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光害ニュースまとめ:2022年12月前半

早くも12月前半が終わってしまいました。この間の光害・天文観測環境に関するニュースで目に留まったものをまとめます。

地上の光害に関するニュース

夜空の明るさ調査、園児も隊員に 徳島・阿南、ウミガメ保護など指標

12月3日、asahi.comに掲載のニュースです。徳島県阿南市科学センターによる「あなん夜空の明るさ調査」は、阿南市を1km四方のメッシュに分けて、市民にハンディな光害測定装置であるスカイクオリティメーター(SQM)を配布して各メッシュの夜空の明るさを測ってもらう、というもの。環境省の星空調査では全国で星空の写真を撮ってもらっていて、特に長野県では大変多くの参加がありますが、阿南市の調査はとてもシステマティック。来春に発表される結果が楽しみです。

「ダークスカイ国」を目指すニュージーランド、その理由は?

2022年12月4日にナショナルジオグラフィック日本版に掲載された記事。一部有料ですが、英語の原文は全文無料で公開されています。曰く、国際ダークスカイ協会の「ダークスカイカントリー(国全体が「星空保護区」に登録された状態)」の世界2番目の実現を目指しているそうです(1番目は、南太平洋の小さな島国ニウエ)。先住民であるマオリの人たちが受け継いできた星空とのつながりも大きな資産。今後は光害の認知度を高め、条例の改正や光害から保護されたエリアの拡大などを進めていくそうです。オークランドなどの大きな都市もありますから、星空保護区への登録をどのように進めていくのか、そしてニュージーランド国民はどんな風にそれを受け止めるのか、注目です。

夜間の人工光は昆虫の活動を一変させる 都市のハエは都市環境に適応して進化していた!

2022年12月13日付、千葉大学の研究プレスリリースです(プレスリリース本文はこちら、論文はEcology and Evolution誌に掲載)。人工光の多い都市部と人工光の少ない郊外で採取されたショウジョウバエのなかまを使って、夜間照明のある環境とない環境でのふるまいを調べた実験です。夜間照明のある環境では、いずれのグループも夕方の活動性が下がる一方、都市由来のグループでは夜明け前に活動が活発になり「夜行性」のような動き方になっているとのこと。改めて論文をきちんと読んでみたいと思っています。

紫外線カメラで宇宙から地上の光を撮影

国際宇宙ステーションに2019年に設置され、紫外線カメラで地球を見下ろしているMini-EUSO。超高エネルギー宇宙線が大気に飛び込んできて光現象を捉えることが主目的で、この論文はその装置特性を述べたものですが、紫外線で見た夜の地球には都市や船などたくさんの明かりが写っています。論文に出ている範囲では観測した領域はごく限られたものですが、データがもっとたまってくると光害の調査にも使えるデータになるかもしれません。

光害と関係した衛星コンステレーションに関するニュース

スターリンク第2世代が米国で一部認可

2022年12月2日付のspacenews.com掲載記事。スペースXのスターリンクは既に多数の衛星を打ち上げて日本でも通信サービスを展開していますが、第2世代(Starlink Gen2)の計画に対して、アメリカの連邦通信委員会FCCが一部認可したというニュースです(FCCの公式発表はこちら)。ニュースによれば、スペースXが申請した3万機の人工衛星のうち7500機の打ち上げが認められたとのこと。すでに認可されているもののうちの一部はGen2に置き換えられるので、今回の認可で人工衛星の総数が増えることにはならないとFCCは言っているようです。またFCCはスペースXに対して、全米科学財団(NSF)及びいくつかの天文台と協力して光・電波の両方での干渉を緩和することも求めています。スターリンクGen2は従来のスターリンクに比べて機体が大きくなるため、そのままでは天体観測を悩ませる反射光も明るくなるかもしれません。が、スペースXは光を地球と反対方向に反射させる加工を行うことで従来機よりも暗くなると述べているようです。これについては FCCが毎年報告を出すように求めているとのことなので、その状況も注視しなくてはいけません。

ASTスペースモバイルによる巨大衛星BlueWalker 3の状況

人工衛星と一般的なスマートフォンを直接つないで通信することを目指すASTスペースモバイル(日本では楽天モバイルが提携)の試験衛星BlueWalker 3。64平方メートルのアンテナを展開し、いよいよ通信試験が始まろうとしています。この大きなアンテナは太陽光を明るく反射するので、最大で1等星で観測されるという報告も出ています。これを受けて、国際天文学連合はプレスリリースを出しました。これについては私も先日noteで取り上げていますので、ぜひご覧ください。

人工衛星の軌道情報から天文学への影響を軽減できるか

2022年12月5日、Universe Todayの記事。たくさんの人工衛星が天体画像に写りこむのを避ける方法として、精密な衛星軌道データをもとに望遠鏡を向ける方向をうまくやりくりして衛星ができるだけ写らないようにする、という手もあります。暗い衛星なら画像処理で対応できる場合もあるので、明るいものをとにかく避ける、というような運用になるのでしょうか。いずれにしても、何万という衛星(そして毎週のように打ち上げったり大気圏に突入したりする衛星)の軌道データがきちんと公開されなくてはこの手が使えませんので、衛星事業者にも協力いただきたいところですね。

日本発の超々小型衛星の超大規模コンステレーション

2022年12月7日、uchubiz掲載のニュース。ピンポン玉サイズの超々小型衛星を数千個編隊飛行させることで、大きな衛星と同様の通信能力を持たせようというアイディアです。低軌道で通信衛星として使うには、その編隊がさらに数千?必要になるのだろうと想像します。一個一個が小さければ反射光は少ないのかもしれませんが、膨大な数なら合わせ技でそれなりの明るさになるのか、また広い範囲に分布する場合に天体を隠す(=地上望遠鏡による明るさの測定精度が落ちる)ことにならないか、など、いくつか気になることがあります。計算してみたら大丈夫、となるかもしれませんが。一方でこの技術を使った超大型宇宙望遠鏡の構想もあるそうなので、うまい使い方を考えていく必要がありそうです。


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