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『祝祭と予感』by 恩田陸

恩田陸のことは、かつて本屋大賞を受賞したしたときに初めてその名を知った。
受賞作は『夜のピクニック』。数年経ってから読んでみて、期待以上に面白かったのでそれ以来殆どの著作に目を通している。
彼女の作品は、SFというか若干オカルトチックなものと、文学作品的なジャンルに分かれると思うが、私はSF的でない作品の方が好み。

2017年に直木賞を受賞した『蜜蜂と遠雷』。これはある国際的なピアノコンクールを舞台に描かれた物語だった。登場人物がどれも魅力的で好きな作品だ。
本書『祝祭と予感』はそのスピンオフ的な短編集となっている。
なので、もし『蜜蜂…』が未読なら、まずそちらを読んでいただきたい。
それから『祝祭…』を読めば、きっとその背景がよくわかり、楽しめると思う。(でもまぁ、逆になっても面白いかも知れない)

どの編も良かったが、奏がビオラを買う編と、最後のユウジ・フォン・ホフマンと風間塵の出逢いのシーンが特に感動的だった。是非、一読をお勧めしたい。
それにしても、小説家はこれだけのストーリーを背後に織り込みながら、作品を作るのだとあらためて感じ入った。もし、このスピンオフが刊行されなければ、著者しか知ることのないストーリーなのだ。なんて贅沢なんだろう。

もちろん、生きていればひとそれぞれに人生があり、他人には決して窺い知ることのない物語はある。それをこんな形で披露してもらえるなんて素晴らしい。本当の人生だと、絶対に知らずに終わるのだろうけど。

あらためて、恩田陸の力量に感服。
近いうちに、『蜜蜂と遠雷』を再読したい。

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