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渋澤怜『スカートとツイートは短い方がいい』&文系バーチャルビッチ『性感帯は本棚です』

 渋澤怜さんは、ブログなどを拝見するにいろいろ試行錯誤しているなぁという印象なのだけれど、特に顕著なのが「#twpoem」「#twnovel」、つまりTwitterで140字以内で終わらせる詩・小説なように感じていた。『スカートとツイートは短い方がいい』はその連作集になる。

 まず、まとめて読むと「詩」と「小説」とタグ付けに大差がないことに気がつく。強いていうならば、「詩」のほうが情景・情感を、「小説」の方がセカイを描いているような印象だが、単に書き手の気まぐれのようにも思える。その上で、どの言葉も氷の上で滑り一向に前に進まないような、堂々巡り感があるのは「死」を連想させるキーフレーズが空疎だったり、「夢」が妙に醒めていたりする。これを持ち味と取るか安直な表現と取るかは読み手次第だろう。個人的には、特に「#twnovel」の方はノベルでなくプロットのように読んだ。

 もう一冊、架空の女の子のアカウント「@vb_bunkei」のツイートを集めた冊子のほうは、なにをもって「文系」とし、なにをもって「ビッチ」とするのか考え込まされた。一言でいうならば「寝てる」感がない。精液の匂い、とあっても、「それってバーチャルだよね」という言葉の並べ方になっている。一方で自己評価が上下に揺れているのはリアルだ。「八方ブス」と言ったそばから「このセクシーバディ」と言っちゃう振りきれ方は、「ビッチ」のそれだ。

 そして、読み進めていくと、いわゆる「文系」なツイートが極端に少ないことに気付かされる。つまり、「文系」「バーチャル」「ビッチ」というタグ付けを既になされているから、このツイートそのものが「文系」であるかにも関わらず「文系」と捉えざるを得ないというのが、このアカウントの巧妙な「フィクション」なのだろう。そう読むと、ツイートから想像できる平凡な「ビッチ」像のバッグの中から町田康あたりの小説が出てきそうな気がしなくもない。


https://twitter.com/rayshibusawa


 

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