早期英才教育の危険性〜フラッシュカードについて〜
以前、澤口俊之先生の著書『発達障害の改善と予防』を読んだ感想をお伝えしました。その中で、非科学的な早期英才教育を行うことで、人為的に脳の歪みを引き起こし、結果として発達障害的な症状が現れる可能性について触れました。
【フラッシュカードは脳の発達を阻害する】
その代表例の一つが「フラッシュカード」です。国旗、漢字、数字、絵カードなどを、まさに“フラッシュ”のように次々と素早く見せ、親や指導者がそのカードに対応する言葉を発し、または子どもに素早く答えさせるという方法です。有名な幼児教室では、フラッシュカードを見て瞬時に答える幼児の映像がテレビで特集されることもあります。その様子だけを見ると「すごい!」と感心してしまいますが、実際のところ、それがどのように脳機能の向上に寄与しているのか、科学的に検証された信頼性のある論文は存在しないと言われています。
非科学的な方法であっても、実際に子どもに良い影響を与えるのであればそれも一つの選択肢かもしれません。しかし、データによれば、幼児の脳機能の発達を阻害する可能性があるのだそうです。
フラッシュカードの能力が高い幼児(6歳児)は、反応抑制や自己制御力が低く、衝動性や多動性が顕著でADHD的な傾向が強いことが確認されています。また、**ToM(心の理論)**を持たない、すなわちASD傾向があるとされます。
(※ToM(心の理論)とは、澤口先生が提唱する「HQ(人間性知能)」の一つで、他人の心を理解し、その人がどのように感じたり考えたりするかを推測する能力のことです。)
さらに、フラッシュカードを導入していない園では、6歳児全員がToM(心の理論)を持つのに対し、フラッシュカードを導入している園では、約60%もの子どもがToMを持たなかったそうです。これは非常に大きな問題です。
また、一般知能や注意力に関してもマイナスの相関傾向が見られたとのことです。
【家◯保育園のドッツカード】
実は、長男が生まれる前に、我が家では家◯保育園の早期教育教材を購入していました。その中には「ドッツカード」というものがありました。A4サイズほどの正方形のカードに、0から100までの数字が赤い丸で視覚的に示されていて、例えば3のカードには赤い丸が3つ、88のカードには88個の赤い丸がランダムに描かれています。このカードを使うことで、視覚的に数を認識させるというものでした。子どもの前でカードを高速でめくりながら数字を読み上げることで、右脳が刺激され、一瞬で赤丸の数を認識できるようになると謳っていました。また、生後3ヶ月の乳児期から始めることで、数量感覚や空間認知能力が向上するとも説明されており、親として「頭のいい子に育てたい」という気持ちを巧みに掻き立てるものでした。
長男が1歳頃にドッツカードを始めましたが、最初の頃はカードを凝視し興味を示しているように見えました。しかし、半年ほど経つと次第に見向きもしなくなったのです。(今思えば当然のことかもしれません。)
当時は「もっと見てくれないと困る」と焦り、必死で取り組ませようとしましたが、途中で私も泣く泣く断念しました。もし、長男が興味を失わずに毎日取り組み続けていたら、今のASD的な症状がもっと強くなっていたかもしれない、そう思うと怖くなります。結果的に途中でやめて本当に良かったです。
【クラスのADHDの女の子の話】
小学校で長男と同じクラスに、ADHDの診断を受けた女の子がいます。その子のお母さんから、診断を受けた経緯や日々の困りごと、対応の仕方について相談を受けました。その時、ふと澤口先生の本のことが頭をよぎり、「フラッシュカードとかやったりしてない?」と尋ねてみたところ、「通っていた保育園が教育に力を入れていて、毎日フラッシュカードをやっていたの。家でもやったほうがいいと思って、今でも家で続けてるんだ」と言われました。私は思わずスマホで澤口先生の電子書籍を見せて、「今すぐやめたほうがいいよ」と助言しました。
【あの頃の自分に伝えたいこと】
長男もその女の子も、もしかすると後天的に発達障がい的な傾向を強めてしまった部分があるのかもしれません。「あの時、あんなことをさせなければ…」という後悔の念は尽きません。しかし、親として、我が子が将来幸せに生きていけるよう、有能であってほしいと願うあまり、エビデンスのない早期英才教育に頼ってしまったのも事実です。
もしあの頃の自分に何か伝えられるとしたら、こう言いたいです。「天才児を育てる、IQが上がる、そんな言葉に惑わされず、エビデンスがしっかり確立されている教育かどうかをちゃんと見極めてほしい」と。
🍀おわりに
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
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