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光害関連ニュースまとめ 2023年8月

2023年8月の光害関連ニュースです。

地上の光害に関するニュース

福井県大野市南六呂師地区、星空保護区に認定

2023年8月21日、国際NPO団体「ダークスカイ・インターナショナル」が福井県大野市南六呂師地区を「星空保護区」に認定しました。星空保護区としては日本では西表石垣、美星町、神津島に次いで4番目です。申請は今年4月でしたので、4か月で認定ということになりました。認定されたカテゴリは「アーバン・ナイトスカイプレイス」で、近隣の明るい都市の影響を受けながらも、暗い夜間環境を保護推進するための優れた取組を行っている地域が対象となります。南六呂師地区は大野市中心部から10kmほどですので、その影響を受けるということでしょう。そういう場所でも、地区内の照明を工夫することで星空保護区の認定を受けることができます。このカテゴリでの認定はアジア初とのこと。

関連ニュースはいくつも出ていました。

南六呂師エリアの照明は、岡山県井原市美星町と同じくパナソニックのものが導入されたそうです。「上方光束率0%(上方に光が出ない)、色温度3000K以下」というダークスカイ・インターナショナルの認証を受けたもの約90台がふくまれるとのこと。

星空保護区への認定には、単に現在の夜空が暗いことだけでなく、暗い夜空を守るための取り組みがきちんとなされていることが必要です。このため、たいていは照明設備の取り換えが発生します。神津島は岩崎電気のものが使われていますが、複数の選択肢があるのは重要なことですね。

「光害対策のリードを」先進地の取り組みなど紹介

2023年8月28日、八重山毎日新聞の記事です。日本ではじめて星空保護区に認定された西表石垣国立公園で、引き続き光害を抑えていくためのセミナーが開催されたそうです。石垣島では毎年夏に「南の島の星まつり」が開催されていて、その一環とのこと。お祭りだけではなく、石垣の大切な星空を守っていくためのセミナーも開催されているというのは素晴らしいですね。大野市南六呂師地区の認定で日本にも星空保護区が4か所になりましたから、保護区どうしや今後の認定を目指す地区との情報共有も進んでいくとよいと思います。

中部横断道"断絶区間"どうなる?

長野県・山梨県・静岡県を南北に貫き、上信越自動車道・中央道・新東名をつなぐ中部横断道ですが、長野県の八千穂から山梨県の長坂の間がまだ開通していません。未開通ルートの中には、国立天文台野辺山宇宙電波観測所のある野辺山高原があります。地域の救急搬送の助けとして、また名産である高原野菜の速やかな出荷のために早期開通を望む声があります。
2023年8月7日に公開されたこのニュース記事では、国が長野県と山梨県にルートの提示を行ったことが紹介されています。また「地元からは高速道路による光害などで美しい星空が失われることがないよう配慮を求める意見も出ています」という記載もあります。
美しい星空ももちろんですが、最近では車載レーダーが電波観測に与える影響も見逃せません。初期のころから、野辺山宇宙電波観測所への影響を与えないように高速道路は一定程度離れた場所に作るという方針で検討されていると認識していますが、今回提示されたルートがどのようになっているかは、情報が出ていません。引き続き注視が必要でしょう。


光害と関係した衛星コンステレーションに関するニュース

ASTスペースモバイル、衛星5機分の資金を調達

普通の携帯電話と人工衛星をつないで通信サービスを提供することを目指しているASTスペースモバイルが、最初の5機の衛星を開発するための資金調達に成功した、と2023年8月15日のspacenewsに掲載されています。
ASTスペースモバイルは、既に実験衛星BlueWalker3を昨年9月に打ち上げていて、1等星の明るさで見えるという報告が出てきています。

BlueWalker3による通信実験は今年4月に成功したということで、本番衛星の開発に乗り出している、ということなのでしょう。記事によれば、90機の衛星でサービスを開始する手始めとして、最初の実衛星5機を2024年第一四半期に打ち上げることを目指すようです。開発予算超過により、初期機体は本番機BlueBirdの半分の大きさで、実験機BlueWalker3と同程度になるとのことですので、地上から見た明るさも同程度になる可能性があります。

BlueWalker/Bluebirdはスターリンクなど他の衛星コンステレーションの機体に比べてはるかに機体が大きいので、反射光が明るくなります。一方でスターリンクは1万を超える衛星を上げることを想定していますが、こちらは100機以内ということで、望遠鏡の観測視野に入る可能性は下がります。どちらが天文学に影響があるかと言えば数が多いほうかもしれませんが、いずれにしても推移は注視していかなくてはいけません。

なお、現在の電波周波数利用の国際規則では、普通の携帯電話が使う周波数で衛星と携帯電話を直接つなぐことは規則違反になります。規則を変える必要がありますが、それはまだ行われていません。

大規模化し続けるスターリンク

スターリンク衛星はほぼ毎週のように打ち上げられています。2023年8月には6回の打ち上げで124機のスターリンクV2 miniが軌道投入され、これまでの打ち上げ合計は5000機を超えました。2023年2月に打ち上げが始まったV2 miniだけでも1000機を超えます(参考:Jonathan's Space Pages)。ものすごいペースです。

スターリンクに関連して2つ記事が出ていました。どちらも有料記事で、会員でない場合は最初の1ページしか読めないのが残念です。

打ち上げ直後のスターリンクは軌道が低く、また衛星間の距離も近いため、一直線に並んだ明るい光の点として見えることがあります。スターリンクトレイン、といわれます。「銀河鉄道みたい」という声もあります。福井新聞に、天文愛好家が撮影したスターリンクトレインの記事が出ていました。

光の点が動いていく様子をきれいだと思ってしまうのは仕方がないのですが、天文学やアマチュア天文撮影に影響が出つつあることも報道では合わせて書いていただきたいものです。特に、新しく登録された星空保護区である福井県大野市とその周りの方には、そういうところも含めて語っていただきたいところ。

ということをつぶやいたら1000RTを超えていました。定常運用に入れば軌道が上がって間隔も開いて「銀河鉄道」には見えなくなりますが、とはいえ今の少なくとも2~3倍の1万機以上、最大で4万2000機というプランになっていることは広く知られてもよい事実だろうと思います。もちろん便利になることも多いので「上げるな」というわけではありませんが、対応を考える必要はあります。


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