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『オリジン』by ダン・ブラウン

ダン・ブラウンの最新作(かな?)を読みました。

『オリジン』というタイトルからも想像できるように、人間の起源を問う物語。ひとはどこから来て、どこへ行くのか?というのが根底に流れるテーマです。

若き天才であり未来学者エドモンド・カーシュは、ロバート・ラングドンのハーバード大学での教え子であり、今では信頼の置ける友人。
その彼が、世界を揺るがす発表をする!ということで、ミステリーツアーのようにスペインのビルバオにあるグッゲンハイム美術館へ招かれます。
そこからストーリーが始まるのですが、その前に。

ダン・ブラウンが選ぶ舞台というのは、なぜこれほど私好みなのか?と今回も驚きました。
ストーリーの展開で、舞台がバルセロナへ移りますが、私がこれまで一度だけしか訪れていない街ながら、数日の滞在のうちに住んでもいいと思えたのがバルセロナ!そしてガウディが大好きで、そのときにサグラダ・ファミリアはもちろんのこと、グエル公園やカサ・ミラ、コロニア・グエル教会などバルセロナ近郊のガウディ建築はすべて巡ったこともあり、土地勘があるとまでは言えないものの、イメージがとてもよく伝わってきて、違う側面からも楽しめる作品でした。

日本に住んでいると、宗教というものの重要性にあまり気づきにくいのですが、欧米や中東などにおけるメインの宗教、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教の信者は世界の人口の占め、その教理を脅かす真実に関しては閉鎖的な傾向がみられます。
今回のカーシュの発表はその根幹を覆すものになる見通しであり、プレゼンテーションのあり方についても内容の秘匿には万全を期すものでありながら、思いがけない方法で行われるのでした。

ところで、最近ではAIという言葉もメジャーになり、身近にもなりましたが、この物語にはウィンストンというチャーチルにちなんだ名前を冠したAIがカーシュの秘書として登場します。登場といっても、姿が見えるわけではなく、音声を通じてラングドン達と交流するのです。

さて、重大な発表をしているさなか、本題に入る直前にカーシュが何者かによって射殺されてしまいます。
会場は大混乱に陥り、ラングドンはこの場の司会を務めていたグッゲンハイム美術館の館長の女性と、真相を確かめるべく走り出すことになります。そのサポートはAIのウィンストンが務めるのです。

ネタバレになるので、ストーリー自体には触れませんが、この小説を読み終わって大変大きな、かつごく最近の課題が取り扱われていることに気づきました。宗教、LGBT、そしてAIなどテクノロジーの進歩。
ダン・ブラウンの守備範囲の広さには驚きを禁じえません。
そして、すべてが丸く収まって大団円に見えたかと思う最後に、大変重要でこれからの課題になっていくであろう問題を突きつけて終わるところで、これまでの作品とは少し違ったところではないかと感じました。

AIのウィンストンが果たした役割は非常に大きく、エドモンド・カーシュの要望に応えるべく最大限の活躍をしたことは間違いないのですが、果たしてそれは倫理上許されることなのか?という問いを提示し、さすがのラングドンも消化しきれない状態で物語が終わります。

未来学者という存在があることさえ、実はよくわかっていなかったのですが、カーシュの提示した世界はこうなったら良いなぁという世界である半面、テクノロジーに支配される世界になるかもしれないことに若干の不安も感じました。
ただ、巻末の開設によるとAIがこれほどに進歩するのはまだまだ先の話ではあるようです。

ダン・ブラウンの次回作はどんなテーマなのか?楽しみです。



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