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光害関連ニュースまとめ 2023年10月

2023年10月の光害関連ニュースまとめです。


地上の光害に関するニュース

大野市南六呂師地区が「星空保護区」に認定 市に認定証書授与

2023年10月2日、NHK NEWS WEBに掲載。8月に「星空保護区」に認定された福井県大野市南六呂師地区、その認定証が国際NPO「ダークスカイ・インターナショナル」から発行され、日本支部「ダークスカイ・ジャパン」の越智代表から大野市の石山市長に手渡されたというニュースです。大野市、福井工業大学、ダークスカイ・ジャパンなどの関係者が協力し合って実現した星空保護区の認定ですので、今後にうまく活かしていってほしいですね。成功例を積み重ねれば、後に続きたい他の自治体や地域が出てくることでしょうし。

〝星空保護区〟で町おこし!福井県大野市が日本一美しい星空を保つために歩んだ茨の道

2023年10月6日に、DIMEに掲載された記事。大野市南六呂師地区の星空保護区認定への道のりがくわしく紹介されています。大野市と福井工業大学が2018年3月に相互連携協定を結んで、2019年に星空保護区認定の可能性を探る調査が始まって、2021年に申請チームが作られて屋外照明の取り換えなどが実際され、2023年4月に星空保護区申請、8月に認定。星空保護区認定の可能性調査から認定まで4年かかっています。星空保護区の認定には空に光が漏れない照明が必要ですが、それまでにあった照明を調査してみると「全滅」だったとのことで、皆さんの苦労と保護区認定のハードルの高さが垣間見えます。南六呂師ではパナソニックの光害対策照明が採用されていて、記事にはパナソニックの貢献についても紹介されています。記事にある暖色で地面だけに光が当たっている照明の写真は、現地のいい雰囲気が伝わってきますね。

同様の記事が"家電Watch"にも掲載されていました。照明器具カテゴリのニュースと言われれば納得。

そしてニューズウィーク日本版にも。記者会見がこれだけ多様なメディアに取り上げられていますので、広報担当の方もきっと嬉しかったのではないでしょうか。と、元広報担当としては思います。

与論島が2年ぶり選出 星空ツーリズム推進を評価 世界の持続可能な観光地TOP100選2023

2023年10月13日に南海日日新聞に掲載された記事。「持続可能な観光の国際的認証団体グリーン・デスティネーションズが実施する表彰制度」の2023年版で与論島がトップ100に選ばれたそうです。この表彰自体は星や宇宙に特化したものではありませんが、与論島の認定の詳細を見てみると、タイトルからして"Starlight Tourism Initiatives on Yoron Island"と星空を核にした観光が主題となっていることがわかります。南海日日新聞の記事にもある通り、与論島は和歌山大学観光学部と協力して星空観光を打ち出していて、和歌山大学との包括連携協定も結んでいます。星空保護区認定とはまた少し違った切り口ですが、暗い星空を守ることはこの表彰の趣旨でもある「持続可能な開発」との親和性も高い取り組みです。認定はあくまで手段であり通過点ですので、大野市と同じくうまく活かしていってほしいところです。


光害と関係した衛星コンステレーションに関するニュース

人工衛星が「1等星」に 太陽を反射して輝く光跡、天文学に悪影響も

2023年10月3日に朝日新聞デジタルに掲載された記事。米国のASTスペースモバイルが打ち上げた実験衛星BlueWalker3が1等星と同じくらいの明るさで見える、というNature誌掲載論文を紹介した記事です。Natureはご存じの通りインパクトの大きな科学研究成果を載せる雑誌ですが、今回の論文は科学的インパクトというよりは科学と社会との関係にインパクトがある、という趣旨でしょうかね。BlueWalker3の明るさは最大で0.4等ということで、記事では「全天で21個ある1等星の中では、最も明るいシリウスから数えて9番目くらいにあたる。」と紹介されています。2023年9月の光害関連ニュースまとめでもBlueWalker3についてご紹介しているとおり、これはまだ実験衛星で、本番機はもっと大きくなる予定ですので、そうなるともっと明るくなる可能性が高いです。ただ全体の衛星数としては100機程度が想定されているので、スペースXのスターリンクに比べると2桁小さい数です。肉眼で星空を楽しむ方にとっては明るいASTスペースモバイルの衛星のほうが気になる存在になってしまいそうですが、天文学研究のための観測にとっては、数が圧倒的に多く望遠鏡の視野に入る確率が高いスターリンクのほうが脅威としては大きいと思います。ASTスペースモバイルにしてもスターリンクにしても、太陽光の反射による光の天文学への影響だけでなく、電波天文学への影響も懸念されています。光の反射については国際的な規制の枠組みがないということもあり、ベンチャービジネスのスピード感も相まって天文学としては後手に回っている感が否めませんが、ともあれ何とか食らいついていかねばと各国の天文学関係者は影響回避のための検討や現状の把握を進めています。これについては、改めて別の記事で。

ギズモードにも、同じくNature論文を紹介する記事が出ています。地上の望遠鏡で撮影された、BlueWalker3の衛星の形がわかる写真はなかなか衝撃的です。やっぱりデカい衛星なんです。

空が衛星で満ちる。天文学者は困惑。

2023年10月6日にWIREDに掲載された記事。Amazonが進めている衛星コンステレーション計画「Amazon Kuiper」に関する記事です。10月6日に最初の試験衛星2基が打ち上げられました。最終的には3200機の衛星を打ち上げ、スターリンクと同じような通信サービスを提供することを目指しています。記事タイトルは「Amazonが」と言っていますが、衛星コンステレーションの規模としてはスターリンクのほうが大きいので、ちょっと語弊があります。とはいえ大きな衛星コンステレーション計画であることは間違いありませんし、資金力もある企業が主体ということで実現可能性も高く、天文学への影響が気になるところです。試験機が打ち上げられたので、実際の観測も進んでいることでしょう。
WIREDの記事には、10月初めに開催された衛星コンステレーションと天文学の関係を議論する国際会議についても書かれています。国際天文学連合シンポジウム385 ”Astronomy and Satellite Constellations: Pathways Forwardです。実は私もこれに参加していました。レポートはこのあとこのnoteでまとめたいと思いますので、もう少しお待ちください。

100万機の(ペーパー)衛星

https://www.science.org/doi/10.1126/science.adi4639

2023年10月16日に科学誌Scienceに掲載された記事。100万機の衛星とはなんとも恐ろしい数です。人工衛星は必ず電波で通信するので、混信を防ぐために、どこの誰がいつどんな衛星を打ち上げてどの周波数で通信するのかを国際電気通信連合(ITU)に届け出る必要があります。この届け出が認められて初めて打ち上げて通信できるので、届け出をチェックすれば今後どんな衛星が打ち上げられる予定かがわかります。スターリンクは5000機以上、別の衛星コンステレーション事業者であるOneWebは600機超の衛星を打ち上げていますが、ITUへの届け出を見ると、例えばルワンダから申請されたCinnamon-937という衛星コンステレーションは33万機というとんでもない数の衛星を使うことに(書類上は)なっています。宇宙開発は死屍累々ですし実現可能性もよくわからないので、Scienceの記事は書類上に存在するものということで「ペーパー衛星」というタイトルをつけたのでしょう。

ルワンダ、というところに引っかかる方もいらっしゃるでしょう。例えば船にパナマ船籍やリベリア船籍が多いのは、こうした国の安い税金をあてにしてこれらの国の船として登録されているわけです。地理の授業で習った記憶のある「便宜置籍船」です。これと似たような状況が衛星でも起きているわけですね。本国では規制当局がうるさいけれど他の国なら規制が緩いとか。こういう状況になると、例えば天文学を守るための規制をある国が作ったとしても抜け道ができてしまいます。国際的な枠組みが必要です。

電波天文学の保護に関連するニュース

私の仕事の多くは、電波天文観測環境の保護に関連するものです。通信をはじめ様々な用途に電波が使われていて、時には宇宙の電波観測に影響が及ぶ可能性も生じます。これに関連する話題もいくつか出ていましたので、紹介します。

ソフトバンク、成層圏からの5G通信試験に成功

2023年10月19日にUchuBizに掲載された記事。ソフトバンクは、成層圏に飛行機や飛行船を飛ばして通信の基地局とする「成層圏プラットフォーム: High Altitude Platform Station (HAPS)」を精力的に研究しています。HAPSモバイル株式会社というそのための子会社も持っていました(現在はソフトバンク本体が吸収合併)。地上の基地局アンテナが立てにくい場合でも、空から電波を届けることで通信を実現しようというものです。スターリンクをはじめとする衛星やこのHAPSなどはまとめて非地上系ネットワークNon-Terrestrial Network: NTN)と呼ばれ、近年注目を集めています。
電波天文への影響という観点では、これまでは地上の基地局アンテナや携帯端末からの電波を念頭にその影響の有無を検討していました。例えば電波望遠鏡のまわりに山があれば電波は減衰して届きにくくなるわけですが、空から電波が降ってくるとなるとまた別の検討が必要になります。もちろんこうした検討を行う機会は総務省がきちんと担保してくれているので、知らないうちに悪影響が出ることはありません。こうした検討の場で、電波天文への悪影響が出ないようにしてほしいと法令に基づく範囲で要望する権利がありますので、今後もNTNの動向は注視していくつもりです。

月面の通信規則を検討しなくてはいけない時代

2023年10月24日にspacenewsに掲載された記事。電波の使い方を世界的に定めている国際電気通信連合ITUが、月面での通信に関する規則を検討する可能性に言及したことが記事になっています。

月と言えば、アメリカを中心としたアルテミス計画で再び人類を月に送り込もうという計画が進んでいます。これとは別に、中国を中心として月面を目指すグループもあります。アポロの時のような短期の探査ではなく、長期滞在や資源開発なども視野に入れようという動きもあります。こうしたとき、必ず電波での通信が必要になります。混信を防ぐためには、電波の使い方をきちんと決めておく必要がありますので、ITUが出てくるのは重要です。

天文学の観点では、月の裏側は地球からの電波が届かない「電波遮蔽領域」で、特に低周波の電波天文観測を行うには理想的な場所です。ここに電波天文台を建設しようという構想もあります。ところが、通信に使う人工電波が野放図に入ってきてしまうと、せっかくの貴重な環境が台無しになってしまうかもしれません。もちろん電波天文台を作るにも運用するにも何らかの通信が必要なので、周波数を分けるなどの約束事が必要。

ITUは、3~4年に一度 World Radiocommunication Conference (WRC) という大きな会議を開いて、条約と同等の国際的な効力を持つ「無線通信規則」の改訂についての議論をしています。次回は、今年の11月中旬(あと2週間ちょっと!)からドバイで開催されるWRC-23です。ここで議論される議題は前回2019年に決まっています。次々回のWRC-27(2027年開催)で議論する議題は、WRC-23で決めることになります。記事では、ITU関係者が「ITUが検討する可能性のある月通信に関する具体的な問題については詳しく述べなかったが、今こそ検討を始める時だと述べた」とあります。衛星コンステレーションの時と同様、動きの速い宇宙ベンチャーが月に到達してしまう前に規則を整備しておく必要がありますが、なんせWRCは3~4年に1回しか開かれないので、確かに検討は早く始めておかなくてはいけません。電波天文学者も指をくわえてみているわけではなく、月面天文台での観測周波数やその運用のために必要な通信環境などを議論するITUの「研究課題」 (ITU-R Question SG07.260) を設定し、議論を始めています。本当に月面天文台ができるのは何年先のことになるかわかりませんが、しかし遅れてはいけないので、まさに今こそ検討を始めなくてはなりません。

月面での天文台については、以下のnote記事もご参照ください。


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