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073 朝の図書館

仕事がお休みで、しばらくできていなかった読書がしたい、と思い図書館に行きました。
家にも買ったまま手をつけていない本が八〜九冊は本棚の横に積み上げられていましたが、「図書館」で読みたい!という思いがありましたので、図書館に行きました。

私の気に入っている図書館は木に囲まれたところにあって、とても静かです。
(図書館はたいてい静かなのですが、その図書館は周辺から静かです)
森というほど木だらけではありませんが、図書館の周りをぐるりと木たちが囲んでいて、どこかひんやりとした空気に包まれています。

その図書館に行くまでの道も川沿いで、プラネタリウムが見えたりしてうれしくなります。朝の八時半ごろそこを歩くと、肌や髪、爪など身体中がみずみずしくなるような気持ちになります。

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私は、図書館職員をしていたころも、朝の図書館がいちばん好きでした。
特に開館前の図書館はとりわけ素敵です。

私がいた図書館は大きすぎない図書館で、職員十名くらいでまわしていました。
私は開館準備から五時半までの勤務でしたので、毎日朝の図書館で過ごしていました。

朝から出勤の職員は三名なので、手分けをして準備をしていました。
その日の朝発行された新聞の用意や予約されている本の準備、返却された本の処理などです。ひととおりの準備が終わると、書架整理をして開館前のミーティング(お茶付き)をします。

私はこの書架整理が好きだったのです。
職員以外のひとが一切いない図書館。
天井が高くて、ガラス張りの部分からあふれる朝の光。
そして、書架の中に姿勢正しく並んでいる本、本、本。

図書館の第一の役割は「市民に資料の提供すること」ではなく「資料を保存すること」です。(だから、少なくとも図書館法に則った「資料を保管する」目的の図書館では飲食禁止のはずです)
そのため、ここにいる本たちは大切に扱われてきています。中にははるか昔に書かれた本もありますし、昨日出版された本もあります。

そういった長い長い時間が図書館には流れていて、それぞれの本がそれぞれの世界を持っています。
ひっそりとした朝は、時間や空間を超えて居場所を与えられた本たちの息づかいのようなものが感じられるのです。

清らかで新鮮な空気の中に漂う紙やインクや本独特のほこりの匂い。
それぞれが一つずつ(あるいは複数)それぞれの世界を持っている。
ジャンルを分類されて、たとえそれが実用書でも、やっぱり独自の物語があると私は思うのです。

そんな中で本の背表紙を味わいながら書架整理をしていくのは、私にとって一種のセラピーでした。図書館から転職したあとも、しばらくはボランティアで書架整理や絵本会の手伝いをしていました。何年先になるかわかりませんが、人生が落ち着いたら、またボランティアやちょっとしたアルバイトをするのもいいなと思っています。

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そんなことを考えてながら歩いていたら、木に囲まれた図書館が見えてきました。
図書館にたどり着くまでに二匹の犬(と二人の飼い主)と三人のランナーに会いました。散歩をしているおじいさんにも会いました。みんな、物語を持っています。

さてさて、きょうはどんな本を読もうかな。
足どりかるく、木に囲まれた図書館の中へ入っていきます。

今回も最後まで読んでくださって、ありがとうございました。


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ありがとうございます。やさしい夜になりますように
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