③唸れクルージーン!アルスター伝説「ロスナリーの戦い」
アイルランド伝承「ロスナリーの戦い」の訳。一部の注釈除き添削済みですが、誤訳指摘していただけると土下座して喜びます。
21
南タラへ向かっていたコルブレ・ニア・フェルとRosの息子Findは、使者たちからの知らせを耳にしました。
「あいわかった。ならば」
コルブレ・ニア・フェルは言いました。
「コンホヴァルとウラドが我らに狙いを定めた場合に備え、アリルとメイヴが我々の援護に来られるようにしよう。もし彼らがコナハトの輝く州を通り過ぎたなら、我々のほうから彼らの助けに向かうのだ」
22
使者たちは、アリルとメイヴのもとを訪れました。そして到着してすぐ、メイヴは便りの内容を尋ね始めました。彼女が発した言葉はこのようなものです。
「いずこから参った使者たちか?
Carnのコンホヴァルへの旅路を語ってみせよ。
奴はエウァンで宴の主人として待っていたか?
それとも雄牛を追って戦いに赴くのか?」
「ウラドは(休戦のための取引を)待ちませぬ。
正義も時を読むこともなく、
Bregian族を見張ると決めた模様。
略奪者たちの行為は凄まじきもの。
奴らは海にたどり着くまで
コルブレ・ニア・フェルに破壊の限りを尽くしております」
「奴らは我らの前に逃げ出すだろう。
その頭を切り落としてくれる、
もしも奴が来るならな。
私はこの屋敷に留まろう。
責任もなく、罪もなく。
なぜならLaginで十分だからだ、
あの男と戦うのなら」
「もしMagachの息子が来たならば
大胆不敵で、好戦的な軍隊が、
ぞっとするような血濡れた射撃が
ロスナリーの戦いにもたらされるでしょう」
「もしマハの王が来たならば、
奴の軍旗は退却し、
富は奪い取られ、
力も衰えてしまうだろう」
「もし我らの軍が来たならば、
兵士たちを招集し、
奴らに拮抗しうる戦団となります。
真なる戦いとなりましょう」…
23
さてコンホヴァルに話を戻しますと、彼は帰還のため、Accal Bregに、そしてSlige Bregに立派な軍隊と共にやってきました。
するとそこでアリル*1、威厳のある大地主に出くわしました。
「ごきげんよう、コンホヴァル」
アリルは言いました。
「あなた様の後ろにいる大軍隊は何なのです? どちらへ行かれるのですか?」
「光り輝くボインの上、ロスナリーへ」
コンホヴァルは言いました。
「しかし、そこはあなた様にとって安全な場所ではありませぬ」
アリルは答えました。
「そこは危険です。GalíanやタラのLauigneがいるのです」
「我が道を行くことは私の責務、ゲシュなのだ」
コンホヴァルは言い返しました。
「敵が何人いようとも、戦いに臨むことが私の責務なのだよ。ただ、今のところはひとまず、ここに我らの陣地を構えさせるとしよう」
コンホヴァルは言いました。
「さあ、ここを陣地としよう、天幕を立てるのだ。仮小屋とテントも組み立てよう。食料と酒の準備をし、宴を開こうではないか。ここで存分に、陽気な歌と賛美の歌を唄おうではないか」
24
こうして彼らの陣地が設置されました。天幕が張られ、仮小屋とテントも作られました。
火が焚きつけられ、料理と酒の準備がされました。清潔な入浴用の湯も張られ、彼らの髪の毛は櫛で梳かれ滑らかになりました。ピカピカに清潔になった人々は、晩餐会を開き、食事をしました。そしてたくさんの陽気な歌と、賛美の歌を唄いました。
25
「さて、ウラドの者たちよ」
コンホヴァルは言いました。
「敵軍を偵察しに行く者を決めねばならんのだが、お前たちの中に相応しい者はいるか?」
「私が行きます」
そう言ったのは、ファフトナ・ファサッハの息子であるFollomonの息子、Féicでした。
その後、ファフトナ・ファサッハの息子であるFollomonの息子Féicは、光り輝くボインの砦まで向かい、辿り着きました。
そこで彼は敵軍の様子を偵察し始めましたが、彼らを見て大きなショックを受けました。
「今すぐ北へ行こう」
Féicは言いました。
「ウラドへ行き、敵軍が私を退けたことを皆に伝えなくては。ウラドはきっと北からやってくる。両軍はこの場所でぶつかり、交戦することになるだろう。私の戦いの栄光も名誉も勲章も、ウラドの他の男たちと大差ないものになってしまう。ただちに戦い始めるべきでない理由があるか?」
そう言って彼は、ボイン川を越えて行きました。そして、製粉機を逆方向に回すように、敵軍の周りをでたらめに歩き回ったり、背後で彼らの荷物車を開け閉めしたり、右から左へ横切ったりしたので、敵軍は彼を怒鳴りつけました。
Féicの思い切った行動は、巨大な軍隊の忍耐力を崩壊させました。
それから、Féicは渡ってきた川の方へ戻り、飛び越えようとしましたが、うまくいかず光り輝くボイン川に落ちてしまいました。
しかも川のどこよりも深い場所に飛び込んだものですから、波は彼の頭上を越え大きな音を立てました。こうしてFéicは水のよどみに飲み込まれ、溺れ死んでしまったのです。
のちにこの場所には、彼を記念した恒久的な碑が建てられました。そして彼が溺れ死んだことにちなみ、「Féicのよどみ」と名付けられたのです。
26
Féicがいない時間は、コンホヴァルにとって本当に長く感じられるものでした。
「仕方ない、ウラドよ」
コンホヴァルは言いました。
「お前たちの中に、敵軍を偵察しに行こうと思う者はいるか?」
「私が行きます」
そう言ったのは、ウラドのDaigの息子Daigiでした。
そうして彼は、光り輝くボインの水辺の上部にある、Féicが訪れた場所と同じ見晴らしの良い丘へと向かいました。
彼は敵軍の様子を偵察し始めました。すると彼はFéicと同じように魂、気質、精神を荒立たせ、彼と丸っきり同じことを言ったのです。
「北へ向かおう」
彼は言いました。
「彼方から軍隊が私を追いかけてくるとウラドに伝えなくては。ウラドは北からやってくる。両軍はこの場所でぶつかり、交戦することになるだろう。私の戦いの栄光も名誉も勲章も、ウラドの他の男たちと大差ないものになってしまう。なればこそ、ここで敵軍に立ち向かい、先んじて戦いに身を置こうではないか」
そうして彼はボイン川を横切って越え、敵軍へ無謀にも突撃していきました。
しかしやはりと言うべきか、軍勢は彼の両側を取り囲み、槍で彼に傷を負わせました。こうして彼は死んでしまったのです。
27
二人がいない時間は、コンホヴァルにとってとにかく長く感じられるものでした。
「もういい。Rudraigeの息子、Congalの息子、Macclachの息子であるIrgalachよ。敵軍を偵察するにふさわしい者は誰なのか言ってくれないか?」
「誰がそこへ行くべきか、ですが」
Irgalachは答えました。
「Irielはどうでしょう。腕が立ちますし、優れた膝を持ちます。それに何よりコナル・ケルナッハの息子です。彼はコナルのような荒くれ者で、クー・フリンのような早業を持ちます。それにカスバズ、すばらしいドルイドのような知性を持ち助言もします。またアリルの息子シェンハのように秩序があり、弁も立ちます。ウシャハルの息子ケルトハルのように勇猛ですし、ファフトナ・ファサッハの息子コンホヴァルのように堂々としており、幅広い視野を持ち、財宝と富と宝をもたらします。Iriel以外に、誰が行くべきだと言うのでしょう?」
「私がそこへ行きましょう」
Irielは言いました。
それから、Irielは光り輝くボインの水辺の上部にある、前の二人が訪れた場所と同じ、威圧するようにそびえる丘へと向かいました。
彼は敵軍の様子を偵察し始めました。
しかし彼の魂、精神、思考は全く乱されませんでした。
こうして彼は敵軍の情報を、コンホヴァルのもとへと持ち帰ったのでした。
28
「どうだった、我が友Irielよ?」
コンホヴァルは言いました。
「誓って申し上げます」
Irielは言いました。
「川の浅瀬も、丘の上の石も、道も街路も、ブレグまたはミヂァの領土中が、敵の騎馬軍や従者で埋め尽くされています。まるで、例の平野の王室*2の炎のように見えます」
Irielはそのように言いました。
29
コンホヴァルは言いました。
「お前が申したことは真実か。
ああ、勇敢な白き膝のIrielよ。
左の平原に3つの大隊が、
我らより先に待ち構えていると言うのか?」
「奴らはあなた様を待ち伏せしております、
ボインの周りをぐるりと囲む樹木の茂みで。
Clann Deirgの3つの大隊は、
平原を横切り炎のように燃え盛ります」
「我らから選ばれし使者たちは、
敵軍の強さを確かめるため行きました。
戻ってくることはないでしょう——その名誉は些細なものではありません——
彼らが示したことは真実です」
30
「わかった。ああ、ウラドよ」
コンホヴァルは言いました。
「この戦いについて、お前たちから何か助言はあるか?」
「我らからの助言は」
ウラドの戦士たちは言いました。
「強き戦士たち、指導者たち、司令官たち、援軍が戦いに駆け付けるまで待つべきだ、ということです」
3人の戦車兵が近付くのを目にするまで、戦車の乗り手に続いて3600人の兵士がやってくるのを目にするまでの時間は、彼らにとって居心地が良いものではありませんでしたが、長い待ち時間ではありませんでした。
やってきたのはこれらの人々です――ウラドの素晴らしい3人の学者たち、すなわち素晴らしく公正なドルイドであるカスバズ、執拗なAitherni、医術に長けたアウァルギャンでした。
________________________________________
*1 : アリル王とは別のアリル。
*2 : メイヴ女王たちの住む平野という意味。