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21世紀のコミュニケーションツール。 意識進化を加速させる、高速学習システムとしての言霊言語の可能性。その4【最終回】

執筆:ラボラトリオ研究員 杉山 彰

たった一文字のFOXP2遺伝子が、
地上に君臨した2人類の命運を分けた。

脳に限って言えば、はるか5億年以上前のカンブリア紀の地層から目を持った我々の祖先の化石が次々と発見された。わずか3cmほどの小さな生物だったが、目も持つことにより視覚情報が急激に増加して脳が発達したのだった。情報が増えると、その情報を格納する場所が肥大するという原理原則が働き、生命の大躍進が始まった。大脳旧皮質が進化したのである。大脳旧皮質が進化すると、偶然と必然の原理原則が作用してあるとき突然変異が起きる。私たち人類の遠い祖先とも言うべき哺乳類の脳のみが脳細胞の増殖を制御するブレーキ遺伝子が故障したのである。その結果、哺乳類だけが大脳旧皮質の上に大脳新皮質という新しい機能を手に入れたのである。この大脳新皮質は知性を生み出す新しい脳として哺乳類の進化に大きく貢献したのである。

一方、大脳新皮質を獲得できなかった爬虫類は、未だに大脳旧皮質の限界を打破できずにいることはいうまでもない。大脳新皮質を獲得して知性を磨いて、地球上に君臨した人種が2種類存在した。今から4万2千年前と言われている。ネアンデルタール人とホモ・サピエンスだった。不思議なことに脳の大きさも腕力もネアンデルタール人の方がホモ・サピエンスを大きく上回っていた。ネアンデルタール人は最強のハンターであったのだ。しかし4万年前にネアンデルタール人は絶滅してしまった。絶滅した原因は、当時、氷河期を迎えた地球の環境に対応できなかったことにあると言われている。

発掘された石器を比較してみると、ネアンデルタール人は、数万年もの間、同じタイプの石器をつくり続けた。同じタイプの石器を狩りから調理とあらゆる用途に使っていた。技術進化が乏しかったのだ。一方、ホモ・サピエンスの石器を見ると用途ごとに大きさや形を変えた石器をつくっていた。そこからホモ・サピエンスは言葉を駆使した高度のコミュニケーション能力があったと推定できる。言葉がなければどんなに優れた技術でも一代限りで終わってしまうからである。言葉を使って技術が伝えられ、さらに発展させ、氷河期を迎えた地球の環境に適応していったと考えられている。

ネアンデルタール人の石器

ホモ・サピエンスの石器

出典:NHKオンデマンド「生命の躍進」


では、ネアンデルタール人よりも高度な言葉を使っていたと言われるホモ・サピエンスはネアンデルタール人と何が違っていたのか?

最新研究からそこに遺伝子が深く関わっていることがわかってきた。ネアンデルタール人が言葉をうまく話せなかったのはFOXP2遺伝子に変化が起きていることが原因であるとわかったのだ。ネアンデルタール人の化石からDNAを取り出し、ばらばらになったDNAの破片をコンピュータプログラムでつなぎ合わせることで、絶滅したネアンデルタール人のDNAを復元することに成功した。復元したDNAを使ってネアンデルタール人とホモ・サピエンスの言葉に関わるFOXP2遺伝子を比べてみると、意外なことに主要部分に違いなかった。

そこでFOXP2遺伝子の周辺まで分析の対象を広げ、40万文字のDNAを徹底的に洗い直した結果、見えてきたのは、ほんの“1文字”の重要な違いの発見だった。ネアンデルタール人では“A”の部分の遺伝子が、私たちホモ・サピエンスでは“T”の遺伝子に変化していたのだ。“A”の遺伝子配列が“T”の遺伝子配列に変化したため、FOXP2遺伝子の配列によって複雑な言葉を繰るため口蓋やなんらかの言語遺伝子が十分に機能しなかったのではないかと推測されている。 
 
ホモ・サピエンスは、言葉を使って生き延びた。厳しい氷河期、私たちの祖先は言葉を武器にして生き残りを賭けた。言葉を使うことでたくさんの人が協力し合い、大がかりな狩りができたのである。さらに言葉は、知識を、世代を超えて引き継ぎ発展させることができる。人間以外の生き物ではどんなに素晴らしい技能を身につけても一代限りで子には伝わらない。ところが人間は言葉を使って知識を子に伝え、子がそれを発展させ、孫に引き継ぐことができるようになったのである。

現代科学では、1文字の遺伝子の書き換えだけで、私たちが言葉を持ったことのすべてを説明できるわけではないが、僅かな違いで大きな変化が起こるのが生命40億年の神秘なのである。いま21世紀の我々人類は、環境問題、貧困問題、政治問題、宗教問題と、数々の問題を抱え、まさに大転換期を迎えようとしている。我々人類は、遠い過去に言語を発明し、その言語を知識として情報として記憶として大脳新皮質に蓄積したことにより、生涯のうちに現実世界の構造を数多く学習し、大勢の他人に効率的に伝えることができるようになった。先達からの学習は何世代にもわたって繰り返され、他人が書いた知識や意見を、吸収し、発展させることが可能になり、地球上で最も順応性が高く、知識を広範囲の仲間に伝えられる唯一の生物となった。

そして今、私たち人類は、第二の脳を手にしようとしているのだ。人間の意識進化を加速させる高速学習装置として開発されたロゴストロンシステムは、任意の、ある意識を可視化した文章をコンピュータネットワーク上に、ロゴストロン・データベース・システムとして構築。海馬の働きによって大脳新皮質に記憶された記憶が、言霊言語ファイルデータベースと共鳴共振し蓄積されていくのである。ロゴストロンシステムによって海馬に常時送り込まれるデータ量は、我々人類がかつて経験したことのない膨大の量である。この膨大な量の記憶、すなわち知識は、エントロピーの法則に従ってやがて飽和のときを迎える。「相転移のとき」を迎える。そのとき何が起きるのか。ロゴストロンシステムの常時使用により、記憶領域野における「海馬神経細胞」が肥大化し「エピソード記憶」形成能力が向上し、大脳新皮質の前方に、大脳新・新皮質が形成される時代がくるのではないだろうか。

大脳新々皮質

資料参照:NHKオンデマンド「生命の躍進」

“自ら望む現実”を自らの神話として、自らの未来姿として記憶として植え付ける。その記憶を、ロゴストロン言語周波数が<短期記憶→ワーキングメモリ→エピソード記憶→長期記憶>へと進化させる。この繰り返しが、日常的に頻繁に行われれば、大脳新皮質は、【大脳新・新皮質】へと進化をとげるのではないだろうか。(了)

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【杉山 彰(すぎやま あきら)プロフィール】

◎立命館大学 産業社会学部卒
 1974年、(株)タイムにコピーライターとして入社。
 以後(株)タイムに10年間勤務した後、杉山彰事務所を主宰。
 1990年、株式会社 JCN研究所を設立
 1993年、株式会社CSK関連会社 
 日本レジホンシステムズ(ナレッジモデリング株式会社の前身)と
 マーケティング顧問契約を締結
 ※この時期に、七沢先生との知遇を得て、現在に至る。
 1995年、松下電器産業(株)開発本部・映像音響情報研究所の
 コンセプトメーカーとして顧問契約(技術支援業務契約)を締結。
 2010年、株式会社 JCN研究所を休眠、現在に至る。

◎〈作成論文&レポート〉
 ・「マトリックス・マネージメント」
 ・「オープンマインド・ヒューマン・ネットワーキング」
 ・「コンピュータの中の日本語」
 ・「新・遺伝的アルゴリズム論」
 ・「知識社会におけるヒューマンネットワーキング経営の在り方」
 ・「人間と夢」 等

◎〈開発システム〉
 ・コンピュータにおける日本語処理機能としての
  カナ漢字置換装置・JCN〈愛(ai)〉
 ・置換アルゴリズムの応用システム「TAO/TIME認証システム」
 ・TAO時計装置

◎〈出願特許〉
 ・「カナ漢字自動置換システム」
 ・「新・遺伝的アルゴリズムによる、漢字混じり文章生成装置」
 ・「アナログ計時とディジタル計時と絶対時間を同時共時に
   計測表示できるTAO時計装置」
 ・「音符システムを活用した、新・中間言語アルゴリズム」
 ・「時間軸をキーデータとする、システム辞書の生成方法」
 ・「利用履歴データをID化した、新・ファイル管理システム」等

◎〈取得特許〉
 「TAO時計装置」(米国特許)、
 「TAO・TIME認証システム」(国際特許) 等


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