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#153 「絶対化」を生み出す空気

小学校では当たり前のように転出入がある。環境が変わる子どもも、転居の手続きや引っ越し準備で忙しい保護者は大変だ。同時に学校でも事務的な手続きがある。事務的なものは決められたものなので、全校どこでも同じだろう。指導要録と呼ばれる成績などが記載されたものは、必ず転校先の学校へ送られる。そんな中、地域によって違いがみられるものがある。通知表(通信簿、通知票など呼び名もいろいろある。)だ。多くの学校で、子どもへの励ましや、保護者への説明資料として作成している。しかし、通知表は公簿ではなく、必ず作成するものでもない。

ここからは、架空の職員室を舞台に話を進めたい。ある日、職員室に一本の電話がかかってきた。担任が出たところ、「今度転入してくるお子さんの通知票作成のために、成績などの資料がないか。」という問い合わせだ。例えば、3月に転校してきた場合、その学校では1か月分だけの通知票を作成することになる。通常は3か月~半年間、子どもを観て通知票を作成する。情報が少ないと作成しにくい、または作成できないという先生はいる。そんな相手校の困り感も理解できる。

この電話に対して、職員室内に怒りが生まれてしまったんだ

どこに怒りが?

1点目は、電話の相手が担任だった点。普通は、管理職が電話をしてきて、問い合わせるようだ。

2点目は、必ず作成するものではない、通知表作成のために協力して欲しいと言ってきた点。(ここは、勘違い!相手校は「~のような資料はありませんか?」と問い合わせただけ。)

電話を受けた担任をよそに、管理職と転出入担当の教務は、口を開く度に怒りが増していくのが分かる。「普通は管理職が電話してくるものだ。」「出す必要のないものを作成するのはそちらの都合ではないか。」自分たちの常識で、相手を攻撃し始める。あり得ない、非常識だ。

この状態を「絶対化」と呼ぶ。「絶対化」とは例外がないということだ。つまり、自分たちの考えや自分たちの中の常識が世界の常識だと思っている状態だ。

今回の話は、冷静になれば「絶対化」できない話だと分かる。向こうの担任が、「もし成績資料があったら助かるな?問い合わせてみよう。」と思っただけかもしれない。通知表を作成するのは担任だから、管理職ではなく担任が電話してきたのかもしれない。つまり、「うちとは違うね。」で済む話だ。

なぜ、「絶対化」が起こったのか?

そこには「空気」が存在していた。例えば、電話を受けた後に、校長が発言をする。すると、そこに教頭、教務が同調し、発言を重ねる。この繰り返しで、徐々にヒートアップしていき、自分たちの「絶対化」が完成してしまう。

誰かが、「相対化」された発言をしない限りこの「空気」は変えられない。「県によって違うんですかね。」「もしかして、自分で電話しろって言われちゃったんですかね。」「成績をよこせって言ってないですよね。ありませんか?ってちょっと聞いてみただけですよね。」ヒートアップし、「絶対化」している人には、「相対化」つまり例外を提示すると良いだろう

自分たちの考えが絶対であるという考え方はデメリットが多い。「絶対化」のために前提を疑う力が組織に働かなくなるからだ。

自分のいる場所で「絶対化」の場面を見かけたら、何も知らないふりをして「例外」を口にしてみよう。少しは冷静になるかもしれない。その時はダメでも、後で振り返って、「相対化」するかもしれない。例外を認め合える職場で働きたいよね。

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