ページをコピーするのに1分くらいかかり、スピードに難がある。私も実際にやって見たが、何百ページもある本をスキャンしたら丸一日かかっても終わらない。ページをめくるにもいちいち本を裏返してめくり、もう一度位置合わせする手間が馬鹿にならない。しかも、見開きの形でしかスキャンできない。
7.結論
このような課題を解決できたのはSCANSNAP SV600のおかげなのだ。
本当に「買ってよかった」と思っている。
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