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両親への感謝状

「お前にはこの仕事は向かない」
父親には、そう反対されていた。
母親が自分の進学について何度も何度も父親に頭を下げてくれていたことを、知っていた。

子供の頃はいつも鍵っ子で、
いつも家に大人がいなかった。

両親共働きだった。本職以外にも、空手の師範をしていた父親は道場を抱えていたり、肩書きはひとつではなく、いろんな仕事をしていた。
入退院を繰り返していた祖父母の病院にも、
母親は仕事をしながら毎日欠かさず行っていた。

あの頃は、ある意味何も考えてなかったな。
それが普通だったから、家に親がいないことを深く考えていなかったし、とかく何も思っていなかった。
「仕事や病院に行っているんだ」という認識でしかなかった。

ただ、本当に忙しく一生懸命働いていたことは知っていたから、明日が運動会であることも言えなかった。
お弁当、作ってとか言えなかったんだよな。
水飲んでごまかしてた。

運動会のかけっこやマラソン大会は、
いつも一位だった。
期末テストで学年一位をとっても、
それも言わなかったな。

普通なら、両親に褒めてほしいのかな。


今、職業人として思うのは、
どんな仕事も大変だということ。
お金を稼ぐって、大変だ。

まして子供を抱えて仕事するなんて、
大変だろうな。
まだ、その大変さは未知の世界だ。

職業や肩書きがひとつじゃなきゃいけないなんて法律はないし、子育てをする「親」という仕事を抱えながら、他にもいくつも仕事を抱えて働いて自分たちを育ててくれた両親には、とても感謝をしている。

あれだけ毎日毎日休まず働いてくれたから、
学校を卒業させてもらえて、
やりたい仕事に就くことができました。


あんなに「大変な世界だから」と反対していた父親は、国家試験に合格した日、泣いて喜んでくれた。


仕事や肩書きはひとつじゃなくていい。
転向したっていい。
そもそも肩書きってなんだ?
生きていく、食べていくために、
やりたい仕事をしている。ただそれだけだ。
逆に言えば、
それをしなきゃ生きていけないから。

両親は、自分たち子供のために
いくつもいくつも仕事をしてくれていたけど、
「したい仕事をしているだけだ」と言う両親は、カッコよかった。

誰が何と言おうと、人生は一度きり。
「こうじゃなきゃいけない」って人生はない。 むしろ、あれもこれもやれてる人生は
カッコいいなと思う。
だから自分も、両親のようになりたい。

肩書きはひとつじゃなく、
いろんなことに挑戦していきたい。


めちゃくちゃ働いて育ててくれて、
ありがとう。お父さん、お母さん。

歳、とったね。背中が少し小さくなった。
自分が大きくなったからそう見えるのかな。


これからは何があっても守ります。
だから安心して生活して下さい。



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