星空を守るためのnote: 平松正顕
地上の光害や衛星コンステレーションによる天文学への影響など、インターネットに公開されている様々なニュースを毎月まとめていきます。
夜8時、南東の高い空には木星がひときわ明るく輝いています。南の少し低い位置に見えるのは、土星。西の空には、織姫星であること座のベガがまだ輝いています。地球のきょうだい惑星たちや有名な一等星たちは、街明かりの中でもはっきりとその姿を見せてくれます。 街明かりの中でも。 もし街明かりがずっと暗ければ、他にもたくさんの星が見えるはずです。いえ、街明かりはあってもよいのです。虚空に向かう光だけを抑えれば。 エネルギー価格が高騰する今、光を空に捨てているのはもったいないですし、明
2024年10月の光害関連ニュースです。今月は日経新聞や朝日新聞で光害に関連する特集記事が多く掲載されたのが目を引きました。まだ多くの人には知られていないけれど重要な問題、と認識されているということでしょう。何事もまずは知ることから。光害は大気汚染や水質汚染に比べると対応がしやすい部類の公害ですから、認知度を上げていくことによって社会全体で光害対策に取り組む勢いを増していきたいところです。 地上の光害に関するニュースUFO出現の前触れか!?赤いオーロラか!?白河市の夜空が赤
2024年9月の光害関連ニュースです。 今回も衛星コンステレーションの話題は盛りだくさんになりました。光害の影響の研究では、ゼブラフィッシュへの光害の影響が世代を超えて伝わるという発表はなかなか衝撃的です。他の生物種ではどうなっているのでしょうか。 地上の光害に関するニュース世界遺産級の星空見えた⁉ 大野・南六呂師で観望会 2024年9月5日に日刊県民福井に掲載された記事。星空保護区に認定されている大野市南六呂師地区で天体観望会が開催されたことを報じています。認定1周年記
2024年8月の光害関連ニュースです。 Make Friends, Not Enemies. 8月に南アフリカで開催されていた国際天文学連合のワークショップで紹介されていた言葉です。暗い夜空や電波観測のしやすい環境を守るためには、照明や電波を発射する機器の使い方に制限を加える必要があることがあります。戦わなくてはいけない場面もありますが、できればそうした環境を保全することの価値を相手方にも理解してもらって、お互いに納得して前に進みたいものです。敵対するのではなく、落としどこ
2024年7月の光害関連ニュースです。 遠出する機会が増える人もいる夏休みを前に、観光の観点から暗い夜空を取り上げたニュースが増えたように思います。オーストラリアABCニュースはは、光害がもたらす影響や暗い夜空の価値について問い直すしっかりした記事を出していました。世界中どこであっても、照明を工夫すれば安全を確保しつつ光害を抑えた照明は実現できるし、そうして守られる暗い夜空と美しい星空の価値は人類普遍のものである、と信じています。 地上の光害に関するニュース天の川 広がる絶
SpaceX社の新型スターリンク衛星の観測結果がプレプリントサーバarXivに掲載されていました。この衛星は、スマートフォンとの直接通信機能を持つもので、従来機より5倍程度明るいそうです。まずは衛星コンステレーションと天文学の関係を簡単におさらいした後で、今回の観測成果について紹介します。 衛星コンステレーションと天文学2019年以降、人工衛星の打ち上げ数は急激に増加しています。この年の5月に打ち上げが始まったSpaceX社の通信衛星「スターリンク」を筆頭に、たくさんの人工
2024年6月の光害関連ニュースです。私はGoogle Alertに「光害」「衛星コンステレーション」といった単語を登録してニュースを拾っているのですが、今月は「光害」でヒットする記事がひとつしかありませんでした。正確に言うと「光害カットフィルター」のようなカメラ用品のニュースはあったのですが、ここでは関係ないので除いています。一方、衛星コンステレーションのほうは今月もいくつもありました。 地上の光害に関するニュース明かり消し星空眺めて パネル展や観望会も 2024年6月
2024年5月の光害関連ニュースです。 光害を抑える基本は「必要なところを照らして不要な方向には光を漏らさない」であるというのはこのnoteで何度も取り上げていますが、それを実現するための投光器や万博の照明の話題がありました。一方で「光をつけるか消すか」という単純な捉え方にとどまる記事もありました。 衛星コンステレーションと天文学の関係では、ローマ教皇庁や国際天文学連合といった組織としての話題や、法学の教授のコメントなど、単に技術的なものにとどまらない観点の記事が目立ちました
2023年4月の光害関連ニュースです。沖縄県国頭村と群馬県高山村での星空保護区を目指す動き、カナダの星空保護区(=ダークスカイ保護区)での星空以外の価値の話題、衛星コンステレーションと天文学の関係についてのインタビュー2件、そして月面天文台。インタビューはいずれも私にも取材いただいたものです。最近はこのnoteを読んでから取材にお越しいただけることも増えてきました。このnote、目的の半分は自分用の情報まとめ、もう半分は光害と天文観測環境保護に関する情報ポータルとなることを目
環境省が毎年夏と冬に実施している夜空の明るさ調査。2024年1月の調査結果が発表されていましたので、ご紹介します。 観測期間:2024年1月2日(火)~1月15日(月) データ総数:613件(うち有効データ584件) 環境省の星空観察(夜空の明るさ調査)は、平成30年(2018年)度から夏冬の2回行われています。肉眼での調査もありますが、今回ご紹介するのは、デジタル一眼レフカメラを使って日没後1時間半~3時間半の2時間の間で天頂方向の写真を撮り、それをフォームから送信する
2023年3月の光害関連ニュースです。3月上旬はニュースが少ないかなと思っていましたが、後半にどっと増えました。光害と野生動物、光害とアストロツーリズム、衛星コンステレーションをめぐる動きなど、話題はさまざまです。 地上の光害に関するニュースボン条約第14回締約国会議、移動性野生動物種の保全を目指す多くの決定をして閉幕 2024年3月6日、EICネットに掲載された記事。ボン条約(移動性野生動物種の保全に関する条約)の締約国会議がウズベキスタンで2024年2月に開かれ、保護
2024年2月の光害関連ニュースです。 地上の光害に関するニュース星空保護区になったはいいものの…目立つ観光客のマナーの悪さ 福井県大野市、対策いかに 2024年2月13日、福井新聞の記事です。2023年にダークスカイ・インターナショナルが認定する星空保護区となった福井県大野市南六呂師地区。観光PRもできて観光客が増えているようですが、それに伴って駐車場で車のライトを消さない人がいたり、駐車場に寝そべって星を観る人がいたり、という問題が起きているとのこと。観光客が増えれば
2024年1月の光害関連ニュースです。地震や事故と重苦しい幕開けとなった2024年。夜空を眺めてゆっくりできるときが来ることを願っています。 地上の光害に関するニュースみんなで取り戻す、美しい夜空 2024年1月5日、国立天文台広報ブログに掲載の記事。私が室長を務める周波数資源保護室の特別客員研究員である、星空公団の小野間さん執筆の記事です。昨年9月に開催した星空環境保護研究会の報告と、環境省の令和5年度冬の星空観察への参加のお誘いが主題でした。サムネイルになっている航空
2023年12月の光害関連ニュースです。2023年は福井県大野市南六呂師地区が日本で4番目の星空保護区に認定されたり、衛星コンステレーションからの天文学の保護に関する国際天文学連合のシンポジウムが開催されたり、世界無線通信会議で衛星コンステレーションからの電波天文学の保護が検討課題になったりと、様々な話題がありました。 光害に関する研究もいくつも発表されました。世界の夜空の明るさが年10%ずつ明るくなっているという報告、ハッブル宇宙望遠鏡の撮影画像の数%に人工衛星が写りこんで
4週間のドバイ出張に行ってきました。国際無線通信連合ITUの世界無線通信会議WRC-23に参加するための出張でした。WRCは、世界の無線通信の使い方や周波数の割り当てが記載されている無線通信規則を改訂するために約4年に1度行われているもので、世界中から4000人近い人たちが集まって議論します。様々なサービスや装置で電波を出していると、場合によっては電波天文観測の障害になることもありますから、そんなことがないように電波天文観測に適した環境を守るという立場で議論に参加するのが今回
2023年11月の光害関連ニュースです。 地上の光害に関するニュース『暗闇の効用』 2023年11月11日、久元喜造 神戸市長のブログに掲載された、横尾忠則氏による『暗闇の効用』(ヨハン・エクレフ著)の書評についての記事です。子どものころに親しんだ暗い夜空が失われてしまったことを嘆いていることを受けて、市長は以下にように記しています。 市長が暗闇の重要性を理解されているというのは街づくりの観点からもたいへん重要と思います。一方で神戸市は2023年2月の光害関連ニュースで