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新型コロナ不況に小売のマーケターはどう向き合うか Vol.2 後編 顧客時間 奥谷さま

後編:まずはデジタルへの移行ではなく、接点の構築を考えた方がいい

Patheeは「テクノロジーで人々と小売コミュニティを繋げることで社会にインパクトを与える」をVisionに事業をしています。
新型コロナウイルス対策で外出自粛している中で小売業のマーケターからどのような施策をいまやるべきか、自粛緩和時に向けて今何を準備していけばいいかというご質問をいただくことが増えています。そこで今回から最前線で活躍しているマーケターにPatheeのマーケティングマネージャーの原嶋がインタビューをしてこの課題にどう向き合えばいいかをお聞きしていきます。
第2回は株式会社顧客時間奥谷さんにインタビューさせていただきました。前回はウィズ/アフターコロナで大事になってくることをお聞きしましたが後編はより具体的に何をやっていけばいいかをお話をしていただきます。

顧客情報の整理をして、まずはお店のことを発信することから始める

原嶋:
「デジタルのつながり」と「共感」本質的なところのお話ありがとうございます。「デジタルのつながり」のところでDXと言われているデジタル化が昨今言われてきていますが、無印良品での18年において、店舗運営、商品開発、EC、アプリ開発とアナログな仕事からデジタルな仕事までやられてきた奥谷さんとして、今デジタル対応が遅れているところはどういうところからデジタルを始めていけばよろしいでしょうか。

奥谷:
小さい会社まで目線を合わせるとすると、メールアドレスをいただくとかLINEでつながりを求めるとか、住所と電話番号を知っているのならDMを送るとか、お客さまへの手法、コミュニケーションは色々あると思います。
ソーシャルにアクティブであればFBには繋がりがあったりするし、名刺交換をすればご住所、お名前、電話番号、メールアドレスがわかります。なんでも活用するのは問題あるかもしれませんが、別にメッセージは必ずしもデジタルで、直接的でなくてもいいと思うんですよね。店頭においては、「お買い物する時には距離を取りましょう」とポスターやお声がけで伝えるのも良いし、「買い物かごを拭いてますので安心してお買い物をしてください」と手渡ししたりすることも、コミュニケーションです。つまり、「共感するから、行動への転換」が必要なのです。今夜しまっている居酒屋さんでも、朝食やランチをやっていたりします。これもお客さまに伝えるためには、なんでもいいので繋がっている必要と、コミュニケーションできる関係性が必要なのです。
お店があって何かができるなら態度で示すということ、お店を綺麗にするとか、もしくは休業することも重要な態度かもしれません。そういう出来る事から始めていきましょう。共感の次に、お客さまにその共感を伝えなくてはいけないので、今後、SNSだったりLINEだったり、DMも今、紙とデジタルの融合が可能になってますから、手法に拘らず、お客さまと繋がろうとする意識、つながってお客様に貢献する意識が必要ですね。

原嶋:
リアルでもデジタルでも接点をつくるところから始めていくことは忘れてはいけないですね。
外出自粛の環境を考えるとECへの投資や始めていくことは非常に重要だと思っていますが、どう思いますか。

奥谷:
おっしゃるとおりです。
物販ならECはこれからますますやったら良いというか、やらなきゃいけないと思うんですね。オイシックスも飲食店様のサポートを物販を通して行っています。彼らは基本的にはリアルを中心に店舗での体験、飲食をベースにしてきたので、お客様とのデジタルのつながりをオイシックスがデジタルの場所としてサポートをしています。

アパレル小売でも店舗のお客さまは減ったけど、ネットは変わらないですねみたいな話をすごく聞いていますし。

ECをやる意味は単純なECの売上だけではないのです。ここ数年小売業でサイトのリプレイスが色々問題になったじゃないですか。そこに関わってきたEC担当者が言っていたのが、ECが止まった時に店舗から「ネットは開けておいてもらわないと店舗の来店も減る」という話がきたらしいんですよ。世の中的にはEC対リアル店舗みたいな構造があるのに実際は違う。

今の消費者ってネットに情報がなければ目の前に店舗があっても行かないです。
ウェブルーミングの効果っていうのが証明されたと思ってます。売上構成比の低いネットストアが閉まったところで、合理的に考えればお客さまはお店に行けばいいじゃないですか。これがネットが止まっただけで店舗にまで影響があるっていう事を店員が言うようになったというのは面白いところです。デジタル時代のお客さまのブランドや小売の存在確認はオンライン上にある可能性は非常に高いですね。ですので、Webでの自分たちのブランディングや存在感っていうのはECでもいいし、HPでもいいんだけど何かやらないといけないという事はビフォーコロナからも感じていて、それがますます顕在化したんじゃないかな思います。

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変わる ユーザー行動に合わせて新しいテクノロジーを取り入れていく

原嶋:
ユーザーの行動も変化していくんでしょうか。

奥谷:
そうですね、ビフォーコロナ、アフターコロナに関係なく、デジタル時代の消費者はさまざまなデバイスを使いこなし、オンライン、オフラインを行き来しながら上手な買い物をし、そのブランドに好意を持つ。このようなオムニショッパー行動が増えています。アフターコロナが明確になってくると、このような消費者は、先述の共感を提供してくれる企業への消費、社会課題を解決しようとしているブランドへの消費を増やしていくと思います。このようなパンデミック発生に対して、自ら内省し、より理性的、倫理的、環境配慮型のオムニチャネルショッパーになると思います。そのような消費者はより利他的な行動、言い換えると社会貢献みたいなものにお金を使っていく形になるのではないかと思っています。
具体的にいうとクラウドファンディングや生産のプロセスの明示化を行う、企業規模を問わない会社を応援し、お金をかけるようになっていく可能性があるということですね。

お店に行ったけど在庫がないとか、ネットだったらいつでも買えると思ったけど買えないとか、返品しようと思ったのにできないとか、そういう事に対してユーザーはネガティブになるというのは実証されています。それでもわざわざ特定小売ブランドのオムニショッパーを続けるという事はその会社と繋がっていたいという感情だと思っているんです。今までのデジタル時代の顧客経験はこの程度でもよかった。しかしこれからは、お客様の買物行動は必然的にデジタルシフトが加速化する。お店での買物はなくならないでしょうが、それは特別なものになっていく可能性がある。
だからこそ、その人たちとデジタルでつながり、企業とお客様が社会課題を共有し、共に社会貢献や生産プロセスに関与し、その過程を大事にするようになっていく。前半でお話ししたコロナの時の共感なしにただ商売をしていたら、離れてしまいますよね。

原嶋:
これから伸びていきそうな小売テクノロジー領域は何だと考えますか。

奥谷:
ソーシャルディスタンスを良い意味で作れる無人店舗などいろいろありそうですが、一つ現実的な回答をあげるなら店頭受取サービスですかね。デジタルで繋がってもやはり商品を確認したいし、健康のためにも人はウィンドウショッピングもするし、移動は完全にはなくならないので、人はその辺のワークを厭わない。だから店頭受取サービスが注目されるんじゃないですかね、店舗には入らないけど、商品は受け取りにいく。それが消費者の当たり前になっていく。アフターコロナの前にくるウィズコロナの時期には店舗体験への過剰投資よりも、お客様と店員の安全を担保しながら、来店がなくても経営が成り立つくらいの店舗設計、経営、商品設計やサービス構築を意識していくと良いかもしれないです。

前編ではウィズ/アフターコロナで大事になってくることをお話していただきました。


◼︎この記事はおでかけサービスPatheeを運営している株式会社Patheeが提供しています。小売業にてどのような施策をいまやるべきか、課題にどう向き合えばいいのか、小売のマーケターにオンラインでインタビューしさまざまな情報をお届けしていきます。

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