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DxO PureRawのファーストインプレッション

(1)はじめに

DxOから新たなソフトウェア製品として「PureRaw」が発表されました。

https://www.dxo.com/ja/dxo-pureraw/why-pureraw/

RAWファイルに対してノイズ除去やモアレ除去、光学補正などをおこない、DNGやJPGとして出力してくれます。

DxOのソフトウェアは、Photolabの前身であるDxO Opticsの頃に初めて購入しましたが、その後、ノイズ処理の機構がPrimeからさらにDeepPrimeになり「進化したな」と思っているところに、主としてそのDeepPrimeの機能を取り出したかたちのPureRawが発表されたわけです。

「いいものが開発できたので個別販売します」という感じかなと受け止めました。気に入ったらPhotolabに昇格してくださいという趣旨もあるかもしれません。さらにいえば、Adobe系のLightroomやPhotoshopのほうがマーケットが大きいので、あえてPhotolab単体でたたかうよりは、LightroomやPhotoshopと連携するかたちで寄り添う道も、確保しておきたかったのかも?と思ったりします。

個人的にフォーサーズの使用歴が長いのですが、特にSONYセンサーになる前は高感度ノイズだけでなく低感度での背景ノイズも目立ちましたし、そうしたノイズの処理やレンズ補正も含め、フォーサーズユーザにとってDxOのソフトウェアは有難い存在でした。

Adobe系のソフトウェアでは、フォーサーズ系のレンズサポートが弱く感じたので、フォーサーズ系のレンズモジュールも存在するDxO Optics(後継DxO Photolab)は頼もしい存在と感じていたのです。

Photolabでは、DeepPrimeによる画質改善に加えて、レンズモジュールによるレンズブラーの改善、露出や色味の調整、かすみ除去など現像時に多様な処理を施してDNGを出力することが可能です。

このようにPureRawの機能はPhotolabの機能に包含される関係にあると思いますので、だったらPhotolabだけでよさそうでもありますが、PureRawでは複数ファイルのバッチ処理が簡単ですし、用途によって選択すればよいと思います。PureRawはいわば、画質改善機能つきのDNG Converterみたいな感じでしょうか。

PureRawを通じてDeepPrimeが気に入ったなら、Photolabでレタッチを全て行ってしまうのもありだと思います。

PhotolabではDeepPrimeの処理は現像作業段階では画像全体に適用できず、局所的な小窓を任意の場所に設けてその部分だけでプレビューするようになっています。これは処理に時間がかかるためでしょう。PureRawでも処理後に、処理前後の様子を左右で対照して確認するかたちです。

(2)PureRawの使用例

以下にいくつかPureRawの使用例を示します。色味が揃っていなくてすみません。主に画質改善やノイズの処理のようすをみてください。クリックすると拡大されます。

画像1

Olympus E-5, ISO100

(左 Olympus Wordspace 右 PureRaw⇒Photoshop)

しっとり滑らかにトリートメントされ、濡れた岩や緑の葉の精細さが増しているように思われます。


画像2

Olympus E-3,ISO320

(左 Olympus Wordspace 右 PureRaw⇒Photoshop)

背景のボケにノイズが乗って困ることは多かったです。そのノイズが減っているようです。


画像3

Olympus E-5, ISO100

(左 Olympus Wordspace 右 PureRaw⇒Photoshop)

樹木のフリンジを改善してくれているようです。

名称未設定-1

Olympus E-M1X, ISO200

(左 Olympus Wordspace 右 PureRaw⇒Photoshop)

奥の樹々の解像感が増しているように思います。

以上のサンプルでは一部分の処理だけを見ましたので、画像全体の歪曲補正の様子などは示すことができませんでしたが、レンズモジュールを用いてレンズ補正も適用してくれています。適用したいカメラとレンズのセットがサポートされているかどうかはDxOのWEBで確認することができます。

(3)注意点

まず、補正を重複して適用しないことです。PureRawと、PhotoshopやLightroomなどで処理が重複しないように注意が必要です。DxOのドキュメントに以下のように記されています。

以下の補正は DxO PureRAW ですでに実行されているため、以下のツールの使用は避けるようにしてください。
レンズ補正:DxO と Adobe 社のレンズ補正の両方を使用しないでください。
ノイズ軽減:ディテールが滑らかになるリスクがあります。その結果、DxO のノイズ処理ツール、特に DeepPRIME のアクションを妨げる可能性があります。
シャープネス(現像モジュールと出力のシャープネスで):シャープネスはすでに DxO PureRAW で 処理されているため、控えめに使うようにしてください。(https://help-pureraw.dxo.com/ja/lightroom-classic-workflow

次に、古いRawで稀に、処理のうまくいかないことがあることです。

画像5

Olympus E-5, ISO 1000

(左 Olympus Wordspace 右 PureRaw⇒Photoshop)

ノイズの多い渓流の流れの部分を改善したかったのですが、なぜか却って、のっぺり且つグレー調になってしまいました。時々、このように迷走することがあります。

もうひとつの注意点としては、DxOのPureRawやPhotolabは、FujifilmのX-TransセンサーのRawはサポートしないことです。DxO Photolabのヘルプに

「デジタルカメラの RAW 画像を現像するための DxO PhotoLab 4 のデモザイシングのアルゴリズムは、Bayer 配列のセンサーの電気信号を処理するように開発されています。同様に、一部の補正アルゴリズムも、この配列を元に開発されており、ノイズ除去、露光補正、ホワイトバランスを調整します。」(https://bit.ly/3v4btlj

とあり、これがPureRawにも該当します(https://bit.ly/3u26dxp)。

同じFujifilmでも、GFXシリーズのセンサーはベイヤーなので、DxOのPhotolabやPureRawでサポートされます。

(4)期待すること

現状、出力フォーマットはDNGとJPGの排他なのですが、排他でなく、両方選択できるようにしてほしいです。

Photolabでは、書き出しフォーマットはJPG・TIFF・DNGから複数が同時に選択できます。

PureRawでは今のところ、DNGとJPGを排他的に選ばせるようになっていますが、JPGでの出力時にはSmartLightingも適用している可能性があり、そうした処理の違いが影響していたりするのでしょうか。

これは両方が選択できるような実装に、やればできるのではないかと思います。その場合はファイルの出力先も、JPGとDNGで別々に設定できるような実装になるでしょうが…。

(5)具体的な活用

ここで見たように、フォーサーズなど画素ピッチが狭い小型センサーのノイズ問題をリカバリーすることは、PureRawの功徳のひとつとして期待できることです。

また静物や、無風の風景が中心にはなるかもしれませんが、ハイレゾショットの類でまず画素数の多いRawを生成し、それをPureRawでトリートメントする、そのうえでPhotoshopやLuminarで仕上げする、のようにすれば、まず前段として、ピクセルシフトの合成により解像感の向上やノイズの軽減効果が期待できますし、そのうえでPureRawの効果により更に画質を向上させることが期待できます。

DNGの活用先はAdobe系ソフトウェアに限られないので、たとえばLuminarもDNGファイルを読み込むことができますので、相性などあるかもしれませんが、PureRawで生成したDNGをLuminarで仕上げるなども面白いワークフローになるかもしれません。ただし上記したように、不要な処理を重複させると意図せざる結果にもなりうるので注意は必要です。

念のため、対応するカメラとレンズのセットを確認ください。
https://www.dxo.com/ja/supported-cameras/

冒頭で「PureRawを通じてDeepPrimeが気に入ったなら、Photolabでレタッチを全て行ってしまうのもあり」と書きましたが、少し言い直しますと、PureRawの購入は「最終仕上げを何で行うか」によると思います。最終仕上げをPhotolabで行なうつもりなら、PureRawは二重投資になると思います。最終仕上げをPhotolab以外でおこなう場合は、PureRawが選択肢になると思います。

以上、訂正を要するところがあるかもしれませんが新登場のPureRawについて略述しました。


【追記】
2021年10月、PhotolabとFilmpackの新版が発表されました。このPhotolab 5Filmpack 6では、まだベータ版と注記しつつも、X-TransセンサーのRAWをサポートすることが記されています。PureRawにおいても、将来のバージョンにおいて、X-TransセンサーのRAWをサポートするようになることを期待しておきます。

【追記2】
2021年11月22日~同11月29日のあいだ、DxOのブラックフライデーでPureRawが半額になっています。ちなみにPhotolabも半額となり、PureRawの通常価格よりも安くなっています。せっかくの機会でありPhotolabではDeepPRIMEやレンズモジュールに加えて色々な補正機能が利用できるわけですので、PureRawでなくPhotolabを導入するほうがよいかもしれません。Photolabで最終仕上げをしない場合でも、DeepPRIMEを適用したDNGをPhotolabから書き出して、Photoshop(や場合によってはLuminar)等で最終仕上げをすればよいわけです。


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