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遠くの方に

洗練された文章を、流れ落ちるキャンパスに、虹のクレオンのように奏でて、描写する。
僕は、詩を知らない。だから、パッと浮かび上がった情景に開いた眩しい瞳をみて、よろめいた小道に立つ。見上げた空には、小雨の中に和気藹々とした熱気を感じ、汽車の汽笛に光さす。

母性とは?

と女神が昇っていく姿に、まるで自分の存在がないのに、何故見えるのかを考える。空を仰いで、回転する螺旋のコンドルのような、一度はみたことのある錯覚に、夢をみてから、幻覚のような世界に入って行く。幻の騎士は、水飛沫の中を、ペガサスの翼を手に入れたように昇華しながら駆けていく。その羽は、どこかで見た煌びやかな風景に写像を移す。

自己欺瞞であろうか?
この世界は、カオスの一種であると悟った学者が、テーブルを挟んで、薄暗い夢想家と熟考していた。愛の形は、消えずに「何かしらの空間」が、蠢きながら、観測している。その雲には、響きがあって人間の身では、見えないらしい。

学者は、僕にこういった。

「また、話ができればと」

その学者は、星明かりのトロイメライが好きだそうだ。僕は、天体観測を良く子どもの頃やった。人一番、星が好きだった。けれども、暗記についての自信はなく、大人になるにつれて、少しずつ薄れて行く。

そのような「意識」とは、脈絡のない呼吸であり、人が強く生きるためには、波長を合わせなければ出来ない。オールトの雲。
姫は、城のテラスで星空を見ている。兵士たちは、次々とドミノ倒しのように倒れて、彼女の目からは涙が溢れている。
テラスには、竪琴があり、それを奏でている本人は何も気づいていない。綺麗な歌を聴いた兵士たちは、パァーっと浄化されるように、消えて行く。

人間原理が流行り始めた頃から、人々は思ってもいないことが湧き出す泉の中から、仄かな透明さを持って、天の声に咲く「何らかの極み」により、才覚を持ち、シャポン玉の中に小さく咲いた花のように、その外景が閉じ込められた世界にゆっくりと還元される。

人は、時として涙を浮かべ、弱さを知り、叡智を大切にしながら生きていた。僕も、その世代の人間であっただろうから、心のすみかとでも言おうか、そういう場所を無くしてしまった飛べない鳥の気持ちが、くっきりとわかった気になった。

そういう引力の一方で、斥力も働いていた。波動はゆっくりと、過去のものになり、宇宙のかけがえのない星である地球では、知的生命体が試行錯誤を繰り返しながら、重力の形を変えて、一縷の糸にでもなるかのように、幻を追い求め、そしてノスタルジックな気持ちの深みに、溶けてゆく雪を見ながら、遺伝子は、宇宙の時空と呼ばれる存在の中で、ロケットに乗りながら次の目的地を目指して、走っていく。

妄想を抱くと、何か懐かしい夢追い人の中にある「呼吸」が、ぐらぐらと揺れて、魂の在処を問う。

遺伝子。
僕には、理解の出来ない話であった。
いつもの交差点に出ると、月明かりの街灯が光っていた。遠くから、光が射してきて、揺れ動く僕らに何かを語りかけるように、まるで見たこともない光が「呼吸」としてグラグラと位相を合わせている。

その瞬間、火事が起こっている。何かの幾何学模様であろうか。
それとも、何らかの作用であろうか。駆け抜ける春の馬車のような美しさで、炎の中、憧憬でもあろう天の舟が、舞い上がっていた。

いつも、不完全な星を女性は歌い、男はしっかりと受け止めていく。
そんな愛を見た気がして、喜怒哀楽の中でほとばしる感覚の中で、流れ星がサッと切れ目を作るように流れた。

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