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静的・動的ストレッチとマッサージ、その効果の違いは何か

▼ 文献情報 と 抄録和訳

サッカー選手のパフォーマンスに及ぼす深層横断マッサージとストレッチの効果

MA Fakhro, H Chahine, H Srour, et al.: Effect of deep transverse friction massage vs stretching on football players' performance. World J Orthop. 2020;11(1):47-56. 

[ハイパーリンク] DOI, PubMed(Full text), Google Scholar

[背景] 柔軟性、敏捷性、筋力は、試合の勝敗を分ける重要な要素である。近年、新しい技術である深部横断マッサージ(DTFM)が、従来のストレッチ技術と比較して、筋肉の伸展性に及ぼす影響が検討されている。

[目的] レバノンとシリアのサッカー選手を対象に、ハムストリングスの伸展性、敏捷性、筋力に対するDTFMと静的および動的ストレッチの効果を比較する。また、ハムストリングスの非接触型筋損傷の発生率を記録することを副次的な目的とした。

[方法] 本研究は、単盲検プロスペクティブ縦断型無作為化対照試験である。実験は4週間に渡って行われた。サッカー選手は3つの介入群(静的ストレッチ;動的ストレッチ;DTFM)に無作為に分けられた。各グループの参加者は、週3回の介入セッション中、合計12回のセッションとデータ収集の間、評価者によって注意深くフォローアップされた。ハムストリングの伸展性,敏捷性,ハムストリングの筋力は,介入群間で(ベースライン,急性期,慢性期※)で比較した。利き足のハムストリングスの伸展性と最大筋力の測定には,Straight Leg Raisと1 Repetition Maximum Testを用いた。下肢の敏捷性の評価にはT-drillテストを用いた。

※急性期:初回介入後15分、慢性期:4週間後と定義している

[結果] 本研究に参加した18歳から35歳までのレバノン人およびシリア人の男性サッカー選手103名は、ダマスカス・シリアおよびレバノン南部から抽出された。急性筋力(P = 0.011)と慢性伸展性(P = 0.000)のグループ間測定値には有意差があり、静的グループが他のグループに比べて優れていることが示された。フォローアップへの損失やプロトコル違反は記録されなかった。

[結論] 静的ストレッチングは、長期的な伸展性と短期的な最大筋力の獲得に関して、使用した他の手法よりも優れていることが示された。また、DTFMは改善を示したが、サッカー選手のパフォーマンスへの影響は、静的および動的な手法と比較して、それを上回るものではなかった。最後に、筋損傷の発生率に関しては、介入方法の違いは記録されていない。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

筋の柔軟性を向上させた時、ターゲットとなる筋のにはストレッチ・マッサージ、どちらを選択した方が良いか迷うことがある。また、スポーツ現場では、「ウォーミングアップにはダイナミックストレッチを行おう!」という意識が定着しつつある。

正直、今のところは、ストレッチでもマッサージでも柔軟性は改善するし、両者の効果の違いは分からない。また、静的ストレッチするとパフォーマンスが低下する、といった研究は確かに多いが、一定の見解は得られていない。

そのような中、やはり大切になってくることが、仮説検証だ。それは、療法士であれば必ず行うことだが、選手自身にも仮説検証を意識を定着させることが必要と考える。今回の研究では、実は静的・動的ストレッチ、マッサージの全てを”セルフ”で行ってもらっている。そうであれば、それらの群にプラスして、「ストレッチでもマッサージでも何を選んでいい(頻度・時間は規定する)。4週間の間で途中で変えても良い」という、「自己決定群」を設けるのも面白いと思った。

療法士ー選手間に生じる「ストレッチ・マッサージ問題」。今のところでは、療法士・選手のそれぞれが仮説検証を行い、選手それぞれに最適な方法を最終的には選手自身が選択していくことが、大切だと思う。

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