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顧客に素早く価値提供したいなら、ムダな仕事をしている場合じゃない

少し前に「Leading Teams読書会」で書籍「This is Lean」をおすすめされたことがあって、積ん読から引っ張り出して無事読み終わったのが7月のおわり。

この書籍は「リーンとはなにで、なにではないのか」をはっきりさせてくれる潔い書籍だと思いました。
カンバン仕事術やスクラムからリーンを知った自分はリーンとは何なのかという本を読んだことがなかったのですごく勉強になりました。
巷にあふれるリーン知識のなんと豊富なことか。ここまであふれることになったリーンの歴史的背景もバッチリ網羅されているので、曖昧さ回避に役立ちました。十分すぎるほどに。おかげで楽しく読めました。

……

先日、チームとRetty所属のTKさんの公演を観ました。その後の感想会で「余裕があるのが衝撃的だった」「とりあえず余白の時間を予めとってみる?」と口々に言っている様子をみて「リーンを引き合いに出せそうだな」と思うくらいにはマイブームでした。

チームの余裕を作ることはずっと前から隙きあらば支援したいと考えていました。余裕を作るとチームが変わるための学習時間を捻出できることになります。あとはチームが手応えを得てくれればと、プロセスカイゼンに。

前置きが長くなりました。今日は書籍の内容をまとめながら、チームの活動はどうして余裕がなくなるのか考えてみようと思います。

フロー効率とは顧客ニーズを効率的に満足させること

「効率をあげる」とか「生産性を高めるとか」いう言葉、ありますよね。
単位時間あたりのアウトプットを増やす臭いを感じると超警戒するんですが、それ自体は顧客のニーズにこたえるときに有意義な話題だと思います。

提案される業務の効率化の声は日常茶飯事なんですが、そのほとんどは「たくさんある作業をどうやって効率的に終わらせられるか」に注目している気がしています。

リーンが注目している「効率」はもっと別なものがあります。

  • フロー効率…顧客のニーズを効率的に満足させること

  • リソース効率…企業のリソースを効率的に使うこと

フロー効率は顧客のニーズの満たされ方に着目します。例えば、平日の夕方にスーパーに買い物に来た顧客は目当ての買い物を済ませて思いカゴを引っさげてレジの列に並びます。買い物を終える頃には次に来るときは混雑時間を避けてこようと考えます。ニーズの満たされ方に着目するとレジに並ぶ行為は買い物をすることに付加価値を生んでいないことがわかります。

リソース効率は価値を付加するリソースの使い方に着目します。スーパーの例では、レジ担当の従業員が顧客が列を作らなくなったタイミングで買い物かごの整理やバックオフィス業務をして自分の時間が常に仕事に向き合っているように活動内容を調整します。キャパシティを使い切ることが目標です。

言い換えるとフロー効率は「付加価値を生まないムダな作業をどれだけしてないか」ということです。ムダな作業をせずに従業員がキャパシティを活用するようにカイゼンするとチームのパフォーマンスが上がっていきます。

お手すきを避けるとフロー効率が悪くなる

一般的に効率性と言った場合は「たくさんある作業をどうやって効率的に終わらせるか」なので、リソース効率を指すことが多いです。
「手すきの状態が生まれてしまっています」という声が聞こえてきそうです。それくらい「お手すき」を避ける傾向を見かけます。たくさん作業があるんだからそうでしょう。
ですが、「お手すき」にならないように作業を用意するとフロー効率が悪くなってしまいます。

これはプロセスの中に3つの原則が存在するからです。フロー効率を高めるためには、一見正しそうに見える「手持ち無沙汰を避ける」と何が起こるのかを解明しなければいけません。

今日は長くなるので一つだけ紹介します。

リソース効率を高めると人の(手持ち無沙汰の)都合に作業を合わせることになります。手持ち無沙汰を避けるには処理される「もの」に前もって行列を作って待ってもらう必要があります。「もの」がなければ手持ち無沙汰になってしまいます。

「もの」からみると手持ち無沙汰を待っている時間の分だけ作業完了までのスループット時間が伸びていきます。待っている時間は付加価値を生まないムダな時間です。つまり、フロー効率が悪くなります。

例えば、コンビニの品出しされている途中の商品がほしいのだけど、買えなかった経験はないでしょうか。店員さんの少ないコンビニの品出しはレジの店員さんが手持ち無沙汰になったときに充填されます。商品は棚に並んで初めて価値提供できるようになります。しかし、品出し待ちの商品から見ると品出しを待っている間は暇なものです。買われることもなく顧客をヤキモキさせます。

ストックされた「もの」がムダを生み出す 

そんなわけで「お手すき」にならないように「もの」をストックしておくとプロセスの法則でスループット時間が伸びてフロー効率が低くなります。

「もの」はまだまだ増えます。ストックされた「もの」がたくさんあると二次ニーズが発生してムダな作業が増えます。本書ではたくさんの二次ニーズと具体例が登場しますが、詳細は割愛します。君の目で確かめてくれ!

例えば、コンビニの例に戻ると品出し用の在庫はたくさんあると保管と管理のことを考えないといけません。新しい発注のための保管場所はあるでしょうか。店頭に並んでいる商品と在庫の合算が発注した点数と合う合わないといったことを気にしないといけないでしょうか。その場合、何回数え直すんでしょう。在庫が余ったら破棄作業があるんでしょうか。
(小売業やったことないんで、想像です。)

たくさんの「もの」を用意すると全体を見渡す二次ニーズを満たす活動(検索・識別・分類・構造化)を何度もすることになります。身近なところだとプロダクトチームがバックログアイテムを同時並行で複数進行させているとムダな作業が増えていくのを実感します。マネージャーの進捗確認ミーティングとかありませんか。

2次ニーズを満たす作業は付加価値を生まないムダな作業です。フロー効率を意識すると顧客のニーズを満たす「もの」に対する付加価値アクティビティを増やして、非付加価値アクティビティの数を減らしていくことで効率化を目指していきます。

効率を高めるためにリソース効率に重点を置いたはずが、気づけばムダな作業を増やして効率を低下させています。これを本書では「効率性のパラドックス」として説明しています。

ムダな作業を減らして、顧客に集中し続けられるようなプロセスカイゼンを繰り返していきたいなと思った本書でした。

では!

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