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新型コロナ不況に小売のマーケターはどう向き合うか Vol.5 アクティブ合同会社 藤原さま

Patheeは「テクノロジーで人々と小売コミュニティを繋げることで社会にインパクトを与える」をVisionに事業をしています。
緊急事態宣言が解除され、ニューノーマルになっていく中、小売のマーケターからいまの状況をどう捉えて、対応していけばいいのかというご質問をいただくことが増えています。最前線で活躍しているマーケターにPatheeのマーケティングマネージャーの原嶋がインタビューをしてこの課題にどう向き合えばいいかをお聞きしていきます。
第5回はアクティブ合同会社 CEO 藤原さんにインタビューさせていただきました。


購買行動を理解してストーリーを描ける人材が必要

原嶋:
藤原さんはカルチュアコンビニエンスクラブやプロアクティブでのご経験、さらに独立されてDoCLASSEを始め多くの小売企業のマーケティングに関わっていらっしゃいますが、今回のコロナ禍での小売マーケティングの変化をどう感じていますか。

藤原:
Windows 95が出てインターネットが日本に広まったこの20年の中で一番大きく変わっていますよね。
一番変わったと感じるのは、僕らもそうだしお客さまも感じていることだと思うのですが、時間軸が変わったことだと思います。今まではやっぱり何だかんだ言ってもある程度緩やかに2年から3年くらいかけて…こういう風な世界になっていくだろう、もしくはこういうことをやっていかなければいけないだろうという感じだったんですけれども、これが今回のコロナの件であっという間に目の前に来てしまいましたよね。
この2、3年のことがキュッと目の前に縮まってきてしまったと感じています。たった3ヶ月で世の中の時間軸が変わってしまいました。

わかりやすい例で言うと、ネット注文をお店で受け取ったり 、無人店舗のように店員さんの接客なしで買うことができるようになったりです。今までもこういう話はあったと思いますし、やらなくちゃという話はでていました。
実際にトライアル店舗として取り組んでいる企業もあったと思うんですが、それが今はやっていかないといけない、もしくはやった方がお客さまがより多くお店に来てくれるという意識に変化したと思います。

原嶋:
元々考えていた未来がもっと近くなったということですね。
やらなくちゃからやらなくてはいけないに変わった中で、小売業界はどういった対応をしていけばよいと思いますか。

藤原:
まず始めるために必要な「デジタル人材」の確保が必要だと思います。
今まではなんとなく組織構造もデジタルはデジタルとなっていましたが、時間軸が一気に縮まったことによって、どういう風に具体的に組織横断しながらサービスを作っていくか、管理、顧客基盤システムをどうしていくか、ネットとリアルでどう顧客体験を作っていくかなど、かなり専門的なことが求められます。それを色々なパートナーを見つけていきながら時間を短縮して作らないといけないです。そこをできる人材が今たりないし、そもそもいないのです。

原嶋:
もう少し深掘りさせていただきたいのですが、小売業界のデジタル人材に必要なスキルセットはどのようなことですか。

藤原:
Eコマースをやってきたとか Web 制作をやってきたとかそういうことではなくて、 購買行動を理解してストーリーを描ける人が求められていますね。

まずはお客さまの購買行動が変わってきているので、それを理解している必要があります。一人のお客さまの購買行動にはお店に行く前、お店に行った時、お店から帰った後と大きく三つあると思います。
お店に行く前にお客さまがどういう行動をしているかを客観的に捉えないといけません。Google検索なのかインスタ、Twitterなのかなど、自分たちのターゲットがどういう行動をしているかを考えて、その中で自分達のお店を発見してもらうためにはどういうコンテンツを提供するかなどを理解する必要があります。
いろんなツールがありますが、それをどう組み合わせていくべきなのか、そしてお店自体までを含めて一つのストーリーを作っていくべきです。

原嶋:
どうしても今までの小売業界だとデジタル= ECだったりしていましたが、マーケティングは全体を見ることですからね。

藤原:

小売だけやっていてもダメだし、ECだけやっていてもダメだし、PRだけやっていてもダメだし。これら全体を繋いでストーリーを作れる人が本当のデジタル人材だと思います。

ご相談いただく企業にマーケティングを知るためには、どんな本を読めばいいですかとか、どんなメディアで学んだらいいですかと、聞かれることが多いです。でも、そういうことじゃないんですよね。自分自身が体験していることを客観的に見て、それを自分で書き出していくことのほうが大事だと思います。

例えば朝起きて、今までヤフーニュースを見ていた人がInstagramやTwitterを見るように行動が変化したとします。では何でTwitterを見るようになったんですかと聞くと、朝電車が混んでいるかとか今流行ってるものを見つけるのはTwitterのほうがいいからだと答えます。じゃあ何故そこに自分のお店の情報を載せようと思わないんですかという事になりますよね。

そんな風に自分の中で考えて何かに気付いたら、それを勉強するっていう意味でそれに関連する本をはじめに読むのが良いのではないかと思います。

原嶋:
すべての答えが書いてある本はないので今必要な本を選んでいかないといけないですよね。

藤原:
はい、そうなんですよね。顧客理解って結局は自分のことが理解できているかっていうことから始まると思っています。


新しい時代の店舗にさまざまな意味をもたせていく


原嶋:

変化についてお話をしていただきましたが、今後の店舗のあり方や役割はどのように変わっていくと思われますか。

藤原:
そうでうすね、お店に求められているものって物理的に商品を触ったり、匂いを嗅いだり、色を直接試してみたり、ネットではできない部分が残っていると思います。

今までだったら普通にお店に行って、触ってみて着てみてサイズがどうかなという体験があると思いますが、それだけだと今後デジタルが進んでいくとあまりいらなくなってしまうかもしれません。
だから、ただ着るだけじゃなくて、例えば鏡の前で着たらそれと合ったコーディネートの商品が鏡上に出てくる、それを自分でタップして、試着して、商品があるんだったらその商品を店員さんが持ってきてくれる、その店舗になかったら倉庫から送ってきてくれるというような形で、ただ触って着るという形からいろんな提案をしてくれるお店体験が求められるようになるかもしれませんね。

今までやっていたことにプラス新しい体験をつくる、お店に行くとこんなことができるんだとか、ちょっとした事が便利になるんだと思ってもらえるようにすると良いと思います。
当然、人との対面なのでその人から買いたいとか、人と人とのコミュニケーションもあると思うんですけれども、そこに便利さも加わってくるとより一層お店に足を運ぶということが増えると思いますね。

原嶋:
店舗は商品を触ったり、匂いを嗅いだり、色を直接試してみたりするためのショールームとしての役割になっていくというイメージはありましたが、それにさらに便利さを足していく必要があるんですね。

藤原:
はい、そう思っています。
あともう一つは、 ESG(環境、社会、ガバナンス)としての役割です。小売でいうとリサイクルだと感じています。
今後は環境のことをどう捉えるかということが増えると思います。今回コロナの件で、どこの小売も在庫過多になっています。この在庫を処分するとなると、また色々な問題が出てくるかもしれません。そうなった時にモノに対しての考え方が変わり、モノを効率よく資源に使えるというところに意識がいくと思います。一部の専門のリサイクルショップがまだまだ強いですが、これからはお店に行くことでリサイクルするっていうサービスをどこの小売もやっていく必要があるのかなと思っています。在庫を適正化していく必要があると思います。そういうことに小売はすぐチャレンジしないと、世の中の考え方とズレていると思われてしまいます。

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原嶋:
リサイクル事業を小売がやっていくというのは古着をやるというイメージですか。

藤原:
そういうことも一部だとは思いますが、例えば生地をバラして次の商品を作る、アパレルだとタオルをつくる、今だとマスクをつくるとかですかね。
もしくは日本だけの市場に限界があるのであれば、海外とどういう取引をしていくのか。生地にもどして海外に輸出することによって、新しい商品に変わる可能性もあると思っています。

原嶋:
マスクとかは今回いろいろなところが取り組みましたが、リサイクルをしてつくる取り組みだとエコとしても良いですね。

藤原:
あと、お店は言葉は正しくないかもしれないんですけれども倉庫だとも思っています。
お店っていう概念がショールーム化で格好良くてブランディングっていう意味もあるんですけれども倉庫であっても良いと思っているんです。
IKEAって倉庫みたいじゃないですか、自分持って帰って自分で組み立てるところが。そのイメージに近いと思います。

原嶋:
店舗のショールーム化はよく聞きますが、物流の一拠点っていう考え方はおもしろいですね。

藤原:
物流の問題もあると思うんですけど、物流って物理的に物を運ぶっていうことだけではなくて、何をどう運ばせるかっていうことを前の段階で考えなければならないんです。
倉庫から各店舗に運ぶっていう行動と倉庫から個人宅に運ぶっていう行動があります。ということはイコール、在庫をどう持つかっていうことを決めないといけないです。 EC用の在庫の管理とお店用の在庫の管理を分けていると効率が悪くて、一つの在庫でお店にいくものもあれば個人宅にいくものもあるという風にしておけば、倉庫から全部をださなくても、お店にある商品も全体の在庫の一つとなります。そのエリアのお店から送ることができれば当日配送も可能になるし、ラストワンマイルの解決にもなりますよね。どういうサービス設計をするかで物流の負担も倉庫側は変わってきますよね。

原嶋:
EC用の在庫が別の倉庫で管理などという話はよく聞きますよね。
外出自粛時にECは伸びたが、EC側の在庫が欠品してしまうってことを結構いろんな小売業で聞きました。でもお店の在庫は余っていたという状態だったと。
店舗を物流の拠点と考えるとこの問題の解決になりそうですね。

藤原:
そうですね、こうすることによってコロナの件で来店客が減り、スタッフの業務が減っても他で任せる仕事も作っていけると思うんですよ。
他で任せる仕事という意味ではリモート接客っていう仕組みを使って、ネットでお買い物するお客さまの接客とかもあると思います。
ネットとリアルのお店を組み合わせたら、まだまだ新しいサービスを十分を作っていけますよね。そういうふうに組み合わせと言うか考え方の視点を変えていくっていうのは必要だと思います。

原嶋:
視点を変えていけばまだまだ出来ることがありそうですね。
本日は大変勉強になりました。ありがとうございました!


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